奏さんの妹になって奔走する話   作:温野菜生活

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遅くなりました。
ついに主人公のシンフォギアのお披露目です。



初・戦・闘!

 どうもどうも、天羽唱花です。

 久しぶりの休日ということもあって了子さんとお買い物に訪れていたのですが、なんとなんとノイズの襲撃を受けてしまいました、はい。

 

 ていうかノイズって昨日も出たよね? なに二日連続で出てきてくれてんの? あれなの、暇なの?

 

「了子さん、これってやばいやつですよね」

「そうね……ここは人が集まっている場所だから、被害も相当なものになるはずよ」

「と言っても、一課の人たちが来るのにも時間がかかりますよ」

 

 そうね、と言いつつ、了子さんは通信機を取り出す。たぶん弦十郎さんに連絡を取るんだろう。

 

「弦十郎くん、わかっていると思うけどノイズが出たわ……えぇ、私と唱花ちゃんも今、その現場にいるところ」

 

 現状を整理すると、状況は最悪に近いと言っていい。アウトレットモールということもあり、ここには人が多く集まっている。普通に街中でノイズが出るよりも被害は格段に増加するのは間違いない。

 現在、モール内の人たちは一斉にノイズと逆方向へと逃げており、通路はこれ以上ないほどに混雑している。これでは逃げられるものも逃げられないし、しかも人同士での二次被害が出る恐れもある。

 

 一課の人たちが来てくれればこの混乱も少しは緩和するんだろうけど、先も言った通りまだ時間がかかる。

 

「奏ちゃんと翼ちゃんは……そう少なくともあと10分かかるのね」

 

 下唇を噛み、やるせない声を出す了子さん。

 10分。その時間の間にどれだけの被害が出るのか……バカな私でも理解はできる。

 

「私も出来る限りのことはするけど、正直焼け石に水程度よ。確実にかなりの被害が出るわ」

 

 そう、私たちが何をしても大きな効果は見られない。問答無用で被害は広がり続ける。

 だから今、私がしなくちゃいけない事は、私にしかできない事は……もうこれしかない!

 

「了子さん、ちょっと変わってください」

「ちょ、唱花ちゃん⁉︎」

 

 半ば強引に通信機を奪い取り、私はその先の相手、つまりは弦十郎さんへと話しかける。

 

「弦十郎さん、私です、唱花です」

『唱花か。話はわかっていると思うが、奏と翼が到着するまで時間が掛かる。了子くんと共に避難誘導を頼む』

「弦十郎さん、姉さんたちにノイズの出現のことは伏せておいてください。この場は私がなんとかします」

『唱花ッ、お前まさか!』

「まさかも何も、今打てる最善手はそれしかないでしょう」

 

 それにここで指をくわえて見てるだけなら、なんのために手にした力なのかわからなくなるじゃないですか。

 

「翼はともかく、姉さんは昨日も戦っています。無茶はさせたくないんです」

 

 ”LiNKER”は劇薬だ。できることなら、連続で使用はさせたくはない。それに、姉さんを悪夢で苦しめるわけにもいかないしね。

 

『……ダメだ、と言っても無駄なんだろうな』

「もちろん、止まる気は毛頭ないんで」

 

 はぁ、と通信機越しにため息をこぼす弦十郎さん。

 

『わかった。だがくれぐれも無茶はするなよ』

「わかってますって。それより、本当に姉さんたちには内緒にしててくださいよ」

『ああ、わかっている』

 

 さて、これで話はまとまった。

 

「というわけなので、了子さんはこのまま誘導をお願いします」

「そう、行くのね」

「はい、ちょっとだけ。時間稼ぎくらいなら、今の私でも十分でしょう」

 

 通信機を返し、了子さんに背を向け人の波とは逆方向へと視線を向ける。

 

「唱花ちゃん!」

 

 了子さんが私を呼び止める。

 振り返ると、笑みを浮かべた彼女がその小さな口を開き

 

「自分の歌を、信じなさい」

 

 私を、いや、私の胸を指差す。

 そんな了子さんに私は親指を立てサムズアップで返す。

 

 そうして私は、人の波の最後尾、ノイズのいる場所へと向かって走り出した。

 

 

 走る事1分。人ごみの最後尾へと辿り着いた私の眼の前には、風によって宙を舞う大量の煤が。それに通路の所々には、ノイズの被害者であろう煤溜まりも。

 そんな悲惨な現場を眼でなぞりつつ、この惨劇を作り出した元凶へと視線を移す。

 

「……こうして真正面から会うのは数年ぶりだね、ノイズ」

 

 まぁ私はあの時のことはあまり記憶にないんだけどね。

 ……にしても数が多いなぁ。カエル型(クロールノイズ)人 型(ヒューマノイドノイズ)、それに鳥 型(フライトノイズ)までいるじゃないですか。

 なに? みんなでパーティーにでも行くの?

 

「だったらさ、私も混ぜてよ。楽しくなること保証付だからさ」

 

 そう言いながら、胸元のペンダントを握りしめる。ちょっとだけ手が震えているのは緊張か、それとも家族の仇を前にしたからか。

 うん、でも最初はこのくらいがちょうどいいよね。

 さぁ今この時だけ、ここは私の舞台。どうぞ思う存分、楽しんでいってくださいな。

 

 そして、私は唱える。胸の内側から湧き上がる聖詠(うた)を。

 

「──Shelltos(シェルトス) Aigis(アイギス) Seshil(セシル) torn(トロン)

 

 ──心に愛を、その身に覚悟を。

 

「──私は盾になる」

 

 そうして、私の体は灰色の光へと包まれて、光が収まる頃にはその姿は一変していた。

 白を基調としたインナーのような装備。そしてライトアーマーのように胴、前腕、脛を守るそれは灰色で統一され、鈍い輝きを放つ。背中には私の背丈とほぼ同程度の大きさの、装甲と同じ灰色をした盾。

 

 これが私、天羽唱花の纏うシンフォギア”アイギス”。神話にて、主神ゼウスが娘のアテーナーに与えたとされる、邪悪・厄災を払う魔除けの盾。

 

「さぁ来なよノイズども。あの頃の私と、同じと思うなよ!」

 

 叫び、カシュン、という音とともに背負った盾が落ち、地面を砕き垂直に突き刺さる。即座にそれへ手を伸ばし、内側に付けられた取っ手を握る。

 直後、ノイズたちの何体かが襲いかかってくるが、慌てることなく盾を持ち上げ

 

「よいしょおっと!」

 

 ブォン、という大木を振り回したかのような音を奏で、迫るノイズたちを煤へと還す。

 うん、やっぱり弦十郎さんや緒川さんよりも断然遅いし弱いね! これならなんとかなりそう!

 

 それに都合よくノイズも私を標的にしたらしい。カエル型と人型のノイズは体を紐状にし、特攻同然の突撃を行ってくる。

 けどお客さん、そんなもんじゃ私の盾は貫けませんぜ!

 

 ──行く手を阻む城門(ゲート・オブ・キャッスル)──

 

 両手で構えた盾を地面へ突き刺すと、眼前にシャッターを下ろすようにして現れる灰色の壁が。行く手を阻まれ壁に衝突するノイズたちは煤と化し地面へと舞い落ちる。

 そして次に攻撃を仕掛けてくるのは鳥型のノイズ。その体を槍状へと変化させ、壁の上からの攻撃を仕掛けてくる。

 

 即座に盾を抜き、後方へバックステップして攻撃を回避。そして地面に刺さったノイズたち目掛けて盾を投げつける。ブーメランのように回転しながら宙を舞う盾はノイズたちを次々と倒し、最後には意思があるかのように私の元へと戻ってくる。

 よし、まずまず……って、空から通り抜けようとするなこらぁ!

 

(そっち)も通行止めだよ!」

 

 ──空分かつ巨壁(スカイ・ウォール)──

 

 地面へと盾を突き立てる。すると今度は先ほどとは逆、空へ向かって伸びる灰色の壁が、空から私を無視して通過しようとするノイズの進路を阻む。

 私を無視していこうだなんて100年早いよ! こっちはお邪魔ギミック(こういう)系の技をかなり特訓したんだから!……まぁ、弦十郎さん相手だとほとんど紙装甲なんだけどね。

 

 

 

 うん、意外と戦えてる。

 ノイズの数もだいぶ減ってきたし、ラストスパートかけて一気にやっちゃおうかな。

 

「あ、でっかいのが来た」

 

 なんて考えていると、今までのノイズを優に越す巨大な芋虫型のノイズが現れたではないか。このノイズは強襲型(ギガノイズ)という、非常に厄介なノイズの一体だ。

 なぜならこいつは……あーあ、やっぱりリバースしちゃったよ。やだねー、嘔吐物が小型ノイズになるなんて。

 

 えーと今吐き出したノイズがひーふーみー……うん、数え切れないね。多分100くらいいくかなぁ……。

 

「さて、初陣にしてはちょっと激しい洗礼だけど、頑張りますか」

 

 新たに吐き出されたノイズたちに向かって駆け出し、盾を駆使して蹴散らしていく。

 けどやっぱり数が多い! それに次から次に出してくるし、終わりが見えないんだけど!

 

「やっぱり、あのデカブツを先に片付けないとダメか」

 

 けど防御技がほとんどの私にとって、あのデカさのノイズを倒すのは少し骨が折れる。でもこのまま際限なくノイズを出し続けられるわけにはいかないし。

 ……仕方ない、ちょっとだけ体を張りますか。

 

 盾を地面に突き刺すと灰色の光が盾全体を覆い始め、そして正面に光の球体を模したエネルギーが収束する。

 

()()()、お前たちの攻撃」

 

 ──反撃の光(リフレクト・レイ)──

 

 収束したエネルギーを解放。レーザーのように放たれた光は、ギガノイズをめがけて一直線に進み、その巨大な体を貫き風穴をあける。

 体を穿たれたギガノイズは断末魔をあげ、小型ノイズ同様に炭化すると煤へと還る。

 

 これが私の持つ数少ない攻撃技。この盾で受け止めた衝撃を吸収し、数倍にして相手に返す技。無論、吸収すればするほど威力は上がっていくわけで、理論上 際限なく上昇するのだとか。

 結構吸収したとはいえ、小型ノイズの衝撃でさえもギガノイズを訳無く屠る威力まで上げることができるのだ。私自身、かなり強力な技だと自負している。

 

 でも強力なのにはわけがある。何を隠そうこの技、かなりのデメリットがあるのです。

 

「〜〜〜〜っ‼︎ 思ってた以上に痛いッ」

 

 技を放つと同時に、体の中を駆け回る激痛。これこそがこの技の持つデメリット。

 それは返した威力の幾らかを自分にも与えると言うもので、威力を上げれば上げるほど反動はすさまじいものになる。まさに自傷技。

 なんでこんな設計にしたのかなぁ! もうちょっと女の子に優しい仕様にしてほしいよね、まったく!

 

 でも体を張った甲斐もあり、ギガノイズは消滅。あとは残った小型ノイズたちを片付けるだけ!

 

「さぁ、ラストスパートいこうか!」

 

 地面から盾を抜き、私は残りのノイズを始末するために駆け出した。

 

 

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