知っている方はどうもこんにちは。新作始めました。
知らない方はどうぞよろしくお願いいたします。
粗筋に書いてある通り、女主人公に比較的よっていたり、いじめ等を示唆する描写が存在します。苦手な方はブラウザバックを。
それでは”独りと一人の出会い”をどうぞ!
学食で昼食をいつも通り数人で取り、のんびりと廊下を戻って教室まで戻る。
散々学食で盛り上がったのと、次の授業への憂鬱さからかポツポツと喋るにとどまる。
そしていつも通りクラスの違う友人数人と別れる。
「そんじゃあまた、放課後」
「おうよ〜」
教室に入ってすぐの机に弁当を放り出す。そこかしこで屯して話し込んでいるのを尻目に廊下へ再び歩を進める。三階の中庭に通じる廊下を歩き、透明なガラス扉をゆっくりと開けると少しばかり肌寒くなって来た秋特有の風が駆け抜ける。
そんな中、中庭の端っこにいくつか存在するベンチの一つに腰を下ろし、音楽プレイヤーを起動する。最早癖になりつつある何時もの行動。誰にも気にされずにのんびりと過ごすのは中々に気分が良い物である。
そんな日頃と変わらない日常を過ごしていると突如として耳慣れない声が後からした。
「あれ……同じクラスの平川君?」
「ん?そうですけど……」
そこには特に面識があった覚えもなく、記憶にない一人の少女が佇んでいた。
一応の礼儀としていくら面倒くさくても返事を返すようにしているが、態度はだらしなく、上半身を横に向け背もたれに手を乗せて声の主をとらえる。
「え〜っと、私は山理由佳子です」
そう言って自己紹介をする彼女はストレートのロングヘア。
体格も余り大きくなく、むしろ女性の中でもやや小さい方だろう。その体格故の可憐さと言うべきか、華奢さと言うべきものを感じられる。
「はぁ。それで俺に何か用です?」
元々ここを通る人は少ない上に、普通ならそこら辺に人が居ても素通りしてしまうだろう。
それなのに彼女はわざわざ声をかけて来たのだから何か理由があるのだろう。
「いや……一人で座ってたから何やってるのかなと思って……聞いたらダメだったかな?」
随分と歯切れの悪い言い方。同級生だと分かっているのに不思議な距離を感じる。
「俺は特に何をしてる訳でもなくボ〜っとしてるだけだ……」
「こんな所で?」
こんな所で……か。確かにもう11月初旬。こんな時期に態々暖かい教室から外に出る酔狂な人は極々少数だろう。
そしてほとんどが学食か教室に居るせいでここを通る事もまた珍しいのだ。
「そう。こんな所で」
「あっそうだ。折角合えたんだから何か悩んでたりするんだったらさ、私で良ければ話してくれない?もしかしたら何か手伝えるかもしれないし」
ほぼ初対面の人間にこんな事を言える人が居たとは驚きだ。
「いや。別に俺はここに来るのが日課みたいな物だから気を使わなくて良い。
何より少しは一人で居た方が色々良いしね……」
そう言ってふと横見ると幾分か下を向いて俯き陰ったような表情をしていた。きっと本人の中で何か有ったのだろうがとんと見当が付かない。
「……色々……一人……」
何やら小さく呟いているがほとんど聞き取れない。しかしそんな珍しい者同士のちょっとばかり不思議な、それでいて何処か哀愁を漂わせそうな会話すぐに終わりを告げる。
ふと時計代わりにもなる音楽プレイヤーの液晶画面を覗き込むと12時55分を報せていた。
「そろそろ授業だから俺は戻るぞ」
「え……あっうん……」
そういって立ち上がると彼女は腑に落ちていないような、どこか陰りの表情をしたような気がした。
しかし今のはなんだったんだろうか。特に何かを言ってくる訳でもなく、ただ単に話しかけて来たという感じでも無かった。
何処か中途半端。釈然としない態度。正直何が何やらわからない。良くわからないからさっさと頭の隅へと追いやる。
廊下に入ると瞬く間に喧噪に包まれ、そこらをうろついてる他の学生と変わらず授業へと準備を進めるのだった。
90分と言う大学と同等の長さの授業が終わる。
授業から開放されたという事実から教室の空気が弛緩し、ざわざわと喧噪を取り戻して行く。
再レポートを一刻も早く無くそうと足早に教室から飛び出す者。授業の疑問点を聞きに行く真面目な者や、大きなバッグを抱えて部活へと向かう集団。だらけきって机や椅子に寄り掛かりながら話し込む者。
そんな中教科書もノートも全部ロッカーにしまい込んでさっさと帰路に着く。
うん。どっからどう見ても超ボッチ。それでも同じゲームをやり込む友人も、ノートのコピーやレポートの助言に、テスト対策をする友人も数人は居るからボッチではない。
実際のところ一人の方が気楽だし、自由気ままに過ごせるから結構な割合で一人だけの事が多い。
駅近くのコンビニでおやつ代わりの軽食を買って食べながらのんびりと駅まで向かう。駅に着けばポケットから定期を出して改札を通過してホームまで降りる。
夕方のホームにはちらほら学生も見受けられるが見知った顔は無いからスマホを眺めながら電車を待つ。
すると反対側に電車が入ると同時に、こちら側も到着のアナウンスが入って電車が滑り込んでくる。
乗り込むべく顔を上げると如何にも今時の高校生といった雰囲気をした女子の集団が話し込んでいるのが見えた。
正直あんなのが横に居たらさぞ喧しいだろうなと思いながら人気の少ない車内に乗り込んで適当な椅子に座る。ガクンと大きな振動とともに電車が加速してあっという間に一駅隣の終点に到着する。
階段を降りて改札を通り過ぎて人でごった返す連絡通路を抜け、さっさと乗り換えの電車に乗り込んで席の争奪戦に勝利しリュックサックを抱え込んで最寄り駅まで音楽を聴きながら寝て過ごす。
そんないつも通りの帰り道、近くに一人の少女が居る事に気付かなかった。
そして双方ともまさか自分達が物語の主人公になるなど考えるはずも想像出来るはずもなかった。
読了ありがとうございました。
数年間も懐で温め続けたせいで、めちゃくちゃな面が見られるかもしれませんが平にご容赦を。
この作品は一部書き貯めなので比較的早い頻度でお届けできると思います。それではまた次回お会いしましょう!
アデュー!!