1117字
プロローグ
あれからどれだけの時を過ごしただろうか。
10から先は数えると陰鬱になった。
100から先は数えるのが億劫になった。
1000から先は数えなくなった。
過去を振り返れど後悔は消えず。
未来を思えど希望は見えず。
これを生きていると形容するには些か不可であり。
死んでいると表現するには少し足りない。
これはそんな俺の物語。
─────────────────────
と表現したは良いものの、この千年ほど……といっても最後に数えたのが千なので正確にはそれ以上……あちこちを彷徨いては時折元都市帰ってくる、というのを繰り返している。
流石に千年も経てば変わるもので、建物などは全て風化してしまい、今では立派な竹林が出来ている。俺はそこに所謂日本家屋を立てて拠点にしている。
「朧 また出掛けるの?」
縁側に腰掛けて竹林を眺めていた時、話しかけてきたのは因幡てゐ 白いうさ耳に黒い髪、赤い目の幼女詐欺師兎妖怪だ。こいつはここが竹林になり始めた辺りからいつの間にか住み着き始め、ここらの妖怪の中でもかなりの長命らしい。俺は出自が特殊なため枠には当てはまらないが、こいつは明らかに長生きし過ぎてる気がする。本人曰く「健康に気を使ってきたから」らしい。
「あぁ、また京が移ったらしいからな。期待はしてないが一応な」
俺は未だに月へ行く方法や月の住民の情報を集めていた。最も有力だったのは浦島太郎だろうか? 老衰によりイマイチ要領を得ないものだったが、確実に時代を凌駕したものが出てきたときは一歩前身出来たと思った。 何せ月と地球は完全に絶たれてはいなかったのだから。
「朧の人探しは何時になったら終わるのかな〜」
俺と同じように縁側に座り、足をブラブラとさせて同じように竹林を眺める。しばらく眺めていると、てゐが思い詰めたように問いかける。
「……もし見つかったら、朧はここからいなくなっちゃうの?」
長生きする妖怪で、忌み嫌われているのは孤独だ。いくら強い妖怪でも孤独には打ち勝てない。だからこそ知能があるものは温もりを求める。
「仮定の話は意味がないが……もし見つかったらここに住むのもありかもしれないし、お前を連れていくのも良いかもしれないな」
そう聞くと、てゐは嬉しそうにはにかむ。
「そっかぁー」
最初こそ様々なイタズラを仕掛けられたが、永い時を過ごす中でこいつとは兄妹見たいになっている。俺が長い間生きてこられたのはこいつのおかげもあるかもしれないな。
「……ありがとな」
なにが?という顔をしているてゐを放置し、京へでる準備を整える。 先程期待はしてないと言ったが、実は一つ気になるものがある。
竹取物語 竹から生まれたかぐや姫が、最終的に月に帰ってしまう話。
もしかしたら、あるかもしれないな。
次回 遂にアイツが登場