作者「いやほんとごめんなさい(いつから序、中と来て終が次にくると錯覚していた?)」
朧「本音と建前逆だぞ」
「かーくー」
「はいはい」
暇だ。
私は赫の背中にもたれかかり、顎を肩に乗っけて赫の名前を呼ぶ。──赫の背中は私のお気に入りの場所だ。
その赫はというと朝御飯の準備中。手伝わないのか、だって?切る程度ならともかく料理は下手だ。以前手伝った時、料理は黒ずんだ何かになった。赫は苦笑しながらも、美味しいと言って食べてくれたのだが、味は壊滅的だった。
「そういえば、最近朧見ないね」
「ああ、彼なら僕みたいに護衛の仕事を受けたらしくてね。多分そのせいで手が離せないんじゃないかなぁ」
護衛、か。赫は私の事をどう思ってるんだろうか? ただの護衛対象は無い……と、思いたい。では妹? まあ未だに子供扱いされてはいるが、それは……すこしモヤッとする。
じゃ、じゃあこい……
「邪魔するぞ」
噂をすればなんとやら。甘い思考をぶった斬るように朧がやってきた。
「おはよう朧」
「そういうのは普通戸を叩いて許可をとってから言うもんじゃないかな……おはよう朧君」
「この時間ならお前らは起きてるだろう?」
と、至極当然のように居間に上がって席に着く。普通なら図々しいことこの上ないが、彼は毎回飯を貰う代わりに色々と食材を置いていく。今日は私の好きなタケノコのようだ。
「起きているからと言って、妹紅が着替えてたりするかもしれないじゃないか。覗こうものならコブラツイストを掛けてやる」
「別に興味もない」
む、そうズケズケと言われるとすこし落ち込んでしまう。確かに口調は男っぽいし、お淑やかさもない。む、胸も薄いし……
「ほほう、妹紅に女の魅力が無いと申すか」
「別にそこまで言ってねぇだろ」
「ではやはり興味があると。あぁ!友人の毒牙から妹紅を守らねば!」
「……一発殴っていいか。全力で」
「やめてくださいしんでしまいます」
と、馬鹿なやり取りを尻目に私は朧が持ってきたタケノコを保管場所に運ぶ。また少ししたら私の大好物であるタケノコ料理を赫が作ってくれるのだろう。そう思うと頬が緩む。
…………甘え方といい、これが未だに子供扱いされる理由かな?
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「あなたがたの情熱と、想いの深さから私は五つの難題を出しましょう。これを成し遂げた方こそ、私と結婚するに相応しい」
多治比嶋殿には天竺にあると言われる
仏の御石の鉢を。
阿部御主人殿には燃え盛る炎にも耐える
火鼠の皮衣を。
大伴御行殿には龍の頸にあるとされる
龍の頸の五色の玉を。
石上麻呂殿には燕が産むとされる
燕の子安貝を。
藤原不比等殿には蓬莱山に生えるという
蓬莱の玉の枝を。
「期日までに私に差し出した者を、私に足る夫と認めましょう」
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「はぁ、少し前から思っていたがお前はだいぶ性格が悪いな。ありもしない物をどうやって持ってこいと」
「だってこうでもしないと諦めないじゃない? 偽物を持ってきて失格になるか、諦めてしょぼしょぼ帰るか。二つに一つよ」
そもそも結婚する気が無いのだろうな。
というかみんな正妻は良いのだろうか?まあ貴族は女を囲うのは一種のステータスだから良いのだろう。
輝夜には言ってないが妹紅の父親もいたな。あの人は悪人じゃないが善人でもない。蓬莱の珠の枝といえば根は白銀、茎は黄金、実は白玉でできている木の枝のこと。彼は作ろうと思えば作れる立場にいる。たしか偽物を作って、職人が給料を払えと輝夜の屋敷まで要求しに来てバレていたはずだが。
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現在、輝夜の屋敷の庭に三人の男がいる。
それぞれ名を、多治比嶋、阿部御主人、藤原不比等、という。
その周りには使用人や見物人で溢れかえっている。
「かぐや姫よ、二人ほど来ていないのですが?」
多治比嶋が質問する。
「大伴御行殿は結局、龍の頸の五色の玉を手に入れられずに辞退。石上麻呂殿は燕の子安貝を取ろうとして
輝夜がスラスラと答えると、残り三人の顔が喜色に染まる……いや、不比等氏だけは少し固い。
「では、まず仏の御石の鉢を」
多治比嶋は前に出て、得意げな顔で懐から手のひら大の黒い鉢を取り出す。
「私は天竺まで行き、苦心の末これを手に入れました」
しかし、輝夜はこう答える。
「本物であれば、鉢は輝くはずです。しかし、これにはその様子はない。つまりは偽物です。 次、火鼠の皮衣を」
多治比嶋は悔しそうな顔をしつつも、何も言わず引き下がる。続いて阿部御主人が前へでて、使用人に一枚の皮を持ってこさせる。
「これは大陸のさる商人から手に入れたものでございます」
しかし、輝夜はこう答える。
「これが本物であるならば、燃える道理は無いでしょう。私付の陰陽師に燃やさせてみましょう」
と、庭で控えていた俺に自称火鼠の皮衣を渡してくる。俺は妖術(とバレないように偽装した陰陽術)を使用して派手に燃やす。
あまりに良く燃えたので、これを持ってきた本人は腰を抜かしていた。
「これも偽物でしたね。最後、蓬莱の珠の枝を」
輝夜は表面上は冷静に促す。
最後に残った不比等氏は、落ち着いて使用人に命令を下す。その使用人が持ってきた物をみて、輝夜は動揺したように眉を少し動かす。
「こちらが、蓬莱の珠の枝になります」
一見は本物のように見える。実際輝夜も内心焦っているだろうし、翁は寝室を整えに姿を消した。
しかし、輝夜が口を開こうとした時、乱入者が現れる。
「不比等様!いい加減給金を払ってくだされ!」
「そうですぞ!我ら職人一同、まともな飯を食っておりません!」
それは蓬莱の珠の枝を作った職人達。おそらく材料費は払えても給金までは手が回らなかったのだろう。
輝夜は一瞬、勝ち誇ったような顔をしていたが巧妙に表情を整えると、こう告げた。
「残念ながら、私の出した難題に答えられる殿方はいらっしゃらなかったのですか。あぁ、ごめんなさいおじいさん。私はまだまだお嫁に行けそうにありませぬ」
わざとらしく落胆した声で告げると、屋敷の奥へと戻って行った。
「やあ、朧殿 最近妹紅のとこで見ないと思ったらこんな所にいたのか」
「どうも、不比等氏」
あの後、ほとんどの貴族や見物人帰る中、藤原不比等が話しかけてきた。
「いやぁ、結構良い線まで言ったと思ったんだけどね」
「あれは自業自得でしょう。それに女性に紛い物を贈ってなんになるというのです」
以外にも彼は落ち込んではなく、むしろ燃え上がっているようだ。しかし、多くの人の中で紛い物とわかって物を出し、それを自分のミスで見破られるのだから。彼はしばらく謹慎するそうだ。
「恥の上塗りは避けたいからね。少し大人しくしとくさ」
彼は愉快そうに笑っていた。
作者の段取り不足のせいなんだよね⋯⋯
次回は平城京編 最終だと思います。 たぶん
あ、あと基本的に出来たら次の日の朝に上げることにします。 例外あり