二話同時です。こちらは後編
こんなガバガバな構成で投稿する作者を許して
「姫様 なんでそんなにニヤニヤしているんですか」
私はこの後の作戦を考えて、少し気落ちしている。
作戦は至ってシンプル。兵士たちの気を逸らして上空五千メートルからその身一つで飛び降りる。
この牛車擬きは防音、光学迷彩、反重力スラスター、酸素フィールドなどなど無駄に機能を積んではいるが、速度はないため追いつきは出来ないだろうし、既に姫様も私も不老不死である。ミンチになっても時間をかければ復活するだろう。めちゃくちゃ痛そうだが。
「ふふふ、いやね。永琳が驚く顔が楽しみだわ」
何が楽しみなのか。彼女は小さい時からお転婆でよくイタズラをして叱られていたが、この顔はそのイタズラの成功を確信している顔である。
と、その時 牛車擬きの外が騒がしくなる。
すこし外を覗いていると、雲の中なのだろう。周りの様子は見えない。
しかしながら兵士たちは戦闘に入っているようで、牛車擬きを囲うように外側を警戒している。
こんな高高度で一体何が襲ってくるというのか。
そのとき、すぐ真横で姫様以外の気配を感じる。
いつのまに、そう思う前に身体が勝手に動き、忍ばせていた短刀を刺そうとする。しかし、短刀を持つ手を捕まれ防がれてしまう。
「永琳、感動の再開直後に短刀を刺そうとするのは流石に無いと思うわ」
姫様に言われて初めて気がついた。
「あー……久しぶりだな、永琳」
懐かし声が聞こえる。
最後に聞いたのはもうどのくらい前だったか
そこには、確かに朧がいた。
「久しぶり、朧」
今の状況をも忘れて飛びついた。
「もう離さない」
彼も私を離すまいと抱き締めてくれた。
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「はいはい、二人の世界に入るのは終わってからよ」
輝夜の声で戻ってきた俺は名残惜しいながらも抱擁をとく。まだ少し赤い永琳は雰囲気を誤魔化すように俺に聞く。
「朧、どうやって牛車を見つけたの? 一応光学迷彩を積んでいるから地上から見えないはずなんだけど。 それにどうやって姫様と知り合ったかも教えてもらうわ」
後半は少し目付きが鋭くなっていた気がするが、やましいことは無いので素直に話す。
次に、俺は今後の予定を聞く。
「とりあえず地上に戻ってから、落ち着ける場所……人が寄り付かなくて、結界的なもので護られている場所が良いわ。心当たりは?」
「ある。迷いの竹林って言って、今俺が拠点に使っているんだが、離れたとこに人里はあっても深部までは入ってこないし、入ってこれないように竹林全体を迷いの術を掛けたりしている。もっと強力なものに張り替えても良いだろう」
永琳は思案顔だったが、輝夜から肯定の声が出る。
「あら、いいじゃない。私は竹林は好きよ」
「……そうですね。姫様が言うなら良いでしょう」
ところで、さっきから永琳はなぜ輝夜の事を姫様と言っているんだ?と聞いてみたら。
「あぁ、永琳ってば。私は蓬莱の薬を飲んで処刑になってしまったのだけど、永琳は自分が無罪なのは納得いかないってね。罪滅ぼしの為に私の従者になりたいってさ。別に気にしてもないのにね」
とのこと。
「なあ、永琳。外の兵士は皆殺しで良いのか?」
「それは最終手段よ。一番は誰にも気付かれずにここから出ることよ。貴方が来た時みたいにね」
なるほど。俺は丁寧に妖術の式を組み、辺りに雲に見せかけた霧を出す。結構な広範囲に広めるために多めに放出しておこう。
「……無茶苦茶ね」
とは輝夜談である。
そうして辺りに浸透させたら自分達の周りの光の屈折を曲げて、擬似的な光学迷彩の完成だ。
「行くぞ」
俺は二人を小脇に抱えて、牛車を飛び降りた。
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迷いの竹林、我が家の縁側にて。俺は今回の顛末をてゐに説明していた。
夜も遅く、永琳と輝夜は精神的にも疲労していたため、先に寝かせた。紹介するのは明日でも遅くない。
「へー 今回はそんなことが……ついに朧の人探しも終わりかー……あの二人のことだけど、そもそも家主は朧なんだし好きに住まわせたら?私は余程酷くない限りは気にしないし」
くぁーっと欠伸をしながらも俺の話を聞き終えたてゐは部屋で眠るべく、縁側を後にする。
俺もいい加減寝るか、と立ち上がったら寝間着姿の永琳が縁側にやって来た。どうやらてゐが立ち去るのを待っていたらしい。
「どうした?」
俺の問いかけには答えず、無言で正面から抱き着いてくる。何も言わずに抱き締め返すと、永琳が独白する。
「……私は、不老不死よ。たとえ文明が滅びようとも、地球が崩壊しようとも、宇宙が消滅しようとも生きていられる。それは最早呪いよ。私はね、怖いの。貴方が妖怪であっても寿命という概念からは逃れなれない。いつか貴方の死を看取る日が来るかもしれない。それが怖いのよ」
そういう永琳は震えていた。俺はより強く抱き締めてこう囁く。
「だったら俺が不老不死になればいい」
それを聞いた永琳は首を横に振る。
「不老不死とは魂魄の魂を本体ともって不老不死と化すもの。妖怪は人間と違って魂の依存が強い。成功すればいいけど、失敗して魂にどんな副作用で何が起こるか分からないのよ。急死するかもしれないし、魂そのものが消えてしまうかもしれない。それだったら私は緩やかな死を選ぶ」
「…………それでも、永琳を悲しませるぐらいなら」
永琳は、言葉を重ねる。
「気持ちは嬉しいわ……いつか、私の踏ん切りが着いたら貴方は受けてくれるかしら?」
「あぁ、勿論だ」
俺は、あの時のように額にキスを落とす。
それだけで永琳は赤く茹だってしまった。
「も、もう……朧ったら」
「さあ、もう夜も遅い。寝よう」
俺が手を離すと、残念そうに永琳も手を離すが、イタズラを思いついた子供のような顔をしながら右手に全身を密着させてきた。
「………私が寝るまで、手を繋いでてくれないかしら?」
残念ながらツクヨミ様と赫に鍛えられた俺の鉄仮面はその程度では動揺することは無い。
「あぁ、いいぞ。なんなら抱きしめておいてやろう」
勿論後半は冗談なのだが、永琳はどうやら真に受けたらしい。耳まで赤く染めて混乱していた。
そして冗談だ、と言おうとした時。
「その、是非お願い……」
あんまりにも可愛くて、俺が少し赤くなった。
このあと滅茶苦茶快眠した。
平城京編 これにて終幕
最後は結構難儀した。
閑話とかいっぱい挟んで幻想郷編へ
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