話数的には遅いはずなのに文字数的にはそこまで遅くないとかいう不思議
「そう言えばまだあなたの名前を聞いてないわね」
名前、名前か。
前世の名前はもう忘れてしまって、実質名無しだ。
「名前は、無いな」
その言葉に、少し永琳は思案顔で沈黙する。
「
朧か。霧に紛れ敵を狩る月迅竜にはぴったりな名前だな。
「うん、いい名前だと思う。今日からそう名乗るよ」
「そう。気に入ってくれたなら良かったわ」
永琳は初めて嬉しそうに笑った。
それは思わず見惚れてしまうぐらい綺麗だった。
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「さて、朧 あなたには二つの選択肢があります」
名前を貰ったあと、俺の住処である森……都市では第三地域と言うらしいが、その場所について俺の知る限りの情報を提供した。といっても大まかな地形や妖怪の種類位しか分からなかったが、それでも十分だという。
情報を開示し終えたあと、永琳から二つの選択肢を提示された。
元の住処に戻るか、都市で暮らすか。
どちらを選んでもお互いメリットとデメリットがあるため、どちらかを俺が決めて欲しいとの事だ。
まず前者はメリットもデメリットも少ない。元に戻るだけだ。手土産も持たせてもらえるらしいが、せっかく都市で人間達との交流の切っ掛けを掴めたのでそれを手放すのは論外だ。
後者のメリットだが、俺は人間と交流持てて、今はもう懐かしい文明的な生活が送れる。まあ色々と制限をかけるらしいが。デメリットとして、妖怪とバレたら何が起こるか分からないとのこと。追放だけならまだ可愛いもので、拷問 極刑 人体実験 etc...
でも、もう独りはいい。
「俺は都市で生活したい」
「この都市では妖怪のあなたはきっと窮屈な思いをする。だって都市にとって妖怪とは明確な敵だから。それでも、いいの?」
「あぁ、大丈夫だ。独りでいるのはもううんざりだし」
「……わかったわ。じゃあ今日からあなたはここで暮らすことになるから、色々と覚えてもらうことがあるわ」
「わかった……ん?ここって永琳の家じゃないの?」
「ええそうよ?」
「不味くないの?」
「何が?こっちの方が色々と便利よ?」
「いやそうじゃなくて……俺は男で永琳は女だろ?永琳は美人なんだからもっと危機感持たなきゃ」
「びじっ……」
何やら耳まで赤くなって俯いている。褒められるのに慣れないのだろうか?
「と、ともかくあなたの家はここです。私は仕事があるので、細かいルールは後で一緒に決めましょ!」
と、早口で捲し立てると部屋から出ていってしまった。
朧月(おぼろ-つき)霧や靄(もや)などに包まれて、柔らかくほのかにかすんで見える春の夜の月