彼は月迅竜である。   作:一般的な犬

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月に移住する理由
穢れ(当小説では自然に放出された妖力が変質したものと解釈)を体に溜め込むと、寿命が削られる。都市ができたばかりの頃は妖怪は少なく、同じく穢れは少なかったのだが、人が増えるにつれ妖怪も増加。結果穢れも増加し、長寿を維持するために穢れなき月へと移住することになった。

今回ははっちゃけた


告白

「立食パーティー?」

 

私は多分怪訝な顔をしていた。まさか朧の口からそんな単語が飛び出るなんて思っていなかったから。

 

「そ、さっきツクヨミ様から招待状が届いた。月移住計画の準備はほとんど完了し、後は 軍部 民間人 上層部の順にロケットで送り込むだけらしいからな。日付は明日 前祝いってやつだな」

 

「……あなたは出席するの?」

 

そう聞くと、彼は難しい顔をした。

 

「俺の分もある……けど俺が出ても百害あって一利なしだろう。無駄に波風を立てる必要は無いはずだ」

 

それもそうだろう。自惚れでは無いが、私は都市では上位の地位にいて、それなりに美人だ。裏返せば男共の欲望の標的となりやすいということだ。

 

立食パーティーに私が出席すれば、あるのは舐め回すような視線か、嫉妬の視線か、あるいは縁談などだろう。

 

そこに彼という爆弾が入ればどうなるか。私の近くにいる男と言うだけで好機、嫉妬、恨み、妬み。様々な感情が織り交ぜになって私や彼に降り注ぐことは想像に固くない。もしかしたら素性を調べられるかもしれない。

 

「……そうね、考えが足りなかったわ」

 

彼には行くメリットが無い。

彼と一緒に出たいというのは我儘だ。

 

「…………そういえば、俺はどうすればいいんだ?地球に残るのか?月に行けるのか?」

 

自責の念に囚われかけた時、追い討ちをかけるように避けていた話題を振られた。

 

月移住計画 もちろん彼の席はある。

 

 

しかし、彼は妖怪で、私は人間。

 

きっと月は今よりもずっと窮屈な生活になるだろう。

 

私の我儘で彼をそんな場所に押し込みたくない。

 

これも我儘だ。

 

彼と一緒にいたいという我儘だ。

 

 

 

何時から彼のことを意識したのだろうか。

 

もしかしたら一緒に暮らす中で彼に惚れたのかもしれない。もしかしたら最初に出会った時には既に心を奪われていたのかもしれない。

 

彼が愛おしい。

 

出来ることならば月に行っても一緒に暮らしたい。

 

でも、彼が私をどう思っているのか分からない。

 

拒絶されるのが怖い。

 

今の関係が壊れるのが怖い。

 

でも、今の関係も、もう少しで終わってしまう。

 

嫌だ。そんなのは嫌だ。

 

初めて心から愛せた(妖怪)なのだ。

 

彼をいつまでも愛して、彼から愛されたい。

 

 

 

 

この関係が壊れるのは嫌だ。嫌だ。嫌だ 嫌だ いやだ いやだ いやだ ……

 

 

「永琳」

 

 

彼が錯乱していた私を優しく抱き寄せて、頭を撫でてくれる。

 

「俺は、永琳に迷惑をかけたくない」

 

彼は優しい。だから、私は甘えてしまう。

 

「迷惑じゃ、ない。私は、出来るなら ずっと あなたと 居たい。絶対、離れたくない」

 

詰まりながら、ついに、言ってしまった。

 

怖い。

 

拒絶されるかもしれない。

 

「……永琳」

 

あぁ、聞きたくない。

 

「本当は、俺は永琳と一緒に居たい。君を大切にしたい」

 

返ってきたのは 肯定。

 

「あっ……あぁぁ、ほんとうに? わたしでいいの?」

 

「何度でも言うぞ。永琳、俺は君が大好きだ」

 

今まで胸につかえていたものが取れた。

 

「っ……うれしい。これからもよろしくね」

 

彼を感じようと抱きしめると、涙が溢れてくる。

 

心が満たされていくのを感じる。

 

 

彼は抱きつく私を撫で続けていた。




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