アインツベルンのバーサーカー、真名を茶渡泰虎というらしい。   作:サンゴの友達

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始まる前に入れ忘れた要素を突っ込んだらこんな物が出来上がりました。

繋ぎと矛盾がない様にということで…

次からは冬木に移動します。


閑話休題#1 準備

「……多いな」

 

茶渡泰虎は己の前に置かれた資料の山に思わず嘆きを吐露する。此処にあるのは主人(イリヤ)から渡された聖杯戦争に関する情報だ。規格外として召喚された茶渡泰虎は聖杯からのバックアップが不完全であった。特に其のシステムに関してはハナから抜け落ちている。

 

 

「…言い出したのは俺なんだが、いかんせん数が多いな」

 

 

不測の事態に備えて知識面でのサポートを願い出た所、言伝を受けたリーゼリットが運んで来てくれた。……力自慢の彼女が多少よろける程度には膨大な量の紙と本であった。

 

これでも外界との関わりを持たないアインツベルンの資料は少ないという。

 

 

「…ヤストラ、進んでいるかしら?もう長い間引きこもっているようだけれど」

 

 

うず高く積もった資料の先から聞き慣れた声が聞こえる。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの姿は残念ながら紙束に遮られて見えない。

 

 

「…ああ、主人(マスター)か。そうだな…基礎知識に関しては把握出来たと思っている」

 

「…本当にその呼び方で通すつもり?……まぁサーヴァントとしての自覚を持ってくれる事は有り難いけどね」

 

 

最近は自主的にイリヤスフィールを“マスター”と呼称している。サーヴァントらしい振る舞いをしようという茶渡なりの気遣いなのだが…本人からは不評だったりする。

 

 

「何か分からない処があれば教えるけど?」

 

「そうだなぁ、強いて言うならば知識を得る毎に自分の存在がどれだけ特殊で異端なのか…訳が分からなくなってくるな」

 

 

茶渡の召喚されたクラス“バーサーカー”は理性を封じられている代わりに大幅なステータス上昇を可能としている。しかし茶渡泰虎は例外的に理性を失わずこうして本を読む事も可能である。他に同例があるのかは分からないがこの冬木の聖杯戦争においては例外だろう。

 

バーサーカーのデメリットとしては他にも宝具やスキルの一部使用不可という制約があるが現在のところ茶渡泰虎にはその影響が見られない。“右腕”は言わずもがなまだ使っていない“左腕”に関しても問題なく使える様だった。

 

何よりサーヴァントとなった茶渡泰虎の身体能力は生来の肉体よりも強力になっている。本来英霊の型落ち(ダウングレード)として存在するサーヴァントだが、元となった英霊が戦闘力を持たない場合サーヴァントとなる事で強靭な肉体を手に入れ反対に強化されるという。

 

いくら戦う力があるとはいえ、一般人である茶渡泰虎はこのパターンに当てはまる様だ。

 

 

「そう、ならそろそろ戦術訓練の時間だから準備して頂戴?今日は弓兵相手の模擬戦よ」

 

「そうか、今出る」

 

 

アインツベルンはホムンクルスという人的資源(リソース)を多く持つ為この様な事が出来る。一般的な魔術師より余程腕の立つ者ばかりなので非常に有意義な訓練となっている。

 

「…………」

 

「…?どうしたのヤストラ、さっさと出てきてよ」

 

「…すまん身動きが取れない、助けてくれ」

 

「え、ダサっ…」

 

 

最近はかなり砕けた会話を取っている。……心を開いてくれているのだと茶渡は思いたかった。

 

 

 

「今日はこんなものね。……ヤストラ、そういえば貴方に渡すものがあったわ」

 

 

広間での訓練の終わり、唐突にイリヤスフィールが話題を持ち出した。

 

 

「どうした?」

 

「貴方、霊体化出来ないでしょう?それに関しては特に問題ではないのだけれど、…顔が割れるのは問題だと思うの」

 

 

茶渡泰虎の体は本来サーヴァントのエーテル由来ではなく生身の人間である。故に霊体化出来ず姿を消す事ができない。

 

 

「確かに…か、しかし戦いは基本的に夜なんだろう?人の目はあまり気にしなくて良いんじゃないか?」

 

「昼に戦う可能性だってあるわ。…それに貴方は対魔力も持っていないし、魔術師の攻撃を避ける方法が無いのよね」

 

 

現代魔術師の攻撃をものともしない対魔力スキルは基本三騎士クラスでないと獲得出来ない。クラススキルとは別に固有スキルとして所持している場合もあるが茶渡泰虎にそれは無い。

 

顔が割れ、名前が割れ、サーヴァントの枠組みとして強化されているとはいえ生身の肉体であるならば呪術的な牙は茶渡泰虎には十分届きうるという可能性であった。

 

 

「だから貴方には認識阻害の魔術礼装を着けてもらおうと思うのよ」

 

 

アインツベルンは錬金術の大家、こう言った礼装作りは得意とするらしい。イリヤスフィールは「流石にアトラス院程ではないけれど」と前置きを置いたが茶渡には“アトラス院”がなんなのか見当がつかなかった。

 

 

「成る程、…顔を隠すならやはり仮面か?」

 

「そうね、そっちの方が“作り易い”し簡単だわ」

 

 

仮面は“隠す、欺く”という概念を持つため認識阻害等の魔術礼装の製作に向いているという。

 

 

「…で、それっぽいものを城から集めて貰ったんだけど。リズーー?」

 

「いっぱいあった」

 

ガチャガチャ音を立てて袋を抱えた従者リーゼリットが運んで来てくれた。

 

更に後ろから敷き布を持ってきたセラが広場に布を広げ、そこに仮面や兜が並べられた。

 

 

「沢山あるな、と言っても殆どが西洋兜だが」

 

「リズ、装飾品から取ってこないでよ…後で戻しておいてね」

 

「…………………がんばる」

 

 

どうやら手当たり次第にとってきた様で、廊下にあった甲冑一式からも取ってきたらしい。

 

感情を読み取り辛いリーゼリットであるが今の発言からは心からの“メンドクサイ”という思いを読み取れた。

 

 

「これなんてどうかしら」

 

 

イリヤスフィールが手に取ったのも西洋兜の一種であった。しかしアンティークとは違い、使い込まれた様な傷跡が所々にあり無骨な雰囲気を醸し出していた。

 

「これ、昔居た魔術師が鎧に魂を定着させようとした儀式で使った品らしいわよ。血の刻印みたいなのがあるけど洗えば綺麗になるし、儀式に使うだけあって素材としてもそれなりだわ」

 

小さな手でカンカンと叩きながら耐久性を確かめている。

 

「……いや、それは…大丈夫……なのか?」

 

「ヤストラって潔癖だったの?」

 

「いや、そうでは無いが……これはやめておこう!」

 

 

聞いた事がある様な無いような、とにかく茶渡は少しだけ怖かった。…主に版権的な意味で。

 

するとリーゼリットもイリヤスフィールを真似て仮面を一つ取り近寄ってきた。

 

 

「これ、つよそう」

 

 

渡されたのは白いホッケーマスクだった。

 

 

「………ないな」

 

薄汚れたこのマスクがなぜアインツベルンにあるのか甚だ疑問だが、魔術とは奇妙な世界だと茶渡は再認識した。

 

「ヤストラはこだわりが強いわね…正直姿形に関しては問題じゃないからサッサと選んで欲しいのだけど」

 

「……いや、大事だ」

 

 

版権はしっかりと配慮しなければならない。下手をすれば本人達を呼び出してしまうことすらこの世界では起こりゆるのだから。

 

 

「もう、……そういえばセラはどれがいいと思う?」

 

「………(わたくし)ですか?…………こういうもので宜しいかと」

 

ぞんざいに拾い上げたモノを茶渡に渡す。…茶渡は思わず目を丸くした。

 

「どうしたの?なにか固まっている様だけれど……うっわぁ、セラ、これ流石に悪趣味じゃないかしら?」

 

 

茶渡の腕を覗きこんだイリヤスフィールはセラのセンスを疑う様にジトッとした目で見つめた。

 

 

「いえ、お似合いですよ?」

 

白々しくそう宣うセラ。若干の嫌がらせである事は明白だった。

 

「もう!真面目にやってよね!…ヤストラ、やっぱりこの兜に…」

 

「……いや、これでいい」

 

 

瞬間場の空気が止まった。

 

 

「えっ?……いやいやそんな邪悪な髑髏みたいな仮面のどこがいいのよ⁉︎」

 

珍しく少し微笑んでいる茶渡を見てイリヤスフィールは酷く狼狽する。

 

「これで良いんだ、いや、俺はこれを使わせてもらう!」

 

 

そう言って佐渡は仮面を顔に押し当てる。サイズぴったりに収まったその姿でイリヤスフィール達を見つめる。

 

 

「どうだ、似合うか?」

 

 

褐色の大男はその双眸を白い骸の仮面に納めていた。異様に数の多い剥き出しの歯は獣性と邪悪の化身であり、その仮面の右半分は紅の紋様が幾重にも走っている。鋭い眼のスリットはまるで生者を嘲笑う悪魔の様にさえ見えた。

 

茶渡泰虎はそんな仮面に一番の親友の面影を見たのだった。また共に戦える、そんな気さえしてしまうほどにこの仮面は良く出来ていた。

 

殺し合いと言われている聖杯戦争。そこに立ち向かう自身を支えてくれる様な気がしたのだった。

 

 

「ヤストラ……」

 

 

イリヤスフィールと目が合う。彼女は仕方こちらを見つめながら口を開いた。

 

 

 

「怖い!!!」

 

 

 

その後一悶着起こしながらも茶渡泰虎は希望通りの仮面で礼装を作る事が出来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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