インドの奮戦と敗北、そして…   作:空社長

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chapter14 ガンジス川会戦

 

 

 

西暦2026年5月4日

 

 

 

 

 

中央アジア連合バングラデシュ管区

 

 

ガンジス川下流東側沿岸

 

 

 

 

 

『観測班より各部隊、BETA群5000を確認!先遣隊と思われます!』

 

 

 

『そう……戦車隊は制圧砲撃を開始して!』

 

 

通信に対し、蒼色のポニーテールの髪型をした少女は威勢よく命じた

 

 

『了解!』

 

 

バングラデシュ管区陸軍第2機甲中隊の中隊長も威勢よく返事を返し、砲撃を命じた

 

 

T-72LMやT-90LL主力戦車等が125㎜砲の砲撃を開始した

 

その砲弾はBETA群5000の先頭集団に次々とぶち当てられていく

 

彼らは精鋭であると共に、状況が安定しているからこそ、落ち着いて狙えていた

 

 

 

???「クリア……」

 

 

クリア「ん?」

 

 

クリアと呼ばれた青色の髪の少女はしゃがんでいたが、立ち上がり声の方を振り向いた

 

 

クリア「何、ラミ?」

 

 

ラミと言われた少女はクリアがまだ子供体型に対し、水色のベリーショートの髪型をしてスラッとした大人っぽい体型であった

 

 

ラミ「やっぱり……数が多いかなってね。」

 

 

クリア「……そりゃ、私だってそう思うけど…この後ろには30万もいる……片付けないと……」

 

 

ラミ「……」

 

 

クリア「……行くよ。」

 

 

クリアはラミから反応が無いのを確認して言った

 

次の瞬間

 

クリアを青白いオーラが包み込んだ

 

また、クリアに続いて、他の第6中隊の面々も青白いオーラに包まれていき、ラミも包み込んだ

 

これは戦闘準備として全ての能力が最大限に発揮できる状態である

また、各隊ごとにシンボルカラーが決まっており、その色によってオーラの色も変わる

統括軍第6中隊のシンボルカラーは青の為、オーラも青白いものであった

 

 

 

 

クリアは常人では不可能な速度で走り始め、手始めにランス型武器で戦車級の首筋を切り裂いた

 

 

クリア『続いて!』

 

 

クリアは第6中隊中隊長代理として、マントごと体を翻し、背後にいた戦車級をランス型武器で引き裂いた

 

 

 

直後、要撃級の黒い触腕が振り下ろされるも、横に転がる形で回避

 

その間に腰から二丁の銃を抜き、レーザーを連射した

 

 

要撃級を弱らせた上で立ち上がり、至近距離で破片手榴弾を投げた

 

 

その破片手榴弾は爆発し、要撃級は粉砕された

 

クリア「……っ!」

 

しかし、至近距離であったため、多数の破片を浴びた

 

四肢や胴体はしっかりと防備が施されていたものの、顔は視界確保と能力発動の為に全く防備されていなかったため、頬の数箇所を切り裂かれた

 

 

だが、クリアは全くそれを気にすることなく、戦闘を続けた

 

 

途端にイヤホンマイクのような通信機器で通信を繋いだ

 

 

クリア『レナ、やれる?』

 

 

レナ『準備オッケー、いいよ。』

 

 

レナと呼ばれた相手は同じく少女であった

 

ピンク色のツインテールの髪型をして、クリアよりもさらに幼く見える体型だった

 

 

 

 

クリア『なら、お願い。』

 

 

レナ『了解!』

 

 

連装レーザーライフル二丁と近接戦闘ナイフで戦ってきた少女は突然飛び上がり

 

 

レナ「艤装発現!」

 

 

その一言で少女の周囲には20㎜レーザーライフル、40㎜レーザーバルカン砲、76㎜速射砲等の一人の少女が持てるとは思えない量の武装があった

 

 

レナ「掃射!」

 

少女は自ら回転しながら、全周囲に攻撃を放った

 

無論、第6中隊のメンバーに当たらないように注意しながらではあるが

 

 

容赦なく上方よりレーザーの雨を降らされたBETA群は一気に3000体が沈黙する

 

 

 

 

クリア『シャーロット!』

 

 

シャーロット『はいっ!』

 

 

元気な声で返事を返すのは白髪のロングテールをした少女であり……

 

 

クリア「サンダーストーム、発動!」

 

 

直後、クリアは片手から荒れ狂う黒い暴風を発生させ、

シャーロットは何万ボルトかも分からない高電圧の電流を纏った巨大な球を発生させ、暴風の中に放った

 

 

すると、暴風と電流の塊を混ぜ合わさり、クリアはその暴風をBETA群の方に志向させ、BETA群を積乱雲とも化した暴風が覆いかぶさった

 

 

暴風の中に流れる高電圧の電流が、BETAすらも感電させていく

 

 

そして、暴風が晴れた時、強烈な焼き焦げた臭いが辺りを漂い、全てのBETAは黒く焦げ、動いていなかった

 

 

クリア「ふぅ……」

 

 

 

誰もが安堵していた

 

 

だが

 

 

『こちら、観測班!BETA群多数接近中!数は……数えきれない!』

 

 

クリア「来た……」

 

 

レナ「BETAの主力だと思うけど……」

 

クリアの傍にレナが降り立つ

 

 

クリア「そう。多分数は30万か、それ以上……」

 

 

レナ「…っ!」

 

レナは体を微かに震わした

 

 

クリア「レナ?」

 

その様子に気づいたクリアはレナに疑問を投げかけた

 

 

レナ「……怖くなってきた……だって、ジャイプールで私は……体を無茶苦茶にされた……」

 

 

その時、クリアは後ろからレナを抱きしめた

そして、クリアも体が微かに震えていた

 

クリア「レナ、もしもの時は私が庇う。だから……」

 

 

レナ「……分かった」

 

レナは自分一人だけが怖いんじゃないということを理解して、一言で返事を返した

 

 

その時、クリアの元に通信が入った

 

 

スターク『こちら、第16戦術機甲中隊中隊長スターク・ナンガム大尉!ウィンチェスター大佐より伝言、「民間人の避難を優先とするが、火力部隊は手が余る。そこで対BETA戦に有効なFW-3『グラント』を有する1中隊を派遣した。」以上!』

 

 

クリア『了解、感謝します。』

 

 

スターク『礼は大佐に言ってくれ!』

 

 

クリア『はい!では、第2機甲中隊及び、第16戦術機甲中隊は制圧砲撃を始めてください!』

 

 

バングラデシュ管区陸軍第2機甲中隊からは125㎜砲弾が再度連続で放たれ、戦車級の大群に向かう

 

 

オーストラリア=オセアニア連邦軍第16戦術機甲中隊は第6中隊の突入を援護する為、FW-3が有する120㎜電磁加速砲4門及び他多数の機関砲で突撃級に連続砲撃を開始した

また、背部の8連装ミサイルランチャーからは光線級に向けてミサイルを撃ち始めた

 

 

 

クリア「暴風!」

 

 

再びクリアが荒れ狂う暴風を発生させ、BETAの1部をはるか後方へと吹き飛ばす

 

 

 

その時、数十メートル上で爆発が連続的に起きた

 

 

クリア「何!?」

 

 

それはバングラデシュ陸軍第2機甲中隊がから放たれた炸裂徹甲弾が何かとぶつかって爆発していた

 

 

クリア「何と当たってるの?」

 

 

『こちら、第2機甲中隊!BETA群後方にこちらの砲弾に直接砲弾を当てて撃墜する奴がいる!未確認種だ!!』

 

 

その報告にクリアは不安を覚える……

 

 

だが、次の報告は安堵させるものだった

 

 

スターク『こちら、第16戦術機甲中隊!突撃級の完全掃討完了!続いて、戦車級の漸減に以降する。先の報告にあった未確認種だが見た目は重光線級だが、大きさが肥大化し正面には大砲のような突起が見られる、以上だ。』

 

 

クリア『了解。未確認種の撃破に選抜隊を編成します。』

 

通信回線を個人宛に切り替える

 

 

クリア『レナ、ラミ、奴を私達で……っ!』

 

 

その時、咄嗟にクリアはすぐ後ろにジャンプする

 

直後、元いた場所に大剣が突き刺さった

 

 

クリア『やっぱりやめ!こいつは……』

 

 

クリアは回避行動をしているはずなのに、身体めがけて大剣が振り下ろされ、それをランスで防ぐ

 

 

クリア「…兵士級……いや、違う……新型?……っ!」

 

 

クリアは推測を立てる間に回避行動を見誤り、右腕の1部を切り裂かれた

 

 

クリア「……腕が4つ……不利か……」

 

クリアは視覚だけの情報で判断した

形は兵士級に似ているが、腕が4本あり、そのどれにも大剣が握られており、この時点で手数において勝られていた

誰がどう見ても未確認種だった

 

 

 

クリア「くそっ!!……ぐぁ……」

 

最初の1本の大剣で狙われた両足を回避したものの、ランスでもう1本を防ぎ、さらにもう1本を強引に何も持ってない左腕で防いだ

しかし、最後の1本は防ぎようがなく、右頬を深く削ぎ落とされ、少なくない血が流出した

 

 

その後も手数を使った攻撃により傷を次々と負わされ、そして……

 

 

 

ランスを横にした状態で最初の1本を防ぎ、次の1本は右腕を突き刺され裂傷を負い、少し力が緩まった隙をつかれ……

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか、2本の剣が上下にクリアの体に突き刺さる

 

 

それどころか身体を貫通していた

 

 

 

クリアは来ている服はただの服ではなく、理論上20㎜機関砲に耐えれるレベルの防御力をもつ特殊装甲服であった

 

それがいとも簡単に貫通され、胃にも突き刺さっており、かなりのダメージを受けていた

 

 

 

 

 

クリア「ぐはっ……!」

 

 

クリアは痛みに苦しみながら地面に血を吐いた

それも微量ではなく、とてつもない量で

 

 

 

クリアの眼前にいる未確認種は貫通し赤い血に濡れた2本の大剣を強引に抜いた……!

 

 

それが血止めになっていた為、二つの傷口からは文字通り大量の血が流れ出てくる

 

 

クリアは力無く地面に膝をつける

 

 

 

それを見た未確認種は大剣を1つ振り上げる

 

 

それは誰がどう見てもトドメをさす為だと見えた

 

 

 

だから……

 

 

 

ラミ「クリア!」

 

 

ラミは2つのレイピアでその未確認種に斬りかかった

 

 

そのレイピアはレーザーを先端から装填6秒で撃てることも出来る剣であった

 

 

ラミはレイピア使って倒そうとした

 

だが、それは出来ずに終わることとなる

 

 

未確認種はレイピアによる攻撃もやはり手数の差で守り切り、レーザーでさえ大剣で防いだ

 

 

それに驚いてる間に剣でラミの右腕を斬りつけ、レイピア1本を落とさせ、そのレイピアは踏みつけて破壊した

 

 

 

ラミは不利と感じたら、すぐにクリアの元に駆け寄り

 

 

ラミ「クリア!……酷い。」

 

 

クリア「…ごめん…援護要請する……余裕が無かったから……かはっ……」

 

クリアは弱々しい声で返事を返した

 

 

ラミ「ねえ、クリア。プランB……行おうよ…クリアを死なせたくない!」

 

 

クリア(プランB……それは……絶対ダメ……)

 

 

プランB

 

現在進行中なのはプランAであり、これとは別に計画された作戦案である

 

それは誘い込んだ30万を戦略軍事ステーション『カリフォルニア』及びアメリカ合衆国宇宙軍艦隊による対地砲撃で殲滅するものであった

 

損害は少ないが、問題点はあった

 

 

それはバングラデシュの残された民間人と難民である

 

プランBは彼らを巻き添えにすること前提であった

 

 

 

クリア「それだけは……ダメっ!……」

 

 

ラミ「だったら……どうすれば……」

 

 

クリア「……ラミ、あの2体は私が倒す……他のBETAはラミ達に任せた」

 

 

クリアは自らの腹部に手をやり、真っ赤に濡れた手を見ながら話した

 

 

ラミ「!?…1人じゃ危険すぎる……」

 

 

クリア「本来の目的はBETA群の殲滅か撃退。その目的達成の為には一対多数が可能なラミも必要。だから……」

 

 

ラミ「無茶苦茶!クリアは死にたいの……?」

 

ラミがいつもより少し大きい声で話を遮った

 

 

クリア「無茶苦茶なのは分かってる。それに……死ぬわけじゃないから……。」

 

 

ラミ「……もう、説得しても無駄かな。絶対死んじゃダメ……」

 

 

ラミは思わずクリアを抱き締めた

 

 

クリア「分かった……。」

 

 

 

その直後

 

 

『こちら、第2機甲中隊第3小隊長車!砲弾来るっ、ぎゃぁぁぁ!!……』

 

 

悲鳴が木霊しその後音が消えた

 

 

 

重光線級に似た未確認種からの発射体がバングラデシュ管区陸軍第2機甲中隊のT-90LL主力戦車に直撃しその車輌は爆散したのだった

 

 

 

クリア「……ラミ、急がないと……」

 

クリアは抱きしめていたクリアを離し、ゆっくりと立ち上がった

 

 

ラミ「分かった……」

 

 

こちらの戦闘力が失われたと勝手に判断した未確認種は既にクリアの場所を横目に通り過ぎていた

 

 

クリアは大きく跳び、ランスを頭部と思われる場所に突き刺す

これを喰らえば確実に撃破できるが、その未確認種は振り向き、大剣で防いだ

 

 

クリアはランスを左手に持ち替え、右手に強く力を込めた

 

右手には蒼いエネルギーが纏わり、一瞬動きを止めた

 

 

次の瞬間、硬化し一種の打撃武器と化した右手を使い、ジャンプした後上方から殴りかかった……!

 

 

硬化した右手で勢いを失わずに殴られた大剣は一瞬にして割れ、それ同時にクリアの右手の骨が完全に"砕けた"

 

クリアの右手が硬いのと同様にその大剣も硬かったのだった

 

 

砕けた痛みに少し動きが緩む、その隙も突かれ、別の大剣に左肩下部を貫かれた

 

 

「……っ!!」

 

 

未確認種はその大剣でクリアの動きを阻害し、もう1つの大剣が振り上げられた

 

 

クリアもその様子は確認していた、だから、左肩下部に突き刺さっていた大剣を無理矢理脇近くで押し出した

 

 

脇近くにも裂き口が出来て大量の血が出るが、そんな事は気もとめず、阻害から解放され、寸前の所で振り下ろされた大剣から回避した

 

 

 

しかし、もう一本が再び振り下ろされ、クリアは仕方なく横にしたランスで防ぐ

 

 

だが何回も大剣による直撃を受けて限界が来ていたのか……二つに割れ、右肩が深く斬りつけられる

 

 

クリア「ぐっ……」

 

 

血飛沫が上がり、クリアは痛みに悶える……

 

 

 

クリア「……1人じゃ無理……そうなのかもね……でもやるしかないか……あんな言葉を言ったから……」

 

 

 

クリアは左手を背中に回し、1本の剣を抜いた

 

刀と似た形状をした剣、メーナソードは鋭敏であり、鉄でも簡単に斬れるように設計された剣である

 

ただし、弱点はある

それはこのメーナソードの重量であり、慣れればなんともないものの、初めての者や重傷者が持つには素早く振り回すにはかなりキツイほどの重さがある

 

 

クリアは初めて持つわけではないが、それでも経験回数は少なく、そして、誰が見ても重傷という傷を負っていた

 

 

 

クリア「くっ……重い……だけどっ!!」

 

 

クリアは損壊した右手に代わり左手で持ち、未確認種から振り下ろされようとしていた大剣を吹き飛ばしただけでなく一刀両断した

 

 

その直後隙を与えないために、上に跳躍し、上方から未確認種の頭部と思われる部位にメーナソードを突き刺そうと、防ごうとした大剣ごと突き破り、頭部を破壊した

 

 

その未確認種は一切動かなくなった

 

 

 

だが、もう一体がまだ健在だった

 

 

 

撃破直後、謎の物体がクリアの右腹部に直撃、鋭利な形状であり体内に侵入直後、爆発を起こした

 

 

クリア「ぐぇっ……!!」

 

 

いくつかの臓器が損傷を受け、クリアは再び口から血を吐いた

 

 

クリア「……これが奴の……攻撃……」

 

 

鋭利な炸裂弾を放つ未確認種は報告にあったように重光線級の肥大化バージョンであり、先端からは炸裂する砲弾を放つ

 

 

 

距離からして50m近くまでいつの間にか接近しており、相手からすれば始末対象が近距離に接近したから攻撃しただけである

 

 

 

クリアは悩んだ末、兎にも角もジャンプを含め走り始めた

 

相手は光線級程ではないとはいえ戦車砲から発射された砲弾に飛翔体をぶつけるという恐るべく精度を誇り、そもそも相手が動かない為こちらから接近しないと倒せないからであった

 

 

クリア「ハァハァ……っ!」

 

 

走ってる間、何発もの炸裂弾がクリアを襲う

回避していくものの、ある1発が左眉を掠め、その直後に至近距離で爆発した

 

 

それは破片を飛ばし、左眉の付近に多くの切り傷を生み、少なくない血が流出し目までかかり、左目を閉じざるをおえなかった

 

 

右目だけの視界では回避運動を続けるのも無理と判断したクリアは一気にジャンプし、その未確認種の横腹に足をつけ、メーナソードを突き刺した

 

 

その未確認種は多少の悲鳴をあげ、動きが遅くなる

 

 

クリア「ハァハァ……これなら行ける……ふぅ……」

 

クリアは一時的に安堵し、メーナソードを今度は両手で持ち、再び突き刺して切断するような動きで傷口を広げていった

 

 

その途上でクリアは一度顔を上げる

 

 

その視界には未確認種の先端がこちらを向いていたのが映った

 

クリアは悪寒が走り、逃げようとしたものの足は全く動かず攻撃を喰らうこととなった

 

炸裂弾4発が連続で放たれ、全弾がクリアの身体に侵入し爆発

 

その内1発は心臓の左心室を貫き爆発により粉砕させていた

 

 

クリア「ゴボッ……げほっ……かはっ……」

 

 

クリアは多量の血を口から吐き出す

 

 

その時、クリアは視界が歪んでいるのに気づいた

 

 

クリア「……ヤバい……意識が……」

 

 

既に撃破した未確認種との戦闘から連戦で戦っており、その間に多量の流血があり、失血死の可能性も無くはないほど重度のダメージを負っていた

当然意識も朦朧としてくる

 

 

クリア「……だったらっ!!」

 

 

クリアは足を引きずりながらも、未確認種の頭部の後ろに着き、メーナソードを突き刺した

 

 

クリア「……暴風。」

 

 

メーナソードに左手を添えながら、自らの攻撃型魔法の単語を呟く

 

左手からはそれは出ず、数秒後に剣先に伝導され、剣先より荒れ狂う暴風が発せされた

 

 

未確認種の身体に突き刺さった剣先より発せられた為、荒れ狂う暴風は勢いを失わないまま、その未確認種の身体を裂いていった

 

 

 

裂かれた未確認種は左にその巨体を倒す、そしてピタリとも動かなくなった

 

その倒れる最中にクリアもバランスを崩し地面に落ちる

なお、幸いにも擦っただけで、ゆっくりと立ち上がった

 

 

だが、メーナソードを杖代わりにしなければいけないほど体力を消耗していた

 

 

クリアの身体は未だに傷口が塞がらず、血を流し続けていた

 

また、顔は痛みに辛そうな顔をしていたが、BETAの数が減ってきたのも確認できていて、もう少しで戦闘が終わるという安堵の表情も滲み出ていた

 

 

 

 

 

しかし、

 

赤い化け物が接近していることは気づかなかった

 

気づいた時にはその赤い化け物は近くまで接近を許しており、突然ジャンプして踏む潰されるように押し倒され……

 

 

クリア「……た、戦車(タンク)級……」

 

 

クリアは食われる恐怖からその赤い化け物の呼称を口にした

 

 

 

そして、戦車級は巨大な口でクリアの右腹を齧る

 

 

クリア「……いっっっ!!!」

 

 

声にならない悲鳴をあげる

 

 

齧られた部分からは血が流れ出る

 

 

戦車級は1度齧っていた部分を離し、腹のさらに中央近くを齧り、右腹や表層の皮を含め噛みちぎった……!

 

 

クリア「あ……あああっ!!」

 

 

激しい痛みにより声が出せず体は痙攣を起こした

 

 

噛みちぎられた部分は大きく抉られ、大量の血が流れ出た

 

口からは流れように血が漏れだした

 

 

 

 

クリア自身もうだめかと思っていた

が、自然にメーナソードを握っていた左手がゆっくり動くにつれて「死にたくない」という気持ちをハッキリと感じた

 

 

クリアは残された力を振り絞って、メーナソードを握り、戦車級の頭部らしき部位に突き刺した

 

 

 

戦車級は痛みに苦しむかのように暴れ始めた

だが、死ぬ様子はなかったが、突然、爆発が起き、戦車級は動かなくなった

 

 

 

クリアは今の爆発を味方の砲撃と確信した

そして、本当に終わったと安堵した

 

 

だが、クリアは無事には遥かに程遠い姿だった

 

 

クリアの視界はどんどんとぼやけ始め……意識もハッキリとしなくなってきた

 

 

 

 

クリア「……血を…………失い……すぎた……かな……」

 

 

それが薄れゆく意識の中で言えた言葉だった

 

 

 

薄れゆく意識の中で自分を呼ぶ声が聞こえるものの、何も返すことは出来なく、意識を閉ざした

 

 

 

 

 

…………

 

…………

 

…………

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

翌日

 

 

西暦2026年5月5日

 

 

 

 

西側軍事条約協定機構軍総司令官

 

ウィリアム・V・タイラー大将

 

 

及び

 

 

亡命インド管区軍臨時司令官

 

バラト・ドゥビー少将

 

 

による共同記者会見が開かれ

 

 

 

対BETA作戦計画Operation Mars(火星作戦)の終了と

 

 

作戦の成功、すなわちバングラデシュ管区及び東南アジア諸国連合ミャンマー政府領域内へのBETAの侵攻及び現時点での侵攻の可能性を完全に排したことが報告された




※設定

クリア・フランネス少尉

年齢16歳
統括軍第6中隊中隊長代理
蒼い髪のポニーテールが特徴的な少女
戦闘用服装も蒼い
攻撃型魔法は『暴風』
観測史上最大の台風すらも上回る暴風を特定地点で発生させることが可能
戦闘力はまだ未熟とも思われる部分はあるが、完熟すれば姉に次ぎトップクラス

シャーロット・ユースティア少尉

年齢17歳
統括軍第6中隊所属
白髪のロングテールの髪型
攻撃型魔法は『雷球』
可視化された10万ボルトの電流の塊を球にして発現したもの
大体の生物は感電死させることが可能
本当は戦いが嫌いではあるが、人を守れることを初めて知った時に決心がついた

レナ・マーティ曹長

年齢16
統括軍第6中隊所属
ピンク色のツインテールの髪型をしている
攻撃型魔法は『艤装発現』
数多の武装が搭載された装置(いわゆる艤装)を唱えることで発現が可能
数多の武装による弾幕で歩兵1大隊を殲滅することは可能
外見は幼く見えるがれっきとした16歳である

ラミ・メノール少尉

年齢18歳
統括軍第6中隊所属
水色のベリーショートの髪型
攻撃型魔法は『補足』
意識して見るものの詳細を見ることが出来る
戦車ならば、装甲厚と弾薬位置、乗員数、現在装填済みかどうか等
クリアとは違って大人びた体型で人見知りで消極的な性格
クリアとだけ本音を面と向かって話し合える


次回予告chapter15 ひとときの安寧

Operation Marsは終了した
作戦に参加した兵士は疲れを癒す

一方でヴェルホヤンスクでは新たな計画が浮上していた

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