~モスクワ時間5月23日深夜~
ー モスクワ市内 ー
クレムリンに最も近い、【大侵略事件】にて破壊尽くされ、それ以降放棄された廃工場地区、その中のある監視塔の1つに第91小隊は潜伏していた
「一応予定通りだな……」
隊長が沈黙を破る
「まだ、たどり着いていないけどね……」
「なぁに、すぐ着くさ。リリィ。」
「そう……」
「おい、戦車1両と歩兵部隊の接近を確認。」
「総員……音を出すな。」
一瞬にして静まり、その内、戦車やトラックの駆動音が大きくなる
数分後、戦車が監視塔の前で急停止し、トラックも止まる
そして、数台のトラックから兵士たちがぞろぞろと降り廃工場地区に入っていく
その後、トラックには誰もいなくなったと思われた
しかし、その矢先に1人の男がゆっくりと降り、手に持ったライトを監視塔の1番上に向けながら、監視塔の入口から中へと入っていく
ゆっくりとした歩みで監視塔の1階を見渡す……
そして、ライトを足元に置き、手に持ったAK-82自動小銃を上に向け発砲し一弾倉分を撃ち出した
「……く……」
その弾は半分以上が監視塔の真上までにある鉄骨に防がれるが、その残り全てが金髪の少女に当たり、フィールドを展開するも幾つか貫通した弾があり、悶える
男は1弾倉分の弾を出し切ったAK-82を足元に放り投げ、代わりに肩に担いでいた物を取り出す
RV-L2突撃砲銃、それを構える
再びそれを上に向け、一発撃ち出した
そして、その戦果を確認することもなく、ニヤケ顔を浮かべ、塔を後にする
「Установить случай!」
廃工場地区各地に分散していた兵士を集合させ、退いて行った
「カハッ……」
一方で、RV-L2突撃砲銃の弾丸はリリィの左腹を貫き、少なくない血が流れ出し、口からは血を吐き出していた
「……大丈夫です……私に別行動を認めてくれませんか?」
だが、それを大丈夫と強がり、あまつさえ別行動を要求してきた
「……分かった。」
隊長は逡巡していたものの、結局認めてしまう
「……ありがとうございます……任務を……遂行します。」
若干痛みに悶えながらも、言葉を発するリリィ
そして、監視塔から飛び降り、地面に着いた後、すぐにモスクワ川に飛び込んだ
「……行かせていいんですか?」
新人が口を開く
「あいつの要求だ。断れないさ……」
「ですが、もし死なされたりしたら……」
通常の兵士としての懸念を口にする
だが……
「おい、新人。俺たちは存在しない部隊だ。いいな?」
隊長は銃を突きつけ、威圧する
特殊作戦群はだいたい潜入任務を行うため、いないものとして扱われる
それは特殊作戦群にとっては常識であった
「はい……」
「よし、では、我々も行動するぞ。せいぜい一人の女に全て手柄を奪われないようにな。」
仲間達が吹き出しかける
「作戦開始だ。」
各自散らばり、行動を開始した
『大統領、アメリカ軍は廃工場地区にはいませんでした。発見できず申し訳ありません。』
「そうか……だが、付近にいることは確かだ。探し出せ!探すのだ!そして、殺せ!」
『ですが、それでは兵士たちが疲れてしまいますな。ところで大統領はいつ発つつもりでしょうか?』
「疲れる等人間にとって当然、私のことは気にせず任務を行え。」
『はっ!』
ヴィレシコフが通信を切る
「ヴィレシコフよ、だが、向こうとの予定もある。ここは彼に任せたらどうかね?」
イラン大統領が発言する
「……お前にか?」
「失礼だな。これでも軍指揮官はやっていたぞ?」
「……ならいい。だが、今はもう暗い。朝になり次第、出立する。」
~5月24日早朝~
ー 新ソビエト連邦大統領府屋上 ー
新ソビエト連邦大統領専用短距離輸送機
垂直離着陸型航空機KA-L28がエンジンを起動し、両翼端のローターを高速回転させる
その回転が軌道に乗ったところでヴィレシコフ大統領はイラン大統領とともに後部座席に乗り込む
「では、君。あとは任せた。」
「お任せを。」
黒ずくめの男が頭を下げ礼をする
そして、ドアが閉まり、KA-L28が飛び立つ
その後
「では、諸君。待たせたな。」
黒ずくめの男が中央会議場に戻ってきて、AK-82自動小銃を拘束された官僚たちに向ける
(これで終わりか……もう覚悟は決めている……)
銃口がザルコフ国防大臣に向けられた……
その時
甲高い発砲音が聞こえ、ザルコフを拘束していた手錠が破壊される
さらに甲高い音が2発続き、狙っていたAK-82自動小銃とそれを持っていた黒ずくめの男の左手に命中する
「ぐあっ!」
そして、その声が聞こえた途端
9人が窓を突き破り突入してきた
9人は突入後、すぐに発砲し、9人の拘束していた手錠を一斉に破壊する
「くっそ!!これならば!」
黒ずくめの男が叫び、自分の周りに障壁を作り出す
そこに銃撃が殺到するも、その障壁は簡単に弾いていく
「フハハッ!その程度では貫通できんのだよ!」
黒ずくめの男は尊大な態度で第91小隊に銃撃していく
だが、男は一人いないことに気づかなかった
その直後
1発の銃弾が青白い膜を纏いソニックブームを起こしながら部屋に突入し、障壁に直撃し……
その障壁は貫通され、そればかりではなく銃弾の衝撃波によって、4つに割かれた
そして、障壁を突破した銃弾は黒ずくめの男の心臓に正確に直撃する……!
「ぐっ……どこから……障壁を突破しただと……」
その男はまだ生きていたが、立ち上がることが出来ず這いずっていた
そこに9人からの銃口が向けられる
「名前を言え。」
第91小隊隊長が真っ先に発言する
「ふんっ……アメリカ共に答える気等サラサラないわ……」
隊長は溜息を吐き、視線をザルコフ国防大臣に向ける
ザルコフ国防大臣は意志を察したかのように頷く
そして
「撃て。」
隊長除く8人がHK416小銃より5.56㎜NATO弾を一弾倉分撃ち尽くす
「こりゃあ、ひでぇ……」
その時別行動していたリリィより通信が入る
『隊長。現在、大統領専用ヘリのローターを充分狙える距離にいます。ローターさえ破壊できれば、機体を軟着陸させ拘束することも可能です。ご命令を。』
隊長は逡巡し、ザルコフ国防大臣に耳打ちする
彼は頷き、隊長はそれを見て意志を固める
「やれ。」
『了解。』
ー モスクワ市内ビル屋上 ー
「
M113セミオート式対物狙撃銃のスコープを覗いている金髪の少女の姿があった
左眼が通常の目とは異なり、赤く……まるで獲物を虎視眈々と狙う獣のような目をしていた
スコープと連動し約10㎞先のKA-L28垂直離着陸輸送機を正確に拡大照準で捉えることが出来ていた
トリガーに指をかける
「ふぅー……」
一度深呼吸を挟み……
「墜ちて。」
力強くトリガーが引かれる
銃口から青白い光が漏れ出ている中、青白い膜を纏った銃弾が超音速で吐き出された
それはKA-L28の左翼側ローターを正確に撃ち抜き、破壊した
左のロータを破壊されたため、バランスを崩し、徐々に降下していくKA-L28
「くっそ!これは……左を破壊されたか!?」
「どうにもなんないぞ、これ!」
2名のパイロットが混乱する中……
ヴィレシコフは冷静に判断する
「これは……落ちるな。」
「そうなのか!!脱出するぞ!」
イラン大統領はその一言を聞き、脱出する
だが、パラシュートの操作が上手くいかず、地面に激突する
なお、それでも生き長らえていた
しかし、KA-L28が同じ地点に墜落する事となり、イラン大統領はすり潰された
そこには大量の血溜まりが出来る……
その時、ヴィレシコフ大統領は我に返ったかのような表情を見せる
数分後には
第91小隊が到着し、大統領及び2名のパイロットを拘束する
「大統領、残念です……」
ザルコフがヴィレシコフに挨拶をする
「ま、待ってくれ!私は何をしたのだ、全く……覚えてないのだ!」
「え?」
ザルコフはその言葉に怪訝な表情をする
「……では、質問をさせて下さい。我々を拘束しましたか?」
「……何を言ってるのだ……最後の記憶はイラン大統領に会った時だ……そんな事やった覚えもない!」
「……」
ザルコフはこの言葉に唖然とする
「……そもそもこのヘリに乗った覚えがない……何をしようとしていたのだ……」
「……世界大戦……です。」
「……何……」
ヴィレシコフも唖然としてしまう
ザルコフ国防大臣は第91小隊に振り向き……
「……アメリカ軍、大統領の事だが我々に預からせて欲しい。」
「構わない。だが、我々が随伴しているという条件次でだが。」
「もちろんだ……。」
~アメリカ軍東部時間5月24日午前~
ー ワシントンD.C. ー
ー ホワイトハウス:大統領執務室 ー
「ヴィレシコフ大統領は催眠装置により動かされていた……か。」
フリッツ大統領は前に立つCIA長官、ブランツ・ニクセンに話しかける
「ええ。この事態を引き起こしたのは、イラン共和国大統領、サファダ・デル・ホスローです。」
「それと、黒ずくめの服であったイスラム教軍幹部か……名前はわからないのか?」
「……残念ながら……申し訳ありません。」
ニクセン長官は大きく頭を下げる
「まあ、いい。取り逃したら問題だが、始末しているんだ。今のところは重要ではない。」
フリッツ大統領は視線をレアード国防長官の方に向け
「国防長官、この被害だが、何が起きた?」
「はっ、エーゲ海の方は、『ブレジネフ』艦長がイラン大統領のシンパだったらしく、大統領命令が撤回された時に勝手に発砲したようです。」
「なるほどな……ジョージアは?」
「1部戦車隊同士の衝突がありました。また、その時、新ソビエト航空部隊の一部が亡命を行いました。」
「そこは現地政府に任せるとしよう。近海に展開している全ての任務部隊を下がらせてくれ。大戦の危機は去った……後はどうこの対立を終わらせるかだ。」
「「はっ!」」
~同時刻~
ー モスクワ ー
ー クレムリン:大統領府 ー
「国防大臣、なぜその席に?」
ザルコフはなぜか大統領の席に座っていた
彼は目をつぶりながら他の閣僚の話を聞いていたが、終わると目を開け話し始める
「ヴィレシコフ前大統領より役職を受け継がれた為、臨時大統領に就任する。また、国防大臣は兼任する。」
その目は決意の炎が燻っていた
「ま、待ってください!それでは、独裁とも取られてしまうのでは?」
「分かっている。だからこそ、選挙の用意をしろ。」
「ヴィレシコフ前大統領はどうなるのです?」
「どうなるもない……彼は……自ら職を退いたのだ。」
「!?……了解。」
「しかし……アメリカとも連携できたのです。これは冷戦を終結させるチャンスかもしれませんよ?」
その言葉にザルコフはため息を吐く
「そんなことは無い。我々は良くても……地盤が追いつかん。ここはゆっくりと改変を進めいていく他ない。」
人類の惨禍たる世界大戦の勃発は回避された
両陣営の盟主であるアメリカ合衆国と新ソビエト連邦の努力によって
しかし、まだ冷戦は終わらない
この地球は未だに第三次世界大戦の勃発の引き金となる火種を数多く抱えている
また、世界を滅ぼせるほどの核兵器に代表された大量破壊兵器も
そして、未だにBETAは健在であった
番外編終了、次の章に移ります
その前に設定を……
※設定
・KA-L28
新ソビエト連邦垂直離着陸式航空機
簡潔にいえば、オスプレイのロシア版
しかし、この機体は新ソビエトが白の世界の技術も活用して開発したため、落ちる心配はほとんどない
なお、アメリカはオスプレイから既に3番目の機体を開発、運用している。そちらにも白の世界の技術が使用されている
・AK-82
新ソビエト連邦製小銃
AK-74の次世代版
・RV-L2 突撃砲銃
新ソビエト連邦製オリジナル銃
多種の弾頭を装填することが可能であり、用途によっては対戦車も可能
今回では炸裂しない対人徹甲弾頭を使用した
・戦車(T-26 ヴラニスク)
新ソビエト連邦主力戦車
ロシア連邦時代において計画、設計段階に入っていた車両であり、新ソビエト連邦軍にて制式採用された
T-14アルマータやT-22イェルメールを一気に陳腐化させた車両である
・ コルナーク・ヴィレシコフ
新ソビエト連邦第2代大統領
初代大統領が政変成功して数ヶ月で暗殺され、その座を受け継いだ
頑固者と知られており、頑固さはかのチャーチルでさえ劣るほど
第2次イラン・イラク戦争のイラン敗北直前にイラン大統領サファダ・デル・ホスローに訪問され、その時に催眠をかけられ操られた
物語終盤において責任をとり、職をセルゲイ・ザルコフ国防大臣に譲る
・ セルゲイ・ザルコフ
新ソビエト連邦国防大臣
初代と第2代で国防大臣を受け持っている(※初代と第2代ヴェルシニコフではたった数年しかありません)
ロシア連邦時代に軍人として数多くの紛争に参加してきた
武人あがりの国防大臣である
物語終盤において臨時大統領となる
・ サファダ・デル・ホスロー
イラン共和国大統領
とある秘密結社から購入した特殊な催眠装置でヴェルシニコフ大統領を催眠にかけ、操ったとされる
ヴェルシニコフ大統領を操り第三次世界大戦を起こそうとした事実はあるが、その目的と理由は不明
墜落するKA-L28垂直離着陸式航空機に押しつぶされ死亡
・黒ずくめの男
イスラム教軍幹部
これしか分かっていない
アメリカ空軍特殊作戦コマンド第91小隊からの銃撃を受け死亡
・ リリィ・エイミス
アメリカ合衆国空軍特殊作戦コマンド第1特殊作戦航空団第91小隊隊員
年齢17歳
身長160㎝ほど
体重?シランナ
金髪ポニーテールの髪型
アメリカ魔法軍に属していた時期もあり、多数の武装組織を壊滅させた実績がある
使用魔法は『
20㎞以下の標的を正確に捉えることが可能
また、スコープと連動することも可能である
使用銃はHK416や魔改造して射程距離を超延長したM113セムオート式対物狙撃銃等多種に渡る
性格は常にぼーっとしているが、戦場では雰囲気が一変する