見るからに崩壊した街を機械的なアバターが駆け抜ける。その顔はのっぺりしたヘルメットに覆われていて、その下に隠された表情を見ることはできなかった。
その目の前にはサーベルを持った海賊風のアバターが佇んでいる。左手にサーベルを逆手に持ち、煙草(のようなもの)を加えて前を見据える。
機械的なアバターの右手にはいつの間にか白色の銃が握られていた。走る勢いをそのまま目の前のアバターにたたきつけるようにして右手を振りかぶる。
海賊風のアバターも応じるようにしてサーベルを構え、煙草を吐き捨てる。
これは仮想空間で行われている公開バトルの様子であった。
それが行われるアプリケーションソフトの名前を、《BB2039.exe》、『ブレインバースト』と呼ばれていた。
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「今日は晴れた!」
ここ連日の雨で気が滅入っていたところに素晴らしい快晴が来た。しかも学校のない休日に来たのである。これほど嬉しいことはない。
東京の空をきらびやかに照らしている太陽には感謝しかない。
母の仕事の都合で東京に転勤してきたのはつい最近の事だ。母の会社はどうも古典的な所にあこがれている節があるらしく、情報技術が発達した今でも転勤が多いという。
事実母もこれで3回目になる。俺が生まれた後に1度、小学校に入るという前に1度、そして去年小学6年生になる前に1度といった具合だ。
それでも母には感謝している。(元)父と喧嘩別れで別れた母はその勢いとちょうど都合がついたので転勤し、父とは離れたところに転勤希望を出していた。
女手一つで6年間育て切っているから手腕は確かだ。ただまた、仕事の忙しさでほとんど会話する時間がない。守秘義務がひどく厳しいこともあってどんな仕事をしているのかさえも知らない。
グダグダ話してはいるけど、要するに家事のほとんどは俺がやっているということだ。その一環で洗濯物を干そうとして「今日の快晴」を見つけられたのだ。
母と二人暮らしで住むマンション7階ベランダ、洗濯物を干し終わった旨を母にメッセージで送信する。せっかくの休日だが、学校の友人とはまだ慣れていないところで、遊びに行く人もいなかった。
というわけで、最近買ってもらったゲームでもすることにした。誰もいない家の中であるから大声を出しても怒られることもない。
押し入れから古いパッケージに包まれたアプリケーションソフトインストール用のディスクを引っ張り出し、インストールの準備をする。今流行のニューロリンカ―*1専用というものではなく、その前世代のものである。つまり生まれる前に発売されたもの。
このゲームはニューロリンカーの前身にあたる機器にインストールし、卓上テレビと連動することでプレイできる形式となっている。フルインストール式の仮想上で行う今のものとは一線以上に古いものだが、自分が好きなゲームの開発者がこのゲームを作った後に引退してしまったのだ。会社内で追い込まれてしまったとも噂されている。
別にそれはいいのだ。会社の都合で開発がストップしてしまったゲームはごまんとあるし、この時期の仮想ディスプレイを用いたゲームは何分目に悪い。だからこそ今でも当時の卓上テレビ専用のものが愛されているのだ。
「まっっっっったくインストールが終わらない!」
既に30分は立っている。これは機器の都合かな、と再起動してみるとほら見ろ画面がきれいな砂嵐*2――――――ダメかなこりゃ。
そんなわけで、子供は風の子元きな粉。快晴の中で外で遊ぶことにしよう。
インストールが終わっていることを期待して外に出かける。かえって来る頃には母が何とかしてくれ…なさそう。今日も死んだ目をして帰宅して、もはや母専用と化した「人をあほにするソファー」で寝ているのだ。
オレンジ色に光るニューロリンカーの輝きが陰ってないことを姿鏡で確認し、エレベーターで駐輪場まで下りていざ鎌倉。オートロック+自動認証型マンションに感謝しながらいざゆかんボッチの旅へ。
別におんぼろスニーカーじゃないし、ジーパンも履いてないし、頭に電気ネズミを乗っけていないから彼のように自転車が壊れることもない。東京はもはやカメラ、ネットワークで覆われた街で、いじめがの兆候があればすぐに通報されちゃう怖い世界だから盗難の心配もない。
今日はお金も少ないから近くの古いゲームショップに行ってタダでさせてくれるゲームをしてから帰ろう、そう思って自転車のサポート機能をオンにした。
追伸:苦節十二年、私の人生で初めて初対面の人間に腹を殴られました。
戦闘描写ができません!タスケテ