英仏召喚   作:Rommel

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第4話 ―戦争の足音―

中央暦1639年8月20日

クワ・トイネ公国首都、公都クワ・トイネ―

 

クワ・トイネ公国がイギリスと国交を結んでから、約半年が経った。フランスやアイルランドとも、3ヶ月前に国交を締結していた。

 

公都クワ・トイネは、僅か半年で様変わりした。道には自動車が走り、更に電気やガスといったライフラインも整備されていた。

 

「しかし、最近建設した鉄道は素晴らしいな!資料映像を見た時も驚いた物だったが、やはり実物を見ると圧倒されるな!」

 

クワ・トイネ公国首相のカナタは、閣僚会議に出席していた。

 

「そうですな、閣下。農作物の輸出も順調ですし―」

 

産業大臣も笑みを浮かべていた。

 

「万事良し、と言いたい所なのですが―」

 

と、西部方面軍のノウカ大将が述べた。

 

「ロウリア情勢か―」

 

カナタが険しい表情を浮かべる。

 

「はい、閣下。諜報部に依りますと、ロウリアはロデニウス統一を目論み、50万の兵力と『無敵艦隊』なる大艦隊を集結させているとの事です。」

 

「戦争勃発も時間の問題か―」

「現在の動員可能兵力は?」

 

「多くても10万がやっとです。それに訓練時間もありますし―」

 

「拙いな―」

「英仏から援軍は呼べそうか?」

 

「微妙です、閣下。」

 

「交渉が必要、か―」

 

カナタはそう嘆いた。

 

 

翌日

公都クワ・トイネ、イギリス大使館―

 

「―つまり、ロウリア王国に侵攻されたときに、援軍を送って貰いたいのですか?」

 

ダグラス・バーグマン駐クワ・トイネ英国大使は、クワ・トイネ政府の外交官との会談に応じていた。

 

「はい、このままでは我が国やクイラ王国は滅んでしまいます。」

 

「我が国としても貴国は生命線ですからね。直ちに本国でこの事を協議いたします。」

 

「心から謝意を申し上げます、バーグマン殿。」

 

外交官はそう言うと、外務省本部に戻っていった。

 

 

翌22日

ロンドン、ウェストミンスター宮殿

 

この日の議会は文字通り「紛糾」していた。

議題は、クワ・トイネの援軍派遣要請を受けるか否か、であった。紛糾の理由は、議員が参戦派と中立派とで真っ二つに分かれたからである。

 

そんな中、ネヴィル・チェンバレン首相の演説が始まった。

 

「議員諸君、我々は、中立を維持すべきだ。我が国やフランスなどがこの世界に来た事で、この世界が変化しそうになっている。ここで、我々が中世よりもはるかに優れた軍事力を出してしまうと、この世界のパワーバランスが崩れかねない。しかし、我々は、戦争を防がなければならない。依って、私は、ロウリア国王、クワ・トイネ首相、クイラ国王、そして第3国としてイギリス首相の私とで、首脳会談を開くことを提案する。こうすれば、平和裏に―」

 

演説が終わると、中立派議員の席からは拍手が、参戦派の議員の席からは批判する声が、それぞれ起こった。

 

続いて、ウィンストン・チャーチル卿の演説が始まった。

 

「私は、先ほどの首相の提案に反対する。第一に、我が国などの転移国は、クワトイネとクイラに資源輸入を頼っている。もし、この2国が侵攻され、ロウリアに併合されれば、生命線が途絶えてしまう。試算によると、もし2国からの輸入がストップすれば、我が国は半年で崩壊するという結果が出ている。そして第二に、首脳会談を開いた所で、ロウリアの言いなりになってしまうだけです。」

 

「演説の途中失礼、チャーチル君、君は戦争が起きてもいいというのかね?」

 

チェンバレンが訊いた。

 

「閣下、ミュンヘン会談をお忘れですか?このままでは、クワトイネとクイラはチェコスロバキアの二の舞になってしまうだけですぞ!」

 

チャーチルはそう語気を強めると、演説を続けた。

 

チャーチルの1時間に及ぶ大演説が終わると、会場からは拍手が巻き起こった。

 

「皆が参戦派に回るとは―」

 

チェンバレンは驚き、ショックを受けていた。

 

その日の夜、チェンバレン首相はイギリス首相(プライム・ミニスター)を辞任したのだった―

 

 

1940年11月11日午前10時

ロンドン、バッキンガム宮殿―

 

接見室に向かう廊下を、1人の男が歩いていた。彼の名は、ウィンストン・チャーチル、現職の海軍大臣で、次期英国首相であった。

 

「どうぞ、お入りください。」

 

執事が接見室のドアを開けた。

 

「陛下、失礼致します。」

 

チャーチルはそう言うと、部屋に入っていった。

 

「ウィンストン・チャーチル卿、余は其方を首相(プライム・ミニスター)に任命する。」

 

イギリス国王、ジョージ6世は厳かにそう言った。

 

「身に余る光栄です、国王陛下。」

 

チャーチルはそう言うと、国王に誓いを立てた。

 

こうして、ウィンストン・チャーチル卿はイギリス首相に就任したのであった。

 

 

同日午後11時

ロウリア王国首都、ジン・ハーク―

 

ハーク城の表門には、大量のハーク親衛隊の兵士が集まっていた。

 

「亜人が滅ぶのもいよいよだな!」

 

「ロウリアに栄光あれ!」

 

こうした声が、兵士たちから聞こえていた。

 

しかし、国王ハーク・ロウリア34世が姿を現すと、水を打った様に静寂が訪れた。

 

「兵士諸君!我々は、あの忌々しい亜人共を絶滅させる為、多くの事をしてきた。今日がその集大成である!今此処に、我がロウリア王国は、クワ・トイネ公国とクイラ王国に対し、宣戦を布告する!」

 

すると、兵士達からは拍手と歓声が沸き起こった。

 

ハーク・ロウリア34世は、拍手と歓声が止むのを、腕組みをして待った。そして静寂が訪れると、こう続けた。

 

「今日という日は、我が国にとって、いや、世界にとって、歴史的な日になるであろう!亜人共よ、震え上がるがよい!ロウリアに栄光あれ!」

 

演説が終わると、先程よりも大きい、割れんばかりの拍手と、歓声が起こった。

 

その頃、クワ・トイネ=ロウリア国境では、大量の部隊が、国境を越え、進撃を開始したのだった―

 




いよいよロデニウス戦争が始まりました。次回は、BEF(イギリス派遣軍)が活躍します!
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