第5話 ―チャーチルの決断―
1940年11月12日午前6時
ロンドン郊外、チャーチル邸―
新
机に置いてあるラジオからは、ロウリア王国がクワ・トイネ公国、クイラ王国に侵攻した、というニュースを伝えていた。
「やはりな、早く
彼はそう考えると、身支度に取り掛かった。
その頃
公都クワ・トイネ、参謀本部―
此処参謀本部では、ロウリアの侵攻を受け、大混乱に陥っていた。
そんな中、カナタ首相が戦況を訊きに訪れていた。
「ノウカ大将、現在の戦況は?」
「閣下、それが...」
ノウカ大将が言葉に詰まる。
「国境の都市、ギムが陥落し、モイジ准将率いる守備隊が全滅したとの事です。」
と、隣に居たノウカの副官が早口で述べた。
「そんな莫迦な―」
カナタが衝撃を受ける。
「民間人は避難できたのか?」
しばらくの沈黙の後、カナタがノウカに訊いた。
「市民の約三分の一、3万人程が避難出来ましたが、残りの6万人は消息不明―」
「そうか、6万人がか―」
カナタは険しい表情でそう言うと、官邸へと戻っていった。
翌13日、昼0時
バッキンガム宮殿、国王の執務室―
国王ジョージ6世は、執務机に置いたラジオに耳を傾けていた。聴いているのは、チャーチル首相の演説である。
「イギリス国民の皆さん、首相のウィンストン・チャーチルです。
皆さんご周知の通り、一昨日、ロウリア王国が我が国の同盟国であるクワ・トイネ公国、クイラ王国に宣戦布告しました。ロウリア王国は電撃的侵攻を続けています。このままでは2国とも滅んでしまうでしょう。
そして、これもご周知の事と思いますが、ロウリア王国がクワ・トイネ公国の町、ギムで恐るべき蛮行を働きました。ロウリア軍は、何の罪も無い民間人に対し、蛮行を働いたのです!
我々は、この蛮行を、見て見ぬ振りをすべきなのか?答えは明確に
―イギリス国民の皆さん、我々の友人を助けましょう!」
チャーチルの演説は、多くのイギリス国民の考えを、ロデニウス戦争参戦へと動かしたのだった。
中央暦1639年9月4日
クワ・トイネ公国、マイハーク―
「ここがマイハークか、美しい街並みだな―」
モントゴメリーはBEF司令部を置く、マイハーク市庁舎に向かう車の中でそう呟いた。
マイハークの市庁舎には、モントゴメリーを迎える為、市長のハガマ卿と第3軍(ロウリアとの開戦により、マイハーク防衛騎士団から改編)司令官のイーネ少将が待っていた。
モントゴメリーが着くと、歓迎のあいさつの後、司令部を置く作業が始まった。
翌9月5日
公都クワ・トイネ―
クワ・トイネ公国軍が心待ちにしていた、
「おお!BEFが到着したか!」
この連絡を受けたカナタは歓喜し、すぐさまイギリス大使館に赴いたのだった―
その頃
ロウリア王国、首都ジン・ハーク―
ロウリア王であるハーク・ロウリア34世は、戦況を笑みを浮かべて訊いていた。
「圧倒的ではないか、我が軍は!」
ハークは、戦況を一通り聞くと、そう言った。
「して、無敵艦隊は出撃したのか?」
ハークが国軍大臣のパタジン元帥に訊いた。
「はい、海軍からの連絡によりますと、シャークン提督率いる無敵艦隊は9月4日にマイハークに向け出航しました。」
「よし、出航したか。マイハークを廃墟にするのだ!」
パタジンの説明を受け、ハークはまるで魔王のような声で笑った。
翌9月6日午前6時
クワ・トイネ公国、エジェイ要塞―
ギムを陥落させたアデム准将率いるロウリア軍先鋭隊は、イギリス軍とクワ・トイネ軍の待ち構えるエジェイ要塞に進撃していた。
「敵のワイバーンは見当たらないな。」
彼はそう考えていたが、次の瞬間、遠くに敵騎を認め、通信機を取った。
「こちらベケット、10時の方向に敵を発見!繰り返す、10時方向に敵騎!」
「了解!」
「攻撃開始せよ!」
「
ベケット中隊は、敵への攻撃を開始した。
規則正しい機関砲の音が聞こえて来る。
彼は驚いている敵を、反撃の機会も与えないまま、ドラゴンごと葬り去っていった。
その頃
行軍中のロウリア軍先鋭隊―
「アデム閣下、ワイバーン隊から連絡です!」
伝令兵が馬に乗って大急ぎでやって来ると、紙切れをアデムに渡した。
そこには、偵察隊が全滅したと書かれていた。
「何だと!?」
彼が驚いていると、次の瞬間、直ぐ近くを行軍していた歩兵大隊が爆音と共に吹き飛ばされた。
「何事だ!?」
驚いている内に、次々と爆発が起こり、先鋭隊は大混乱に陥った。
同刻
エジェイ近郊、英軍砲兵陣地―
第5歩兵師団の砲兵大隊司令官のカヴァン・オーウェン少佐は、双眼鏡でエジェイへと向かう街道を偵察していた。
「敵の歩兵部隊か、まるで中世の軍だな―」
彼はそう呟くと、無線機を取り、各班に指令を出した。
「全部隊、0630に砲撃開始せよ!目標は10時の方向!」
彼は司令を出すと、腕時計を見た。
「あと4分か―」
暫く経って、再び時計を見る。
「あと10秒か―」
「9―」
「8―」
「7―」
「6―」
「5―」
彼は深呼吸をすると、無線機を取り、各班に連絡をした。
「攻撃開始!」
丘の上に並べてある火砲が一斉に火を噴き、戦闘が始まった。
ズドーンという凄まじい音が辺り一帯に聞こえ、敵を隊列のまま消し去っていった。
その頃
第18機甲師団、モントゴメリーの指揮戦闘車―
「偵察隊からは報告は無いか?」
モントゴメリーが副官のポール・ハイアット中佐に訊ねる。
「今の所ありません。」
ハイアットが答えた。
「偵察隊からの報告が来ました!」
通信兵がモントゴメリーに言った。
「どうだ?」
「敵の騎兵部隊と遭遇、交戦しているようです。」
「よし、直ぐに救援に向かうぞ!」
「了解しました!」
「無線機を貸してくれ。」
モントゴメリーはそう言うと、指令を出した。
「こちらモンティだ。偵察隊が敵と遭遇した模様。これより応援に向かう。繰り返す、これより応援に向かう!」
「了解!」
いよいよ
次回はほぼ戦闘回になると思います。
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