英仏召喚   作:Rommel

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第8話 ―十字軍作戦(Operation Crusades)〔中編〕―

中央暦1639年10月4日早朝

ギム、第1軍司令部・旧ギム市庁舎―

 

ここギムを守るロウリア第1軍の司令官、パンドール国家元帥は悩んでいた。

悩みの種は、ハーク自ら手を入れてきたギム防衛計画である。

 

「うーむ、参ったものだ。我々の方が軍事に卓越しているのに、あの国王と云ったら―」

 

そう考えていると、伝令兵が大急ぎでやって来た。

 

「閣下、騎兵部隊が敵の先遣隊と交戦に入りました!」

 

「何っ!?敵め、もう来たのか!」

 

そう言うと、パンドールも大急ぎで通信室に向かった。

 

 

その頃

BEF(イギリス派遣軍)第1軍団、第5機甲大隊―

 

第5機甲大隊を率いるハロルド・トワイニング少佐は、前方の部隊が接敵した事を受け、後方の車両に指令を出していた。

 

「こちらハロルド、これより敵部隊への攻撃を開始する!」

 

そう指令を出すと、

 

了解!(Aye, sir)

 

と、各車両から返答が返ってきた。

 

指令を出したのもつかの間、敵を視認する。

直ぐに砲手に伝え、敵を機関銃でなぎ倒していった。

 

他の車両も同様に、敵の陣地にこれでもかと機関銃をお見舞いする。

 

ダダダダダダダダッ

 

音がする度、敵兵が斃れていき、抵抗する間もなく死んでいった。

 

こうして敵を一方的に蹂躙していると、敵の騎兵部隊と何やら重戦車ぐらいの怪物(魔獣)が大挙して押し寄せて来た。

 

ウォォオオオオ

 

敵騎兵隊は、サーベルを高く掲げて突撃してきた。

 

「まるでナポレオン戦争時代みたいだな―」

 

彼はそう思うと、砲手に怪物(魔獣)を攻撃するように言った。

 

「やっと主砲が役に立つぜ!」

 

砲手のクレメント・フレイザー大尉が言う。

 

ドゴォォォォン

ズドォォン

 

凄まじい音を立て、主砲の2ポンド速射砲が火を噴き、怪物の装甲の様な皮膚を徹甲弾が貫く。砲弾が当たった怪物(魔獣)は、断末魔の叫びを上げ、斃れていった。

 

敵を一体、また一体と斃していると、通信が入った。

 

「こちらレナルド小隊!...現在...敵のドラゴン(ワイバーン)からの..攻撃を.受けている!至急...救援求む!」

 

「こちらハロルドだ。これから航空支援を要請する、一先ず森へと退避せよ!」

 

「了解!」

 

通信を終えると、少佐は師団長に航空支援を要請するように連絡した。

 

 

15分後―

 

「少佐!少佐!味方の戦闘機です!!」

 

隣の戦車で双眼鏡を構えていた車長が言う。

 

「おお!味方が来たぞ!」

 

少佐はそう言うと、直ぐに通信機を取った。

 

「こちらハロルド、進撃を再開する!」

 

その通信を合図に、再び攻撃が始まった。

 

 

同刻

AEF(フランス派遣軍)北部軍団、ルクレール中佐の指揮戦闘車―

 

ギム正面でイギリス軍がロウリア軍の抵抗を受けていた一方、ギネを目指すフランス軍は、僅かな抵抗にしか遭遇していなかった。

 

「しかし奇妙だな、全く敵が居ないなんて―」

 

ルクレールが副官のマティアス・アルボー少尉に言う。

 

「そうですね、中佐。何処かで待ち構えているのでは?」

 

少尉が答える。

 

「うむ、その可能性は大だな。敵が居なくとも、気を引き締めねば―」

 

といった会話をしていると、先遣隊からロー川に到達したという連絡が入った。

 

「どうだ、橋は残っているか?」

 

ルクレールが先遣隊に訊いた。

 

「敵の手によって破壊されています!」

 

「拙いな―」

「よし、工兵隊を向かわせよう。明日の午後までには終わらせねば!」

 

こうして、ロー川渡河作戦が始まった―

 

架橋には工兵部隊だけでなく、戦車兵達も協力した。

 

ポンツーン(橋脚舟)を持って来て正解だったな、これが無かったら大変だった―」

 

建設の様子を視察していたルクレールが言う。

 

「この調子だと明日には終わりそうです、中佐。」

 

アルボー少尉が明るく言った。

 

建設は多くの人員が動員され、夜通し行われた。

 

更に明け方には、一部の部隊が対岸に橋頭保を確保し、より安全に建設が進められるようになった―

 

 

10月5日午後2時

ロウリア第1軍司令部・旧ギム市庁舎―

 

「パンドール閣下、北西部の防衛線が崩れました!」

 

伝令兵が息を切らしてやって来た。

 

「何...だと..」

 

パンドールの顔が一気に青褪める。

 

「直ぐ魔獣部隊を向かわせろ!ワイバーンの支援も要請するぞ!!」

 

パンドールはコップに注がれていた水を一気に飲むと、そう言った。

 

「了解しました!!」

 

伝令兵は再び走っていった。

 

「拙いな...撤退も視野に入れねば―」

 

パンドールがそう考えていると、

 

ヒュルルルル...ズドォォォォン

 

凄まじい轟音が聞こえてきた。

 

「何事だ!?」

 

パンドールが驚いていると、副官が走ってきた。

 

「閣下、敵が大規模な火炎弾攻撃を仕掛けて来ました!!」

 

「敵の大魔術師のお出ましと云う訳か―」

 

パンドールはそう考えると、魔術師の部隊を向かわせる様に指示した。

 

 

その頃

ギムの南6km、ギネ後方の丘陵―

 

第5機械化騎兵連隊の指揮官、サン=シモン・ロドルフ中佐は、M201装甲車を中心とした装甲車部隊とオートバイ兵を率いて、偵察を行っていた。

 

ロドルフが双眼鏡を構えていると、敵の守備陣地を遠くに見とめた。

 

「ん?あれは敵の守備陣地か?」

 

彼がそう考えていると、先頭の部隊から通信が入った。

 

「こちら..ヴェルレ中隊!..我、敵の...斥候..部隊に遭遇!...現在..戦闘中!」

 

「こちらロドルフだ。直ぐに支援部隊を向かわせる、戦闘を継続せよ!」

 

「了解!増援感謝する!」

 

通信が終了すると、ロドルフは偵察部隊を率いて前線に向かった。

 

前線に到着すると、すでに戦闘は激しさを増していた。

 

「斥候にしては敵が多いな―」

 

ロドルフがそう呟く。

 

敵は増援を呼んだ様で、抵抗は一段と激しいものになっていた。

 

「よし、総攻撃を開始せよ!!」

 

ロドルフが指令を出すと、M201装甲車のオチキスMle1938重機関銃が攻撃を開始した。

 

ダダダダダダダダダダッ

 

隊列を組んで勇敢に向かって来る敵の重装歩兵は、銃声が鳴り響くや否や、亡骸と化していった。

 

「歩兵部隊、進撃開始せよ!」

 

ロドルフが大声で言う。

 

Oui monsieur(了解)assaut de l'armée entière(総員突撃)!!」

 

オートバイ兵は車両を降りると、敵軍への突撃を開始した。

 

ズダダダダダダダッ

 

軽機関銃やライフル銃の音が辺り一帯に鳴り響く。

 

「こちらロドルフ!迫撃砲部隊、攻撃開始せよ!」

 

彼が迫撃砲陣地に指令を出すと、攻撃が開始された。

 

ブラント81mm迫撃砲から放たれる砲弾は、放物線を描いて敵陣に弾着していく。

 

ズドォォォォォン

 

弾着が生じる度、弾着が生じた部分の土が空高く上がり、文字通り敵兵が飛ばされる。

 

戦闘はその後も続き、夕方には第1機甲旅団も到着した。

 

 

同日午後6時

ギネ・ルクレール中佐の指揮戦闘車―

 

「閣下、敵の使者が来ました!」

 

副官のマティアス・アルボー少尉が早口で言った。

 

「よし、早速会おうじゃないか。」

 

ルクレールはそう言うと、天幕の中へ向かっていった―

 

 

同日午後7時

第1軍司令部・旧ギム市庁舎―

 

激しさを増すイギリス軍の攻撃は、この司令部にも迫っていた。

 

ロウリア第1軍は、市街地の白兵戦によってイギリス軍に出血を強いりながらも、じりじりと撤退を始めていた。

 

「パンドール閣下、ここは危険です。ギネへと撤退しましょう!!」

 

副官のトミーンが言う。

 

『ギムを放棄してしまえば、戦線は大分後退する事になる、そうなったら我が国の戦争継続能力は―』

 

パンドールが悩む。

 

ズドォォォォン

 

パンドールが悩んでいると、耳を劈くばかりの音を立て、砲弾が司令部の屋根に直撃した。

 

「閣下、ご決断を!」

 

トミーンが緊迫した声で言う。

 

「...ギムを放棄するぞ、撤退だ。」

 

パンドールが諦めに満ちた声で言った。

 

 

1時間後

ギム郊外、撤退中の第1軍―

 

パンドールは部下の軍勢を引き連れ、ギネへと撤退すべく、行軍をしていた。

 

『致し方あるまい、これも将兵と戦線を維持する為だ。』

 

彼が馬上でそう考えていると、先遣隊が向かって来た。

 

「如何した?」

 

パンドールが訊ねる。

 

「閣下、ギム橋が敵の手に落ちました!!」

 

先遣隊の隊長が言う。

 

「何っ!?」

「そ、そんな莫迦な―」

 

パンドールが衝撃を受ける。

 

しばらくの沈黙の後、パンドールは副官のトミーンに、残った将兵を集めるように言った。

 

 

30分後、パンドールは指揮下の全将兵を前に、演説をした。

 

「兵士諸君、我々は今、非常に厳しい立場にある。現在、我々は敵に包囲され、追い詰められている。

 しかし、このまま降伏する訳にはいかない!よって、我々は、明日の早朝に、敵防衛線の最も薄い所を突き、包囲を突破する!

 諸君、この戦いは、かなり激しいものになるだろう。王国の興廃はこの一戦にある、各員一層奮励努力せよ!!」

 

演説が終わると、厭戦気分が漂っていた兵達の士気は、一気に回復した。

 

 

翌6日

ギム郊外、ロウリア第1軍―

 

「閣下、準備整いました!」

 

トミーンがパンドールに敬礼をする。

 

「よし、総員突撃開始!!兎に角、西に向けて走れ!!」

 

パンドールが大声で言うと、ラッパ手が突撃の合図であるラッパを吹いた。

 

ウォォォォォォ

 

鬨の声と共に、騎兵が一斉に突撃し、槍歩兵部隊や魔導士部隊が後に続く。

 

「我に続け、突撃!!」

 

「進め進め!!」

 

と云った声があちらこちらから聞こえる。

 

一方、敵の部隊はと云うと、僅かな歩哨部隊が野営地を守っているだけで、あっという間に騎兵部隊に寝込みを襲われた。

 

部隊が突撃する度、敵兵の悲鳴が上がる。

 

しかし、敵が防衛体制を整え始めると、戦況が逆転した。

 

「拙い、敵の鉄獣が来たぞ!」

 

という声が味方の一部から上がる。

 

敵の鉄獣は、次々に兵達を斃していく。

 

「閣下、西へ逃げましょう!」

 

咄嗟にトミーンが言う。

 

「うむ、総員西へ退却せよ!!」

 

パンドールが大声で指令を出すと、生き残った部隊は、重装歩兵部隊を殿に、西への退却を始めたのだった―

 

こうして、十字軍作戦(Operation Crusades)の第1段階であるギム大包囲戦は、連合軍の勝利に終わった。

 

【挿絵表示】

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ギム大包囲戦の各軍損害

BEF(イギリス派遣軍)第1軍団(イギリス) 死者 34名 負傷者 327名 車両 27台

AEF(フランス派遣軍)北部軍団(フランス) 死者 3名 負傷者 39名 車両 19台

ロウリア第1軍 (ロウリア) 死者・行方不明者 15341名 負傷者 19582名 捕虜 18768名




皆さんお待ちかねのフランス軍活躍回です。次回はドゴール機甲部隊が活躍します!

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