提督が提督業に復帰しました   作:トウシキミ

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はじめまして。
艦これ2期が始まり約1ヶ月。プレイも落ち着いたので時間つぶしがてらダラダラ自己満足に妄想していこうと思います。


求める声

「ただいまーっと...ふぅ」

 

 気だるそうにアパートの玄関を閉めたスーツ姿の男が一人、大きなため息を吐きながらパチパチと蛍光灯のスイッチを押して部屋の奥へと入っていく。

 

「今日も疲れたなぁ。ずっと酒を飲むってのもキツイもんだ」

 

 現在の時刻は夜の22時過ぎ。当たり前だが外は街灯の明かりしかなく、静かな時間が流れている。

 そんな中、この男は飲み会から帰ってきた所なのだろう。お酒のニオイを漂わせながらスーツをクローゼットに仕舞い寝巻きに着替えていく。しかし、このままだとスーツにニオイやらがこびり付きそうな気がするが、この男にはもうそこまで気にする余裕はなさそうだ。先程からあらゆる家具に手をつきながら歩いている辺り相当飲んでいる様に見える。

 

「もうだめだ...眠い」

 

 酒による眠気か疲労による眠気か、はたまた両方か、布団に横になるやすぐに男は気持ちよさそうに寝息を立てて寝てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし男は眠気のあまり、ある事を見落としていた。電源を落としているはずのPCのディスプレイがひとりでに光だし、ある言葉を映し出していることに――。

 

 

 『提督が提督業に復帰しました これより艦隊の指揮に入ります』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 男は夢を見ていた。数年前のゲームで遊んでいた頃の夢を。

 

「よっしゃ!タ級沈んだ!」

 

 まだ彼が仕事に追われることなく、自分の時間というモノがあった日の事を――。

 

「あぁ!大破か...まぁ仕方ないよなぁ単縦だしな」

 

 カチカチっとマウスをクリックしながら彼が遊んでいるゲームの名は「艦隊これくしょん」。艦娘と呼ばれる過去の艦艇をモチーフに擬人化されたキャラクターをコレクション、育成し、自分は提督となってキャラクターを指揮するブラウザゲームだ。

 このゲームは深海棲艦と呼ばれる未知の敵と艦娘が戦い、海域を奪還し、制海権を確保する流れになっている。

 

 そんなゲームを彼もプレイして敵を倒していた――のだが、どうやらその敵に手痛い一撃を貰い、やむなく撤退を決断していた。

 

「これで途中撤退は何度目だ...バケツが溶けるぜ」

 

 やれやれ、と項垂れながらもどうやら満更でもないらしい。ニヤニヤしながら彼が見ている視線の先には――。

 

「へへっ相変わらずかわいい姿しておる」

 

 大破という文字と一緒に服が焼け落ち、砲塔やら艦艇の一部を身に着けている女の子のイラストが映っていた。

 これこそがこのゲームの人気に火がついた一つの要素、脱衣だろう。

 普段はキッチリセーラー服や衣装を身に纏っているキャラクターだが、敵の攻撃を貰い、ダメージが一定以上蓄積すると服が一部脱げたり焼け落ちたりする。偶に際どい脱げ方をする子もいるものだから余計テンションも上がる。

 

 ただそれもいくらでもできるわけでもないし、修理をしなければその子は次の戦闘には出せなくなる。いや、出せるのだが――轟沈するリスクがある以上、ワザと未修理で出す人はいないだろう。愛着がある子なら余計失いたくはない。

 

 それも彼はわかっているのか、ニヤけながらもすぐにその子を修理させた。

 

「さぁーって次はどうするかなぁ。いっその事今日はもうやめとくか?」

 

 もう何度目かわからない途中撤退。このままジリジリと続けていてもボスにたどり着けなければ意味がないし、出撃するごとに資源も減っていく。資源が尽きれば修理や補給もできなくなり、完全に打つ手が無くなってしまう。それだけは最低限避けなければならない。

 

 うむむ、としばらく長考した後、彼はブラウザを閉じて休憩がてら布団へと寝転ぶ。長時間のプレイと度重なる途中撤退で彼の体と精神はそれなりに疲れていた。

 

 ゴロゴロしながらスマホを片手にこれからどう攻略しようか、と考えながら彼はふっと呟いた。

 

「あーあ。俺が直接ルート選べれば楽なのになぁ...」

 

『選べるようにしてあげましょうか?』

 

「...あ?」

 

 別に誰かの返答を求めるために言ったわけではないし、何より彼は一人暮らしで他人の声が聞こえるはずがない。ただ自分が今までプレイしてきて思ったことを呟いただけ。なのにハッキリと聞こえた何者かの声に軽く頭が真っ白になった。

 

「...気のせいか?」

 

『だと思いますか?』

 

「...誰だ!出てこいこの野郎!」

 

 彼は一人暮らしの為他の人間の声がする事はまずない。

 それなのに聞こえてくる声に彼は心の中で苦笑する。ついに幻聴が聞こえる様になっちまったのか、と。

 すると急に金縛りの様に体が動かせなくなり、ナニカが自分の頬を触っているような感覚と温もりを感じた。

 

『私は...XX。私"達"には貴方の力が必要なんです..."提督さん"』

「は――」

 

 何が起こっているのか、それすら考える間もなく突如襲っていた眠気に支配され、間髪入れずに意識が遠のいてしまう。

 

 

 

 

 

 

『お願いします提督さん...私達を助けて...』

 

 彼の意識が遠のく中、振り絞ったような、まるで祈るかのようなか細い声だけを頭の中でこだまさせて。




初回なのでこれで許してください。
ぼちぼちやっていきたいですね。
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