MASKED RIDER UNI ~ラステイションの女神候補生   作:日向春季

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  記念すべき第一話です。ユニちゃんが登場するのはこの次のお話です。本文に入る前に

 いくつか伝えておかなければならないことがあります。

 ・剣崎が出てくるのは大体物語の中編くらいから

 ・ハブラレンゲル二代目(笑)こと橘の先輩でギャレンのライダー予定者だった

  桐生さんという人がこの物語の前半を橘と一緒に活躍します。

 ・物語初期から伊坂はボードに所属、スパイダーアンデットを封印したレンゲルの

  ベルトを既に開発し、またカリスのジョーカーラウザーはこの作中では、ライダー

  システムの礎となったオリジナルシステムとしての独立した一つの変身ベルトと

  して登場します。

 ・剣崎が登場してから数話後にボードは壊滅します

 ・封印されていないカテゴリーAはスペードとハートになっています。

  以下の四点を念頭に置きながら、読み進めていくことをお勧めいたします。


THE BEGIN

  

   西暦2004年、人類基盤史研究所(BORAD)は

  「人が地球を制した背景には、進化論では説明できない理由が存在する」との

  過程に立ち、その理由を究明するために作られた機関である。

  彼等は探求の末、不死の生命体を発見し、これらが様々な生物の祖であるとした。  

   アンデッドと名付けられた生命体は紆余曲折を経て53枚のカードに封印される

  ことになった。しかし、何者かの手によってBORADに封印されていたアンデットの

  大半の封印が数年前突如解かれてしまう。

 

   解放されたアンデットは人間を襲い始め、事態を重く見たBORAD創始者、

  天王寺博史は自らの部下であり、BORAD所長の烏丸啓の指揮下において、

  これらの再封印を行うべくアンデットの能力を応用した特殊装備、ライダーシステムを

  開発する。封印解除を免れたカテゴリーAのカード、クローバー、ダイヤのアンデットと

  最も適性の高かった二人のライダーとともに事態を収集すべく、彼等は日夜

  アンデットとの戦いを繰り広げている。

 

 

 

  「現地点より、北西12キロ地点にアンデットの反応を確認。

   至急ライダーは急行してください」

 

   スピーカーが告げた情報が俺の意識を覚醒させていく。

 

  「了解。ポイントに着いたら即刻戦闘を開始します」

 

   大急ぎでギャレンに関する書類をまとめ、BORAD本部の地下に保管されている

  ギャレンバックルを取りに行く。

   BORADの最下層にあるライダーシステムが安置されている部屋に入ると、そこには

  先輩である桐生さんがいた。

 

  「すっかりライダーぶりが板についてきたじゃないか。ん?橘」

 

  「いいえ、俺なんか駆け出しもいい所です。桐生さん」

 

   俺がこのBORADに入ったのは四ヶ月前、そしてつい一月前に初陣を飾った。

 

  「そこまで不安がることはないぞ。何せ初陣でアンデットに覆いかぶさられ、

   絶叫しながらも的確に急所を撃ち、一人で封印したのは流石だったぞ。その調子で

   今回もやれば何とかなる」

  「まぁ、そうなんでしょうけど...」

 

   そう、俺はまだ戦闘経験が今回の出動を含めたった二回しかない。しかも、その上

  自分で封印したというアンデットとやらも、今、自分の目の前にいる男、桐生豪が殆ど

  仕留めた様なものなのだ。

 

     

   桐生豪。

  BORAD所属のライダーシステム適合者にして、仮面ライダーレンゲルとして数多くの

  アンデットをたった一人で封印してきたBORADの切り札ともいえる男。

   俺はこの人の下で、二月半地獄のような訓練を受け、晴れて旧型ライダーシステムの

  適合者として認められた。

   ギャレンバックルとレンゲルクロスを携えた俺達は地下駐車場に停めてある相棒の元へと

  向かいながら簡単な打ち合わせを始めた。

 

  「さて、橘。今回のアンデットは奇しくもカテゴリー8だ」

  「ええっ、そんな!!」

   苦い思い出がまるで走馬灯のように俺の脳裏をよぎり、思わず頭を抱え込みそうになる。

 

  「冗談だ」

 

   そんな俺を楽しげにからかう桐生さん。彼は少し笑った後、今までとは打って変わった

  真剣な面持ちで話しはじめた。

 

  「橘、今回は少し事情が違うかもしれん」

  「はい」

  「カテゴリーAが出現した」

 

   何だって!カテゴリーAが出現した?!

  内心の動揺が顔に出てしまいそうになるが、それを無理やり押し込める。

 

  「どのスートのAですか?」

  「おそらくハートだ」

  「マンティスアンデットは上級アンデットにおいて、上位に入る攻撃力を誇っている。

   おそらく今の俺とお前が協力しても倒せる確率はかなり低い」

  「そんな...」

  「ああ、だから今回の戦いはあくまでも様子見だ」

 

   アンデット、つまり生物の始祖となる53体の存在には四つのカテゴリーと12のランクが

  存在する。どの生物の始祖にも属さないジョーカーアンデット、そしてライダーシステムの

  根幹をなすカテゴリーA、K、Q、J、Xという順番でヒエラルキーが成立している。

   現在BORADが回収したアンデットは。カテゴリーAが二体。クラブのスートが三枚、

  ダイヤのスートが三枚。そしてBORADが厳重に保管しているスペードのカテゴリーKの

  計九枚だ。

 

   しかし、俺よりアンデットとの戦いに慣れているとはいえ、桐生さんも上級アンデット

  とやりあったのはたったの一度しかない。

   そう考えてみればこの判断も至極当然と言えるかもしれない。

 

  「そうですね。カテゴリーA以外のアンデットが出現したらまずはそいつ等から倒して

   いけば、漁夫の利が狙えるかもしれませんね!」

  「その通りだ。ほかに質問はあるか?」

  「ありません」

  「それじゃ、行くぞ」

  「はい!」

 

   本当は怖くて怖くて堪らない自らの心を無理矢理奮い立たせ、俺はレッドランバスに

  飛び乗り、アンデットの出現場所へと向かった。

 

 

   橘の奴め、本当に困った奴だな。

  アンデットが出現したポイントに向かってグリンクローバーを走らせながら、俺は後ろを

  着いて来ている後輩の事を考えていた。

 

   橘朔也。BORAD所属の第一号ライダーシステム、ギャレンアーマーの適合者。

  彼はBORAD創始者である天王寺博史氏の経営する病院の血液検査により、アンデットとの

  融合係数が高いことから直々に烏丸所長がスカウトした逸材だった。

 

  『ヒドォオヂョグッテルトヴットバスゾ!!』

 

   何を言っているんだコイツ?

  それが俺の彼に対して初めて抱いた第一印象だった。まだ大学を卒業してから日が浅く、

  契約社員や派遣社員として働いている青年の住むアパートに黒ずくめのスーツで所長と

  研究員で押しかけたことはまるで昨日の様に思い出すことが出来る。

 

   興奮する橘を何とか説得してBORADに連れてくることに成功した烏丸所長と俺は、今日に

  至るまでありとあらゆることを教えてきた。戦い方、大学院レベルの生物学、物理学、そして

  アンデットの事を。

   最初はオカルトや超常現象の類を信用しない一般人だった橘にギャレンバックルを持たせ、

  ライダーに変身させた時、腰を抜かしながら橘は呟いた。それから橘は持ち前の優秀さを

  発揮し、通常では半年かかる訓練課程を二ヶ月半で終了した。そして、ついに先月、橘は

  自身の初となる初陣を飾ったのだった。

 

  「桐生さん、前、前、前!!!」

  「こんなところに人だと?!」

 

   橘の悲鳴の様な叫びが聞こえたため、俺は慌てて前を見た。

 

   今俺達が走っているのは地元の走り屋の間で有名な峠だ。しかも今は夕暮れ時だ。なのに

  上半身が裸で、ジーンズの男がそれも都会ならともかく、昼夜の気温差が激しい山にいるの

  だろうか?

 

  「上級アンデットか?!」

 

   そう呟いた途端、ワオオオン!!とまるで狼が吠える様な咆哮が聞こえた。

   繋がってはいけない点と線が凄まじい速度で結ばれていく。

 

  「変身!!」

 

   <OPEN UP>

   無機質な機械音と共に紫色の光が俺の体を包み、仮面ライダーレンゲルへと変身を遂げる。

 

  「橘!!しっかりしろ、気を確かに持て!!」

  「ヒャアアアアア!!!!!」

 

   いきなりのアンデットの急襲に不意を突かれた橘の心は、戦いが始まる以前から既に

  ボロボロだったのだろう。情けない悲鳴を上げながら橘はレッドランバスを全速力で

  走らせ、敵前逃亡をしてしまった。

 

  「ハハハハハ、なんともまぁ情けないライダーだな!『ヒャアアア』だとさ!!」

 

   げらげらと笑い転げながら俺に話しかけてくるアンデット。

   俺はグリンクローバーにブリザードのカードを挿入し、橘の後を追わせた。

 

  「フン、たかがアンデット風情に俺達の策が分かるはずがないだろう?特に二足歩行が

   できるだけの犬にはな!」

  「あれが策か?お前ら人間の立てる作戦とやらは、随分とまあ緻密なんだな。ハハハハ」

 

   流石は上級アンデット。下級アンデットとは異なり一筋縄ではいかないな。

   だが、それでいい。

  今の橘に必要なのは、アンデットと十分に戦う実力よりも自分の中にある恐怖を

  自覚することだからだ。

   

  「ほぅお前、中々やりそうな奴だな」

 

   先程までの嘲りが嘘のように鳴りを潜め、純粋な殺意が俺に向かって叩きつけられる。

 

  「桐生豪。仮面ライダー」

 

   殺るか殺られるかのギリギリの綱渡りが俺を一つの武器へと変貌させていく。

  一切の余計な感情が俺の心から削がれるのを感じる。おそらく数秒後にはきっと橘の事も、

  俺の心からは完全に削除されるだろう。

 

  「ウルフアンデット。誇り高き狼の始祖だ」

 

   ワオオオオン!という高らかな一声と共にアンデットは仮初の人の姿を捨て去り、

  自らの真の姿を曝け出した。

   全身が強固な装甲と縦横無尽に生えた刃物で構成された姿はまさに人を喰らい、血肉を

  貪る魔狼そのものだった。

 

  「断言してやる。お前は今日ここで俺に封印される」

 

   ホルスターからカテゴリー2のスタッブビーを引き抜き、ラウザーにラウズする。

  <STAB>の音声と共に、ダガーモードからザッパーモードへとレンゲルラウザーが

  その形を変える。

 

   そして、互いの刃が交差した。

 

 

  「ヒャアアアアア!!!」

 

   畜生、畜生。なんで俺はこんなに情けないんだ!!

   今俺は上級アンデットの急襲を受け、桐生さんと離れ離れになってしまった。

 

  「変身」

 

  <TRUN UP>の音声とともに、オリハルコンエレメントが展開され、瞬時に俺の体を

  包み込み、ギャレンアーマーが装着される。

 

  「グガアアアア!!!」

   

   半分アンデットと化した、恐らくは人間であった存在が群れを成し、俺に襲いかかる。

  その数は23体だった。

 

   レッドランバスから飛び降りた俺はホルスターから、専用武装ギャレンラウザーを

  引き抜き、カードホルダーからスート3のカードを引き抜き、瞬時にラウズした。

 

  <UPPER>

 

   スラッシュリーダーがアンデットの力を読み込み、それに呼応するように俺の両拳に

  アンデットの力が流れ込んでくる。

 

   スート3、アッパーフロッグ。能力はパンチ力の増強。

  俺はそのまま襲い掛かってきたアンデットもどきに拳の雨をくれてやった。

 

   左の死角から不意を衝いた個体には裏拳と肘鉄を食らわせ、正面から襲い掛かって

  きた4体の個体にはストレートとフック、そして右横から襲い掛かってきた2体には

  ギャレンラウザーの銃弾を見舞ってやった。

 

  「はぁ、はぁ。どうだ?!」

 

   俺の攻撃を受けたアンデットはその衝撃に耐えられず、消滅を始めていた。だが、

  今の動きをしても総数の3分の1しか戦力を削ることしかできなかった。

   仲間達が次々に消滅していくという非常事態を受け、残りのアンデットもどきも

  遊びを棄て、なりふり構わず命を脅かす敵を殺そうとする明確な意思をあらわにしてきた。

 

  「クソッ、もう効果が切れたのか」

 

   俺はラウズカードの力が失効しつつあることを感じた。まだ変身は解けないだろうが、

  戦闘経験の浅い俺にとってこの状況は絶体絶命の大ピンチだ。

   残りのカードは残り二枚、スート7と8。しかもその内の一枚は戦闘用ではなく、

  索敵専用のカードだ。カテゴリー7のロックトータスと並行してコンボを組んで使おうにも

  相性が悪すぎる。

 

   じりじりとワーウルフ達が俺との距離を着実に詰める。

  今の俺には残り11体のアンデットもどき相手に立ち向かうことが出来る実力はない。

  現状においてギャレンラウザーと起死回生が絶対に見込めない手持ちのカードしかない

  俺はまさしく絶対絶命の窮地に立たされていた。

 

  「小夜子...」

 

   大学の頃から付き合っている彼女にはBORADのことは何も話していない。ただとある

  生物研究所に臨時職員として採用された。それだけしか伝えていなかった。

 

  『橘君、しっかりしなさい』

 

   そう言ってくれる君がここにいないことがとても心残りだ。

 

  「さようなら、小夜子。俺は君と会えてよかった」

 

   こうなってしまった以上、ラウズカードをラウズする事ももはや不可能だ。ならば、

  一匹でも多くのアンデットもどきを自分の道連れとしてあの世に送ってやる。

   覚悟を決めた俺は醒銃ギャレンラウザーのグリップを力強く握りしめ、そして...

 

  「小夜子オオオオオオ」

   

  <BLIZZARD CLOVER>

   次の瞬間、俺の覚悟を消し去る程の轟音と極寒の冷気を放ちながら、レンゲル専用の

  バイク、グリンクローバーが俺の目の前に救世主の如く現れた。

 

 

  「これでも、喰らいやがれえッ!!」

 

   右半身に溜めを作ると同時に、後ろ足の強靭なバネにより、ウルフアンデットは

  右肩から俺の体へと体当りしてきた。

 

  「甘いなッ」

 

   左に避けつつ、完全に伸びきった左足に足払いをかけようとするも、流石は上級

  アンデット。その気配を寸前で完全に察知し、ワザと足払いにひっかかり、受け身を

  完全にとり、そのまま俺との距離を十分に稼いだのだった。

 

  「人間風情にしちゃ、上手いことアンデットの力を制御してるようじゃねぇか。

   だが、この俺を追い詰めるには不十分だな」

 

   あれだけ激しく動きながら、息一つ乱さないカテゴリーJのあまりの強靭さに俺は内心の

  動揺を隠せなかった。

 

   BORADが開発したライダーシステムは現在三つある。橘のギャレン、そのデータを

  基にしたレンゲル。そして全てのライダーシステムの雛形であるカリスラウザー。

   しかし、二年前のアンデットの解放事件の為、ハート、スペードスートのカテゴリーAが

  消えた為にカリスラウザーは封印されることになってしまった。

 

   レンゲルのライダーシステムは他のライダーシステムと異なる仕組みがある。

  それは額の上にある三つの朱い水晶、通称スパイダー・スピリチアとよばれるライダー

  適合者の脳と封印されたカテゴリーAの力をリンクさせ、飛躍的にライダーの身体能力を

  底上げするシステムだ。

 

   言い換えれば、適合者の体を暫定的とはいえ一時的にカテゴリーAと似通った疑似的な

  アンデットの状態へ変化させているのだ。

   勿論、その恩恵により人間であれば致命傷になる程の一撃を受けてもかすり傷程度で

  済ませることが出来るし、橘には黙ってはいるが、レンゲルに変身している状態時では

  あるものの、制限時間つきで限定的にカテゴリーAの蜘蛛の能力を使うことが出来る。

 

   その反面、活動することが出来る時間は限られてしまっている。長くて三〇分、短い時

  には二分で変身状態が解けたこともある。俺にとってこの一長一短の新型システムは、

  まさに諸刃の剣なのだ。

 

  「やはり、カテゴリーAの力にお前は振り回されているな」

  「違うぞ。お前のしぶとさに呆れ返って物が言えないだけだ」

  「抜かせッ!」

 

   ニヤニヤ笑いながら、俺の懸念を言い当てるアンデット。

  何とか虚勢を張りつつも、未だに戻ってこないグリンクローバー、そして橘の安否が

  俺の心を締め付ける。その隙を衝いたウルフアンデットが自らの身体から生やした鋭利な

  ナイフを俺に向けて波の如く飛ばし攻撃してきた。

   面でダメなら点で撃て。真っ向からの勝負を棄てたその攻撃は精確に俺の体に次々と

  突き刺さっていく。

 

  「グアアアアア!!」 

   音速の刃を捌こうにも、スパイダー・スピリチアとのリンクが切れかかっている状態の

  今の俺では到底無理な話だった。

   踊るようにレンゲルの装甲を削り取っていく刃の群れは地面に膝をついた俺の姿を

  認めるなり、その主の元へと帰還した。

 

  「無様だなぁ、人間?最初はお前の事少しはやる奴だと思ってたが、どうやら単なる

   俺の過大評価だったようだな」

  「ハァ、ハァッ!まだま、グゥエッ?!」

 

   衝撃で手放してしまったレンゲルラウザーに手を伸ばそうとするも、見逃すこと

  なく、ウルフアンデットは正確無比な蹴りで俺の体を吹き飛ばす。

 

  「これで終わりだ。まずはお前が先に死ね」

 

   その一声と共に高密度のエネルギー体を収束させたアンデットは俺に引導を渡すべく、

  その一撃を放った。

 

 

   グリンクローバーの加勢により、俺はウルフアンデットの作り出したアンデットを

  一掃し、更に機を窺っていた下級アンデットを発見し、交戦。首尾よく封印することが

  できた。そして俺は先程まで桐生さんと一緒にいた場所に大急ぎで向かっていた。

 

  「桐生さん。無事でいてください...」

 

  <SCORP>のカードをギャレンラウザーにスラッシュする。

   使えないと思っていたカードだったが、ラウザーがこのカードをラウズしたとき、

  ギャレンのオーガンスコープには桐生さんの状況が鮮やかに映し出されていた。

 

   今の俺の手持ちのカードは、先程封印したカテゴリー2を入れて四枚。そして俺の

  ギャレンラウザーの残りAPは3700。幸いなことにこの3枚のカードでコンビネーションを

  組んだとしても残りAPは1300。仮にカテゴリーAが急襲を掛けてきても、撤退するには

  十分な数値だ。

 

   しかし、俺がこうしている間にも桐生さんは刻一刻と追い詰められていく。

 

  「間に合え、間に合えよ!!」

 

   俺の叫びに呼応するように速度を上げたマシンは遂に桐生さんにとどめを刺そうと

  しているアンデットへ攻撃が届く距離にまで詰め寄ることが出来た。

   吹き飛ばされ悶絶する桐生さん目がけ、アンデットが高密度のエネルギー体を

  放とうとする光景を見た途端、俺の頭の中で音を立てて何かが弾けた。

 

   俺は走行中のレッドランバスから自分を宙高く跳ね上げ、空中で勢いよく

  カードをラウズした。

   ここにきてようやく俺の接近に気が付いたアンデットは慌てて桐生さんに向けていた

  エネルギーを俺に対して放とうとするも、自動操縦に切り替わったレッドランバスと

  グリンクローバーの突撃によって体勢を崩し、アスファルトの上に叩きつけられた。

 

   

 

  <BULLET><UPPER><ROCK>

 

   空中で展開されたラウズカードが俺の体に浸透していく。地面に着地したと

  同時に、コンビネーションが成立したことを知らせる機械音声を合図に俺は

  走り出した。

 

   撃ち出された弾丸に石化能力を付与し、アンデットの動きを封じ込めていく。

  100mを5秒弱で走り抜く走力で成す術もなく後ろに下がっていくアンデットの背後に

  回り込む。

 

  「グオオオオオ!俺がぁああ、人に、ニンゲン風情にィィィ!!」

  「この一撃が、貴様の墓標だ!!」

  

   断末魔の叫びを上げ、必死に逃亡を図ろうとするアンデット。

 

   自分の体に残る全ての力を注ぎこんだ全力のストレートを、俺は無我夢中になって

  全力で奴の体に叩き込んだ。

 

   一発、二発、三発、四発、五発、六発、そして止めの七発目。

  突き上げるような左フックが奴の顔面を打ち抜いたと同時に、腰のアンデットの

  バックルに亀裂が走った。

 

  「ハートのカテゴリーJか...」

 

   一瞬、何処までも落ちていきそうな空虚な感覚に襲われつつも、それでも初めて

  自分の手で上級アンデットを封印することが出来た達成感と共に、俺はホルスターから

  コモンブランクを引き抜き、アンデットへ突き刺した。

 

  「ア、アア、ア....」

 

   弱弱しい呻き声を上げながら、ラウズカードに吸い込まれていくアンデット。

  その姿は苦しげで、悲しさが漂っていた。

 

  「よく、やったな。橘」

  「桐生さんッ!」

 

   レンゲルのマスクに覆われてはいるものの、その声を聴いた途端、疲れが溢れ、

  俺は地面にへたり込んでしまった。それと同時に俺に装着されていたギャレンアーマーも

  解除された。

 

  「大丈夫ですか?」

  「ああ、正直ダメかと思った。けど、よく戻ってきてくれた。

   ありがとう、橘」

 

   その一言で全身の緊張が抜けていく。だが、安心感に浸る前に、俺は彼に謝らなければ

  いけないことを思い出した。

 

   桐生さんが無事だったことで失念しそうになっていたが、先程俺は自分の身の安全を

  優先して、かけがえのない仲間を見捨てて逃亡してしまった。それを思い出した途端、

  俺は急に現金な自分がとても恥ずべき人間だと思いだした。

 

  「桐生さん、あの、俺は...」

   声に出して、その後にどんなふうに切り出せばいいのか分からず、俺は途方に暮れた。

  「先程は本当に申し訳ありませんでした!」

   よろめきながらも立ち上がって謝った俺を静かに見つめながら、桐生さんは口を開いた。

 

  「いいか橘。何を思って俺にお前が謝ったのかは分からない。ただ、恐怖を抱くことが

   恥とは思うな。それはこれからの戦いに必要な事だからだ」

  「自分自身に立ち向かえ。今言ったことをよく覚えておけよ。それとさっきの戦いは

   本当に見事だった」

  「桐生さん...」

 

   感極まった俺を余所にレンゲルの変身を解いた桐生さんは、グリンクローバーに乗り、

  エンジンを掛け始めた。

 

  「さぁ、BORADに帰って報告しよう。もう大分帰投時間が」

   果たして、俺がその一言を最後まで聞くことは無かった。

 

  『ヴェアアアアア!!!!!』

 

   突如として後ろから聞こえてきた声の正体を探るべく、慌てて振り返った俺が

  見たものは、大きな鎌を振り上げたカテゴリーAが今まさにその兇刃を俺に振り下ろす

  所だった。

 

 

 

  「橘っ!」

   迂闊だった。戦闘が終わった後は速やかに帰投すべきだった。

   『今回は様子見だけだ』そう先程自分で橘に言ったじゃないか、

 

   ウルフアンデットを橘が封印した時点で、俺は橘を連れ、即座にここから離脱すべき

  だった。

 

   完全に俺のミスだ。

 

  「クソッ!変身!」

   俺の姿すら視ずにカテゴリーAは自分の武器である大鎌を投げつけてきたのを認めた

  俺はレンゲルクロスを展開し、そのままそっくり弾き返してやった。

 

   意味の分からない音の羅列を呻くように発声したカテゴリーA、マンティス

  アンデットは弾き返された鎌を難なくキャッチし、俺に襲い掛かってきた。

 

   激しい鎌と杖の応酬を俺とカテゴリーAは繰り広げた。

  死神の持つような大鎌。それを片手に一つづつ持ちながら縦横無尽に一糸乱れぬ独特の

  リズムに乗りながら、踊るようにカテゴリーAは全力の斬撃を叩きこんでくる。

 

  「カードが、カードがラウズできない!!」

 

   一方の俺も、何とかクラブのカテゴリーA、スパイダーアンデットの力を十二分に

  引き出して戦うも、好戦的で気性の荒いマンティスアンデットの斬撃を防ぐのに精一杯で、

  防御から攻撃に転じることが中々出来ない。

   また気色の悪い声が聞こえてきたと同時に、より一層マンティスアンデットの攻撃は

  激しさを増す。

 

  「シャッ!」

 

   一瞬の隙を突き、蜘蛛の糸を左指からカテゴリーAの血のように赤い目に張り付けた

  俺は、そのまま十分すぎるほどの距離をとり、カードをラウズしていく。

 

   この渾身の一撃であのアンデットが、封印されることは殆ど皆無だろう。しかし、

  少なからず足止めには成る筈だ。

   後の事も未来の事も何も考えるな。

  重要なのは今であり、この全力の一撃を確実に目の前のバケモノにぶち込む事だけだ。

   他には何も必要ない。

 

  <STAB><BLIZZARD><POISON>

  <ABSOLUTE SPIARS>

 

  『ヴェアアアアア!!!』

 

   怒りが膨れ上がると同時に力が最高潮にまで跳ね上げたマンティスアンデットが、

  俺の全てを賭けた一撃を迎え撃つ。

  

  「くれてやるよ、この一撃をな!」

 

 

<Sealed Undead>

 

<Soot Heart:Category Jack;Wolf Undead>

 

<Soot Daia:Category Ⅱ;Armadillo Undead>

 

<51/53>




  一話目を投稿した後、二話目の推敲作業に入っています。ユニちゃんのツンデレ

 具合を剣の世界観に適用させるのがとても難しいです。アドバイスや感想があれば

 ぜひ聞かせてください。お願いします。

  今日が終わるまでにあと一話くらい投稿できるかな?
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