MASKED RIDER UNI ~ラステイションの女神候補生   作:日向春季

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 第三話の続きです。しかし、男性主体の作品と女性主体の作品のクロスオーバーって

 結構難しいものですね。書いているうちに他の女神候補生かノワールを登場させようか

 考えていたりしています。どうしようかな~?


CHARIS

  地下実験棟へ行く二十分前、私が橘に精神操作で干渉を

 

  した後、見計らったかのように桐生が私のいる部屋へと

 

  入室してきた。

 

  『桐生か、一体どうした?』

 

   俺はこの人間がとても嫌いだ。人間の癖に妙に勘が鋭く

 

   あのアンデット解放事件の後、必ずBORADを狙った上級

 

   アンデットが隠れ蓑として潜伏している可能性があると

 

   言い、抜き打ちの血液検査をするべきだと提案し、何度も

 

   何度も俺を追い詰めてきた。

 

  『烏丸所長が例の少女を使った実験をするらしいので、

 

   その準備を手伝ってこいとのことでした』

 

   何の感情も差し挟まず、慇懃な態度をそれと悟られずに

 

   ぶれることのない一定の距離を取り続けるのは、きっと

 

   この男が私の正体に絶対の確信を持っていることの証拠

 

   だろう。まぁ、だからと言って馬脚を現すようなへまを

 

   私は絶対に犯さないが、用心に越したことはないだろう。

 

  『分かった。橘を連れて先に行ってくれ。私も必要な物を

 

   準備してからそちらへ向かう』

 

   既に橘の手を引いて退室しようとしている桐生を見て

 

   いると、やはりコイツは危険だと確信する。

 

  『計画に支障が出ないうちに、桐生をBORADから追放する』

 

   当たり前だが、それが彼と私、そのどちらもが納得の

 

   行く結末だろう。

 

   私の計画を阻むものは誰であれ排除する。自分の中で

 

   当たり前の結論を再確認した私は、地下実験棟へと

 

   向かっていった。

 

 

  「うむ、ではみんなの意見がまとまった所で今日一番の

 

   最大の実験を行うことにしよう」

 

   所長のその一声を聞いた時、俺は橘へとアイコンタクトを

 

   送った。橘もそれに気が付いた様子で、他の三人にバレない

 

   ように短く首を縦に振った。

 

  「今から行う実験は、ユニ君と橘君のライダーとしての

 

   適性、つまり二体のカテゴリーAとの融合係数の適性値の

 

   再検査だ」

 

  「再検査ですか」

 

   首をかしげながら、努めて平静さを保ちながら桐生が

 

   烏丸へと問いかけた。烏丸はそれを説明の要求と受け

 

   取ったようだった。

 

  「そうだ。この実験の目的は、ユニ君というイレギュラーを

 

   最大限に生かす事と、橘君の新たな可能性を見出す事だ」

 

  「成程...それは伊坂さん立会いの下でですか?」

 

  「?そうだが、何か気になることでも?」

 

  「いえ、ただどうして今回の様な事態が起きたのか?

 

   答えを彼が知っているような気がしましたたので」

 

   一見、全面的に賛成しているように見えるが、その実

 

   桐生が私の事を疑っていることは明確だった。

 

  「何せ、伊坂氏は私や烏丸所長よりギャレンのシステムに

 

   精通している。ならば今回の一件について何らかの、

 

   あくまで仮説ですが、既に立てているように思えたので」 

 

   猜疑心を丸出しにした表情を一変させ、今度は私に阿る

 

   様な表情を向けてきた桐生。全く大した役者ぶりだと

 

   私は苦笑する。

 

  「レンゲルのシステムのベースは、ギャレンのシステム

 

   理論を流用しているに過ぎない。それに」

 

   流石に勘の鋭くないユニという少女が場の微妙な空気を

 

   察知し始めた様な気がした私は、敢えて自分の意見を

 

   押し通し、桐生を黙らせることを選んだ。

 

  「ライダーシステムには、融合係数が低い状態にあった

 

   場合は本来の力を発揮できなくなり、適合者の適合度に

 

   よって、装着者の心に潜む恐怖心を脳の一部で増幅させ、

 

   その心に破滅のイメージを植え付けてしまう、システム

 

   の性質そのものに起因する装着者への副作用がある」

 

   かつて烏丸から聞いたライダーシステムのコンセプトを

 

   そのまま桐生へと伝える。いくら疑いの目を向けたと

 

   しても、現に橘は戦闘経験が本当に乏しく、それが今回の

 

   ライダーシステムの不備の一つの原因を占めているのにも

 

   高い信憑性を持たせている。

 

  「また滅多に起こりうる事ではないが、逆に融合係数が余り

 

   にも高い=アンデッドとの融合度が高い場合は、ライダー

 

   システムでも、その変調に対応するべく何らかの方法を

 

   取ることがある。そう、従来のギャレンシステムに今の

 

   説明した事態に完全に対応できる機能を加えたのが、

 

   君の使っているレンゲルだよ。仮説を立てるまでもない」

 

  「分かりやすい説明をどうもありがとう、伊坂さん」

 

   平坦な声と、その能面のような表情の裏にはきっと腸が

 

   今にも煮えくり返りそうなほどの強烈な怒りが沸き

 

   立っている。皆の前で桐生の鼻っ柱を圧し折ってやった

 

   満足感を感じた私は、桐生に対し、これ見よがしに、

 

   見せつけるように慇懃に一礼してその場を後にした。

  

  「では、実験を始めましょうか」この一言と共に。

 

      

 

  「ん、ンンンッ!まぁ、なんだ。要は二人のギャレンと

 

   カリスの融合係数を比較して、それを元にこれから

 

   どうするのかを決める。ただそれだけの事だよ」

 

   折角、ユニ君が橘に歩み寄って和解し、これから

 

   行おうとする実験に橘が抵抗感なく入れる空気に

 

   なっていたのに、それを何が気に食わないのか、

 

   いい雰囲気をぶち壊しにした伊坂と桐生の二人に対し

 

   私は怒りを抑えきれなかった。

 

  「桐生君。一つの事に対して周到に取り組むのは、君の

 

   スタイルだということは私も重々承知している。だが、

 

   今はその時ではないだろう?」

 

  「申し訳ございません。橘同様、私も少々不安になって

 

   しまいまして、気になる気持ちを抑えられませんでした」 

 

   なまじ自分の身に降りかかるかもしれない不測の事態が

 

   こうして目の前で起きてしまった。

 

   私自身が作り上げたライダーシステムには、何の不備も

 

   出ないように、特に適合者とカテゴリーAとの融合係数の

 

   理論はカリスラウザーそのもののシステムをほぼ完全に

 

   再現したのだった。

 

   しかし、こうして万が一の不測の事態が起きてしまった

 

   以上、彼にもそうした事態が起きないとも限らない。

 

  「そうだな。ならば私は君の変身に支障をきたさない

 

   よう、君に自室待機を命じることにする。いいな」

 

  「はい、わかりました」

 

   憤懣やるかたないといった表情を浮かべた桐生は、

 

   そのまま実験棟から出て行った。

 

  「全く、困った二人だ」

 

   目の前にいる二人に同意を求めても詮無きことだが、

 

   私はそれでもそうせずにはいられなかった。

 

  「気にしないで下さい所長。覚悟は既に決めましたから」

 

   しかし、渦中の当人である橘の変わりっぷりは一体、

 

   どうしたことだろうか?

 

  「橘、何を勘違いしているのか分からないが、私は決して」

 

   決してお前の考えているようなことはしないぞ。その

 

   一言で勇気づけてやろうと考えていたのだった。

 

  「お願いします...ッ。烏丸所長...」

 

   歯を食いしばり、今にも泣き出しそうな表情の橘を

 

   これ以上不安にさせるのは絶対に避けたい私は慌てて

 

   実験の概要を二人に対して話しはじめた。

 

  「じゃあ、二人とも今から私のする説明をよく聞いてくれ」

 

  「まず、二人にはカリス、ギャレンの順番で変身して貰う。

 

   順番は橘が最初、ユニ君が最後だ」

 

   本当はギャレン、カリスの順番で調査したかったのだが

 

   橘のあまりの憔悴っぷりに、先にカリスを据えた方が

 

   橘の心の緩衝材となると判断した私は、咄嗟に実験する

 

   順番を変えた。

 

  「カリスラウザーで変身する時には、カードを普通に

 

   通すだけでいいからな」

 

  「「分かりました」」

 

   二人の返事を聞いた私は、ユニを連れてモニター室へと

 

   向かっていった。

 

  「橘、君の身体がそうなったのは私の責任だ」

 

   モニター室に向かう途中、私は足を止めて橘へと声を

 

   かけた。

 

  「だが、誰が何と言おうと私は謝らない」

 

  「所長ッ!」

 

   驚いた表情を浮かべたユニが、まるで信じられないと

 

   言わんばかりの視線を向けてきた。

 

  「信じているからだ」

 

   そう、例え恐怖に怯えていたとしても、その度に彼は

 

   何度もその恐怖を乗り越えてきた。

 

   だからこそ、尚の事、私は彼が必ず心の中にある

 

   自らの恐れを克服することが出来ると確信していた。

 

  「君がその恐怖心を克服して、必ず戦いへと戻って

 

   くれることを私は信じているからな。絶対に戻って

 

   こい。そして勝て。アンデットにも自分にも」

 

  「所長...」

 

   橘に背を向けた私は、今度こそ後ろを振り返ること

 

   なく、モニター室へと向かっていった。

 

 

     

   俺はなんてバカだったんだろう。

 

   先程俺に投げかけられたれた烏丸所長の激励の一言が

 

   怯えきった俺の心に再び熱さを取り戻させた。

 

 

  『ライダーシステムには、融合係数が低い状態にあった

 

   場合は本来の力を発揮できなくなり、適合者の適合度に

 

   よって、装着者の心に潜む恐怖心を脳の一部で増幅させ、

 

   その心に破滅のイメージを植え付けてしまうシステム

 

   の性質そのものに起因する装着者への副作用がある』

 

 

   確かに俺の心の中には、アンデットに対する過剰な

 

   までの恐怖心が渦巻いていた。初めてバットアンデット

 

   と交戦した時も、鋭い爪や牙で攻撃される度に、何度も

 

   無様に地面を舐めた。そして、止めを刺そうと俺に

 

   馬乗りになってきたバットアンデットの姿を認めた時、

 

   俺の中で何かが弾けたような気がした。

 

   奴の両手を掴んで、後ろに投げ飛ばした後、その腹に

 

   ホルスターから引き抜いたギャレンラウザーの引き金を、

 

   気が付いた時には無我夢中で引きまくっていた。

 

   ふと、俺の脳裏にあの光景が唐突に過ぎった。カテゴリーA

 

   と対峙した時とは異なり、その時の俺は情けない悲鳴では

 

   なく、雄々しい雄たけびを上げながら敢然とアンデットを

 

   倒すことだけを考えていた。

 

  「どうして忘れていたんだろうな、肝心なことを」

 

   アンデットとの融合係数を上げるには、自分の心が

 

   密接に関わってくると、かつてギャレンアーマーを

 

   手渡された時、烏丸所長から教えて貰った事があった。

 

  『いいか橘。ギャレンのライダーシステムの基本性能は

 

   これから開発されるシステムの中で最も低いものに

 

   なるだろう。だが、そんなことは些末な事なんだ』

 

  『何故ですか?』

 

  『封印されたアンデットには邪悪な意志を持つ個体がいる。

 

   そいつ等は隙あらばライダーの精神を乗っ取ろうと機を

 

   窺っている。封印され実体のないそれ等をねじ伏せる

 

   ことが出来るのは、そう、心の強さなんだよ』

 

  『心というのは不可思議でな、不可能を可能に、ありも

 

   しない幻を本当にあたかも存在するということを

 

   自らにも他人にも信じ込ませることが出来るんだ』

 

  『強くなれ橘。力に溺れる事無く、自らを見失わなけ

 

   れば、きっとどんなことも乗り越えられる』

 

   触れれば切れると錯覚する程の鋭さが伝わってくる、

 

   原始的で鋭角的なフォルムのカリスラウザーを腰に

   

   まいた俺は、昨日ユニが封印したハートのカテゴリーA

 

   のカードをテーブルの上から取った。

 

  「ライダーシステム適合者、橘朔也。変身します」

 

   勢いよく声を上げた俺はモニター室の応答を待った。

 

  「こちら烏丸だ。橘朔也、カードをラウザーに通して

 

   変身しなさい」

 

   もう、俺は迷わない。

 

   決意と共に勢いよくカリスラウザーに俺はカードを

 

   ラウズした。

 

  「変身ッ!<CHANGE>」

 

   その瞬間、俺の身体が黒に染まる。

   

 

  

  「橘朔也の変身を確認。カテゴリーAとの融合係数を確認。

 

   変身初期系数値、400eh、480eh、尚も上昇中。500、600、

 

   700eh、ギャレン装着時の最高系数値を遥かに超えて

 

   います!840eh。所長、840ehです」

 

   私はモニター室で橘さんの変身を固唾を飲み、

 

   見守っていた。

 

  「凄い、凄いですよ。所長。こんなことは初めてです」

 

   興奮した数人の研究員が歓喜の声を上げ、所長を褒め

 

   称える。

 

  「まだだ。変身が解除されるまで気を抜くな!」

 

   真剣な表情を崩さず、浮足立つ研究員を叱責した

 

   烏丸所長は橘さんに色々と質問をした。

 

  「橘君。どこか体に変調はきたしてはいないかね?」

 

  「ありません。ギャレンの時よりも体が軽い位です」

 

  「そうか、では次に武器を呼び出してくれたまえ」

 

  「はい。あれ?でも武器が見当たりませんが?」

 

  「いいから呼び出せと言っているだろう!!」

 

  「はっ、ハイ!」

 

   所長が声を荒げたと同時に、橘さんの手にはまるで

 

   当然のように、専用の弓型武器が浮かび上がるように

 

   手の中に出現した。

 

  「変身直後による脳波、心拍数の乱れは一切なく、しかも

 

   融合係数は800eh台を保持したままです」

 

  「うむ、そうか」

 

   変身を一発で成功させた橘さんが嬉しそうに小躍り

 

   しているのを見た私はなんだか嬉しくなった。

 

   でも、一つだけ気になることがあった。

 

   それは、ライダーにしては昨日倒したカテゴリーAの姿と

 

   あまりにも変身した姿が似通いすぎている事だった。

 

  「伊坂君。君はこれをどう思う?」

 

  「どうとは?」

 

   やっぱり烏丸所長も私と同じことを考えていたのだろう。

 

   あまりにアンデットの姿に似通いすぎているカリスの

 

   姿に、きっと不吉なものを感じたせいだと私は推測した。

 

  「あの姿だよ。あれでは仮面ライダーというより、むしろ

 

   カテゴリーAそのものではないのかね?」

 

  「私には、むしろあれこそが仮面ライダーらしく思えます」

 

  「ほう、どういう事かね」

 

  「ライダーシステムのルーツはジョーカーアンデットの

 

   アンデットを封印し、その力を用いた擬態能力に端を

 

   発します。であるとするのなら原初のライダーシステム

 

   であるカリスラウザーはその能力を色濃く受け継いだ

 

   完成したシステムと言えるのではありませんか?」

 

  「うむ、一理あるな」

 

   理路整然とした説明に納得した烏丸所長は満足そうに

 

   頷き、更に橘さんへと指示を出していった。

 

  「では、橘君。その手の中にある武器を使い、展開した

 

   ターゲットに命中させてくれたまえ」

 

   その一声と共に地面の下から射撃に使う人型の的が

 

   現れた。

 

  「静止した的が二五体。空中を飛び回る的が合計

 

   五十五体ある。それら全ての赤い点を撃ち抜きたまえ」

 

  「えっ、ちょ、ちょっと待ってくださいよ!!」

 

  「始めたまえ」

 

   橘さんの抵抗も空しく、烏丸所長は研究員に指示を

 

   出していく。

 

  「レベルは最高難易度まで上げたまえ」

 

  「しかし、」

 

  「いいからやれと言っているだろう!」

 

   戸惑う研究員を押しのけた烏丸所長は、コントロール・

 

   パネルのボタンを勢いよく叩き、橘さんの準備も

 

   待たないまま、性能テストを始めてしまった。

 

  「烏丸所長、今のは流石にひどすぎると思います」

 

   見かねた私もまた烏丸所長に抗議をしようとしたけど

 

   何故か伊坂さんがそれを止めてしまった。

 

  「黙って見ていろ。お前も無駄な事は絶対にしない

 

   タチだろう?きっと考えあってこその行動だ」

 

  「でも、」

 

   それでもやっぱり強引すぎるんじゃないのかな?

 

   と思った私は言葉を更に続けようとしたけど、

 

  「今の橘は絶好調だ。やる気に満ち溢れている。お前、

 

   今度こそ橘のやることに横槍を入れて見ろ?下手

 

   したら本当に変身できなくなるかもしれんぞ」

 

  「ッ!」

 

  「今回の一件が誰のせいでここまでこじれたのかを

 

   考えれば、そうは思わないか『女神候補生』さん?」

 

   悔しかったけど、今言われたことは全て事実だった。

 

  「それに、見てみろよ。ギャレンの時よりアイツ生き生き

 

   しながら動いているぞ」 

 

   伊坂さんはモニター室の窓を見遣りながらそういった。

 

   私もつられて窓を見ると、既に橘さんは殆どの的を

 

   撃ち落としていた。

 

  「信じられない...。本当にあれ橘さんなの?」

 

   昨日会ったばかりで何もわからない人にツッコミを

 

   いれるのは流石にどうかと思ったけれど、そんな事を

 

   差し引いても、目の前で展開されている光景は壮観

 

   だった。

 

  「記録更新中です。的の大きさがこれで20㎝を下回り

 

   ました。凄い、凄いですよこれ」

 

   研究員の興奮した声を聴きながら満足げな表情を

 

   浮かべる烏丸所長はテストの難易度を上げて続行を

 

   宣言した。

 

  「15㎝の小型飛行タイプの的を飛ばせ」

 

  「はいっ」

 

   ここにいる誰もが興奮した表情で橘さんの活躍を

 

   固唾を呑んで見守っていた。

 

  「80体飛ばしました。これで打ち止めです」

 

   最後の小型ラジコンの的が空中を物凄い速さで

 

   縦横無尽に駆けまわる。

 

   全ての的のポイントを撃ちぬいた橘さんは、一糸

 

   乱れぬ無駄のない動きで視界に入れるのが困難な

 

   小さな的を撃墜していく。

 

   先程呼び出した大鎌の様な、弓の部分が内側に折り

 

   畳まれた形態の弓から高熱エネルギーの塊の矢を

 

   宙に向かって連射する。折り畳まれた弓から放たれた

 

   矢の連射速度は軽く見積もってもマシンガンを軽く

 

   凌駕し、流星の如く、的が乱舞する宙空を舞った。

 

   踊るように、流れるように四方八方に光の矢を

 

   打ち出す姿は人の域を超え、伝説や神話のレベルに

 

   まで達していた。

 

   そこには昨日までアンデットに恐怖し、逃げようと

 

   していた情けない男はどこにもいなかった。

 

   更に、的に括り付けられたモニターが映し出す光景は

 

   その技量が卓越したものであることを知らしめすほどの

 

   凄絶なまでの光景を映し出していた。

 

   針の穴を通すような精密な射撃で一瞬の内に、小型の

 

   的に等間隔で蜂の巣の如くに矢を撃ち込み、それは

 

   一つの例外もなく一定の間隔で穴をあけるという、

 

   もはや射撃の枠を超え、人知すら超えた魔技と呼ぶに

 

   相応しく、更に跳弾の軌道を計算に入れての多角の

 

   攻撃により次々と的から的へと光の矢が突き刺さって

 

   いった。

 

  「いくらなんでも凄すぎよ...。ここまでくるとお姉ちゃん

 

   達を軽く超えてるどころか楽勝じゃない...」

 

   あまりの光景にそこにいた誰もが言葉を失っていた。

 

   それはビーッという全ての的を撃ち落とした効果音が

 

   聞こえてきても、あまりの衝撃に全員が身動きできない

 

   程のショックを与えていた。

 

 

  「所長、所長。あの~全部終わりましたよ」

 

   どこかすっとぼけた声で、だけど自身に満ち溢れた

 

   堂々とした声で橘さんが通信回線を通し、話しかけて

 

   きた。それにより、私達を支配していた沈黙が一気に

 

   破られることになった。

 

  「凄い、橘さん凄いよ!!」

 

   あれほどの凄い技を見せつけられた私の心は、橘さんに

 

   対する敬意で一杯になった。それは今まで自分が抱いて

 

   いたネプギアやお姉ちゃんへのコンプレックスが軽く

 

   霞んでしまうくらいにそれは凄まじかった。

 

   実験棟に続く階段を下り、分厚い鉄の扉を押し開け、

 

   そのまま変身を解いた橘さんの所へ私は駆けていった。

 

  「ユニ?どうした..って、うわぁッ」

 

   何も考えず、私は気が付いたら勢いよく橘さんの

 

   背中に抱き着いていた。

 

  「ハハッ!何か分からないけど、ありがとうユニ」

 

   その満面の笑みを向けられた時、私はまた胸の

 

   高鳴りを覚えた。

 

  「橘、君って奴は本当に隅には置けないな」

 

   烏丸所長の軽い一言に続いて、モニター室にいる

 

   研究員達の歓声がスピーカーを通して聞こえてきた。

 

   色男~、伝説の射手、BORADのエースは橘だ。等の

 

   やんややんやの歓声が私達のいる場所へと聞こえてきた。

 

  「所長、アンデットがまた出現しました。この場所の

 

   すぐ近くにある市民公園にて人を襲っています。

 

   桐生さんは別地点でアンデットと交戦中です」

 

   オペレーターの広瀬さんという女性の緊迫した声が

 

   通信機を通して、私達のいる実験棟へと届いてきた。

 

  「桐生さんも現在そこに向かっています。至急ライダー

 

   は現地へ向かってください」

 

   広瀬さんのオペレーションに続くように、今度は烏丸

 

   所長が興奮しながら私達へと指示を出した。

 

  「橘君、ユニ君。広瀬さんの通達した情報通り、ここから

 

   西へ2㎞の市民公園でアンデットが3体暴れている。

 

   恐怖を克服した橘君とユニ君のコンビならきっと

 

   この事態を収拾できると思う。さぁアンデット達を

 

   封印しに行きたまえ。ギャレン、カリス!」

 

  「「了解!」」

 

   自分の中にある恐怖心を克服し、新たな力を入手した

 

   橘さんと共に私は地下実験棟を後にした。

 

 

 

  

 

   カリスに変身した時、得も言われぬ昂揚感が俺の体を

 

   支配した。それと同時に、強敵と戦いたいという自分の

 

   本能が刺激されたと思った瞬間、溢れんばかりの力が

 

   体の中に漲った。

 

   アンデットに怯え、悲鳴を上げていた頃がまるで嘘の

 

   ようだ。他にもいくつか気付いたことはあるが、とにかく

 

   そういう風に自分を冷静に分析しながらアンデット達との

 

   戦いへと臨むのはこれが初めてかもしれない。

 

  「橘さん、頑張ってアンデットを封印しましょうね」

 

  「ああ、勝つぞユニ。最強のライダーはこの俺だ」

 

   傍から聞いたら恥ずかしくて悶絶しそうな台詞ですら、

 

   自信を持って言い放つとこれ以上無い程の鼓舞になる。

 

   率直に言って、今の俺は負ける気がまるでしない。

 

   心なしか顔を赤らめているユニと共に、俺達が

 

   愛用しているバイクを格納している区画へと辿り着くと

 

   そこには嬉しいプレゼントが置かれていた。

 

  「橘さん。これって...」

 

  「ああ、所長からの贈り物だ」

 

   目を真ん丸にしたユニが指差す先には、レッドランバス

 

   と並び立つようにして新たなバイクが止まっていた。

 

   

   SUZUKI・GSX1300Rハヤブサ、1999年モデル。

 

   カラーリングはメタリックサターンブラック。

 

   エンジンは1,299cc 4ストローク 水冷DOHC4バルブ

 

   直列4気筒。

 

   圧倒的な動力性能とは裏腹に、意外にも扱いやすい

 

   メガスポーツバイクとして広く知られている。

 

   日本国内最速を誇り、その最高速度は300km/hを超え、

 

   スーパースポーツを超える究極のマシンという意味を

 

   込め、「アルティメットスポーツ」と呼称されている。

 

   ハンドルの上の置手紙に目をやると、そこには

 

   烏丸所長の綺麗な字でメッセージが綴られていた。

 

 

   ――橘、この置手紙を読んでいるということは、きっと

 

   君は自身の中にある恐怖心を克服して、前に進むことが

 

   できたのだろう。これはそんな君へのBORADからの贈り物

 

   だ。ギャレンとブレイド専用のバイクは出来ていたのだが、

 

   カリスの事は想定していなかった為に専用機は作って

 

   なかった。レッドランバスには劣るが、それでもこれは

 

   アンデットなんかに負けない程の速さを誇っている。

 

   それでは、気を付けて行ってきたまえ。

 

    追伸、法定速度はきちんと守れよ。

 

 

  「所長...ありがとうございます」

 

  「良かったですね。橘さん」

 

   思わず涙腺が緩み、涙を零しそうになってしまったが、

 

   隣にいる少女の前でそんな無様を晒すわけにはいかない。 

 

   シルバーメタリックのヘルメットを被った俺は、

 

   イグニッションキーを差し込み、このバイクに命を

 

   吹き込んだ。手をかざし、ハンドルを一撫でした瞬間に

 

   カリスのベルトから力がハヤブサへと力が流れ込み、

 

   次の瞬間、カリスラウザーの力で強化変身した専用

 

   バイクがそこにはあった。

 

  「名前、つけないといけませんね」

 

   レッドランバスに乗り込んだユニが微笑みながら

 

   俺を見つめている。   

 

  「そうだな。なら、お前がつけてみるか?」

 

  「ええっ、いいんですか?!」

 

   突然の俺からの提案にびっくりした表情を浮かべた 

 

   ユニは、嬉しそうにはにかみながら名前を考え始めた。

 

  「うん、これが一番ぴったりかも」

 

   恥ずかしそうに指を突き合わせ、もじもじとしていた

 

   ユニだったが、やがて意を決した様にその名前を呼んだ。

 

  「シャドーチェイサー、っていうのはどう?」

 

  「疾駆する黒影か、いいだろう。まさにピッタリだ」

 

  「えへへ」

 

   照れくさそうに笑うユニはとても嬉しそうだった。

 

  「行くぞ、ユニ」

 

  「はいッ」

 

   そして、俺達はアンデットの出現地点へと向かった。

 

 

  「キャアアア~」

 

  「くるな、来るな来るなバケモノオオオオ!」

 

   BORAD本部から1㎞と離れていない地点にある、こだま

 

   市民公園ではアンデット達が哀れな獲物を求めて、

 

   人間達を襲っていた。

 

  「うわ、これって本当に本当の化け物じゃないか~」

 

   口調こそ暢気そのものだが、その実逃げ纏う人々の

 

   誰よりも顔が引きつっている二十代の青年がいた。

 

   彼の名前は白井虎太郎。年は23歳。どこにでもいる

 

   普通の青年だ。

 

  「凄いな、凄すぎるよこれ。もっと写真撮っておこう」

 

   目を輝かせながら、夢中になって人を襲うアンデットの

 

   姿をシャッターを通して収めているあたり、少しだけ

 

   自己中心的な気がしないでもないが、彼自身の自覚の

 

   なさも相まって、おっちょこちょいな青年と周囲には

 

   認識されている。

 

   彼の将来の夢はノンフィクションライターである。

 

   しかし、唯でさえ浮き沈みの激しい業界である文芸界に

 

   ぽっと出のペーペーの新入りが自分の『作品』を持って

 

   行っても相手にされることは絶対にないと確信した

 

   彼は、迫力の筆致で現実を抉り出せるテーマを日夜

 

   考えていた。そして彼が最終的に取り組もうと考えた

 

   のが、そう、都市伝説「仮面ライダー」についてである。

 

   流言飛語が飛び交うネットで情報を調べている時、偶然

 

   KINGという投稿者から投稿された二人の仮面ライダーの

 

   写真を見つけた彼は、つぶさに新聞記事に目を通し、

 

   KINGと呼ばれるアップローダーのアップした写真の風景を

 

   元に、アンデットが出現した地点を割り出し、その行動

 

   パターンを独自に分析、そして今日に至ったのだ。

 

   長年追い求めてきた都市伝説が嘘ではなく、本当だと

 

   確信した虎太郎は、歓喜のあまり後ろからアンデットが

 

   近づいてくることに全く気が付いていなかった。

 

  「イイイイィィィッ」

 

   気味の悪い声を放ちながら近づいてくる不気味な存在が

 

   既に自分が逃げる隙を立っていることを知らない虎太郎は

 

   面倒臭そうに背後の声の主へと注意した。

 

  「ちょっと~、今いい所なんだから邪魔するなよ~。一体

 

   何のつもりなんだよ~」

 

   無論、目の前にいる人間を襲うつもりである。

 

   上級アンデットではないものの、カテゴリー10であるこの

 

   アンデットは人語を解することが出来る高い知能を備えて

 

   いた。無論そんなことを虎太郎が知る由もなく...。

 

  「って、ちょっとちょっと嘘だろって、うわあああ!」

 

   振り向きざまの小太郎の動揺もなんのその、最後まで

 

   彼が言葉を言い終える前に、テイピアアンデットは

 

   彼の腹に強烈な蹴りを放ち、彼を地面に引きずり倒して

   

   その上に馬乗りになった。

 

  「うぎゃあああ!!!ヤメロ、やめてぇ、ヤメテ下さい

 

   お願いしますっ、食べないで下さい。僕不味いから、

 

   食べても美味しくないよ~!!」

 

   腹に熱い痛みを感じて悶絶しながら、声を上ずらせ、

 

   見事な三段活用をテイピアアンデットに虎太郎は

 

   喰らわせるも、カテゴリー10は全くの無傷。ますます

 

   分が悪くなった虎太郎は今度はアンデットに対して

 

   懇願を始めた。

 

   しかし、そんなことでアンデットが引き下がるわけもなく、

 

   アンデットは彼の頭に噛みつこうとし始めた。

 

  「ぎゃあああ!臭い汚いヤメロヤメロオオオオ」

 

   何とか自由な方の左腕でアンデットの頭を叩くも、

 

   ドスの効いた唸り声で威嚇された虎太郎はいよいよ

 

   観念した。

 

  「虎太郎、アンタいつまで無職のつもりなの?!」

 

   小生意気な従妹の天音の声がどこからか聞こえてきた。

 

  「虎太郎、早く仕事を見つけなさい。いい年してフラフラ

 

   してみっともない」

 

   小さい時から頭の上がらない姉は、既に結婚して喫茶店の

 

   オーナーを立派に務めている。そんな彼女達と比べて、

 

   自分はなんて情けないんだろうと、今わの際の走馬灯を

 

   見ながら虎太郎は考えていた。

 

  「死にたくない~、死にたくないよ~!」

 

   涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながらも、虎太郎は最後

 

   まで諦めることはなかった。

 

   しかし、振り回した左腕をめんどくさそうな一薙ぎで

 

   完全に圧し折られた後、彼の意識はそこで途切れた。

 

 

 

   公園に着いた私達は、逃げ惑う人々の流れを見て、

 

   アンデットがいる場所の大体の目星をつけた。

 

  「俺は広場の方に向かう。ユニはアスレチックコーナーを

 

   頼んだ。桐生さんに会ったらそう言ってくれ」

 

   バイクを路肩に止めた私達は公園内のマップを見ながら

 

   アンデットを倒す分担を相談していた。

 

  「分かりましたけど、でも本当に大丈夫なんですか?」

 

   そう、つい先程の神がった射撃技術を見せつけられた

 

   としても、ハートのスートに封印されたアンデットは

 

   実戦で使うことが出来ない上級アンデット2枚。ギャレン

 

   のように戦闘用に使えるラウズカードが一枚もない。

 

  「ああ、戦闘用のラウズカードがないのは確かに痛い。

 

   だが、今の俺は全く負ける気がしない。だから大丈夫だ」

 

  「でも、」

 

   心配性で素直になれない性分は姉譲りだねと、親友の

 

   姉に言われたことが脳裏をよぎる。

 

   理由は分からないけど、もっとこの人の傍にいて一緒に

 

   戦いたい。いつの間にか心の中でユニはそう思っている

 

   自分がいることを改めて自覚した。

 

  「二人で戦った方が効率が...」

 

   いいじゃない。と言おうとしたその瞬間、木々の間を

 

   過ぎる黒い影の姿を二人は同時にとらえていた。

 

  「これ以上時間を無駄にはできない。変身するぞ」

 

   まるで俺の戦いを邪魔するなと言わんばかりの態度に

 

   カチンときた私は、何か言い返してやろうかと思ったけど、

 

  「変身<CHANGE>」

 

   カードをラウザーにラウズした橘さんはそのまま何も

 

   言わず広場の方に駆け出していった。

 

  「ああっ、もうッなんなのよ一体」

 

   説明できないもやもやした気持ちを抱えながら、私も

 

   時を同じくしてギャレンへと変身した。

 

   ギャレンアーマーに合わせて、私の身体は成長し、

 

   勢いよくゲートを潜り抜けた私の姿は昨日と寸分違わぬ

 

   あの姿へと変わっていた。これ以上うじうじしても

 

   仕方無いと判断した私は、背中にある六枚の翼を展開し、

 

   アスレチックコーナー目掛け、飛んで行った。

 

 

  「ハートの3とダイヤの4か」

 

   二体の下級アンデットを相手取り、何とか封印した俺は

 

   先程橘がカリスラウザーに完全に適合したとの知らせを

 

   烏丸所長から連絡が来たのと同時に、広瀬からの連絡を

 

   受け、橘たちがアンデット達と交戦中だという市民公園へ

 

   急いだ。

   

  「待ってろよ。橘、ユニ」

 

   公園に着いた俺は地図を見て、まずは自分の位置から

 

   一番近いアスレチックコーナーを目指すことにした。

 

 

  「ヤアッ、フンッ!」

 

   俺がアスレチックコーナーに着いた時、ユニは勇ましい

 

   掛け声と共にアンデットへと殴り掛かっていった。

 

   右半身に槌のような武器を装備し、両足はまるで強靭な

 

   発条のような姿をしたアンデットと交戦していた。

 

   ギャレンラウザーに<BULLET>のカードをラウズした

 

   ユニはトリガーを引き、光弾を勢いよくアンデットに

 

   目掛けて、距離を取りながら発射していった。

 

   一方のアンデットも、既に何発かは体に貰っている

 

   ようだったが、行動不可になるには程遠く、右手の

 

   ハンマーを振り子のように振り回し、遠心力を加えた

 

   超重量級の一撃を地面へと叩きつけた。

 

   ドオオォン、ドゴオオン!!

 

   地面に穿たれていくクレーター、そして巨大な槌が

 

   叩きつけられるたび、俺とユニは体勢を崩し、立て直す

 

   ことが出来なかった。

 

  「もう怒った!この一撃で封印してやるッ」 

 

   よろめきながらも何とか空中に飛び上がったユニは

 

   ギャレンラウザーにカードをラウズしようとした。

 

   しかし、

 

  「駄目だ!攻撃するな」

 

   <UPPER>と<ROCK>のカードを何も考えずにホルダーから

 

   引き出し、ラウズしようとした彼女の背後から虫のような

 

   外見をしたアンデットが襲い掛かった。不意を突かれ、

 

   翼をもがれたユニは地面へと叩きつけられた。

 

   <BILLZARD>のカードを用い、上空にいるアンデットの

 

   動きを止め、<STAB>のカードで勢いよく貫き、何発もの

 

   拳を叩き込む。

 

   ダメージに耐え切れずその体を爆発させたアンデットの

 

   ベルトのバックルがカチンッ、という音とともに罅割れた。

 

   何とか痛む体を起こしたユニは、よろよろしながらもカードを

 

   引き抜き、アンデットへと投げつけた。

 

   苦悶の叫びを残しながら封印されるアンデット。

 

  「ありがとう、桐生さん」

 

   おぼつかない足取りで先ほど封印したカードを俺に手渡した

 

   と同時に、ユニの返信が解け、生身の彼女が倒れこんできた。

  

  「油断するからだ。まったく」

 

   そのまま気絶したユニを安全な所に安置した俺は渡された

 

   カードとともに橘のいる場所へと向かっていった。

 

 

  「キイイイイイッ!!!」

 

   奇妙な声を裏切らないユーモラスな外見をしたアンデットが

 

   逃げ遅れた男にのしかかり、今にもその鋭い牙で捕食しようと

 

   するのを見つけた俺は、カリスアローを展開し、高エネルギー

 

   の矢の群れを一斉にアンデットめがけて射た。

 

  「ギイイイイイイッ!」

 

   一射も外れることなく、光の矢がその体に過たず直撃したのを

 

   確認した俺はそのまま叫びながらアンデットに向かって

 

   走り出した。

 

  「ウオオオオオオ」

 

   100mの距離を五秒で詰めた俺はそのままブレード展開した

 

   カリスアローでアンデットに切りかかろうとしたが、

 

   運悪く避けられてしまった。

 

  「これがカテゴリー10か、面白い」

 

   俺は気を取り直して、未知数のアンデットと一旦距離を測る

 

   ことにした。

 

   左右の肩に奇妙なレバーのような物体がついており、骸骨の

 

   ような顔の中央に独特の鼻のようなアンテナを持ったカテゴリー

 

   10の姿はそれだけで俺の警戒心を引き上げる。

 

   俺が動かずに様子を見た右肩のレバーをグイ、と下げると

 

   同時に不快な音が周囲に響き渡った。

 

  「こんな音、大したことない!」

 

   鼓膜が音の奔流を受け流せずに悲鳴を上げる。俺の体も

 

   この音を聞き続けていれば変調をきたし始めるだろう。

 

   ならば、動けなくなる前にその音の原因を断ち切るまでだ。

 

   秒間300万回の振動を起こすカリスアロー・ブレードモードは

 

   攻撃する手段を持たぬこのアンデットには抜群に相性が良かった。

 

   相手の頭上に飛び、錐揉み回転をしながら切りつける。

 

   たまらず地面に倒れこもうとするカテゴリー10への攻撃の

 

   手を緩めず、俺はブレードを振り回し、相手の腰を浮かせ、

 

   そのまま踵落としを決めた。

 

  「グギャアアアア」

 

   断末魔の叫びを上げながらも、腰のバックルが割れることは

 

   なかった。そのあまりの頑丈さに思わず溜息が漏れた。

 

  「橘、これを使え!」

 

   後ろを振り返ると、そこにはユニを背負った桐生さんが

 

   駆けつける光景があった。咄嗟に俺はベルトからカリス

 

   ラウザーを取り外し、ブレードへと取り付け投げつけられた

 

   カードをキャッチした。

 

   <CHOP>のカードと<FLOAT>のカードを順番にラウズし、

 

   その隙に逃げようとするアンデットの背中に、俺は強烈な

 

   一撃を放った。体が空中に浮いたと同時に、強力な推進力が

 

   生まれ、両腕にアンデットの力が宿った。カリスアローを

 

   ブーメランのようにして投げつける。鋭く巨大な鎌の一閃が

 

   カテゴリー10の背中を袈裟懸けに切り裂き、上空高くから

 

   勢いをつけて落下してきた俺の手刀が直撃した。 

 

  「このダメージなら、もう能力は使えないな!」

 

   最後の一言とともにベルトのバックルが開き、俺はそのまま

 

   コモンブランクを投げつけた。アンデットの体が完全に吸収

 

   されたのを確認した俺は、封印が確認されたアンデットの

 

   カードを拾い上げた。     

 

  「クローバーのカテゴリー10だったのか」

 

   封印したラウズカードを桐生さんに見せたと同時に、スートと

 

   カテゴリーが浮かび上がってきた。

 

  「ああ、そうみたいだな」

 

   頷きながら俺の肩に手を置いた桐生さんの表情はとても満足

 

   していた。

 

  「よくやったな橘。見事な初陣だった」

 

  「桐生さん」

 

   そのあとに俺は感謝の言葉を続けようとしたが、それを

 

   手で制した桐生さん。

 

  「まだギャレンに未練はあるか?」

 

   そう問いかけた桐生さんの目はとても真剣だった。

 

   確かに、ギャレンのシステムの適合者という自負は今も

 

   この胸に秘めている。しかし、現にこうして自分の中に

 

   眠っていた可能性を見せてくれた、この新たな力に惹かれ

 

   始めているのもまた事実だった。

 

  「そうですね。愛着があるのは事実ですけど、今はこの新しい

 

   力を使いこなすことしか考えてません」

 

  「そうか、どうやら迷いは吹っ切れたようだな」

 

   俺の出した答えに満足そうな表情を浮かべた桐生さんは

 

   にやりと笑い、俺の頭をぐしゃぐしゃと撫で回した

   

  「もうお前は一人前だよ。これからは手のかかる後輩の

 

   面倒を見てやってやれ」

 

   丁度その一言が言い終わるか終らないかという時、背中に

 

   背負われ、安らかに眠っているユニが目を覚ました。

 

  「桐生さん?もう終わったんですか...」

 

   痛みに耐えながら、顔をしかめてユニは俺達に質問した。

 

  「ああ、終わったよ。一体だけアンデットを取り逃がして

 

   しまったが、それを差し引いても4体封印できた」  

 

  「そうですか」

 

   それを聞いたユニは安心したようにまた意識を失った。

 

  「さて、帰るとするか」

 

  「そうですね」

 

   新たな力と四体のアンデットを手に入れた俺達は意気揚々と

 

   BORADへと戻っていったのだった。

 

 

  「ふぅん、あれが天王寺の言ってた空から落ちてきたライダー

 

   なんだ。結構かわいいじゃん」

 

   橘達が戦果を報告している間、『彼』は面白そうに

 

   そのやり取りを携帯で撮影していた。

 

  「別にアンデットや人類がどうなってもいいんだけどさ」

 

   その外見は年若い少年のように見えたが、その後ろに

 

   控える異形の存在が、顔も上げず地に伏しながらただの

 

   少年に傅いているのは、彼がアンデットの頂点の一角に

 

   君臨する『王』に他ならないことの何よりの証だった。

 

  「さあて、次はどいつで遊ぼうかな~」

 

   最強のカテゴリーK、コーカサスビートルアンデットは

 

   楽しげな笑顔を浮かべ、自らが巻き起こした一陣の風に

 

   乗りながら大空へと飛び立っていった。

 

   <Sealed Undead>

 

<Soot Heart:Category Ⅲ;Hammerhead Undead>

 

<Soot Heart:Category Ⅳ;Dragonfly Undead>

 

<Soot Daia:Category Ⅳ;Pecker Undead>

 

    <Soot Club:Category Ⅹ;Tapia Undead>

 

<46/53>




 最後は意味深な終わり方になりましたが、これ、後々の伏線です。一応この物語は原作

 ネプテューヌとなっていますが、テイストとしては仮面ライダー剣を主体に据えて書いて
 
 います。一応、TVで登場しなかったアンデット、そしてカテゴリーKは全部出します。

 次回は鎌田さんと金居さんを含めた上級アンデットが出てきます。BORADに潜伏した

 伊坂もその魔手を橘さんに伸ばし始めます。果たして三人はどうなるのでしょうか? 

 次回、CONFRICT お楽しみに
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