MASKED RIDER UNI ~ラステイションの女神候補生 作:日向春季
カテゴリーKをはじめとする四体の最強のカテゴリーK、その一万年越しの再会と、ユニちゃんが
ラスティションで起きたある事件の後のゲイムギョウカイの状態の二本立てになります。
「ねえねえ、シンヤ~。次どこにいく?」
「うーん、次は...、そうだカラオケでも行かないか?」
「えーっ、またぁ。でもいいよ。行こっか」
仲良く手をつないだカップルの下に一人の少年が
飛び出してきて、携帯電話のカメラ機能で写真を撮影
し始めた。
「ヒュ~、いいね、いいねぇ。仲良し二人のツーショット。
ハーイ、そこの彼女もにっこり笑って~、ハイ、チーズ」
「何ですかあなた。やめて下さい。ねぇ、写真を撮らないで
って言っているでしょ」
天真爛漫な彼女の困った声が聞こえたと同時に、携帯を
向ける少年に近づいたシンヤと呼ばれる大柄な男は
いきなり少年の胸ぐらをつかみあげた。
「おい、何やってるんだよお前。俺の彼女から離れろ!」
「お、お、お。何々?カッコいいナイトのご登場~?
いいねぇ~そのキレた顔。もっともっとキレてみようか」
自分と同じ位の年齢の少年が、嫌がる彼女に近づいて携帯に
付いているカメラの連写機能を使ってその表情を撮影して
いる。それが堪らなくシンヤを不愉快な気持ちにさせていく。
「テメェ、止めろって言ってるのが聞こえねぇのかよ!」
「うん。あれ?って言うか君誰?」
ラフなジーンズとポロシャツ姿の少年にシンヤは殴り
掛かる。しかし、その少年の身のこなしはとてもその
外見とは一致せず、その攻撃を余裕を持っていなし、
自分の殴り掛かる様まで連写している始末なのだ。
「アハッ、彼女のいる手前、綺麗に一発殴っていい所を
見せようとしているんだろ?残念。君のパンチ、全然
速くもなんともないよ?それに...」
いつの間にか自分と少年の間に人だかりができ始めて
いたのに気が付いたシンヤは、慌てて彼女を探し始めた。
「余裕だねぇ~。ほら、下半身にしっかり力入れた方が
いいんじゃないの~?次の瞬間、地面に君は這いつく
ばります。3、1!」
フラフラと何かに導かれるように人ごみの中からいなく
なる彼女の姿を探そうとした瞬間、後ろに回り込んだ
少年はそのまま彼の右膝を蹴り砕き、地面に這い蹲らせた。
「グアアアア!!痛ええええ!!!!」
「イェイ、はーい今週のベストショット撮影行きます。
撮影対象の方はベストスマイルで撮られて下さい。
お願いしま~す」
激痛にのた打ち回るシンヤの姿を楽しげに見ながら、
携帯電話のシャッターを狂ったように切る少年。
その常軌を逸した行動に、ギャラリーの表情は曇る
どころかますます熱中の度合いを高めていく。
「皆さんもこの貴重なシーンを一緒に撮りまSHOW!」
パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ!!!
少年の掛け声と共に、百を超えるシャッターの集中
砲火がシンヤの精神を目掛けて発射された。
「何なんだよ、お前一体誰だよ?何でこんな事するんだよ」
既に異常な状況に突然見舞われたシンヤの心は、既に
戦意などあろうはずもなく、ズタズタに引き裂かれていた。
「俺が誰かと問われれば、答えてやるのが世の情け」
徹頭徹尾そのふざけたスタイルをとり続ける少年は、
地面に倒れている自分を助け起こし、飛び切り邪悪な
表情で笑いかけた。
「KING。キングじゃなくてK、I、N、Gの方だから。ヨロシク」
気障ったらしいウインクでも、目の前にいる少年がそれを
すると、本当に何もかもがどうでもよくなってしまう。
自分の身に突如降りかかった大きすぎる不幸の衝撃に
呆然としているシンヤに更に追い打ちをかけるように
KINGと名乗った少年はいよいよその不幸を最高の物へと
すべく、最後の大仕上げへと段階を進めた。
「ねぇ、君の彼女、交通ルールって知ってる?」
親しげに肩に手をまわしながら、KINGが指差した方向
には、フラフラと覚束ない足取りで彼女が交差点を
それも点滅する信号を無視して、向こう側へと渡ろう
としている光景があった。
「ミホォォォォ!!」
「ほら、そこまで連れてってやるよ」
シンヤの絶叫をうるさそうに耳をふさぎながら、KINGは
軽々と彼の体を持ち上げ、ミホの元へとブン投げた。
「じゃ、お二人さん末永くお幸せに~」
ひらひらと手を振りながら、KINGは何とか体を起こして
車が激しく往来する横断歩道へと歩き出すミホへと
近づいていった。
徐々にあの異常な熱狂から覚めた人々が、自分達がただ
ならぬ状況に置かれている事に気が付き、騒ぎだすも
既に時は遅し。
法定速度を守った大型ダンプカーが唸りを上げて、巻き
込んだ全ての物を挽き潰すジューサーの如く、二人の
カップルを目の前で挽き潰した。
絶叫が木霊する中、ただただその憎たらしい程の余裕を
見せつけながら、自らが引き起こした最高のショーの
成果を見るべく、KINGは悠々と青信号になった横断歩道を
ゆっくりと渡り始めた。
「相変わらず人がいいんだな。クラブのカテゴリーK」
「君達程、バトルファイトや自分の趣味に関心を持たない
だけだよ。ヒューマンアンデットは約束を守った。私は
それだけでいい」
KINGによって引き起こされた交通事故を横目に二人の
男が並んで歩いていた。
歩道側をゆっくりと歩くターバンを巻いた異国の衣装に
身を包んだ男。その両腕には、先程のカップルがしっかり
抱きしめられていた。そして、余人には視認できない程の
目視不可能な透明の糸の束、まるでそれは蜘蛛の吐く糸の如く、
が彼等の腰にぐるぐると巻き付いていた。
その隣で気を失った二人を介抱しているターバンの男を
見遣る男は、洒落た洋服にその身を包み、高そうな
眼鏡をかけることによって、その怜悧さと知的さを
際立てていた。
「しかし、一万年越しの決着を着ける場所にしては、些か
趣きが欠けているとは思わんかね?なぁ、二人とも」
古風なモノクルを掛け、古臭い燕尾服に身を包んだ
初老の男性がまるで旧くからの友人を見つけた様な
気安い口調で二人へと近づいてくる。
「ますますもって解せないな。これも運命というのか?」
「一日の内に昔日の知り合いと会う人間。それが一万年前と
なると感慨や懊悩も軽く見積もって一万倍は超えるだろう。
なぁ二人共?最もここに集ったのは人間ではないがね」
「その冗談のセンス。間違いなくハートのカテゴリーKだな?
私達が行き着く所など、お前の冗談と同じく封印だろう?
思えば、俺達の交わす冗談は大抵その終わりに必ず殺し
合いが待っているんだよな。まさに気の利いたキリング・
ジョークってやつだ」
「死なない存在だけに、悪辣さだけが残る」
「「違いない」」
久々に会った同類との歓談に花を咲かせる三人、いや
彼等もまた人知を超えた人ならざる存在であることから、
三体、といえばいいのだろうか?とにかく昔日と積年の
宿痾を語り始めるのにはここは相応しくないと感じた
彼等はその場から遠ざかろうとする。しかし、
「誰かと思えば、日和見の蜘蛛と卑怯者のクワガタと
蟷螂のジジイか~。道理でおかしいと思ったんだよ。
あんな悪趣味な真似をするのはお前らしかいないって
なんで気が付かなかったんだろう?」
三人が忘れようもないその声の主の方向に向き直ろうと
するも、その僅かな間にKINGは彼等の正面へと回り込んで
いたのだった。瞬時に臨戦態勢に入る初老と眼鏡。そんな
二人の様子をKINGはただ一瞥しただけで、何の興味も
持たず、残りの一人へと話しかけた。
「スペードのカテゴリーK...」
「元気そうで何よりだよ。蜘蛛のおじさん。相変わらず
無益なボランティアに精を出してるの?」
「そっちこそ。カテゴリーKの癖に妙な人間らしさを求める
行動をとり始めるなんて、無駄の極地じゃないのか?」
彼等は嘗て一万年前のバトルファイトで、その刃を
交わしたことがある間柄だった。
蟷螂は蜘蛛と、蜘蛛は甲虫、鍬形は蟷螂、甲虫は鍬形と、
それぞれが最後の一匹となるべく、熾烈なまでの戦い
を繰り広げていたのだった。
刃を交えるごとに互いを理解し、時には協力し、時には
殺しあう。そして最後に敗者を封印する。一万年の歳月が
流れようと、彼等はあの戦いの日々を鮮明に覚えていた。
「ハハッ、何もしない退屈さを紛らわせるのには、これが
一番なんだよ。殺伐とした空気は嫌いだし、それに...」
最強のカテゴリーKが全て揃った中、一際強力な力を
持つスペードのカテゴリーKの身体が、彼の内部で脹れ
上がった感情に呼応するようにその姿を変えていく。
「最強の僕が本気出したらその瞬間にお前達、死ぬぜ?」
その時、彼等を除く全ての存在の時が停止した。
物陰から様子を窺うのは、KINGの忠実な手下である
カテゴリー10、スカラベアンデットがその鈍い黄金に
輝く体を妖しく光らせ、時を操作していた。
「この場所の時間は、僕が全部支配した」
人から元の姿へと戻ったコーカサスビートルアンデットは
その堂々とした威容を他のカテゴリーKに誇示するように
見せつけた。
一万年前と変わらずに、失われることのなかった黄金の
輝きを放つ無毀なる甲冑は、いかなる刃も攻撃も弾き
返し、右手の剛剣は一度振るわれれば、その強大な体
から生み出される非情な程の剛力の全てを破壊に変える
威力の一撃をこの周囲一帯に、さながら爆撃の如く撒き
散らすだろう。
「困ったな。君だけが別に特別な力を持つ手下を持って
いると思っているのなら、それは大きな間違いだ」
自分も含めた全ての時を止められている中でも冷静さ
を失わなかった初老の男性に擬態したカテゴリーKが
その本当の姿を顕わにした。
「あれれ~。一万年前にやられた古傷がまだ治ってない
じゃん。ほら格下のカテゴリーAにやられたその傷だよ」
世界最強の甲虫の始祖には劣るものの、マンティスアン
デットと同類のパラドキサマンティスの始祖たる王は
自らの両手に愛用するその大鎌を構え、果敢に挑み
かかっていった。
「へぇ、オジサンやるじゃん。スカラベよりは劣るけど、
何もかもごちゃごちゃにするあのムカデを使いこなす
なんて。流石はハートのカテゴリーK」
舞うように軌道の読めない鎌の乱撃を、正確かつ華麗に
捌きながら、感嘆の叫びをあげたKINGの視線の先には、
飛び道具を振りかざして交戦状態に入ったスカラベ
アンデットと体の至る所から節足を生やしたムカデの
アンデットが熾烈な戦いを繰り広げていた。
「ダイヤのカテゴリーK、とりあえずここを切り抜ける
為に一時休戦といかないか?」
争いを好まない平和な性格のタランチュラアンデットが
最後のカテゴリーKへと取引を持ちかける。
「そうだな。それよりもパラドキサに加勢して今日中に
スペードのカテゴリーKを葬るというのはどうだ?」
その提案には満更でもない反応を示すも、やはり戦う
事を求めているのか、交戦的な笑みを浮かべた彼は
そのまま変身してパラドキサアンデットに加勢した。
「無辜の人々が苦しむ様を見て悦に入るような奴を
野放しにしてもいいのか?俺は知らんがな!!」
それを言った本人が同じ顔をしてどうする。と内心
思ったタランチュラアンデットだったが、このまま
いけばアンデットと何も関係のない人々がこの戦いの
巻き添えになると感じた為、また暴虐の限りを尽くす
スペードのカテゴリーKを封印する為、三つ巴の戦いの
中へと踊りこんでいった。
「ハハッ。えげつないのは相変わらずだねぇ。君達」
けたたましい笑い声を上げながら、KINGは上空へと逃れ、
それを逃がすまじと猛追する二体のカテゴリーKの争いは
激化の一途を辿っていた。
「一万年前に貴方に私は負けたのでね。今日を以って
あのバトルファイトの雪辱を晴らさせて頂きます。
だから、この一撃は逃げずに受け止めて下さいね!」
先程の圧倒的優位は自らが上空へと逃れたことで瞬時に
消え去り、同じ飛行能力を持つカテゴリーK同士が徒党を
組んだ所で、完全にKINGは劣勢へと立たされた。
足場のない上空では、地を裂き、海を割る最強の剛剣の
斬閃もその力を十二分に発揮せず、KINGはますます防戦
一方へと追い込まれて行くばかりであった。
「最強のアンデットなど、笑止千万ッ」
最早、自らの勝利は確実だと言わんばかりの傲然とした
態度で自信たっぷりに言い切ったパラドキサアンデットの
眼差しからは、完全に遊びが消え去り、長年にわたる因縁を
ここで終わらせるべく、コーカサスビートルアンデットへと
止めを刺しにかかった。
「俺からも一万年越しの祝砲だ。遠慮なく受け取れよ!」
ギラファアンデットもパラドキサアンデットの猛追に
習い、腰に下げた自らの大鋏を模した形の爆弾を、未だに
逃げの一手を講じるKINGへと投げつけた。
ただし、それはパラドキサアンデットに加勢する意図は
全く含まれていない別物だった。
コーカサスビートルアンデットも、その攻撃の意図に完全
に気が付いており、いつの間にかもう一体のカテゴリーKと
徒党を組んでいた気になっていたパラドキサアンデットが
完全に油断しているとここにきてようやく確信を持った。
一つ目の牙型の爆弾をオールオーバーであらぬ方向へと
弾き飛ばし、二つ目の爆弾は左手の盾で絡め捕り、勿体を
つけ、着弾の衝撃を完全に殺し、盾へと引っ掛けるのに
成功した。
ギラファアンデット加勢の本当の意図に気がついた
パラドキサアンデットは、慌てて愛用の鎌を二重に
交差させ、次に来るであろう最強の一撃を受け流す
構えを見せた。
しかし、呼吸と精神が乱れた上に、ここは足場のない
上空。至近距離からの大爆発の衝撃を受け流すことの
出来る大地は存在しない。
動揺を隠せないパラドキサアンデットの呼吸の乱れが
一際大きくなった所を狙い撃つかのようにKINGは
シールドバッシュの要領で左腕の盾、ソリッドシールドを
パラドキサアンデットの顎部へと自分の体勢が崩れる
程の力で叩きつけた。
「そんなッ、私の武器が、武器がァア~!」
熾烈なまでの鍔迫り合いで、本来なら砕け散ることが
絶対にない自らの大鎌を、完全な角度とタイミングで
打ち砕いたと共に、シールドに引っ掛っていたギラファ
アンデットの爆弾が絶妙なタイミングでパラドキサの
顔面を直撃。爆発した。
「ガアアアアアアッ!!!」
顔面をえぐり取られる様な衝撃を、もろに頭部に受けた
パラドキサアンデットはそのまま何も言わずに天空から
堕ちていった。
それを平然と眺めるギラファアンデットは、自分の予想
通りに事が進んでいるのを確信した。
四つのスートのカテゴリーKが、一つの場所に集ったのだ。
彼には最初から戦うつもりなどなく、様子見を決め込み、
カテゴリーK同士の相打ちを狙っていたのだった。
「まずは一体、っと」
自らが用いる装備とはいえ、その爆弾の威力は愛用の双刀を
遥かに凌ぐ威力を誇る代物だ。それを自らの頭部に完全に
直撃させられたのだ。活動できなくなるほどのダメージを
負い、最悪早期リタイアの可能性があるな。とまるで他人
事のように考えたギラファアンデットは、完全に興奮状態に
入ったKINGの後を用心しながら、静かに付いていった。
「全く、老いぼれは老いぼれで身の程をわきまえろっての」
先程いた街から大分離れたとある廃工場の一角に、再び
カテゴリーK達は集結していた。しかし、先程とは異なり
パラドキサアンデットは既に虫の息であり、それを
見つめるタランチュラアンデットも本来の姿に戻り、
死にかけたパラドキサアンデットを庇おうとしている。
「ふぅん、そっかそっか。蜘蛛のおじさんはまだ僕の邪魔を
する気なんだ。あんまり賢い選択肢とは思えないけど、
一応聞くね?そいつから離れてくれるの、違うの?」
「勿論、後者の方だ。それに君達二人も気が付いているん
だろう?このバトルファイトの異常性を」
真剣な表情であくまでも非戦を貫こうとするカテゴリーK
とは対照的に、既に着いた決着に興味はないとばかりに
再び人間の姿に戻ったKINGは、気怠げな表情と共に答えた。
「別にさ、異常であっても無くてもどうでもよくない?正直
言ってかったるいんだよ。種の繁栄?この星の支配権?
何で皆そんなことに一々目くじら立てるのさ?」
「分かっているのか?戦闘不可能になったアンデットの下に
あのモノリスが降り立ち、封印をしないことがどれだけ
私達が窮地に追い込まれているのかを示しているのが?」
「ふぅん?ってことは今更人間と仲良く共存しましょうね
ってことを言いたいわけなの?馬鹿だな~、それなら
勝手に封印されればいいじゃん?アイツ等ならその理想を
お前の能力を上手く使って実現させてくれるよ。確実に」
互いの距離を計るも、未だに決定的な隙を見出せず、
攻めあぐねている二体のカテゴリーKとそれを静観する
最後のK。既に虫の息だったパラドキサアンデットの
金色に輝くベルトのバックルが、バキンッ!という音と
共に破裂したのを合図に再び二体は自らの姿を顕わし、
刃を交えようとした。
「おい、スペードのカテゴリーK。どうやらクラブのKが
言っていたことは本当に正しかったようだぞ」
人間形態のまま、いつの間にか腰から愛用の双刀を抜き、
二体の持つ獲物の間に割り込ませた彼はおもむろに廃工場
内部のある方向を指し示した。
「あれは...、アンデット?」
さしものKINGも、その姿には見覚えがあるも困惑を
隠すことが出来ずにいた。
「カテゴリーK、発見。封印対象、パラドキサアンデット
発見。これより封印作業に取り掛かります」
体から無機質なチューブを生やした、奇奇怪怪な人型の
アンデットは腰から一枚のカードを引き抜き、そのまま
パラドキサアンデットへと落とした。いきなり目の前で
起きた事態に対処できず、固まる三体のカテゴリーK。
そのまま立ち尽くす彼等を尻目に人型は地に落ちた
ハートのカテゴリーKが封印されたカードを拾い上げ、
腰のホルダーに入れようとした瞬間、無数の糸が
怪しげな人型に巻き付き、封印されたカテゴリーKを
瞬時に手繰り寄せた。
「君達の意図は分かった。後は頼む!!」
一番早く我を取り戻したクラブのカテゴリーKは、人型
を更に雁字搦めにすると共に、自分に非協力的だった
二体のカテゴリーKを蹴り飛ばし、わき目も振らず逃げ
出した。
「まんまといっぱい喰わされたわけだ。いい面の皮だよ」
吐き捨てるように眼鏡をかけた人間の姿から本来の
姿に戻ったダイヤのカテゴリーKは再び腰から双刀を
抜き、油断なく構えた。
「決めた。あの蜘蛛野郎、いつか絶対にぶっ殺す」
怖気だつ笑みを浮かべたスペードのカテゴリーKも
右手の剛剣、オールオーバーを構えながら拘束された
人型のアンデットに攻撃を掛けようとした。
「対象の封印を確認。封印カードが同種に奪取。逃亡確認。
反応はロスト。残存する封印対象は二体。命令コマンド
変更。これよりトライアルA。交戦に入る」
自らが倒れた地面を灼熱によって焦土に帰し、その周囲
半径3mにクレーターが生じ、ブスブスと肉が燃える嫌な
匂いをさせ、トライアルAと名乗った人工のアンデットは
目の前の二体へと躍りかかった。
「どうする?ここは一時共同戦線を張らないか?」
パラドキサアンデットの事は棚に上げ、しゃあしゃあと
同盟を持ちかけるダイヤのカテゴリーK。誘いに答えず
つかつかとトライアルAへと近づいたスペードのKは
先手必勝と言わんばかりに反撃の機を与えずに
一方的な蹂躙を始めた。四肢をもぎ、トライアルAを
完全に戦闘不能状態にした後、再び暗闇に包まれた
廃工場の内部へ蹴り飛ばす。
「正直言って嫌だけど、今虫の居所が悪いんだよね~」
明確に断言はしないものの、最後の一言を同意と取った
ギラファアンデットは上級アンデットに備わった高密度の
バリアを張る能力の応用で巨大な四角錐を創造し、同様に
コーカサスビートルアンデットもそれに倣った。
その内部にトライアルAを封じ込めた二体は今度はその狭い
空間から酸素を抜き始めた。
「ギ、ッギギギギギ、ググ、ガッガガガガ....」
体の中に差し込まれた機器がへしゃげる音とも、また
断末魔とも受け取ることが出来る嫌な音を立てながら、
ゆっくりとトライアルAの身体は圧壊されていった。
「ねぇ、さっきのあの爆弾ってもうないの?」
「あれで終わりだ。お前こそ何かないのか?」
気軽に会話を交わしていく間に、四角錐は大きさを
どんどん縮ませていき、遂には豆腐大の面積の立体へ
その姿を変えた。
「止めを刺してみると結構あっけないもんだよね」
「そうだな。じゃあ、最後に粉微塵にして吹き飛ばすか」
トライアルAが最後に感じたのは、自分の身体が砕け
散り、切り落とされた四肢が高密度のエネルギーで
燃やし散らされるその感覚だった。
「さてと、邪魔者は消し去った。だから本題に入ろうか」
清々しい表情を浮かべながら眼鏡をかけた成人の姿へと
戻ったギラファアンデットはKINGへと改めて向き直った。
「まぁ、一度ならず二度までも君には助けられた訳だしね。
いいよ。ギブ&テイクだ。質問に答えてあげる」
携帯をいじりながらにべもなく答えるKINGの表情は
何も映してなかった。
「まず一つ目の質問。このバトルファイトは一万年前と全く
違うのか?」
「システムは違わない。でも根本の所はアンデットに絶対に
勝ち目がない無理ゲー仕様になってる」
「というと?」
「蜘蛛のおじさんの言う通りってこと。人間が裏で手を引いてる」
「二つ目。さっきの奴はなんだ?」
「分かんない。けど多分黒幕である人間の差し金だと思う」
「三つ目、ジョーカーは既に活動を始めているのか?」
「緑はまだ動いてない。けど白い奴が動いてヒューマン
アンデッドを封印したところは見た」
「最後だ。ジョーカー以外でアンデットを封印するアン
デットの存在を知っているか?」
「さぁね、けど天王寺って人間の所に行けば全部わかる」
「分かった。礼を言う」
「どういたしまして」
いくつかの見返りを貰ったギラファアンデットは満足げな
表情を浮かべ、その場を去ろうとした。しかし、
「ああ、忘れてた。ライダー達と戦う場合、女の子には
気を付けた方がいい。彼女はもしかしたら『55枚目』の
可能性を秘めてる稀有な存在かもしれないから」
「55枚目?まさか...」
まるであり得ない可能性を鼻で笑い飛ばそうとするも、
顔のこわばりが隠せないギラファアンデット。
「おい、それは一体どういうことだ」
「さぁね?けど、もしかしたら本当に『ありえるかも』?」
『そうそう、僕をどこかで見かけても放っておいてね』
去り際に、古のアンデットが用いる言葉で語りかけた
KINGは意味深な笑みを浮かべ、瞬時にその姿を消した。
「おかしい。俺が予想した可能性と大分かけ離れている」
他のカテゴリーKと同様、ギラファアンデットもこのバトル
ファイトの異常性にはとうに気が付いており、既に終盤
まで静観を決め込むつもりだった。しかし...
「なぜ、今になって『55枚目』の存在が出てくる?」
今までに自分が得ることができた人間側とアンデット側の情報を
めまぐるしく展開させながらギラファアンデットは無数の可能性を
考え出す。だが、推測を重ねるごとにありとあらゆる矛盾点が
生じる。
「やはり、人間どもと関わりを持つべきか...」
アンデットらしく考えるのをやめた彼は、今度は自らが見下して
やまない人間の考え方へと思考を切り替え、再考し始めた。
「そうだな。まずは天王寺という人間の動向を探ろうか」
これ以上考えても時間の無駄だと見切りをつけた彼は、KINGの
忠告通り、まずはこの仕組まれたバトルファイトの黒幕、天王寺
博史の拠点を探すことにしたのだった。
◆ ◆ ◆
それはユニがある出来事とともに、ゲイムギョウカイという世界が
存在していた世界とだいぶ異なった世界へと飛ばされた一月後のお話。
ゲイムギョウカイを四分する大陸の一つ『革新する紫の大地』を守護
する守護女神、ネプテューヌ。彼女は自国にある自らの拠点プラネタワー
の自らの執務室で教祖のイストワールとともに先月の出来事について
話し合おうとしていた。
「イーすん...。ねぇ、一体どうしたというの?あの日から全然私が
ふざけても怒りもせず、そんな焦りに満ちた表情を浮かべて、肝心な
所は全て『今は皆さんに話すことができません』?それじゃあ...」
いつも微笑みを絶やさず、傍らの女神を時には鼓舞し、時にはその
自堕落さを叱るプラネテューヌの教祖であるイストワールは、あの日
からずっと笑うことなく、必要最低限のことしか話そうとせず、自室に
籠っていた。
流石のネプテューヌも一月もこのような膠着状態を続けられては
心が休まらず、ストレスの蓄積によりその堪忍袋の緒が切れ始めていた。
そして、ついに今日、彼女は戦闘と式典の時以外にしかとらない女神の
姿へと変身し、イストワールへ真意を問いただすことを決意したのだった。
「ネプテューヌさん、貴女は黙っていてください」
にべもなく明確な拒絶の意思を持って、自分へとかけられたその一言は
普段のイストワールのそれとは大分かけ離れた冷酷なものだった。
それは滑らかに滑り落ちる断頭台の斬首の刃の如く、ネプテューヌが
かけようとした言葉をすっぱりと断ち切った。
「イストワール!なぜ、何故なのよ?!どうして!」
色々と溜まった鬱憤がついに噴出したネプテューヌ。憤りのあまり、
冷静沈着な状態の女神の姿でも、彼女はイストワールに自らがつけた
あだ名を呼び続けていた。しかし、それは彼女の心の中に余裕がある
ことの何よりの証拠でもあった。
それが今はどうだろうか?
女神化状態のネプテューヌが我を忘れ、取り乱している。さらに
悪いことに、そんなネプテューヌを諌めるはずの役割を持つはずの
イストワールが女神を見つめる視線は、赤の他人を見つめる視線
そのものだった。
「ですから、言っているでしょう?『今は話せない。いずれ時が来れば
皆さんへお話します』と?貴女こそ何故そこまで執着するのですか?」
「四大陸全ての大陸の機能の4分の1相当があの日、ユニちゃんが消えた
あの日に麻痺したのよ?!ルウィーでは女神排斥運動が盛んになり、
リーンボックスでは今も自然災害が発生し、多くの人が今も助けを
求めている。それに...」
最後に残った国と、その国を治める女神にして、今回の大惨事の
一番の被害者である『彼女』の名前を出すことをネプテューヌ
は一瞬だけ逡巡するも、意を決し最後まで言い切ることにした。
「ラステイションは国土の大半が焦土になり、あの巨大な怪物があの
国のシェアエナジーと国民の大半を食らった!ユニちゃんが
消えたショックと目の前で何もかもを失ったノワールは....」
「今も、行方が分からないのよ!」
息を荒げ、今まで自分の胸の中に秘めていたやりきれなさをイスト
ワールへとぶつけたネプテューヌだったが、その本人である
彼女はただただ冷たい一瞥をネプテューヌへと沈黙とともに送る
ばかりだった。それどころか、次の瞬間に彼女の放った言葉を
聞いたネプテューヌは思わず卒倒してしまう。
「万事オーライじゃないですか、ネプテューヌさん。目障りな他の国の
女神が次々に共倒れしていく中、貴女の守護する国は工業地帯や
発電所が影響を受けるも、まだ大半の国の機能は維持されているでは
ありませんか?」
「どういう...意味よ?」
「これを機に一気にほかの国へと侵攻してみてはどうです?仲良し
こよしの友情ごっこはここいらでやめにして、いっそ女神らしい
ことでもしてみようじゃありませんか?お手伝いしますよ」
酷薄な笑みを浮かべ、一線を越えた言葉を放ったイストワールの
その一言に、精神的な大ダメージを負ったネプテューヌはよろ
よろと後ずさり、ぺたんとしりもちをついてしまった。
「う、嘘、だよね...?あ、アハハハ。いつからいーすんはそんな、
そんな平然と人の心を殺せるような、そんな、そんな言葉を
いうようになっちゃったのかな?これ、このゲームって適度に
クエストクリアして、お色気イベントや製作者の意図で作られた
伏線回収をセクシー路線ではぁはぁしながら大きなお友達が
やるようなゲームだよね?ね、ね、ね?」
「何を馬鹿なこと言ってるんですか?ゲームのやりすぎで遂に
頭がおかしくなっちゃったんですか?現実ですよ、これ?」
「あ、あああ、アッ、アアアア~!!!」
放たれた最悪の一言は今までネプテューヌという女神が、自らが
築きあげていたものを灰燼に帰すにはあまりにも効果的で、そして
「止めてえええ!!!これ以上私の思い出を、仲間を、この世界を
壊さないでえええ!!!助けてよ、いーすん。お願いだからぁ、
お願いしますからあああ!!」
涙と鼻水をまき散らしながら絶叫するネプテューヌは、最後の
一縷の望みであるイストワールに縋ろうとした。
「もう、無理なんですよ...。私の力では、貴女達の力でも、既に
解決できない事態にまで事態が大きくなってしまったのですから」
泣き叫びながら執務室を飛び出したネプテューヌの後ろ姿に、先程
とは真逆に悔恨と懺悔の表情を浮かべ、呟くイストワール。
「ごめんなさい、ごめんなさい。ネプテューヌさん。女神のみなさん
そして、この世界に生きる全ての人々よ...」
『随分と予想を超えた出来事が起きてしまったようだな、お前も
さぞかし頭が痛いだろう?』
「マジェコンヌ...」
突如頭の中に響いてきた声は、かつて先代のゲイムギョウカイの
守護女神にして女神に敵対する組織、七賢人が一人マジェコンヌの
ものだった。
『ラスティションの女神はアノネデスが保護している。それに...』
『は、離して下さい~。わ、私はな、何にも知らないんですから~。
ひどいことをしないでください~!』
一度聞けばだれもが忘れることのない特徴的な気弱な声と、おどおどと
したしゃべり方は間違いなく七賢人の一人にして、遥か太古に滅びた
大国タリの守護女神、キセイジョウ・レイその人だった。
「キセイジョウ・レイさん?ですか...」
『そうだ。限定的にこいつの記憶とお前の記憶をリンクさせ、先月の
ラスティションを初めとする四ヶ国を襲い、女神候補生とともに
消えたあの怪物のデータを照合する』
「いけません。マジェコンヌ、そんなことをすればこの私でさえ
三月程活動が不可能になるほどのダメージを脳に負います。
おそらく貴女は私の代わりにその役を負うつもりなのでしょう?」
『...私の目の黒いうちはこの世界を滅ぼさせるつもりなど無い。
ましてやこの世界を創生する際に戦い、敗れ封印された『巨大邪神』
等にはな』
「仮に貴女の考えが予想通り上手くいっても、あの邪神を滅ぼす術は
皆無に等しいでしょう。私も貴女も既に銀河が一つ終わるくらいの
歳月を時の流れと同化することで生きながらえてきました。失われた
記憶、文明、その総数だけで一体いくつあると思っているんですか?」
『私という存在は守護女神と拮抗する対の存在だ。常に対立しバランスを
取り、均衡が崩れればその綻びを修正し、この星のあるべき姿へと
軌道修正する。それこそがこの私の存在意義なのだから』
「...わかりました。私もすぐに貴女のいる場所へと向かいます。
そこで私の考えた仮説と、対処方法をお教えします」
『了解。私のいる地点はラスティションの第一発電所Ⅸブロック目、
三階のモニター室だ。くれぐれも見つからんようにな』
そう伝えるなり、マジェコンヌは通信を切り離した。
「待っててくださいね、皆さん。必ず解決策を見つけ、あの怪物を
倒す方法を見つけますから....」
苦悩の色を色濃く浮かべたイストワールだったが、遂に決心を固め、
彼女はマジェコンヌの元へと向かっていったのだった。
だが、イストワールは知らない。
この超次元に更なる絶望と恐怖が眠っていることを...
物語の都合上、鎌田さんには泣く泣く早期退場してもらいました。このお話で登場した
トライアルAというのは仮面ライダー剣で登場した封印できないアンデットのような怪物
のシリーズの記念すべき第一号と思ってくれれば幸いです。さて、これからのこの物語の
展望を簡単にお話しすると、後4話分は雑魚アンデット回収とユニがブレイドの世界に
来た理由を簡潔にまとめ、更に『ニゴリーエースはオレノボドダー』と『バーニングサヨコ』
を三話でまとめ、前半を締めくくりたいと思っています。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、次回のお話では遂に伊坂が計画のために
動き出します。秘密裏にBORADの人員を引き抜き、独自の機関を構成。ギャレンとレンゲル
のシステムをもとに、カテゴリーAが存在しないブレイドのライダーシステムの適合者を
探すべく、暗躍します。一方、ユニたちは結束を深め、アンデット達を着実に封印。
勢いに乗っています。そんな中、突然桐生さんが失踪。暗雲が立ち込める中、遂に
スペードのカテゴリーAが登場します。はたして彼らの命運はいかに?
次回、SIGNS お楽しみに