五月雨ちゃんが結婚を迫ってきて今日も眠れない 作:たなか やまなか
処女作です。
深夜テンションの処女作です。
コメントとかくれると作者がよろこびます。
それではお楽しみください。
早朝 鎮守府内廊下
(ねむいなー。夕立のやつ盛りすぎでしょ。犬かな?)
昨夜は夕立の襲撃(?)にあい、圧倒的睡眠不足である。当の本人はまだ俺の部屋で爆睡中だ。
あの様子じゃ今日の出撃(しかも旗艦)は無理そうなので代打が必要だなぁ...とか考えていると、司令室前の廊下で五月雨を発見。
「おーい、おはよう。五月雨。」
「おはようございます!提督!」
初期艦の五月雨ちゃんである。うっかり味方を轟沈させかけた、という武勇伝(?)は今もなお一部艦娘をビビらせている。だが、演習ではメチャクチャ頼りになるために毎回演習の旗艦を務めている。
「なあ、五月雨。確か五月雨は今日の演習の旗艦だったよね?」
正しくは“今日の”ではなく”今日も”なのだが...
「はい!今日もお任せください!」ニコッ
おぉ......笑顔が眩しい......
俺はいまからこの子にウソをつくのか......
「その件なんだけどさ、今日は演習じゃなくて出撃の旗艦の方をお願いしていいかい?」
例の武勇伝があるが、腐っても初期艦である。
練度は鎮守府トップクラスなので旗艦を任せても大丈夫だろう。
「え、予定では夕立ちゃんじゃありませんでしたか?」
「いやー、あいつ体調崩しちゃったらしくてさ。寝込んでるらしいんだわ。」
「あれ?昨日はとても元気そうでしたけど...。」
「あー、あれじゃね?いま流行ってるインフルエンザC++型じゃね?」
「それは心配ですね...。」
「そういうことだから(どういうことだ?)お願いしていい?」
「そうですか。では、わかりました、お任せください!」グッ
「おう、任せた。じゃ、一二〇〇に司令室集合ね。メンバーは、旗艦五月雨、比叡、羽黒、北上、赤城、加賀だ。」
「了解、では準備してきますね。失礼します!」ペコッ
ふぅ......。
また罪な男になってしまったぜ。
などとニヒルを気取りつつ司令室のドアを開ける。
「おはようございます提督。」
「おはよう。大淀さん。」
鎮守府古参トップ3のひとり。大淀さんである。賢そうな言葉遣いと(実際に賢いかは怪しい)、真っ黒なストレートヘアに眼鏡という身なりは思わず、さん付けして呼びたくなるほどである。ちなみにトップ3のもう1人は明石だ。
「もう、さん付けはやめて下さいよ提督。」
「わりぃ、大淀。」
提督業をはじめて間もない頃、大淀は
「五月雨ちゃんと明石は呼び捨てなのに、
私はいつまでもさん付けですか!そうですよ!
いつまでも私は都合のいい女ですよ!」
と、マジ泣きしたのを機に呼び捨てになっている。たまに、さん付けをしてしまうのは癖だ。(たぶん)
「提督、今日の出撃の件なんですけど...。」
「ああ、廊下で話してたやつ聞こえてた?
夕立が体調崩しちゃったから旗艦は五月雨ね。」
まあウソなんだが...
「はい、わかりました。それにしても、インフルエンザC++型とは...怖いですねぇ。私も予防接種受けに行こうかなぁ。」
......。
やっぱりコイツはアホなのか?
それとも、実は本当にあるのか?インフルエンザC++型......。
「そうだなぁー」と受け流しつつ、書類に目を通していると、
プルプルプルプル ガチャ
「はーい、こちら司令室。なに?眠っていいですかって?いちいち許可とるなよ。お前は俺の奴隷か何かですか?似たようなもんでしょって...おまえが勝手に小破艦を治しまくってるからでしょうが。空母のカスダメは治さなくていいの。わかった?よし、おやすみ。」ガチャン
「明石ですか?」
「うん。眠っていいですか?って...もうヤバイでしょ。大丈夫?君の友達。」
「その前に提督の部下ですよ。」
「おぉ、社畜ぅ......。」
結局のところ監督不届きで俺の責任なのか?
これが高プロ問題か...(たぶん違う)と悩んでいるフリをしつつ、書類と格闘する。
なんやかんやで一二〇〇
「おーし、じゃあ頼んだわ五月雨ちゃん。」
「はい!任せてください!では、私はチェックしてきますね!」ニコッ
旗艦はメンバー全員の艤装のチェックの義務があるので、五月雨は工廠へ向かった。
「ヒエッ ちょっ提督、さ、五月雨ちゃんが旗艦ですかぁ?」
そういえば比叡は”武勇伝の被害者”のうちの一人だったなぁ。
「あー、そっか。でももう装備載っけちゃったしさ、まあ大丈夫でしょ。なぁ北上。」
「五月雨の腕は確かだよー。この北上様が言ってるんだから間違いない。」ムシャムシャ
「ほらな、北上が言ってるんだ。大丈夫だよ。っておい、何食ってんだよお前。」
「え?いや、何って。芋けんぴだけど。」ムシャムシャ
「いや何を食っているのかを聞いたんじゃねぇよ。出撃前なんだけど。」
「いやいや、提督。こんな時間に出撃させる方が悪いんじゃん。お腹減っちゃうよ。」ムシャムシャ
「そうですよ、提督。」ムシャムシャ
「お前もか赤城。いや、悪いとはおもってるけど今日はこの時間帯が安全なの。潮の関係で。ていうかなに?流行ってんの?芋けんぴ。」
「いえ、私が作り過ぎちゃいまして......みんなに配ってたんです。」
「あぁ比叡か......。」
うちの比叡は料理がうまい。(希少種)
鎮守府に入ったばかりの頃の比叡は、
姉の金剛をヨイショすべく、メシマズキャラ全開で腕を振るっていた。
だが、真夜中に比叡がキッチンでマジ料理をしているところ(腕が鈍るのがいやだった。本人談)を赤城が発見。(さすが赤城)それ以降は、金剛と微妙な空気になりつつも、たまに腕を振るっている。
「加賀も一心不乱に食ってるな。なぁちょっとくれよ。」
「嫌です。」ムシャムシャ
「即答かよ。てか、羽黒は食ってねぇじゃねーかよ。羽黒を見習えよお前ら。」
「羽黒さんは芋けんぴを口に含んで、砂糖のコーティングを剥がして、フニャフニャにしてから食べる派よ。」ムシャムシャ
「ちょっ、かがひゃん!」ムシャムシャ
司令室に入ってから一言も喋らなかったのはそのせいか...ということはミーティング中も食ってたのか?腹黒さんの二つ名は伊達じゃないぜ...ていうか、ただの不真面目な人だなそれは。
「はぁ、まぁいいよ。出撃前には全部食えよ。」
あとは五月雨待ちだなぁ、と思いつつ、お茶でも出してやろうと準備をしていると、
ガチャ
「ていとふ!チェッフ終わひまひた!」ムシャムシャ
リスっぽい五月雨が現れた。
結局、出撃時間は少しズレた。
まぁあのメンバーなら失敗は無いだろう。
このときは、今回の任務で五月雨に新たな武勇伝が生まれることになろうとは知る由もなかったのだが。
部隊が出撃したあとは、まぁいつも通り書類と格闘していた。一通り終えたので、休憩のついでに夕立の様子でも見に行くかと自室へ向かう途中のことである。
貧乏鎮守府なので、決して広くはないロビーにはそれなりに人がいた。おもに駆逐艦だ。
ロビーのテーブルには
「芋けんぴです。ご自由にどうぞ。」のメモとともに大量の芋けんぴがザルの上に盛られていた。
比叡のやつあんなに作ったのかよ......。
匿名なのがまたなんとも言えない気持ちになる。どうやら比叡と金剛の仲はまだまだ全快とは言えないようだ。
誰が作ったかもわからないお菓子を嬉しそうに食べている艦娘一同に一抹の不安を覚えつつ、自室へ向かった。
ガチャ
「おーい夕立、起きてるか?」
「あ、ていほふひゃん。おはほーっほい。」ムシャムシャ
「............。」お前もか。
「起きてるなら自分の部屋へ戻れよ。」
「いやっぽい。戻ったらサボりがバレるっぽい。」
確信犯である。
「なんだか腰が痛いっぽい。提督さん、マッサージして?」
なんだかって...まぁ昨夜のように夕立が襲撃(?)してくるときは、そのことは”無かった”ことになる。つまり、夕立はあくまでも”何も無かった” というふうに振る舞う。最初は、照れ隠しなのか?可愛いことするやつだ、といじってみたりしたものの、当の本人は「?」といった反応で、本当に”記憶が無い”かのようだ。
まあそんな様子なので、夢遊病とかを疑ってみたが、そんな反応はない。いたって正常である。被害といったら、せいぜい俺の睡眠時間が少なくなる程度のことなので目を瞑っているが...
そろそろ対策を打つべきか?だが、俺が助かっている部分も少なからず...いや、まぁ少なからず(なんだよ)あるのでもうすこし様子を見よう。
「やだよ、長良に頼めよ。」
「ちぇー。わかったっぽい。」
長良は、
”筋肉質な体であればマッサージ無料”というサービス(これも問題か?)を行っているので夕立ならお代は不要だろう。
夕飯前
艦隊が帰投した。はやくね?
「提督!やりましたよ!成功です!」
五月雨本人は小破すらしていないが、随伴艦(?)はわりと満身創痍である。
「おー。被害報告おねがい。」
「はい!旗艦五月雨 被害なし
比叡 中破
羽黒 大破
北上 小破
赤城 中破
加賀 小破 以上です!」
「おっけー。被害が大きい順から修理うけてね。中破以上は高速修復材つかっていいよ。目標達成率は?」
「100%です!」
「え、まじ?全部倒しちゃったの?」
「はい!」
「今月の仕事が......。」
まだ月半ばなんですが。
「じゃあMVPは?」
「五月雨だよ」と、北上が言った。
「あれ、北上じゃないんだ...。え、でも五月雨は確か対潜装備じゃ...」
「いやー爆雷投げるやつはじめて見たよ。
マジ笑っちゃったわ。羽黒さんなんか、呆然としちゃってて...w」プルプル
新たな武勇伝の誕生である。
「はい...それで敵の砲撃を直に...」
被害者羽黒の誕生である。
だから大破してたのか。
当の本人は
「いやー、それほどでも...」エヘヘ
と、照れている。
いや、エヘヘじゃねーよ。
対潜装備とは......という新たな問題提議も忘れてはならない。
「聞きたいことは山ほどあるんだが、とりあえず、ミーティングは明日ね。今日は各自 体を休めるように、解散!」
この日、鎮守府は新たな武勇伝の話題で持ちきりとなった。潜水艦らは五月雨を崇めた。
五十鈴は五月雨に教えを乞うた。明石は大リーグ養成ギブスをつくった。
次の日 司令室 ミーティング
皆さん私服(パジャマ)である。
かなりリラックスした状態で始まったミーティングは各々の報告から始まった。
そしていろいろ報告し終わって......
「おー、じゃあ最後に、五月雨の指揮はどうだった?」
「ヒエッ さ、五月雨ちゃんの指揮は完璧でしたよ!」
「さ、ささ五月雨ちゃんはしっかりしてたなぁー」ブルブル
「やー、やっぱ五月雨の指揮はヤバイわー」
「ええ、五月雨さんはしっかりしてまし
よ。」
「五月雨さんならどんな部隊でも任せられるわ。」
最初の2人は脅迫でもされたのかな?
みなさんベタ褒めである。
五月雨は......
「エヘヘ......。」
かわいい反応である。
まぁ普通に自分の指揮を褒められたら嬉しいもんな。
いやまぁ、俺としては夕立に五月雨2号じゃないけれど、もうちょい戦術を理解して欲しくて今回は夕立を旗艦にしたのだが...。
寝坊するしなぁ......。
ヤツはもっぱらのバーサーカーだったようだ。
当の本人は
「さすが五月雨っぽい!私の妹だもんね!」
.........。
反省の色はない。むしろ、五月雨よりも嬉しそうだった。
まぁいいか。五月雨2号は他のやつにしようかな。
「今回は五月雨の活躍もあって、まぁ大成功だったな。俺としては五月雨並みの指揮能力持ってるやつがもう1人くらい欲しいんだが......これは贅沢な悩みか?」
うーん......。とそれぞれ悩み、
「大淀さんはどうですか?」という赤城からの提案。
「大淀なぁ......うーん。」
大淀、実はアホじゃないのか説は
俺と明石の狭い範囲でしか広まっていないので、大淀は基本的には頭脳派キャラ扱いされている。
「いや、あいつはほら、色々とやってもらってるからさ。悪いかなぁーと思って。」
などとはぐらかす。
「夕立には悪くないっぽい?」
「いや、お前はもう少しだけでいいから戦術を理解して欲しくてだな......。」
こいつは本物だろう。
「今回はこの辺で終わりにするか。今日はお前ら全員オフだから。ゆっくり休んでくれ。」
はーい。と、それぞれ帰路についた。
ミーティングはお開きだ。
そしてついに、五月雨が自身の爆雷術について口を開くことは無かった。
昼飯
「提督、お隣よろしいでしょうか?」
「なんだ、青葉かよ。インタビューは後にしてくれよ。」
「なんだとは失礼ですね。フツーにヘコみます......。」シュン
「あーなんかスマン。ほら、アジフライの尻尾あげるから。」
「ありがとうございます。」パクッ
「いや食うのかよ。」
「それではここでクエスチョンです。」
「何がそれではなの?ふ〇ぎ発見なの?」
「提督はなぜケッコンカッコカリをなさらないんですか?」
「......。」
今まで考えないようにしてたんだがなぁ......
「いや、心の準備ってやつがさ」
「1ヶ月ぶり6度目の回答ですね、それは。」
「......。」
そうなのだ。ケッコンカッコカリができる状態になってから、既に6ヶ月以上も経過している。最初の一ヶ月は青葉はしつこく俺を付け回していたが、なにか青葉なりに察するものがあったのか接触する頻度を下げてくれている。ありがと......青葉。
「提督ともあろうお方が何を仰っているのですか!提督に心なんてあるわけないじゃないですか!」
前言撤回である。
「いや、あるわ!こころくらい!」
あるよね?さすがに。
「今日こそ吐いてもらいますよ提督。今回は五月雨ちゃんも呼んじゃいましたよ!なぜケッコンカッコカリをしないんですか!さぁ!さぁ!吐きなさい!」
「て、提督......。そんな、無理して言わなくてもいいですよ?提督には提督の考えがあるって信じてますから!」
「う......。」
言えないよなぁ......。さすがに。
指輪を失くしてしまっただけなんて。
つづく