別世界の主人公がBLEACH世界に迷い込みました 作:ジーザス
「ったく、一体ここはどこだよ。人っ子一人いねえじゃねえか」
ボヤきながら林の中を歩いている男は妙な服装と佇まいだ。和服に長ドスを持っている。脇差と言われてもおかしくない長さ。だがそれより目を引くのは棚引く長髪だ。
「あの世界」の人間側であれば異常いや、異形と言われるだろうが彼がいる妖怪側と「この世界」はそんなことは関係ない。
何故なら「彼」が「この世界」に「いた」と誰もが「知っている」から。
「ここはどこだよ『半妖の里』から出ようとしたらこれだ。わけわかんねえとこに来てやがる」
応える声はない。
「ったく、やってられっかよ。誰もいねぇんじゃ話になんねぇ」
イライラしながら近くにあった大きな岩にあぐらをかいて座る。しばらくすると頭が冷えてきて現状の打開策を考える前に周囲の景色を見渡す。
「この草木は『奥州』でも『半妖の里』でも見たものとは違うな。花びらが一枚でできていてそれが四角を描いている植物なんか羽衣狐とイタクに教えてもらった中にはなかったはずだ」
そう、オレは初めて「奥州」に行ったときにイタクからあらゆる植物や生物について教えられた。それは生きていく中で必要な知識を得ることが目的だった。
傷を癒した俺は少しばかり「半妖の里」について羽衣狐から教えてもらった。
「畏」だけでは勝てない敵も存在する。それを打ち破るには知識で勝ることができれば勝機が見えるというイタクの考えだ。
妖怪と人間の血を引く者が人の世でも妖の世でも生きにくくなった者たちが住まう場所。
例えば毒攻撃を受けた際に傷口の炎症、体への痛みから判断してどの薬草が効くのかそれが何処にあるのかを知っていれば治療することができる。
そんな「半妖の里」には不思議な植物が多数存在する。
「奥州」には日本各地の薬草が生えているため毒や病気に対する知識が非常に高い水準にある。
一見見渡しただけだが「奥州」や「半妖の里」で見たような植物は一切見つからない。だがそれ以上に気になるのは自分が着ている浴衣の上の羽織だ。
背中に刺繍されている数字は「六」これだけではまったく状況が理解できない。
誰かに聞くべきだろうと走って林の外に出ると何もない。ただ単に白い世界が広がっているだけだ。
「なんだよまったく理解できねぇ。待て待てオレは奴良リクオ、奴良組若頭で三代目当主だ。清明を倒して瀕死だったオレを羽衣狐が『半妖の里』に連れてきてあらゆる話をしてくれた。親父のこともそれまでに何があったのかも。間違いなく記憶は正しいだがここにいる意味がわからねぇ」
どうにかしてここから浮世絵町の本家に戻らなければ側近たちが心配する。
「取り敢えずあのでかい建物に向かうか」
リクオが目指したのは遠くに見える巨大な建物だった。
それは「この世界『尸魂界』」において瀞霊廷と呼ばれる場所だった。
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向かう最中にとてつもない速さで向かうことができる歩行を見つけたので思っていた以上に簡単に着くことができた。
「しかしでかいなこの建物は。ていうか何でできてんだ?これ。石でもないしコンクリートでもない不思議な見た目と肌触りだ」
「あ、こんなとこにいた。隊長!」
壁に触れているオレに声をかけてくる男の声が聞こえた。
振り向くとそこには長い赤髪を結んで眉毛から額、首から上半身にかけて大仰な刺青を入れているゴーグルを額にかけた男が立っている。
「恋次かどうした?」
自然に頭に浮かんできた名前を告げると間違っていたわけではないらしく男は焦りながら声を発する。
「どうこうもないっすよ!隊首会始まりますから早く一番隊隊舎に行ってください!」
「隊首会?」
「何忘れてるんすか!遅れたら総隊長の雷落ちますよ!いつものように面倒くさがって行かないなら俺が無理矢理連れて行きます!」
そう言ってオレの左手をむんずと掴んで俺が見つけた「とても速く移動できる歩行」を駆使して走る。
もしかしたらオレが見つけたと思っていたこの歩行は誰もが使えるものなのかもしれないと思い直していた。
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オレが着いたのはそれから数分後だったが、中に入ると「隊長」と思しき人物が11人集まっている。
「ようやく来たか六番隊隊長 奴良リクオ!はよぉ並ばんか!」
「す、すいません」
普段は上の立場であるオレが敬語を使うのは不自然だが、なんとなくここで敬語を使わなければならないと本能がささやいた。
事態を飲み込めていないオレは空いている隙間に体を押し入れて、他の11人と同じように立つ。
「今回各隊長を呼んだのは他でもない。罪人 奴良ルキアの処分についての判決を伝えるためじゃ」
大罪人?奴良ルキア?まったく聞いたことない名前だが自然と顔が頭に浮かんでくる。
確か数週間前に「現世」に任務として赴いていてなんらかの事件に巻き込まれ罪を犯したはずだ。
そしてオレの「義妹」でもある。
「人間への死神の力の無断譲渡」、「滞在超過」ということで今は牢屋に収監されている。
ん?ちょっと待てよ。オレはそんなやつに会ったこともなければ「ここ」のこともまったく知らねえ。
なのにオレの名前を呼んだやつの名前は覚えているしルキアとかいうやつがオレの「義妹」ってことを頭が知っている。
何故だ?オレは奴良組三代目当主のはずなのに。
「『中央四十六室』はこれを大罪であるとし全会一致により『殛刑』という判断を下した。異論はあるまいな?」
総隊長とかいう老人の言葉に誰も異論を唱えない。
オレでさえも唱えない。
言おうとしても口が体が言うことを聞かないのだ。何故だろうか助けたいはずなのに…。
「これにて隊首会を終了する」
その言葉を最後に全員が一番隊隊舎を後にする。
最後に出たオレを待っていたのは先ほど連れてきた恋次だった。
「隊長、それでルキアはどうなるですか!?」
「『殛刑』らしい。どうにもならない」
それを聞いた恋次は目を見開きオレの胸倉を掴んで今にも泣き出しそうな声と表情で叫ぶ。
「ルキアはあなたの『妹』でしょう!なんで助けないんですか!?」
「たとえ貴族であろうと大罪を犯した罪人は罪人だ。そして『中央四十六室』の決定は絶対オレたち隊長が異議を申し立てても何も意味はない」
違う!違うんだ!オレはルキアを助けたいんだ!でも体が言うことを聞かねぇんだよ!勝手に口が思っていることとは反対の言葉を発しているんだ!
本心は助けてもう一度穏やかに暮らしたいんだ!
「これは決定だ。それを忘れるなよ恋次」
本心とは反対の言葉を告げると、オレは無意識に歩き出す足に任せて項垂れる恋次をその場に残して、何処かへと歩き出した。
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オレは自宅である奴良家へと入り無意識にある部屋へと足を向けていた。そこにある遺影の写真を見つめる。
奴良緋真
それが今は亡きオレの「妻」であった女性。「義妹」であるルキアと瓜二つの容姿は何処か儚げだ。最後に告げられた言葉が脳裏をよぎる。
『リクオ様、緋真の最後の我儘を聞いていただけますか?』
『なんでも聞こう』
『もし妹を見つけて保護したとしても私が姉だとは伝えないでください。妹を捨てた私は姉と呼ばれる立場ではございません』
『必ず妹を見つけて保護しよう。そしてお前と姉妹であるとは決して言わない』
『ありがとうございますリクオ様。いつまでもお慕いして、おり…ま、す…』
何故だろうかオレは「ここ」にいたはずじゃないのにその様子が脳裏に鮮明に映し出されている。その会話を思い出すだけで胸が苦しいほどに締め付けられる。
これはまるで、まるで、「恋」じゃないか。
オレは三代目を継ぐ上で誰かを娶らなければならない。何人でもいいらしいがオレにはまだ心に決めた人はいない。
だがこのような思いをしてしまえば選ぶことができるのかと不安になってしまう。
「またここに来ているのかリクオや」
「ジジイか」
オレの背後には「オレがいた世界」のジジイとは違い、若々しい姿でオレと瓜二つの髪型に容姿の男が立っている。右手にはキセルを持っているのも「向こう」と何も変わらない。
「癖だからな」
「やれやれ死んでから何年経つんじゃ?未練がタラタラじゃな」
「仕方ないだろう『愛していた』んだからなたとえ貴族じゃなかったとしても。親父だってそうだろ?母さんは一般人だ」
「この世界」におけるオレの親父は「向こう」と同じですでに死んでいる。名前も変わらず奴良鯉伴だ。
まったく何も変わらないから驚く限りだ。
「オレはもう寝る」
「おいおい飯はいいのか?せっかく氷麗と雪麗が若菜さんと一緒に丹精込めて作っているというのに」
「悩み事が多いんだ寝かしてくれ」
我儘を言って自室へと向かった。
自室に布団を引いて横たわっているが寝るつもりはない。今日、半日でわかったことを改めて思い返している。
「この世界」はオレのいたところではないというのが確実である。
おそらくだがオレはなんらかの原因で「この世界」に飲み込まれたのだろう。
護廷十三隊なんぞ聞いたこともないし「始解」やら「卍解」やら「破道」と「縛道」の総称である「鬼道」やらそんなものは一切「向こう」にはなかった。
どうやらこの世界で戦うために必要なのは「霊圧」というものらしい。詳しくはわからないが「畏」となんら変わらないものだとオレは考えている。
「始解」や「卍解」の意味はまったくわからないがオレが使えなくても問題はないらしい。
それはオレの長ドス 祢々切丸(「この世界」では「斬魄刀」というらしい)が特別な能力を持っているからであり気にすることはないとジジイは不思議そうに首を傾げながら教えてくれた。
どうやらジジイも親父もそうだったらしく親子三代そろってこうなので周囲も認めているようだ。
ジジイの場合は何かと一悶着あったらしいが「卍解」を使った当時の隊長と互角に渡り合ったのを見たことで評価は変わったらしい。
そしてルキアがオレの「義妹」であるということだがそれは亡き「妻」緋真の願いだとは誰も知らない。
全員が緋真を忘れられないオレが緋真に似ているという理由でルキアを養女として奴良家に引き込んだと思っているらしい。
鬼纏は羽衣狐以外は問題なくあいつらがいなくても自由に発動できることがわかった。羽衣狐の鬼纏が使えない理由はまったく予想もつかないがおそらく力量不足ということなのだろう。
今はそれでいい。いつか使えるようになればいいのだから。
しかし「この世界」は少しばかり嫌だ。「向こうの世界」の仲間と名前も容姿も行動も何一つ違わないからだ。さすがにカナちゃんや清十字怪奇探偵団はいないけども。
「時が経てば戻れるといいな」
そんなことを呟きオレは眠りについた。
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しかし時がいくら経てども「元の世界」に戻る気配がない。
気が付けばオレは萱草色の髪をした少年によって喉元に刃を突きつけられていた。
「どうやらその『我々の誇り』とやらがルキアを殺すことに繋がってふみてぇだ。だったらそれごと叩き潰す!」
「いいさ。そのまま返り討ちで終わらせる」
違う!お前の言う通り貴族の誇りなんてものはいらねぇんだ!ルキアを助けたい!
でも本音は口から出てこないいや、出せないんだ!それに気づいてくれ「旅禍」の少年!
最後の攻撃を互いに打ち合いオレは彼に告げる。
「知りたがっていたなオレがルキアを殺すのかと。罪あるものは裁かれ刑が決すれば処されねばならない。それが『掟』だからだ。それは誇りを守るためだと言った。奴良家は四大貴族の一、すべての死神の規範になならねばならない存在。オレたちが掟や守らずして一体誰が守る?」
「そうか、でも俺はその誇りを捨ててでもルキアを救う道を選ぶ」
「…この勝負お前の勝ちだ」
ようやく「本心」を打ち明けることができたオレはその場を「瞬歩」という「死神」が使える移動方法でその場を後にした。
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次に気が付いたのはルキアを市丸から守ったところだった。刃が肝臓を貫いているのは体に走る激痛でわかる。
「兄様!」
ルキアの心配する声もどこか遠くに聞こえる。
仰向けに倒れたオレに見えるのは「反膜」によって干渉不可にされている藍染と市丸、東仙の3人だった。それを護廷十三隊の隊長及び副隊長を含む隊士たちが見上げている。
「落ちたか藍染」
「傲りがすぎるぞ浮竹。誰も最初から上に立ってなどいない私が天に立つ」
髪をかきあげ普段かけていた眼鏡を握りつぶした藍染はそう言い放ち、空に割れた空間へと消え去って行った。
「無茶をしましたね奴良隊長」
「『旅禍』の少年に気付かされた。守るべきものは誇りではなく命。それも失えば自分が悲しむものだと。ルキアを呼んでくれませんか?卯ノ花隊長」
「わかりました。ルキア隊士こちらに隊長がお呼びです」
オレを治療してくれているのは四番隊隊長 卯ノ花さんだ。卯ノ花隊長に呼ばれてオレの横に座った「義妹」であるルキアのか弱く細い腕を右手でそっと握る。
「苦しませてすまなかった」
「…滅相もありません兄様」
自分の膝の上で力を込めている腕から頬に右手を移動させる。
「オレはお前が大罪を犯したと聞いたときどうすればいいのか迷った。お前を養女として奴良家に迎え入れた理由は知っているか?」
「はい、亡くなられた緋真様を…忘れられない緋真様に似ていた私を引き取ったと」
「そう聞いているだろうなオレが全員にそう言ったのだから。けれど本当は違うんだルキア、お前を養女として迎え入れた本当の理由は緋真との約束だった」
オレの右手を優しく包み込んでくれる指先は本当に会ってはいないはずの亡き妻 緋真に似ている。
「ルキアよお前はオレの妻であった緋真の実妹だ。あいつは伝えないでほしいと言っていたがオレはそうは思わない。現世でお前とともに死んだ緋真は幼きお前を1人では育てられぬと涙を流しながら置き去りにした。そして緋真に一目惚れしたオレは妻として奴良家に引き入れた。周囲からは反対の声が多く上がったが祖父と母のおかげで僅かばかりの幸せなひとときをオレは過ごした」
何故だろうか実体験しているわけでもないのに脳裏にはその時の一語一句が思い出せる。それをルキアは真剣な眼差しで聞いてくれている。
「妻となってからも緋真は毎日お前を探していた。病弱でありながら自分の体が病に蝕まれているのを自覚しながら探し続けた。だがお前を探し出すより前に緋真の体は限界を迎えた。緋真が亡くなってから2年後、ようやくお前を見つけ出したオレは養女として迎え入れることを決意した。それと同時に父と叔母の墓の前で誓った。『もう二度と貴族の掟を誇りを踏みにじらない』と」
「誓ったことはぬらりひょん様から聞いております」
ルキアの言葉に軽く頷きオレは話を進める。
「お前に『殛刑』が下されると聞いたときオレは迷った。黙認すれば「貴族としての掟と誇りを守れる」だが「緋真との約束を破ることになる」と。狭間で揺れたオレは自分が何をしたいのかわからなくなっていた。『殛刑』を阻止すれば貴族としての掟や誇りはどうなるのか、父と叔母に誓った意味はどうなるのかと。結局オレは貴族としての立場を守る道を選んだ。だがそれが間違いだったと黒崎一護が身をもって教えてくれた。ルキア、いい仲間をもったな」
「兄様…私は幸せ者です。何があっても兄様に奴良家についていきます」
ルキアの瞳には強い覚悟の光が美しく輝いていた。
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そして次に気が付いたのは「崩玉」を完全に従えたと言う藍染を目の前にしているところだった。
周囲は瓦礫に覆われ友人たちや仲間が瀕死の状態で倒れこんでいる。そして自分の家にいるはずの家族に意識を向ける。
「…よかった。母さんや氷麗、青田坊、黒田坊、首無、毛倡妓たちは無事みたいだな」
「奴良リクオ…」
「ありがとうなクソジジイ」
オレの名前を呼ぶ藍染の方を向く前に担いでいたジジイを少し離れた場所に寝かせてやる。力を使い果たしたジジイは死んだように眠り続けている。
「奴良リクオ、君は本当に奴良リクオか?本当に奴良リクオであれば本当にがっかりした。君からはまったく霊圧を感じない。消していたとしてもまったく感じないということはありえない。つまり君は『進化』に失敗した。私が君に捧げた最後の時間を君は無駄にしたという「場所を変えよう藍染、オレはここで戦いたくない」…」
オレは藍染の言葉を遮って言葉を発した。そうでもしないとこいつの長話がいつまでも続きそうだったからだ。
「みんなはそこで見ていてくれすぐに終わらせるから。黒崎一護、ありがとうな。お前のおかげでルキアを失うことはなかった感謝している」
「場所を移す?それは私と同等の力を持つ者にしか言う資格はムグッ!」
オレは話している最中の藍染の顔面を左手で掴み大きく跳躍した。
「リクオぉぉぉぉぉぉ!」
後方から黒崎一護の叫び声が聞こえてくるが振り向かない。今振り向けば覚悟した気持ちが揺らいでしまう。そう自分に言い聞かせ、その怒りを腕に込めて藍染を地面に叩きつけた。
大きく凹んだクレーターから飛び出し、顔面を抑えて藍染は俺を見ている。クレーターを挟んで対峙するオレたちは静かに戦意などまったくないかのような冷たい視線を交差さしている。
「…なるほど理解したよ奴良リクオ。君は霊圧を失ったんじゃない『力』に変えたんだ。それは腕力であり握力であり跳躍力であり霊圧を肉体に利用させることで飛躍的に肉体を強化した。だからその髪が祖父のぬらりひょんの髪色に似てきているのだろう?」
オレの髪は藍染の言う通り普段の髪色からジジイの髪色に変わっている。それは純粋な死神の力を受け継いでいるジジイの細胞がオレにも受け継がれている証拠だ。
オレのすべての霊圧を肉体に注ぎ込んだことで細胞が活性化もしくは先祖返りしたことで死神本来の力を取り戻したのだ。
「御託はいい」
「ならばその口を閉ざしてやろう!」
藍染は目にも留まらぬスピードで接近し刀を振り抜く。それをオレは祢々切丸で上へと跳ね上げる。それだけで近くにあった山が粉々に吹き飛ぶ。
今度は左からの斬り払いを右へと振り抜く。さらに近くの山が粉々に吹き飛び周囲は平面に変わっていく。
「まさか一振りでここまで地形が変わるとは思ってもいなかったよ。どうやら私たちは似たような『進化』を手にしたようだ。斬魄刀が利き手と融合するという共通の『進化』を」
互いの斬魄刀で鍔迫り合いをしながら会話をする。
「『進化』?共通?笑わせるな。お前の言う言葉はどれも薄っぺらい紙切れのように存在があるのかさえ認識できないもの。それで何が変わる?何を変えられる?」
「…言葉で私を撹乱し隙を作る作戦だったかな?残念だがそれは無意味だ現にこうして私は狼狽などしていない」
「だったらなんで答える前に僅かな間があった?何故鍔迫り合いの最中に僅からながら握る腕に力がこもった?狼狽していないのは嘘だろう?」
「…ふふふふふふ。面白い奴良リクオならばこの刃を身をもって知るがいい!」
一歩後ろに下がった藍染が斬魂刀を振りかぶり薙ぎ払いオレへと接近する。
それを避けることなく左手で刀身をなんなく掴む。
すると風圧だけがオレの背後へと抜けていき遙か彼方までの地面をえぐっていった。その威力は凄まじく目視では被害が確認できないほどだ。
{…受け止めた?躱したならならわかる。いや、本来であれば躱すことさえ視認することさえ不可能な速度だ。だが躱したならまだわかる。だが受け止めた?}
「オレがあんたの剣を受け止めたのが不思議か?普通なら躱すことも視認することもできない速度であるはずの攻撃が一歩も動くことなく止められたことがそんなに可笑しいか?今度はオレから行くぞ」
「何?ガハッ!」
一瞬にして左脇腹から右肩へと切り裂かれた痛みに藍染は苦悶の声を出し、その場から離脱し大きな崖の上へと移動した。
「あんたオレが攻撃して離れたとき言ったよな?今度はオレが聞こうか?あんたなんで今距離を取った?」
「…私の剣を、素手で止めたのが、そんなに嬉しいか?私に傷をつけた、ことが、そんなに、嬉しいか?思い上がるなよ人間風情がぁ!ならばそんな奇跡が起こらぬよう『鬼道』で微塵に圧し潰すだけだ!」
藍染は右人差し指を天に掲げどす黒い霊圧を発しながら詠唱を開始する。
「『滲(にじ)み出す混濁(こんだく)の紋章
不遜(ふそん)なる狂気の器
湧きあがり・否定し 痺れ・瞬き 眠りを妨げる 爬行(はこう)する鉄の王女
絶えず自壊する泥の人形
結合せよ 反発せよ
地に満ち己の無力を知れ
破道の九十 【黒棺】!」
黒い何かが俺の周りを煽って行く。
「空間がねじ曲がるほどの重力の渦だ!そのまま押しつぶされろ!」
その声を最後に俺の視界は闇に飲まれた。
その瞬間左手を全方面へ水平に振る。
それだけで黒い闇色の何かは粉々に砕け散った。
「馬鹿な!死神も虚をも超越した私の完全詠唱による『鬼道』が無効化された?…ありえん!」
「見てわからないのか?今度はオレの番だ。一度だ、この技は一度きりしか見せることはできない。『これ』を放てばオレは死神としての力を失いそして、…死ぬ」
力を高めるオレに藍染は目を見開く。今オレの背後には羽衣狐の姿が現れているはずだ。
「なんだその姿は!鏡花水月でも明鏡止水でもない…まさか今まで見せてきたもの以外に新しい技をあの短期間で会得したと言うのか!?」
「勘違いしているようだな藍染。これは新しい技じゃない『鬼纏』だ」
「『鬼纏』だと?このようなものは見たことがない!」
「当たり前だお前に殺された親父が使っていた技じゃない。これはオレの斬魄刀の真の姿、名前は鵺切丸。祢々切丸は『始解』の名前、これは『卍解』の名前だ」
その言葉に藍染はさらに目を見開く。
「同じ斬魄刀に二つ名だと!?」
「聞いていなかったのか?こいつの真の名は鵺切丸。祢々切丸はオレがつけた所謂字名だ。だから中途半端な力しか見せない。さあ藍染、この下らない戦いに終止符を打とう」
「私は負けない!私は…「襲色 黄金黒装鵺切丸」…」
藍染が何かを叫ぶと同時にオレは愛刀を覚悟とともに振り下ろした。
音もなく一刀両断された藍染は地面に落下して行く。それをオレは哀れみを含んだ視線を向ける。
「…気を失ってはいるようだがまだ生きているのか。『崩玉』か…厄介な代物だ」
「瞬歩」で藍染に接近すると十字架にしては残酷な形で鋭利な先が藍染を貫いている。
「ようやく効きましたネ」
「浦原さん…」
背後から現れた知り合いがそう声を発する。
「リクオサンのおかげっスよ。ここまで弱らせてくれたからようやく発動しました」
「あれは一体…」
「藍染サンのためだけに創り上げた新しい『鬼道』っス。こうなることを見越して他の『鬼道』とともに撃ち込んだいたんっスよ。ありがとうございますリクオサン。貴方のおかげでこの件はようやく片付きます。しかし…」
「みなまで言うな。この先どうなるかはわかっている…」
消え始める体を見て浦原は悲しげな表情を浮かべている。
「泣くなよ浦原さん。オレは後悔なんてしていないさましろ満足だ」
「…すいませんリクオサン。貴方の命を奪ってしまいましたどう生きようと償うことはできないっス」
「別に償ってほしいわけじゃない。最後に言伝を頼みたい」
「なんなりと」
オレは笑みを深くして伝えた。
「まずはジジイに『我儘な孫でごめん』。次に母さん『大好きだ』。みんなに『今までついてきてくれてありがとう』。浦原さん最後にいいか?」
「なんでしょうか」
「氷麗の腹にオレの子がいる。そいつが生まれたら強い死神に育ててくれこの祢々切丸をオレよりも扱えるような死神に…」
リクオから渡された祢々切丸を浦原が受け取るが言葉を聞く前にリクオの体は空へと消えて行った。
「リクオサン、アタシは必ず貴方の想いを未来へと繋ぎます。これはアタシの償いです」
帽子を脱いで胸に抱えながら呟く浦原の覚悟は消えていったリクオの魂に届いたのだろうか。
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「こら鯉伴、待ちなさい!」
「嫌だよ〜これから喜助に剣術習いに行くんだから」
鯉伴と呼ばれた青年は片目を閉じながら母である氷麗の言葉を無視して家を出て行った。
「はあ〜なんだか最近言うこと聞かないんだけどどうしたらいいんでしょう」
「いいんじゃないの?元気だから」
頭を抱え込んでいる氷麗に優しく問いかけているのは母である雪麗だ。孫の誕生と健やかに逞ましく成長して行く姿が嬉しいのだろう。
いや、もしかしたら二代目とまったく同じような性格と見た目だからなのかもしれない。
「まったく運命は巡るとはよく言ったものね」
悩み続けている氷麗を放って雪麗は緋真とリクオ、鯉伴と山吹乙女そして珱姫の遺影が飾られている部屋へと足を向けた。
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???「あれ?奴良リクオを『移動させただけ』なのに物語変わってんじゃん。まあいいか面白いもの見れたから次は誰にしようかな〜おっこいつでいいか。それじゃあ準備始めないとね〜」
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「…う〜、ん?」
「目が覚めたかリクオや」
「羽衣狐、僕は一体何を…」
「『里』の入り口で倒れておったのじゃ。まったく心配かけさせよって。妾はもう行くリクオやまたどこかで会おうぞ」
羽衣狐はそれどけ言うとどこかへと消えていった。僕も家に帰って治ったことを報告するために足を動かし始めた。
「藍染?護廷十三隊?なんだろ不思議な言葉が頭に浮かんでくるけど。まあいいか治ったんだから」
どれくらい歩いたかはわからないがようやく家に着いた。
「帰ったぞてめえら」
「「「「「お帰りなさいませ三代目!」」」」」
ここからオレの三代目としての仕事が始まる。そのためにまずは…。
「行くぞてめえら百鬼夜行だ」
「畏」の羽織を着て夜の浮世絵町へとオレは仲間を連れて一歩を踏み出した。
四大貴族は朽木家でなく奴良家に置き換えられています。
ぬらりひょんは死神の間に生まれた純粋な死神、鯉伴は死神と一般魂魄の間に生まれたハーフ、リクオはハーフと一般魂魄の間に生まれたクォーター。
山吹乙女は純粋な死神であったが「こちらの世界」にいたぬらりひょんが殺した羽衣狐の呪いによって奴良家は末代まで死神との間に子が成せないようになっていた。それを知らなかったことで子供ができなかった山吹乙女は自分のせいだとして失踪した。
そしてある日、鯉伴を殺して再び羽衣狐として「この世界」に蘇る。それから「向こうの世界」のリクオが来るまでに「こちらの世界」のリクオによって倒された。
結局は原作と同じようなことがBLEACH世界にも起きていたと考えてもらえればいいです。妖怪の血が死神の血、人間の血が一般魂魄の血だと考えてもらえれば少しは繋がるかなと思います。
「向こうの世界」のリクオが「こちら側の世界」のリクオに魂が乗り移ったというところから物語は始まっています。
ルキアを救い出したシーンではリクオの話し方が白哉っぽくなっていますが立ち位置が白哉であるためと白哉がリクオに憑依しているためです。
そして藍染を止めたのは一護ではなくリクオで安倍晴明を倒したときに纏った羽衣狐を使っています。
最後の戦いのシーンのセリフはうろ覚えなのでこんな感じだったかなと思って書いています。間違っていても指摘なしでお願いします。