TS小娘とふた姉の日常 作:エルフスキー三世
京子 ……165㎝のナイスボディ
シオンの身長を都合で変更
「ああ! もうこんな時間だっ!!」
学生である京子には忙しい朝である。
玄関で靴をはいていた彼女は壁掛けの時計をみて悲鳴じみた声をだす。
私は鞄を手渡しながら、ため息交じりに呟いた。
「だから、朝は止めておいた方がいいって、いつも言っているのに?」
「う……だ、だってそれは、シオンが可愛すぎるからいけないのよ!!」
「意味不明だし……元男として言わせてもらえば、京子は少し節度がなさすぎじゃない?」
「え、そ、そう? そうなのかしら!?」
いつもの言い訳にもならない言い訳にキツメの指摘をしてみた。
私の言葉に衝撃をうける京子。
まあ、ようするにそういうこと。
京子を起こしに行く→起きない→揺する→ベッドに引きずりこまれる→ヘッーイ!→ぱんぱんぱん
最近こんな負のスパイラルが続いている。
私が悪いというので、それでは目覚ましで起きてと言うと京子は断固反対する。
ちなみに夜も大抵致しているのだが……いったい私にどうしろというのだ。
覚えたては猿になるとはよく聞くが、私たちは明らかに度が過ぎているのではないだろうか?
そんなことを考えていたら体に微かな震えがきた。
下腹部にじんわりとした事後の熱がわずかに残っている……。
やはり、強く拒否できない私が悪いのだろうか?
「本当に遅刻するから、早く行ったほうがいいよ?」
「あ、そうね、それじゃシオンちゃん……んー‼」
京子は目をつぶると唇をタコのようにすぼめて顔をつきだしてきた。
いってらしゃいのキスの要求だ。
「んー! んー! んー!!」
「………………」
ちゅ、ちゅ、ちゅと京子は頬を染めて突きだしている。
とても面白顔だけど、それでも見れる美人さんなのは流石です。
というか、毎度思うけど、どこの甘々バカップルだよ……。
……ちゅっ。
「えへへ~、それじゃいってきます!」
「はいはい、いってらしゃい」
京子は子供のような笑顔を見せると、玄関のドアを開けて外に飛び出していく。
小さく手を振って見送っていると何とも言えない気持ちになった。
京子と生活するようになってから、私の中の彼女のイメージはどんどん塗り替えられていく。
幻滅することもあれば、そうでもないこともある。
私しか知らない新鮮な発見というのだろうか……一概に悪いとは言えないのが難しいところだ。
ただ御堂京子という少女は、どんな方向からでも魅力を感じさせる人間だとは思う。
一通りの家事を済ますと十一時半を過ぎていた。
マンションの一室は二人で生活するには広すぎるスペースだけど、二人分の家事はそれほどの労働でもない。
子供のいない専業主婦は暇をもて余すというけど、元男の私がこの年で実感してしまうのはどうなんだろう?
「夕飯の下ごしらえはすんでるし、お昼は素麺にしようかな」
男の時から一人暮らしと変わらない……そんな家庭事情だったので最低限の家事や料理はできた。
この生活を始めてからはレパートリーを増やすのも兼ねて、お昼に色々と手の込んだ料理を作っていたんだけど最近は手軽にできるものが多い。
「よし、今日はツナ素麺にしよう」
そうフィーリングで決め、掃除に抜かりはないかリビングを見渡すと壁にかかっている鏡に意識をもっていかれた……。
映っているのは自分の姿なのに怖いもの見たさに近い感覚であった。
アルビノじみた真っ白な髪と色素のうすい肌。
顔立ちは日本人離れしていて、しかし白人とも微妙に違う。
一番近いのはビスクドールだろうか?
造形が整いすぎて人形じみて、まったく変らない表情が、その印象に拍車をかけていた。
息をつく、最近はため息が癖になっていて我ながら印象が悪い。
私はキッチンに入った。
そこで、テーブルに手提げバッグが置いてあることに気がついた。
「あれ、これは京子のお弁当……忘れていったのかな?」
念のため開いてみたら、やはり今朝作ったお弁当と保冷材が入っていた。
「朝バタバタしてたから」
苦笑して、そして届けようかなとそんな考えが浮かんだ。
「あれ……?」
その自然すぎる思考に自分で驚いてしまう。
この暑い日差しの中、苦労して今から届ける必要はないはずだ。
京子もお弁当がなかったら普通に学校の食堂を利用するはずである。
このお弁当も私が食べれば無駄にはならない。
ならないはずなんだけど……なんだろう、この奥歯にものが引っかかったような感じは?
「私は……もう一度あの場所を……学校を見てみたい?」
思いつき、自身に問いかけるように口に出して気がついた。
私は男のときに通っていた学校を見たくなったのだ。
特に思い出深い場所ではない。
入学して三ヶ月もいなかった学び舎だ。
そう、今の私にはなんのしがらみもない場所である。
しかし、それでも……。
「よし、いこう‼」
決意すると心が高揚していくのを感じた。
私はバッグをつかむと颯爽と玄関に向かう。
玄関の棚に置いてあった日焼け止めを手早く塗り、靴を履いてから日よけ帽子と日傘のどちかを使うか迷い、帽子を被って行くことにした。
御堂京子は驚くだろうか?
なにしろ私は基本的に出不精な人間であるから。
そんな私が学校まで来たら彼女はどんな顔を見せてくれるだろうか?
私は気合いを入れるポーズを作ると、玄関のドアを開けて踊るように外に飛びだしたのだ。
最初は普通に歩いていたのだが、遠くから学校の校舎が見えるといつのまにか駆け足になっていた。
息を切らせながら校門に辿り着いて気がつく。
京子に連絡するための手段……スマホを持ってこなかったことに。
付近に公衆電話はない……最悪なことにサイフもマンションに置いてきてしまった。
この学校にとって、今の私は部外者である。
中に入っていくような勇気は……私にはなかった。
「どうしよう」
校舎の大時計を見つめ、バッグを手に、私は項垂れて途方に暮れた。
◇ある男子学生の場合。
彼はお昼休みを告げるチャイムが鳴ると同時に校門へと急いだ。
比較的自由な校風であるこの学校は、お昼休みに周囲のお店を利用することを許可されていた。
もちろん節度を守ってという注意書きつきだが。
二年生にもなると美味しいお店も発見する。
バイト料が入ったばかりの彼は久しぶりに担々麺を食べようと心が躍っていた。
このために朝は少なめにしたので若い胃袋は激しくすいていた。
大盛に豚の角煮をのせ、海老春巻きも頼もうと彼は走りながら考える。
人気のお店なので急ぐ必要はあるがスタートダッシュがよかったのか、彼以外の学生の姿はまだ見えない。
彼はこの分だと余裕だと思いながら、校門の影に誰かが立っていることに気がついた。
中学生ほどの小柄な女の子のようだ。
まず目についたのは大きな日よけ帽子と手提げバッグ、それから服装。
暑い日中だというのに、黒い長袖のワンピースと白のエプロンを着けていた。
彼は極一般的な男子高校生である。
だからこそ、その服装が何かはすぐに理解できた。
「メイド服!?」
思わずでた彼の大きな声に、女の子はハッとした様子で顔をあげた。
「……うっ!?」
思わず呻いた。
彼は一瞬で目を奪われた。
それも仕方がないことである。
なぜならば、彼が見たのはあまりにも美しい少女だったから。
純白の髪に透き通る肌、そして輝く紫水晶の瞳。
その容姿は可憐で儚げで、そして愛らしかった。
人形のように表情に乏しい……ゆえに恐ろしいくらいの素の美人さが際立った。
まるで二次元から現れた妖精だと彼は思った。
クラスメートの御堂京子が和美人の完成形だとしたら、この少女は西洋美人の完成形だろうか?
彼はサブカルが好きで年に二回は必ず幕張にでかけている。
その彼の目からしても、目の前の少女はコスプレと呼べるレベルを遥かに超越して、普段からメイド服を着ているような自然な落ち着きようだった。
「あの、すいません……今よろしいですか?」
鈴が鳴るような美しい声色だった。
少女のイメージ通りすぎる声質に彼は慄き、首を激しく上下に動かした。
何だこの子は?
何なんだ!?
二次から飛びだして地上に現れた天使なのか!?
「あの、忙しくなかったら、お願いしたいことがあるのですが?」
首をわずかに傾ける仕草も愛らしかった。
彼は何も言葉がだせず、さらに激しくヘッドバンキングした。
そのままロックコンサート会場に突入できるテンションである。
彼のそのありさまをみた少女は少し引いていた。
「あ、ありがとう……二年C組にいる御堂京子に伝えて頂けますか? シオンがお弁当をもって校門でまっていると」
彼はスマホを取りだして少女にサムズアップした。
そして教室で弁当を食べているはずの友達から、御堂京子に伝えてくれるように電話したのだ。
彼は楽しみにしていた担々麺を食べ損ねた。
しかし後悔はない。
なぜなら少女に……シオンにお願いして、スマホのコレクションの中に、メイド写真を収めることを成功したのだからだ。
シオンの普段着は京子の趣味でクラシックメイド服です
外用の服もありますが、シオンは着替えるのを忘れていました