TS小娘とふた姉の日常   作:エルフスキー三世

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自己満足で投稿した話に、お気に入りと評価がいっぱい入っててびっくり⁉
エルフスキー三世の自己顕示欲が満たされ、また書きたいシチュが下りてきました
ああ、神よ、あさましいエルフスキーをお許しください

要するに、来年と言ったがあれは嘘だ‼

読みにくかったので、構成を一部変更しました……内容に変わりはありません‼


第5話

 その人たちが来るのはいつも決まって早朝である。

 

「おはよう、あの()はまだ寝ているのかしら?」

 

 朝の五時半、人の家を訪ねるには非常識と言える時間。

 私が目を覚まして洗顔や着替えなどの支度を済ませたのを、まるで見計らったような時間でもあった。

 早朝に鳴る呼び出しベルは初めてのことではないとはいえ、かなり心臓に悪い。

 慌ててマンション備え付けの監視カメラを確認し、玄関の扉を開けてみれば、立っていたのは凛とした空気をまとわせる女性であった。

 

「おはようございます奥さま。京子さん(・・)はまだお休みになっていますよ」

 

 古式メイド服姿の私は、不備がないか観察するような視線に対し、姿勢を正して緊張しながら答える。

 和美人で、京子との類似点が見られる大人な女性。

 三十台前半ほどにしか見えない容姿の彼女は、私の言葉を聞くと右手を額に当て深いため息をつく。

 高級な仕立てのスーツを着こなす気品ある美しさをもった彼女には、そんな大げさな仕草もハリウッド映画の女優のように似合っていた。

 

「お邪魔するわよ」

 

 そう言うと彼女は私の返答を聞く前に、自分の家のようにマンションにあがってリビングの奥へと消えた。

 取り残された私は玄関の外に立っていたもう一人の訪問者……知り合いのスーツ姿の男性に顔を向けた。

 早朝だというのに、背広を一部の隙もなく着こなすその人は、私の視線に眼鏡ごしの苦笑いを見せる。

 私の中に残っている男の部分(・・・・)がちくしょうと叫んだ。

 だって、その人のそれは爽やか系の顔立ちとは真逆の男くさい笑い方で、男でも恰好いいと感じるズルいものであったから。

 

「やあ、おはよう、シオンちゃん」

「おはようございます、剣持さん」

 

 剣持省吾(けんもちしょうご)、二十七才……御堂家お抱えの運転手であり、最近ある習い事をしている私の兄弟子でもあった。

 

「いつものジャージ姿もいいけど、その服もよく似合ってるね」

「どうも……」

 

 先ほどとは打って変わって、にこにことした爽やかな笑顔で告げられる。

 尊敬のできる本当に良い人なのは分かっているんだけど、やはり私はこの人が苦手だ。

 真のイケメンを目のあたりにすると、たいていの男はものおじするものだから。

 女なら……どうなんだろうね?

 そんな会話をしていたら部屋の扉を開く音が聞こえ、京子を起こそうとしているらしい女性の声も微かに聞こえた。

 

「う~ん、シオ~ンちゃ~ん? こんなに朝早くからお姉さんのモノ(・・)が恋しくなったのかなぁ? この欲しがり屋のいやしんぼうさんメェ♡」

 

 そして、私にとって非常に不本意で心当たりのまったくない、京子のひどく甘ったるい寝ぼけ声が聞こえてきた。

 

「いいわよ~、ワンコのように後ろからパンパンしちゃうんだから~、シオンは枕に顔を押しつけて可愛い声を漏らさないようにできる後背位が大好きだものね~? それとも正面からガンガン行こうかしら~、気持ちいいのを必死に我慢しようとしているシオンの無表情なとろけ顔もたまらなく大好きよ~♡」

 

 …………。

 

「京子さん‼」

「ぎゃっ⁉」

 

 バタンと、何かが床に投げ飛ばされる大きな音が聞こえた。

 

「あいててて……朝からいったいなによぉ……げ、げぇ⁉ お母さん⁉」

「愚か者‼ なんですかそのていたらくは‼ 家を出てからというもの、あなたはあまりにもだらしなさすぎます‼ そこに正座なさい京子さん‼」

「ひ、ひぇえええええ⁉」

 

 その母娘(・・)の会話は聞き耳を立てなくとも玄関先までしっかりと届いた。

 

「あははは……」

 

 剣持さんの場を取り繕うような笑い声に、私は体を震わせながらうつむく。

 頬どころか、顔全体が羞恥で熱くなった。

 

 

 彼女は私の雇い主である御堂京子の母。

 本当の私の雇用主である御堂(ともえ)、四十二才。

 日本でも有数の製薬会社、御堂製薬の現社長である。

 

 ◇

 

 それから、巴さんと一日付き合うことになったのだけど、非常に疲れたというのが正直な感想。

 一時間ほど京子に説教した巴さんが、ご飯も食べてない娘を強制的に学校へ送るよう剣持さんに命じた。

 

「ちゅう! シオン‼ 行ってきますのチューーー‼」

 

 剣持さんに引きずられていく、タコ顔の京子。

 赤面ものの叫び声が聞こえなくなったあたりで私が巴さんに言われたことは……。

 

「あなたたち、避妊はしているのかしら?」

 

 私はその場で崩れ落ちるように土下座した。

 京子から強引に誘われて関係したとはいえ、実の母親からしたら私は、娘(?)に手を出した不逞の輩である。

 それは私を雇った巴さんにとって、飼い犬に手をかまれるに等しいことだろう。

 今の生活が消えてしまうかもしれないという恐怖で変な汗が出て、ぶるぶると体の震えが止まらなかった。

 

「あ、ちょっ、ちょっと⁉ シオンちゃんいいのよ? そういうこと(・・)を責めているわけではないからいいのよ?」

「は、はい……?」

「しかし、避妊はちゃんとしているのかぁ……そうかそうか」

 

 あっさりとしたお許しの言葉。

 というか、腕組みした巴さんが非常に残念そうな顔をしたのは気のせいだろうか?

 

「まあ、それはそれとして、シオンちゃん朝ごはんまだでしょう? 私もまだなんだけど、よかったら一緒にお食事に行かない? あ、ほら、知ってる? 駅前に新しいドーナツ屋さんができたんだけど、ああいうファンシーな雰囲気のお店におばさんが一人で入るのは敷居が高いのよ?」

 

 おばさんどころか、巴さんは京子の姉といっても通じそうなほど若々しい。

 彼女は胸の前で手を合わせ、とても、とても素敵な笑顔を浮かべた。

 

「……ねえ、シオンちゃんは京子と違って、お母さん(・・・・)を邪険にせず付き合ってくれるわよ……ね?」

 

 肉食獣の笑いにも似たそれに対して、私に拒否権などあるはずがなかった。

 

 戻ってきた剣持さんが運転するセダンに乗せられた。

 駅前にできたというドーナツ屋さんとやらで朝食をして、そのあとは映画館で趣味じゃない海外の恋愛映画を見てから、お昼はメニューが読めず値段の書いていない庶民お断りのレストランでとった。

 そしてさらに、御堂家御用達の高級洋服店に行った。

 なぜか私が、小さい子がピアノ発表会で着そうなシックなお洋服をオーダーメイドで何着も作ってもらい、マンションに戻ってきたのは夕方の五時も過ぎた頃。

 私が両手いっぱいに抱えている紙袋の中身は、お洋服に合わせた帽子や靴やバッグなどの大量の小物類……頼んだ服は一週間もしないうちにできるらしい。

 

 去っていく高級車。

 

 私は、後部座席から無邪気な笑顔で手を振る巴さんを見送りながら、嵐のように過ぎ去った一日に人知れずため息をついた。

 

 

 ◇御堂巴の場合

 

 巴は屋敷への帰りの車の中、久しぶりの休暇に満足していた。

 やはりあの子は本物だ、非常に良い。

 そう改めて巴は認識したのだ。

 

「社長、シオンちゃんを少々いじめすぎじゃないですか?」

「あら、そうかしら? 私としては可愛がっているつもりなんだけど……?」

「まあ、はた目にはそう見えますが……ね」

 

 運転手の剣持がセダンのハンドルを切りながら、後部座席に座る巴をバックミラー越しに見て苦笑いする。

 シオンの事情を知っており、個人的な事柄で付き合いがある彼としては、巴のシオンへの接し方は男として(・・・・)ひどく同情するものであった。

 

「だって、うちの京子は親離れが早かったし、最近は私と一緒にお食事に行こうと言うとものすごく嫌がるのよ? 素直で可愛らしいシオンちゃんを可愛がりたくもなると言うものだわ」

 

 怜悧な美貌をもった巴としては珍しい、子供のようにすねた口調。

 この人も一応母親なんだなと、剣持は少しだけ意外に感じた。

 そんな彼の思考を読み取ったのか、巴がしんみりとした口調で語りだす。

 

「それにね剣持、あの子はね、私のおじい様とよく似ているのよ」

「シオンちゃんが、先々代の大旦那様にですか?」

 

 巴はうなずいた。

 すでに死去しており剣持は一度も会ったことはないが、その人物のことは当然聞き及んでいた。

 御堂浩一(こういち)……戦前は激戦区と呼ばれた戦地で従軍し、日本に帰国してからは実家の小さな薬屋から製薬会社を立ち上げ、一代で日本有数といわれるほどの大企業に伸し上げた傑物である。

 

「シオンちゃんに、大旦那様のような商才があるとは思えませんが?」

「そういう資質は京子が受け継いでいるからいいのよ」

 

 巴は目を閉じると、後部座席のクッションに深く腰を沈めた。

 

「あの子はおじい様と同じ体験を……地獄のような場所から生還してきた人間……。理不尽な出来事のすべてを自分の中に飲み干して、独りで克服した……そういう強い目をしているのよ」

「……」

「どんな状況下でも生きていけるとても強かな子よ……私が今まで出会った色々な人間の中で、本当に恐ろしいと感じたことがあるのは、おじい様とあの子だけだわ」

 

 偉大なる先々代の孫娘で、そして御堂製薬の現社長として海千山千の世界で生きている巴の言葉だ。

 剣持が見たことのある写真や映像に映る御堂浩一は好々爺とした優しそうな老人であったが、その笑顔の裏にどれほどの地獄を詰め込んでいたのだろうか?

 それをシオンも持っていると?

 確かに、彼女にはごくたまに怖さを感じることがあると剣持は思った。

 

「桐生の兄妹のどちらかを京子の許婚候補として考えて打診していたんだけど、取りやめることにするわ」

「あの二人はお嬢さまを好きすぎる(・・・・・)子たちですからね……しかし、桐生の家と後々揉めるのでは?」

「けど剣持、あの子を知ってしまったら、あの子たち程度じゃ全然物足りなく感じるのよ。御堂の家には、シオンちゃんのような肝の座った子が適任だわ」

「……さて、シオンちゃんはどう思っているんでしょうね?」

「さあ、私の目からは二人は相思相愛には見えるけど? それにしても京子はちょっとデレデレしすぎよね……」

 

 そういうことではないんだけどな、と、剣持は再びシオンに同情したのであった。




主人公が凄いと言われる展開はベタだけど、ほどほどに好きデス
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