『戸山光夜という存在』より
「なぁ、香澄」
「ぅん?」
頭上から香澄の声がする。
それもそのはず、香澄は俺の頭にくっついているのだから。後ろには明日香をおんぶしている。
「頭から離れないか?」
「やっ」
即答だった。デスヨネ。
「今、明日香をおんぶしてて両手が埋まっててな。明日香、寝ちゃったから下ろしたいだけど·······」
「やっ」
「お兄ちゃん、困るんだけど·······」
「やっ」
「後で抱っこしてあげるから」
「やっ」
「じゃあ、おんぶは?」
「やっ」
「ねぇ「やっ」」
母さんが帰って来るまでこんなやり取りが延々と続いた。
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『始まりのキラキラドキドキ』より
それは突然のことだった。キャンプに行ってから、心ここにあらずという状態だった香澄がついにあの言葉を口にしたのだ。
「キラキラドキドキしたい!」と
何も知らない人が聞けば、ヤベェやつだが
香澄が変態と呼ばれる日はそう遠くない。
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『戸山家の海水浴 後編』より
「ほら、あっちゃん!あっちゃん!カニさんだよカニさん!」
「い、いやっ!やめてよ、おねぇちゃん!」
香澄が取っ捕まえて来た小さなカニを明日香に近づける。スナガニかよ!?よく捕まえられたな香澄。スナガニってすぐ逃げるから捕まえるの難しいんだぜ?それに対し明日香は虫とか触るのダメだもんな・・・。
「お兄ちゃん、カニさん」
「ああ、カニさんだな。カニさんも必死で生きているんだから離してあげて」
「うん!」
数分後
「あっちゃん!」
香澄がどこからか海藻を持ってきた。
ンンッ!?それワカメじゃねーか、やっぱり砂浜に漂流してるのね。ワカメを明日香の背中にピチャリとつくっつけた。
「い、イヤァァァァァァッ!?」
ものすごい勢いで俺の胸に飛び込んで来る明日香。って俺かよ!?てっきり海の方かどこかへ走り去るのかと思っていたわ。よっぽど生ワカメのヌメッとした感触が恐ろしくて嫌だったのだろう。泣いてはいないが涙目である。
ヨシヨシ、大丈夫だぞ。
「こら!香澄!」
「ご、ごめんなさい」
「俺じゃなくて明日香にだよ」
このやり取りも何回目ぐらいだろうか?これが初めてというわけではない。香澄が明日香にちょっかいかけたり、ちょっとしたイタズラをしたりするのだ。本人に悪気はなく、ただ構って欲しかっただけなのだ。まあ、香澄は明日香のことが大好きだし、明日香も香澄が大好きだ。
だからすぐには姉妹喧嘩にならない。
「あっちゃん、ごめんなさい」
「おねーちゃんなんて大っきらいっ!!」
香澄と明日香に大っ嫌いなんて言われたら、想像するだけで・・・。
「ところで明日香、そろそろ離れないか?」
「やっ」
なんか似たようなやり取りを昔に香澄としたような気が・・・。
「もう海はいいのか?」
「うん」
「じゃあ、まず俺から離れようか?」
「やっ」
「」
ちなみに先ほどまで俺の胸の中にいた。今はって?右腕にひしっとくっついているよ。しかし、このままでは動けない。
「そろそろ、父さんたちのとこ戻るから腕から離れてくれ」
「じゃあ、おんぶ」
腕を離し、両手を広げておんぶをねだる明日香。今日は珍しく明日香が甘えん坊だ。素直に甘えてくれるのは兄として嬉しい。
「はいよっと」
明日香をおんぶすると・・・
「あっー!あっちゃん、ずるい!お兄ちゃん、かすみも!」
「香澄は我慢。あっちゃんのお姉ちゃんだろ?」
「うん、かすみ。あっちゃんのお姉ちゃんだもん」
最近、聞き分けがよくて助かる。今までだと駄々をこねていたはずだから。まあ、駄々をこねてもかわいいんだけどね。
結局、明日香は帰っても俺にべっとりとくっついたままで香澄は通常運転だった。でも、どこか不満そうだった。
父さん、目が死んでたけど大丈夫か?