ついにあの娘と・・・
5月に芸能界へ行くと決めてから2カ月後の7月。
オーディションに合格して、○△○芸能事務所に所属が決まった。
所属オーディションの開催日は思っていたより早くて、自己紹介なるモノの自己ピアールを書くのに悩んだ。
とはいえ、所属オーディションまでにこれといった事は何もしていない。一次審査は本当に難なく通過した。これはある意味、他にも通過した人が多いという事だろう。
二次審査は面接で、一次審査の時に書いた自己紹介アピールなるモノを5人面接官たちが見て、質問をする。最初はグループ4〜5人で面接するのかな?と思っていたら十数人ぐらいしかいなくて驚いた。どうやら一次審査の書類選考で多くの人が落とされているらしい。
そして、まさかの1人ずつの面接である。
ふぇぇ、5対1なんて圧迫面接だよぉ。
「君は芸能界で何がしたいのかね?」と聞かれた時、「キラキラドキドキしたいです!」って頭に思い浮かんだのはなんでだろ?言ったらヤベェやつだよ。
当然言うはずもなく「ステージに立って
それはつまり歌手になりたいと目の前の面接官たちに言っているようなもので、その後は圧迫面接というに相応しい嫌みな質問をされた。
最後に「自己PRを3分間して下さい」と言われた時は本気で焦ったわ。えっ、自己PR!?聞いてないんですけど!一次審査で書いた自己PRの内容だと1分どころか10秒も待たない。
焦っていろいろと頭がこんがらがった結果、俺は歌うことにことにした。席から立ち、アカペラで歌い始める。歌い終わると拍手を送られた。間奏なしでも3分は軽くすぎてしまったが、特に問題はなかったようでそこで面接は終了した。
帰宅してから、俺はふと気になりスマホで
「オーディション面接 自己PR」と検索してみたら。
ファ!?
自己PR話す内容は自分の短所を入れつつ、長所をたくさん語れ?書類の方にも自己PRめちゃ書く?
いやいや、そんな書くことないから!ということは俺の他に面接した人は有る事無い事を話していたのか?
嘘乙!
「私の長所は○○です」の受け答えしろと?そんな模範的回答で受かるほど芸能界甘くないと思うんだけど・・・。
次に「自己PR 歌う」で検索する。自己PRで歌ったり、演技するのは定番なのだそうだ。
あ、定番なんだ。
それもそうか、何が悲しくて自分の長所と短所を淡々と語らねばならんのだ。なんか納得。他の人も歌うか演技してたのね。
二次審査の面接から1週間後、俺の携帯に合格という知らせが舞い込んで来るのだった。その日の夜に父さんと母さんに合格したと告げたら、二人は物凄く喜んでくれた。
それから両親と共に事務所に行き、事務所登録を済ます。それと同時に契約の話をされ、高校卒業までにどうなるか分からないということで3年の契約を結んだ。
「やっとスタート地点ね」
「ここからが本当の勝負だぞ」
本当にここからが勝負だと思う。
なぜなら、この大手芸能事務所と言われる○△○芸能事務所は少し特殊なのだ。
事務所登録の時に聞いた話だと・・・
一般的な芸能事務所の所属するまでは
一次審査(書類選考)
↓
二次審査(面接)
↓
三次審査(演技など)
↓
所属
一次審査は多くの者が通過するものの二次審査の面接で落ちる。あまりにもオーディションを受ける人が多いため、三次審査までやってふるい落とすのが普通だ。モデルならモデルのオーディション、歌手なら歌手のオーディション。各分野のオーディションが別々なのだ。
それが○△○事務所では・・・
一次審査(書類選考)
↓
二次審査(面接)
↓
所属
であるのだ。
○△○事務所では一次審査で多くの人を落とす。それはもう容赦なく。スカウト組は軽くパスだが、一般組は本当に厳しい。モデルや歌手、俳優のオーディションとかの分野に分けず、ただの所属をかけたオーディション。このことから少しでも芸能人の卵を確保したいことが分かる。
しかし、あくまでこれは所属オーディションであり、芸能人の仲間入りとなるわけではない。芸能人となるチャンスが与えられるだけであり、それを掴み取るのは己の運と実力だ。
○△○所属では、所属してから本人の希望するところに割り振りされる。モデルならモデルの勉強とレッスン、歌手なら歌とダンスのレッスン。
所属後、すぐに仕事が舞い込んで来ることはないので、チャンスが来るまでは養成所などで自分のスキルを磨くという。
こうして無事に所属し、俺の芸能界デビューに向けた日々が始まるのだった。
香澄と明日香には絶対黙っていよう。そうしないとレッスンに行けなくなるわ。
そろそろ香澄と明日香に「お兄ちゃん、ウザい」とか「近寄らないで」とか言われてもいい年頃なのに・・・。むしろ、俺に構って構ってとついて来たり、抱きついて来たり。
反抗期は中学生かな?(現実逃避)
ちょおぉ〜と、たまに「お兄ちゃん」って頼られる感じでよかったのに。
「お兄ちゃん、一緒に寝よ?」
「お兄ちゃん。今度、お姉ちゃん抜きでどこか行こ?あと……一緒に寝てもいい?」
一緒に寝ようが寝まいが、朝には両隣に香澄と明日香がいるんだぜ?帰りが遅い日とかは、なぜか俺のベッドで先に寝ているんや。香澄か明日香の部屋に行って寝ればいいのだが、一緒に寝ないと虚ろな目で「なんで?」とか言うんだよ?
ハイライトさん、お願いだから仕事して!
それに・・・
こんなにブラコンになるなんて思わなかったんです!!!
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
所属してから1ヶ月、歌とダンスのレッスンをしている。歌はビブラートを自然な感じで出すことを目標にして頑張っているところだ。特にダンスは悪戦苦闘中、難しいよぉ〜。
レッスンがある日は、香澄と明日香に部活や習い事があると嘘を言っている。所属してるのバレたら大変やでぇ。
夏休み最後の週の日曜日。
事務所の方から話があるということで、俺は事務所に来ていた。エントランスで担当の人を待っていると、プラチナブロンドの髪をした少女がこちらに近寄って来る。
ああ、彼女だ。
「お、お兄さん!?」
実に4年ぶりの再会かな?
再会を喜ぶ前にまずは・・・
「久しぶり、ちーちゃん」