時が経つのは早いもので、俺は最高学年である小学6年生になっていた。そんな最高学年も後2、3学期の半年で終わりである。
小学5年生あたりから女子が男子を意識し始めたのか、男子とあまり話さなくなった。
視線がよく俺に向けられていたのは、気のせいではないと思いたい。香澄の兄だからか眉目秀麗だ。
小学生最高学年とはいえ、まだまだ男子はお子ちゃまな年頃だ。中学生あたりで落ち着くだろう。 俺もそうだったしな。
女子は精神面が男子より成熟が早いというだけあって、男子より落ち着いている。俺の体は子どもだが、精神年齢はもう30歳だから1年生から3年生までは本当に辛かった。無邪気な子どものふりをしないといけないのだから。
流石に純粋な子どものふりは精神的に無理があったため、他人より少し大人びた子どもとして振る舞った。 5年生になれば、心身共に急成長したから少し助かった。小学の勉強は授業を聞いてるだけで十分だったので絵心をつけたり、ピアノを弾いたりして小学校5年間を過ごした。
やはりピアノは弾けた方が後々ためになると思い、両親に習えるように頼み込んだ。コンクールには出ない方向性で週1でピアノ教室に通っている。体が違うせいか頭では理解していても手がついていかなかった。前世ではそこそこ弾けるレベルだったが、これでは本当に基礎の基礎からやり直しだ。
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俺の学校生活なんてどうでもいいだろ。
それより、香澄だ。今年、小学校に入学し、ピッカピッカの1年生だ。ランドセルを背負って、登校班の班長である俺の後ろをついてくるのが超絶可愛い。
明日香は来年で入学だ。そう、来年!俺は卒業してしまう。一緒に通えないのは非常に残念。こればかりは仕方ない。
香澄が入学してあれやこれやとしてたら、気づけば夏休み。現在、家族でキャンプに来ている。山中にあるため、夜になると辺りは真っ暗になる。既に日は落ち、辺りは真っ暗闇に包まれていた。
夜ご飯を食べ、ウトウトしていつの間にか寝ていたらしい俺は香澄と明日香を探すが見つからない。
え?外行ったのか?あっ、でも懐中電灯がない。
懐中電灯は2つ持ってきており、1つは夜ご飯を済ませた後、散歩に出掛けた両親が持って行った。
だとすると、香澄たちも懐中電灯を持って外へ行ったのが妥当と考えるべきだ。
くっそ、やらかした。気持ちよくて寝ちまった。
・・・・・・・ん?キャンプ?
そうだ!キラキラドキドキだ!
香澄と明日香が小さい頃にキャンプに行って、両親に内緒で外へ行く。そこで満点の星空もとい星の鼓動を聞いたことが、後に香澄がキラキラドキドキしたいと言い始めた原点である。
そうか、今日この日が香澄の原点だったのか!?なら、周りに木々がなくて草原が広がってる場所を探せば・・・。
俺は走った。あるはずの草原に向かってひた走る。周りに木々がなくなっていき、ついに草原に出た。
走るのを止めて、辺りを見回すと・・・数メートル先に懐中電灯を持った香澄と怯えている明日香を見つけた。
駆け寄ろうとしたがふと、足を止めて頭上を見上げた。
絶景とは、まさにこの事をいうのだろうか。
夜空を見上げると、そこは数千数万の星たちで埋め尽くされていた。天の川の星たちだけではない。一つ一つの星がざわめいているのだ。どのくらい見とれていたのだろう?我を忘れていた俺はハッとなり、慌てて香澄たちに駆け寄る。
「香澄!明日香!」
「おにいちゃん!?」
明日香は涙目になって抱きついてくる。カワイイ。
「ダメじゃないか、黙って行くなんて。夜は危険でいっぱいなんだぞ?」
「ごめんなさい」
「うん、ごめんなさいできて偉いね」
落ち着かせるように頭を撫でる。
「香澄?香澄?」
「············」
香澄から返事がない。星空を見上げたままだ。
「香澄っ!?」
「あ、お兄ちゃん。」
怒鳴ってようやく俺に気づいた香澄。
「どうして、黙って行ったんだ?」
「ごめんなさい。探検したかったの」
「なら、お兄ちゃんに一言かけてから……」
「だって、お兄ちゃん気持ちよさそうに寝てたから」
ぐっ、そう言われては・・・。
「でもね、夜は危険でいっぱいなんだぞ?」
「ごめんなさい」
「分かってくれたならいいよ、だけど本当に夜は危ないってことは忘れちゃダメだぞ?」
「うん」
左手に香澄、右手に明日香。二人の手を繋ぎ、キャンプ場まで戻った。キャンプ場に着いたら、先に戻ってきていた両親にこっ酷く叱られた、主に俺が。
俺が香澄たちを連れ出したと思われているらしい。
解せぬ。
その後の数日間、香澄は心ここにあらずという有り様だった。香澄は星の鼓動を聞いた!と言っていたが、香澄の言う星の鼓動とは?それを聞いて何を感じ何を思ったのだろうか?
きっと、それは香澄にしか分からない。
いつか香澄がキラキラドキドキに出会うまでは、陰ながら見守って行こう。