ロキ・ファミリアに問題児が来るそうですよ? 作:ジ・アビス・シーカー
___それは、一瞬の出来事だった。
逆廻十六夜は黒ウサギの放った第六宇宙速度の帝釈天の槍を受け止めた。
しかし、今までの激しい戦闘でのダメージに加え、帝釈天の槍の攻撃を受けては、流石の十六夜でも瀕死の重症に陥ってしまった。
「(チッ...やっぱりこうなるか.....まぁ、初めからわかってたけどな...)」
激痛で視界が赤く染まり、意識が飛びそうになった。
その時、飛鳥と春日部の悲鳴が聴こえた。
その悲鳴を聞いた十六夜は、このままじゃ終われないと、気合で遠退きそうになる意識を繋ぎ止めた。
「(責めて、後少しでいい!保ってくれよ!俺の命ッ!)」
体が思うように動かない。それでも、大切な仲間を守るために無理矢理動かす。
「これで終わりだ!アジ=ダカーハッ!」
そして、十六夜はついにアジ=ダカーハの心臓に、その槍を深々と突き立てた。
「見事だ...」
アジ=ダカーハの何処か満足げな声が聴こえた。
そして全て出し切り途切れゆく意識の中___最後に、十六夜を殺してしまい罪悪感で、泣きじゃくる黒ウサギの表情が瞳に映った。
「(ハッ……なんつう顔してんだよ黒うさぎ。......すまん、約束守れなかった)」
そこで意識が途絶えた。
◆◆◆◆
「……此処はどこだ?」
意識を取り戻した十六夜は、ひどく殺風景な場所にいた。
何処までも広く、何処までも黒いく、何処までも続いてそうな場所だった。
「なんだって俺はこんな所に居るんだ。確か俺はアジ=ダカーハと戦って……」
ーーその質問には私がお答えましょう。
突如後ろの方から女性の声が聞こえた。同時に闇が晴れる。黒が白に変わっていく何処か神秘的にも見える変化を見届けた後、ゆっくりと振り返る。
そこには銀髪に蒼い髪を持つ女性が座りながら微笑んでいた。
「あんたは……誰だ?」
警戒しつつ訊ねる。女性は静かに口を開いた。
「私の名前はエリス。女神です」
エリスと名乗った女性はそう言って軽く頭を下げた。
「ふーん。あんたが女神ね……そんで神様が俺の前に居るって事は、要するに俺は死んだって事か」
死に際を思いだし、現状を理解するように言葉にする。その言葉を聞いたエリスは一瞬悲しい顔をした。しかし、すぐに真面目な顔をして頷いた。
「やっぱりそうか……いくつか聞きたい事がある」
「はい、どうぞ」
十六夜は心残りだった事について、エリスに訊ねるべく口を開いた。
「そんじゃ、まず一つ。アジ=ダカーハは倒せたのか?」
「はい、貴方のおかげで倒せました」
「そんじゃ次。俺が死んでからどれくらい経った?」
「二ヶ月です」
「ノーネームはどうなった?」
「リーダーのジン=ラッセルが行方不明になりましたが、同盟コミュニティーのおかげで辛うじて立ち直れました」
「何? 御チビが行方不明だと!? チッ、引き際を見誤りやがったか……」
思わず声を荒げるも、気を落ち着かせて続きを言葉にする。
「最後に一つ。何故俺は此処に居るんだ?」
「それは……貴方には2つの選択肢があるからです」
「選択肢?」
オウム返しに訊ね、続きを促す。
「はい。一つ目はこのまま天国に行く事。もう一つは別の世界に行く事です」
「別の世界だと? そこはどんな場所だ?」
「はい。その世界にはダンジョンがあり、数多の生物が住んでいますが、ギフトゲームは存在しません」
「ハッ! 面白そうな世界じゃないか。特にダンジョンってのが気に入った」
「そうですか! じゃあーー」
不敵な笑みを浮かべる十六夜に喜びを顕にするエリス。それを見た十六夜は笑みを消す。
「ただ、何故俺をその世界に転生させようとするのか、理由を聞いてからだ」
エリスの言葉を遮り、静かに問い掛ける。
「そ、それは……い、十六夜さんに面白可笑しく生きてもらおうと……」
何処かで聞いたような事を言っている、エリスを見て十六夜は確信した。
「これは推測だが、その世界は何らかの原因で滅びかけてんじゃねえのか?」
「……何故、そう思うんですか?」
「それはーー俺の力が世界を救う力だからだ。だからこそ俺に選択肢を与え、興味をひくような説明をした。つまり、そういう事だろ?」
「……フフ、流石ですね。確かに十六夜さんの言った通り、その世界には危機が迫っています。ですが、それが何なのかまでは分かっていません」
エリスは微笑みながら自分の知る限りの事を全て打ち明けた。
「危険だからこそ、他ならぬ十六夜さんにお願いしたいんです。行って……くれますか?」
エリスのすがるような眼差しを受け、十六夜は何処か懐かしさを覚える。そして、決意を口に出す。
「いいぜ、完膚なきまでに俺が救ってやるぜ!」
「有難うございーー」
「ーーただ、その世界は面白いか?」
再びエリスの言葉を遮った十六夜はいつか言ったのと同じ言葉を投げ掛ける。その質問にエリスは少しの間、固まっていたが……
「はい。女神エリスの名において保証致します」
エリスは黒ウサギを彷彿とさせるような笑みを浮かべると、そう言った。
「……そうか、じゃ……そろそろ連れてってくれよ」
痛んだ胸にそっと触れ、背を向ける。
「分かりました……それでは、世界を救ってください」
何処か悲しそうな声音で告げられた言葉を最後に十六夜は軽い目眩を覚える。そして、次の瞬間には見覚えのない洞窟に立っていた。
◆◆◆◆
ーーブモォォォォォォォォ
後ろの方から謎の声が聞こえてくる。
まるで牛のような泣き声だ。
「なんだってんだいきなり」
振り向くとなんとそこには、ミノタウロスと、それのやや後方に、その化け物を追いかけている人らしき影が2つ見えた。
「おいおい!箱庭で色々な生物とあったがあんなの初めてあったぞ!いいな!いいな、おい!この世界も楽しそうじゃねえか!」
そう言って獰猛な笑みを浮かべながら拳を構えたところで、ミノタウロスを追いかけていた片方の奴に、声をかけられた。
「おい!逃げろ!」
声を掛けて来たのは、狼耳の男だった。
「獣人かなんかか?」
「ーー逃げて」
もう片方にも声を掛けられた。そちらは、金髪に体のラインを強調させるような服をきた美女だった。
「日本人じゃないな?となるとやっぱり異世界決定だな」
そんなことを考えていると、ミノタウロスと十六夜の距離は、残り5メートルくらいのところまで縮まっていた。
「少しは楽しませてくれよ!ミノタウロス!」
その言葉と同時にミノタウロスは、十六夜に殴りかかった。
「ハッ……しゃらくせぇ!」
十六夜はミノタウロスの拳を、避けることをせずに、寧ろミノタウロスの拳に、己の拳を叩きつけた。
すると、ミノタウロスの体が跡形もなく消し飛んだ。
比喩ではない字にして字のごとく'吹き飛んだ'のだ。
「………っは?おいおい嘘だろ!そんな見た目しといて、これでおしまいかよ!」
「お、お前…い、今……何をした…」
いつの間にか十六夜の近くに来ていた狼男と金髪は、十六夜にそう問いかけてきた。
「何したってつっても、ただ殴っただけだ」
「…………ッ!」
「...名前なんて言うの?」
絶句する狼耳男。それを気にせずに、金髪美人が十六夜に話しかけてきた。
「人に名前を聞くときはまず自分が名乗るもんだぜ」
「う....ごめん、アイズ·ヴァレンシュタイン」
「け..ベート=ローガだ。で、見るからに野蛮そうなお前は」
「見た通り野蛮で凶悪な逆廻十六夜です」
それぞれが自己紹介が終わった所でアイズが聞きたかった質問を切り出した。
「十六夜...なんでこんなとこいるの?」
「さーな、分からん?」
「分からんって、自分からじゃなきゃ此処には入れないだろが!」
「後、十六夜は何処のファミリアに入ってるの?」
そうこれがアイズたちは一番気になっていたことだ。
本来Lv2のミノタウロスを、一撃で倒す様な、しかも殴っただけでミノタウロスを、粉々にするような冒険者なら少し位名前を聞いたことがあるはずなのだ。
しかし逆廻十六夜と言う名前なんて聞いたことがない。
「いやそんなのには入っていない」
「「!?」」
「おい、嘘だろ!!」
「ここで嘘言ってもしょうがないだろ」
二人が驚くのも無理はない。
この、ダンジョンに住まうLv.2以上のモンスターを倒すには、ファミリーに所属していなければ絶対に、
十六夜の解答を聞いてから、アイズは少し考える姿勢を取ったあとに、何か閃いたのか口を開いた。
「...じゃあ私たちのファミリア来ない?」
そう言って、可愛らしく首を傾げた。
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