ロキ・ファミリアに問題児が来るそうですよ? 作:ジ・アビス・シーカー
目が覚めると、丁度日が登り始めた頃だった。おそらく6時くらいだろう。
「起きたはいいがどうしたもんか、暫くすればおそらく入団試験の説明をしにフィンあたりが来るだろ。その前に朝飯にするか」
入団試験の説明をされてすぐ開始されては、朝食を取る時間がないと判断した十六夜は、ギフトカードから保存食を取り出そうとした。
そうして、やることが決まったところで、扉をノックする音が部屋に響き渡った。
「はいはい、今開けるよ」
いくらなんでも来るの早すぎるだろ、などと考えながらも、来たものはしょうがないと諦めて扉を開けた。
すると、そこには初めて合ったときとまったく同じ服装をしたアイズが立っていた。
「......十六夜ご飯食べに行こ」
どうやら何も心配はいらなかったらしい。
ーー◆◆◆◆ーー
「あっ、来たようだね」
食堂に付くとフィンが出迎えてくれた。
「それにしても広いな、全員集まって食べるのか?」
「朝食はね。昼と夜はダンジョンに潜ってたりしてなかなか集まらなくてね」
その他、ちょっとした雑談をしているといつの間にか食堂に結構な人が集まって来ていた。
「そろそろ席つかないとね。どうだい一緒に食べないか?」
「それも悪くはないが....」
十六夜はフィンから視線を外し斜めをチラッと見た。
フィンもそちらの方向を見ると、そこには自分の席の前を確保して、こちらをジッと見つめるアイズがいた。
「なるほど、それじゃあ試験については食べ終わってから話すことにするよ。」
「あぁ」
フィンの言葉を背に手をヒラヒラと振りながらアイズの所まで歩いて行った。
アイズが用意してくれた席に座りしばらく待っているとティオネやティオナ、レフィーヤなどがアイズの周りに集まり始め、最後には食堂にある席が殆ど人で埋め尽くされた。
そしてフィンの挨拶的なのが終わると食堂が一気に騒がしくなり食事が始まった。
初めは遠征で起きたことについて話していたが、暫くすると今日行われる入団試験の話になっていた。
「ねぇねぇ!十六夜は今日の試験の話きいてたりしないの!」
朝から元気いっぱいなティオナが興味有りげに聞いてきた。
「詳しいことは聞いてないが、フィンと戦うらしいな」
「ふふっ、可哀想に団長が相手だなんて、不合格確定ね」
今あからさまに煽ってきたのはティオネ。昨日フィンを襲おうとした痴女だ。
「......今失礼なこと考えたでしょ」
「ハッ、まさか誰も痴女だなんて思ってねぇよ」
ティオネが怒りテーブルを乗り越え掴みかかろうとするのをティオナが必死に止めていると、アイズが口を開いた。
「大丈夫...十六夜は合格するよ」
「ヤハハ、初めから落ちる気なんざねぇよ」
その後、程なくして朝食を食べ終わり解散するとフィンが話しかけてきた。
「さてと、腹ごしらえもすんだしそろそろ始めようか。ついて来てくれ、中庭で試験を行う」
◆◆◆◆__________
大人しく付いて行くと直ぐに中庭に出た。何処から聞きつけたのかギャラリーも沢山いて、その中にはアイズもいた。
フィンは中庭の中央に立ちギャラリーにも聞こえるように大きな声で試験の説明を始めた。
「これよりロキ・ファミリア入団試験を行う!試験内容は僕と十六夜の一騎打ちで、勝利条件はどちらかが降参するか戦闘継続不可能になった場合のみだ!以上!」
フィンが説明し終わるとギャラリーがざわめき始めた。
それもそうだろう、Lv.6の冒険者とLvさえない人間が戦えば結果は一目瞭然、当然「団長はなぜこんなことを?」「おいおい死んだはあいつw」などと言う声が上がった。
「さあ、準備も整ったし始めようぜ」
そんな声はどこ吹く風、十六夜は気にも止めず拳を構えた。
「リヴェリア開始の合図を頼む」
フィンの言葉に頷くとリヴェリアは高らかに手を掲げ開始の掛け声をかけた。
「それでは開始!」
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Side:フィン
リヴェリアの開始の合図を聞いた瞬間、僕は長年冒険者をやって来た経験から来る直感なのか後方にジャンプしながら守備の体制を取っていた。
そして気がついたときには僕は、はるか後方にあったはずの柱に体を埋めていた。
「はは、...強いとは思ってたけど、まさかここまで差があるなんてね」
左腕の感覚がない、恐らく左腕で攻撃を受けたのだろう。
もしガードしていなかったらと考えるとゾッとした。
それ以外の所はなんとか動く。少し動かしただけでかなり痛いがそれでもまだ動ける。
柱から身を起こしフラフラと立ち上がるとリヴェリアが慌てて試合を止めようとした。
「この勝負十六y「待って!」」
リヴェリアが言葉を遮られたことに驚きこちらを見た。
「まだ...大丈夫..だから、まだ負けてない!」
僕はまだ十六夜に負けたくなかった。それは、団長としての意地もあるが、それよりも自分より遥かに強い相手に少しでも手を伸ばしたい、少しでも長く戦いたい、そして、一矢報いたかった。
「ヤハハ、まさか耐えるなんてな。でも、次で終わりだ!行くぞ!」
「あぁ来い!」
今の僕じゃ十六夜が攻撃の動いてからじゃ防御もカウンターも出来ない。
なら考えろ!
今までの経験、天性の才能、落ちている瓦礫位置全てを使って次の十六夜の攻撃の軌道を読みきれ!
そして導き出した答えの軌道に槍を添えた。
十六夜は一瞬消えそして自分の予想した軌道上に姿を表し拳を振り抜こうとした。
そうなれば当然十六夜の拳に槍が刺さり一矢報いられると思った。
しかし、十六夜の拳に槍が刺さることはなく槍は先端ごと砕かれた。
「ハッ、やるじゃねぇかフィン」
この言葉を最後に、僕の意識は途絶えた。