ロキ・ファミリアに問題児が来るそうですよ? 作:ジ・アビス・シーカー
ホームを出た俺は、特に目的の場所もなく人の流れに沿って街を散策していた。散策していて気づいたが、この世界の街並みはイタリヤのそれに近い。切石で創られた建物が多く木造建築などはあまり見かけなかった。
街の風景について考えながら流されていると、やがて大きな建物に辿り着いた。その建物には、武器を持った者達が入っていったり、出ていったりと忙しなく行き交っていた。多分だが、仕事の受注などができる場所なのだろう。
約束の時間まで暇だしダンジョンに行くのも悪くないか。そう思いダンジョンの方を見ていると後ろから声をかけられた。
「やれやれ、確かに夜までは自由って言ったけど、ダンジョンに行くのはやめてくれよ。
振り返ると、そこにはつい先程別れたフィンが立っていた。
「なんだよフィン、もう用事はすんだのか?」
「あらかた終わったところだよ。それよりどうだい、やる事が無いなら僕がこの街を案内するけど」
「団長様に案内して貰えるとは光栄だな」
「決まりだね。じゃあ最初はこっちだ」
ーーーーーー◇◇◇
こうして、フィンと共に街を回っていると丁度いい時間に約束の場所に辿り着いた。恐らくフィンがこうなる様に案内してたのだろう。
「豊穣の女主人か」
木製の看板にか書かれた文字を読み上げる。
「ロキのお気に入りのお店でね。何か打ち上げがあれば大体このお店に来るんだ。さぁ、中に入ろう」
店の中に入るとそこには多くの人々がいた。店に入る前から店の中から笑い声や話し声が聞こえていたがここまで繁盛しているとは思わなかった。
「こっちだ、付いてきて」
フィンに付いて行くと、そこにはロキやリヴェリア達がいた。
「お、来たなフィン。そろそろ始めようと思っとったところやで」
フィンがロキの近くの席に座ったので自分も適当に空いてる席を探し少し遠くの席に座った。
それから少しして空いてる席もなくなったところでロキが立ち上がり注目するように呼びかけた。
「よっしゃあダンジョン遠征みんなご苦労さん!!それに十六夜は入団おめでとう!!今日は宴や!飲めぇ!!」
「「「「「「「乾っ杯ー!!」」」」」」」
その合図と共に店内はドンチャン騒ぎ、皆がまるで今まで、貯めたモノを吐き出すかのように大騒ぎ状態だった。
一方十六夜はと言うと、1人もくもくと魚の煮付けを食べていた。
まぁ、さっきの騒ぎの後じゃ近づいてくるやつなんているわけねぇわな。
そんな感じでテーブルの上の沢山の料理を一人で食べられるという特別待遇を受けてると、誰かが反対側の席に座った。
魚に向けていた顔を上げるとそこにはアイズがいた。
「どうした?酔っ払って席でも間違えたか、ほらお前がさっきまでいた席はあっちだぜ」
勘違いしたことを危惧しアイズが先程までいた席を指差してやった。
「...間違えてないよ。十六夜に...聞きたいことがるの」
「おう?なんだ、俺に答えられることなら答えてやるよ」
「教えてほしい...なんで...そんなに強いのか...私は..強くなりたい...だから、教えて!」
アイズは珍しく大きな声を上げた。しかし、それはアイズにしてみればの話。その声は周りの騒音に掻き消され限られた者にしか聴こえなかったろう。その程度の大きさ。けれど、その言葉に込められた思いはとてもデカく十六夜には感じた。
「...お前は、何の為に強くなりたいんだ」
「私は...強くなって..今度こそ....失いたくない」
話している間アイズは拳を握りしめていた。まるで自分を責めるかのように。
十六夜は確信した。アイズの欲している強さは自分に足りなかった強さだと。
「そうか、...残念だなアイズ、俺は強くない」
「嘘!十六夜はフィンを倒した。その十六夜が弱いはずない!」
「........俺は別の世界から来たんだ」
「...?いきなりどうしたの」
アイズは突然突拍子のない話をされて困惑していた。
「まぁ、聞けよ。そこの世界は箱庭つってなーーー」
十六夜は今までの話した。
箱庭のこと、自分のギフトのこと、世界を救ったこと、この世界に来た理由。
そして何より、3人の女の子の笑顔を守れなかったこと、大切な約束を守れなかったことをーー
「ーてな感じだ。俺はたった3人の笑顔を、約束を、守ることさえ出来ない。こんな偶然の力があっても守れなかった。」
「俺は弱い」
十六夜はいつの間にか俯き力一杯に握りしめられた自分の手を眺めていた。
「十六夜は弱くないよ...」
「ハッ、まだ言うか。いいぜそっちがその気ならこっー」
そこで十六夜の言葉は止まった。理由は簡単驚いたからである。いきなり顔に手を添えられ強制的に前を向かされ、さらに自分額に相手の額をくっつけられたら誰でも驚くだろう。
「弱くない」
今度は少しムスッとした感じで言われた。
「...十六夜は確かに約束も笑顔も守れなかったかもしれない。けど、十六夜はその娘達仲間の未来とその先にある笑顔を守れたんだよ。それに次も救ってくれるんでしょ」
いつもはとぎれとぎれに喋るアイズが今回は一度も詰まることなく喋っていた。それはきっとアイズが本当に伝えたい事だからなのだろう。
「ふっ...いいぜ!見せてやるよ!次こそは涙の余地なく完膚なきまでに救ってやるよ!」
「...うん..約束」
額を合わせたまま二人は笑いあった。
「ア...アイズと新人がキスしようとしてやがる!」
どこからとも無く声が上がった。声が上がると殆どの団員はその声を上げた者の指さしてる方を見た。その目に写り込んだのはアイズが身を乗り出し十六夜の顔に自身の顔を近づけてる姿だった。
「っち...ちがー」
いつもなら、このくらいのことなら軽くスルーするアイズであったが何故か今回はとても恥ずかしく、顔を赤くしながら手をパタパタして否定していると。
「ヤハハ、ついに俺達の熱愛がバレちまったなアイズ」
「っな/// なに..いっ...て」
アイズがその言葉を否定しきるより早くモブAが言葉を被せてきた。
「ちくしょぉ!団長の件といいもう許せねぇ!行くぞ皆!」
「そうだ!そうだ!表出やがれ!」
ヤンヤヤンヤ
モブAの掛け声に同調したその他モブ達が講義を始めた。
「ハッいいぜ売られた喧嘩は全て買う主義なんだ。付いてってやるよ」
それを合図にゾロゾロとモブAを先頭に十六夜達は出ていってしまった。残ったのは第一級冒険者達とロキぐらいだった。
「あっ...あ..うぅ〜///」
アイズは十六夜たちが出ていったあと恥ずかしくなって蹲ってしまった。すると、誰かの足音が近づいてきてアイズに話しかけた。
「どうだったアイズ。強くなるヒントはあったか?」
話しかけて来たのは皆のマm...リヴェリアだった。
「無かった...」
「そうか...残念だな。だが、十六夜といれば何か見えてくるかも知れんな」
リヴェリアがチラリとアイズと見るとこれからのことが決まった様な嬉しそうな顔をしていた。
ふふっ、ダンジョンと鍛錬以外興味のなかったアイズが...喜ぶべき変化ではあるが少し寂しくもあるな
アイズとリヴェリアか話してる一方、ロキとフィンも話していた。
「はは、彼本物の英雄だってさ!これから面白くなりそうだねロキ」
「ふっん!何が英雄や!ウチのアイズたんは絶対に渡さへんで!」
こうして遠征の打ち上げ兼、十六夜の入団祝は幕を閉じたのである。
ーーーーーーーー◇◇◇
余談だが翌日十六夜に喧嘩を挑んだ者たちは皆、頭から壁に埋まった状態で発見されたらしい。
駄目です。完全にスランプ状態に陥りました。数時間かけてやっとこさこの出来です。多分次の投稿は来月辺りですかね、多分。もしこれよりいい案を思いついたら書き換えるかもしれません。