航空機兵ボトムレス   作:伝説の超浪人

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この小説にはご都合主義・一部設定変更などがございます。

またArcadia様にも投稿しています。

ハーメルンへの投稿は初めてです。

それでもよろしければご覧ください。

ではどうぞ!

★★★


第1期

お父さんはあまり喋らない人だった。

 

いつも同じような表情をしていて、他の人にみたいに大声で笑ったところなんかは一度も見たことがない。

 

青い髪で、いつも同じ赤い服を身にまとっていた。

 

お母さんは茶髪の奇麗な人だった。

 

でも体が弱いのか、近くの宮藤診療所によく通っていた。私も小さい頃は一緒に連れられ、宮藤さんたちとよく喋った。

 

お父さんもお母さんもこの国…扶桑の出身ではなく、外国の名前と苗字だったから宮藤さんたちが遠い親戚として処理してくれたって昔聞いたことがある。

 

だから私の名前は宮藤芳佳なんだって。

 

初めて2人とも外国出身と聞いたときは驚いたけど、そんなことは大したことじゃない。私はお父さんもお母さんもが大好きだ。

 

お父さんは私が虫を捕まえたり、奇麗な花を見せると頭を撫でてくれた。そしてよく肩車をしてくれたのを覚えている。

 

私はお母さん譲りの茶髪だ。お揃いだね、とお母さんに言うとお母さんはそうね、嬉しそうに言ったことを覚えている。

 

お父さんは機械の修理のお仕事をしていた。近所の人から持ち込まれる家電から、車なんかも修理していた。

 

そしてAT【アーマード・トルーパー】といわれるロボットみたいなのも修理していた。

 

それはお父さんたちがこの国に来る数年前に空から降ってきたんだって、町の大人たちが言っていた。

 

嘘みたいな話だけど、本当の事らしく色んな国でATは作られるようになったみたい。

 

ATの修理を依頼する人たちはちょっと顔の怖い人なんかも多かったりするけど、そういう人相手でもお父さんはいつもみたいに表情を変えず修理していた。

 

たまにきっちりとした格好の人たちが来て、お父さんは数日その人たちと一緒にどこかに行ってしまうことがあった。

 

お母さんは「お父さんは大きな仕事をやっているのよ」と言っていた。

 

「どういうお仕事なの?」

 

私がそう聞いてもお母さんは笑うだけで答えてくれなかった。そんな日はお母さんがよく私に構ってくれたことを覚えている。

 

一緒に絵本を読んでくれたり、お風呂入ったり。お母さんの胸は大きくて、胸に飛び込むとお母さんは頭を撫でてくれた。

 

友達もできて、一緒に遊んで。疲れて帰ればお母さんとお父さんがいる。そんな生活だった。

 

ある日お父さんがウィッチ……魔法力がある女の人の装備であるストライカーユニットで画期的な理論を生み出したと大きく新聞に載り、みんなでお祝いした。

 

お父さんは軍の人と一緒に仕事することもあるらしい。

 

「どうして?」

 

と聞いたことがあるが、お父さんは

 

「欲しいものがある」

 

とだけしか言ってくれなかった。

 

新聞に載った日を境に、お父さんは色んなところに呼ばれるようになった。

 

前より一緒にいる時間が短くなって、少し寂しかった。

 

けど仕事があることはいいことだぞ、と近所の人や宮藤さんたちに言われ、お父さんを困らせてはいけないと思い私は我慢した。

 

数日お父さんがいなくなることはあったが、長期間帰ってこないなんてことは一度もなかった。

 

お父さんは家族から離れたくない、といってあまり遠くの場所の誘いには乗らず、なるべく家にいるようにしたんだって。

 

嬉しかった。

 

あんまり多くは語らないけど、私たちのことを大事にしてくれるお父さんは、私に自慢だった。

 

そんなありふれた生活が終わりを告げたのは、唐突だった。

 

お父さんは軍のお仕事でストライカーユニットの研究のために欧州に船で向かった。初めて長期間でお父さんがいなくなる話で、ずいぶん私がわがままを言ったのを覚えている。

 

そしてしばらくして帰ってきたのは、お父さんの遺品だった。お父さんの小物が入っていただけで、お父さんの姿どころか影も形もなかった。

 

詳しい話は機密ということで、軍は教えてくれなかった。しかしお父さんの船はネウロイに襲われたということだけ特別に教えてくれた。

 

私は泣いた、これ以上ないくらいに。その日はいつの間にか寝てしまっていた。

 

悲しみにくれる日々。そんなある日に帰宅すると車が止まっていた。

 

何だろう。お客さんだろうか。

 

「ただいまー。お母さん、誰か来てるのー?」

 

居間の扉を開けると、厳しい表情のお母さんと軍服を着た男女の2人がいた。

 

「芳佳……ご挨拶しなさい」

 

「あ、初めまして。宮藤芳佳です」

 

眼帯をし、後頭部で髪を1つにまとめている白い軍服を身にまとった女性が頭を下げた。続いて男性の方も頭を下げた。

 

「はじめまして。私は第501統合戦闘航空団、通称ストライクウィッチーズ所属の坂本美緒少佐だ。今日は君を誘いに来た」

 

「私を?」

 

軍人さんが私に何の用だろう。思い当たる節が全然ない。

 

「君は治癒魔法の使い手だそうだな。それもかなりのな。その力をウィッチとして生かす気はないか?」

 

「お断りさせていただきます」

 

私の考えがまとまるより前に、お母さんがこれまでに見たこともないくらい怖い表情で返答していた。

 

坂本さんは少し驚いた表情を見せたが、その返答を予想していたのか、すぐに元の表情に戻る。

 

「今欧州は大変な状況です。1人でも多くのウィッチが欲しい。わかっていただけませんでしょうか」

 

「この子は戦えるような子ではありません。それに軍には向いていない性格です」

 

「まるで軍隊を知っているような口ぶりですね」

 

「夫が軍に関わっていれば、嫌でも耳にも入ります」

 

こんな怖いくらいの声を出すお母さんは初めてだった。

 

軍、その言葉を聞いたとき私の体は硬直した。

 

「……お父さんの詳しい話を教えてくれたら考えます」

 

「芳佳!!」

 

お母さんの厳しい怒声より、私の意識は坂本さんに向けられていた。坂本さんは息を少し吐いた。

 

「……宮藤博士の死体は上がっていない。ネウロイの攻撃で船が沈んだからな。遺品だけがあったんだ」

 

「……坂本少佐」

 

「これくらいならいいだろう、土方」

 

男の軍人さんが坂本さんに非難の声をあげるが、坂本さんはそれでも教えてくれた。

 

「……じゃあお父さんは死んだかどうかもわからないんですね」

 

そう質問しても、坂本さんたちは答えてくれなかった。

 

「……芳佳、あなたまさか」

 

お母さんは顔をしかめる。私の考えていることが分かったようだ。

 

「私を欧州に連れて行ってください!」

 

「駄目よ、芳佳!」

 

お母さんは見たこともないくらい厳しい表情で言うが、私は決めたんだ。でもお母さんの言葉はそれ以上だった。

 

「お父さんは必ず戻ってくるわ!だから待っていればいいの。お父さんは絶対に死なないから」

 

「ですが奥方…」

 

お父さんが生きていることを、お母さんは確信しているようだった。

 

まるで決まっているかのような言い方だ。土方と言われる男の人は、顔をゆがめている。

 

「お父さん、大怪我して動けないかもしれないんだよ!?だから私行く!」

 

「芳佳!」

 

それからお母さんと話は平行線をたどった。

 

それを見て坂本さんと土方さんは、今日は話が進まないと感じたのか帰っていった。入隊するならば歓迎すると言い残して。

 

その後私はお母さんの反対を押し切って、欧州へと旅立った。

 

もしかしたらお父さんが生きているという希望を抱いて。そしてそれは私の闘いの日々の始まりでもあった。

 

 

 

 

航空機兵ボトムレス(装甲騎兵ボトムズ×ストライクウィッチーズ)

 

 

 

 

欧州。それは硝煙と瘴気が蔓延る前線でもあった。しかしそこでもお父さんについての情報はなかった。

 

欧州は多くがネウロイの支配下にあり、ここでお父さんの情報を得るには強くなり部隊に残るしか道はなかった。

 

第501統合戦闘航空団、通称ストライクウィッチーズ。

 

そこが私の所属することになった部隊。各国のエースが集められた部隊……言い換えれば前線そのものであった。しかし前線であればお父さんの情報が手に入る、そう思っていた。

 

そんな期待を現実は否定していく。部隊長であるミーナ隊長にお父さんの足取りを聞いても、分からないそうだ。

 

お父さんが乗った船はネウロイの攻撃で南アフリカ付近の海に沈んだ。

 

生存者はゼロで、船の残骸から発見されたのはお父さんの持っていた手荷物のみであり、遺体は見つかってない。

 

船が沈んだ付近の地域では博士らしい人物の目撃情報はなく、近くの町でネウロイの襲撃があっただけだそうだ。

 

「ごめんなさいね、力不足で」

 

「いいんです……ありがとうございます、ミーナ隊長」

 

お父さんの船が沈んだ理由はやはりネウロイだった。仮に生きていたとしても、広大なアフリカの地で1人で生存できる可能性は極めて低い。

 

知れば知るほど、お父さんが生きているとは思えないような知らせばかりだった。

 

気分が沈んでいく。そんな中ネウロイの襲撃を知らせる警報が基地内に響く。

 

そこで私は同じ部隊のリーネちゃんと二人だけでネウロイと戦うことになった。

 

硝煙が薫る中2人で倒したネウロイが崩壊した姿は、桜吹雪にも似ていた。あの無機質な外見からは考えられないような、美しい光景だった。

 

しかしこれがお父さんを攻撃したのだと考えると、まともではいられなかった。

 

リーネちゃんとはあれから仲良くなれたが、上手く話すことさえできない人もいた。

 

その人たちは、ネウロイによって過去をズタズタにされていた。

 

歴史を、町を、人を飲み込む。ネウロイに生まれ育った土地を追われている人々。それがどのような感覚か、私には完全には理解できていなかった。

 

不規則になりつつあるネウロイの襲撃の中、ネウロイの攻撃で銃が爆発し、バルクホルンさんは胸に怪我をして墜落した。

 

この場で治療しなければならない傷だ。そして今この場で治癒魔法を使えるのは私だけ。

 

「動かすのは無理です!この場で治療します!」

 

私が治療魔法で治療している間はシールドが使えずネウロイからの攻撃は防げない。代わりにペリーヌさんがシールドで私たち2人を守っていてくれた。

 

「私なんか構うな……敵にその力を使え」

 

「嫌です!必ず助けます!」

 

バルクホルンさんは治療を中断し私に戦いに参加するよう促すが、聞く気はなかった。目の前の人を見殺しにすることなんてできなかった。

 

バルクホルンさんは再び戻るよう促すが、私は治療を続けた。

 

意地もあった。治療に全力を注いでいるため、激しい攻撃の中ネウロイの攻撃の状況まで私は気にすることができなかった。ペリーヌさんのシールドが軋みを上げていることを。

 

「シールドが……!」

 

「……っ!?」

 

一瞬だった。

 

ペリーヌさんのシールドを貫通し、ネウロイの攻撃が私の胸を貫いたのは。

 

「新人!」

 

「宮藤さん!!」

 

2人の叫び声が聞こえても、私はバルクホルンさんの治療を続けた。2人が色々言ってくるが、私はやめなかった。

 

そしてバルクホルンさんの治療が終わると同時に、私の意識は途切れた。

 

暗闇の中から目を開ける。目に入ったのは白い天井と、皆の顔だった。

 

その皆の表情が変だった。

 

「み、宮藤さん……」

 

「あ、あぁ……!?」

 

まるであり得ないものを見るような、そんな表情を誰もが浮かべていた。

 

一体何が原因だろうか。

 

あのとき確かに胸を貫通したはずだ。しかし傷跡はそれほどひどくなかった。

 

ミーナ隊長に聞くと、胸を貫通してかなりの出血量だったらしい。その後drの処置もあったが、いつ目覚めるかもわからない昏睡状態だったそうだ。

 

にも拘わらず半日足らずで目を覚ましたことに皆驚いていたらしい。

 

偶然にも肺や心臓など内臓を傷つけず貫通したのが幸いだったようだ。

 

次の日には動けるようにはなったが、大事をとってしばらく休みを取らされた。

 

そしてこの回復の早さは、おそらく無意識下でも自身に治療魔法をかけ続けたのだろうという見解だった。そうdrから聞いた。

 

お見舞いに来てくれる皆や、バルクホルンさんやぺリーヌさんはあの戦いでのお礼を言ってきて、そこから以前より仲良くなれた気がした。

 

……自分のこの回復速度に、疑問を持ちながら。

 

 

 

 

ネウロイの襲撃がくる中、より部隊の皆のことを知るようになり、皆の過去を知ることとなる。

 

サーニャちゃんとエイラさんとの夜間哨戒のため、しばらく2人と寝食を共にすると色々2人のことを知ることをできた。

 

サーニャちゃんの家族はウラルの山々よりもっと東に家族が避難したそうだ。そして安否は不明。

 

行方がわからない……お父さんもそうだ。この夜空のどこかにいるのだろうか。

 

その夜空で襲い掛かるネウロイ。1人では勝てなかった敵だろう。しかし私たちは3人だった。だから勝てた。

 

サーニャちゃんが同じ誕生日である私に、特別に秘密を教えてくれた。固有魔法で、遠くの電波なども拾えるらしい。

 

その中で、サーニャちゃんのお父さんのピアノの旋律が聞こえてきたのだ。

 

サーニャちゃんのために作った曲。その旋律は彼女の父親が生きている証だった。

 

……私もお父さんの生きている証拠が欲しかった。

 

今どこにいるのだろう。旋律を聞きながら、私は月を眺めた。お父さんもこの月を見ていると信じて。

 

 

 

 

 

 

数日後北アフリカのカイロにあるネウロイの巣が破壊できたという朗報が入った。

 

これはアフリカの奪還に成功したことを示し、皆喜んだ。

 

それを成したのがアフリカの星を始めたとしたウィッチたち。そして凄腕のAT乗りがいたそうだ。そのAT乗りはすさまじい数のネウロイに突っ込み、地上型の超大型ネウロイを単騎で撃破し、その爆発で上空にある巣をも吹き飛ばしたという話だ。

 

信じられない、とミーナ隊長はつぶやいていた。当然だろう。ウィッチのシールドは言うに及ばず、戦車より遥かに脆い装甲のATで突っ込むなど自殺以外の何物でもないのだから。

 

ATでは考えられない戦果ではあるが、超大型ネウロイの爆発の際、それを撃破したATが吹き飛ぶところは多くの人が見たらしい。パイロットは死亡しただろうとのことだった。しかし、私の中でそのATのことが妙に引っかかっていた。

 

一向にお父さんの情報がないことに疲れを感じながら、私は出撃した。見たこともないネウロイが私の前に現れる。

 

人型。そうとしか言いようのない、私たちを真似ているようなネウロイだった。

 

今までのネウロイだったならば即座にこちらに攻撃を仕掛けてくるはずなのに、そのネウロイは私の周りを飛ぶだけで、攻撃の気配はまったくなかった。

 

違うかもしれない。しかしお父さんを奪ったのはネウロイ。私はトリガーを引くことを躊躇していた、してしまった。

 

坂本さんがそのネウロイの攻撃で負傷したのは、そのすぐ後だった。

 

撃てなかった私が悪いのはわかっている。しかしどうしても勘が違うと訴えているのだ。

 

だから命令を無視して、もう一度そのネウロイに会いに行った。そこで色んなものを見た。

 

宇宙から落ちてくる筒のような何か、ネウロイと戦う昔の人々、ネウロイに襲われる街、焼け落ちる街に行進するAT、ネウロイの巣を破壊するAT、後ろ姿ではあるがATから降りる赤い耐圧服の男、顔までは見えないが裸で箱に入っている男女が宇宙から地球へ落ちていく映像、ネウロイのコアの近くにあった謎の機械。

 

私は気になるものが多くあったが、基地に帰還した私を待っていたのは皆に銃を向け囲む兵士と、その中心にいるマロニー大将の姿だった。

 

私はマロニー中将へ最後の映像の異常性を訴えた。すると大将は私にもわかるくらい狼狽え、私の軍規違反を理由に501の解散を言い渡した。

 

部隊は解散した。私のせいで。しかし誰がどう見てもマロニー大将の様子はおかしかった。

 

扶桑へ向かう船の上で、マロニー大将が自信をもってネウロイを打倒する力と告げた兵器「ウォーロック」がネウロイを圧倒していた。

 

ウォーロックこそ、ネウロイの巣で見た兵器そのものだった。

 

最初のうちはウォーロックがネウロイを圧倒していた。しかしウォーロックは次第にこちら側にも仕掛けてくるようになった。

 

それをきっかけに、再度集まった501の皆の力で倒し、赤城と合体したウォーロックを吹き飛ばすことに成功した。

 

そして付随するようにガリア上空のネウロイの巣も消滅した。

 

色々あったが、ネウロイの力は人類が使うことはできないということだろう。そして巣が破壊されたということは、ペリーヌさんの故郷であるガリアが解放されたと同義である。

 

皆喜んだ。私も自分のことのように喜んだ。しかし巣を破壊したことは、501の解散をも意味していた。

 

皆晴れやかな顔で自国や原隊へ復帰するため戻っていった。

 

私は欧州に残りたかったが、軍規違反を繰り返した私は不名誉除隊ということで扶桑に戻されることになった。

 

最後に皆で集まるとき、ミーナ隊長が少し遅れてきた。こういったときミーナ隊長が遅れてくるのは初めて見た。

 

「遅いぞミーナ、何かあったのか?」

 

「司令部から通信が入ったの。宮藤さん、朗報よ」

 

「私ですか?」

 

また命令違反のことだろうか?でもそれにしてはミーナ隊長が明るいし、違うかもしれない。

 

「宮藤博士がアフリカのトブルクで保護されているようです。これから宮藤さんと美緒はトブルクに寄って博士と合流してほしい、とのことです」

 

「お父さんが!?」

 

お父さんが無事と知り、嬉しくて私はつい大声を出してしまった。

 

しかしトブルクと言われても、私にはアフリカのどこにあるのか分からない。

 

「しかしトブルクと言えばアフリカの最前線じゃないか。なんだってそんなところにいるんだ?」

 

シャーリーさんがそう呟いた。

 

場所が分からず頭を悩ます私に気づいて、トブルクはエジプトの隣だよ、とシャーリーさんは教えてくれた。

 

「……その、南アフリカで助かってから1人でトブルクまで突破したみたいで……」

 

ミーナ隊長は目頭を抑え、頭を振る。

 

「おいおい、ネウロイの襲撃の可能性もあるのに随分ファンキーな親父さんだな」

 

「というより途中で連絡はとれなかったのか?」

 

「何でも無線関係がなくて、無線のある場所を放浪していたら基地まで行く羽目になったそうよ」

 

その話を聞いて、皆は驚きつつも、どこか呆れているかのような表情を浮かべていた。

 

「博士も宮藤並みに頑丈なのかなぁ?」

 

「何を言っているんだハルトマン、博士は男性でウィッチではないのだぞ」

 

「良かったね芳佳ちゃん、お父さんが無事で」

 

「ありがとう、リーネちゃん。皆さん、ありがとうございます!」

 

皆、私のお父さんが無事なことを祝福してくれた。みんなの家族だって、色んな目に合っているのに、本当にいい人たちばかりだ。

 

「あー、宮藤の奴泣いているナ」

 

「芳佳―!」

 

ルッキーニちゃんに抱き着かれ、エイラさんに泣いていることを指摘されて、私はようやく自分が泣いていることに気が付いた。

 

優しい仲間と、お父さんの無事。その2つが私の心を温めてくれた。

 

その仲間たちの言葉を胸に刻みながら、501は解散し、坂本さんとともに船でアフリカのトブルクに向かった。私たちが乗る船はアフリカへの補給も兼ねているらしい。

 

そして初めてのトブルクに着いた。トブルクは北アフリカの拠点であり、ネウロイの欧州の南方上陸を防ぐ重要なものである、とは坂本さんから聞いた話だ。

 

多くの人が船の迎えに来ており、にぎわっている。ガリア解放のニュースのせいだろうか。

 

私は素早く下船して、必死にお父さんを探した。そして見つけた。中央に立つ男性を。

 

「お父さん!」

 

「…芳佳、なぜここに」

 

そこには元気なお父さんが赤い耐圧服を着て立っていた。私は走った勢いのままお父さんに飛びついた。

 

「お父さん!お父さん!お父さん!お父さん!!!」

 

「…探しにきたのか、俺を」

 

「当たり前でしょ!心配したんだからぁ!」

 

「すまなかった」

 

そう言って、お父さんは私を抱きしめてくれた。この温もりは間違いなくお父さんだった。悲しくないのに、私は涙が溢れて止まらなかった。

 

私が泣き止むまで多大な時間を使い、色んな人に迷惑をかけることになってしまった。

 

泣き止んでから、私はお父さんに問いかける。

 

「…無事で、ほんとうによかったよぉ。でもお父さんはどうやって助かったの?」

 

「…船は沈んだが、偶然助かって近くの海岸に流れ着いていた」

 

「怪我は大丈夫だったの!?」

 

「…もう治っている」

 

心配かけたな、とお父さんが私の頭をなでる。それだけで私はまた泣いてしまった。お父さんがここにいることに、どうしようもなく安心してしまったのだ。

 

「おいキリコ、お前さん子供がいるってマジだったのか」

 

お父さんにかけられた声の方向を見てみると、男の強面の軍人らしき多くの人が立っていた。どうやらお父さんの知り合いらしい。

 

「前に言ったはずだ」

 

「いやいや、全然女っ気なさそうで、ウィッチに見向きもしねー男が言ったって説得力ねぇよ。なぁ皆」

 

そうだそうだ、ぜってー嘘だと思ったね、と皆言いたい放題だ。

 

でも馬鹿にしているような感じではない。皆明るい感じなのだ。

 

「言ったはずだ。妻のフィアナ以外の女には興味ないとな」

 

ヒュー、と周りがからかう。でもお父さんは少しも表情を動かさなかった。しかし、私としては許せなかった。

 

「じゃあお父さんは私はどうでもいいの?」

 

するとお父さんが頭を撫でてきた。ごつごつとした、いつもの固い手で。

 

「…そんなわけないだろう。機嫌を直せ」

 

「なんだぁ?凄腕のAT乗りも娘には形無しだな!」

 

軍人らしき人たちが、げらげらと皆笑っていた。それを見て、お父さんもうっすら笑っていた。お父さんも知らない土地で誰かと仲良くなっていたんだなと、501の光景が脳裏に浮かんだ。

 

「おい、行くのか?」

 

よく響くその声は、少し後方から伝わってきた。後ろを確認した他の人たちは、その人のために道を譲る。その光景はたしかモーセとか何とかで聞いたことのあるもののようだ。

 

「マルセイユ大尉か」

 

声をかけたのは高い身長にスタイルがよく、白髪に青目の美人だった。坂本さんに尋ねると「アフリカの星」と言われるエースらしい。坂本さん曰くサインはめったにしないそうだ。なんだが悲しい。

 

他にも十数人女の子が立っている。みんなウィッチだろか。扶桑人もいる。

 

「お久しぶりです、坂本少佐」

 

「久しぶり、坂本少佐」

 

「久しぶりです、マルセイユ大尉、加東少佐。宮藤博士を迎えに来ました」

 

どうやら坂本さんは扶桑のウィッチと古い知り合いらしい。2、3言葉を交わしている。

 

「宮藤博士には大変お世話になりました」

 

「ああ。博士がいなければ陸戦部隊は壊滅していただろう」

 

「え、いやいや待て待て。宮藤博士は保護されていたのではないのか?」

 

お父さんを見ると少し目をそらされた。いや、説明してよお父さん。

 

「まぁとあるAT乗りのおかげで、カイロのネウロイの巣攻略でピンチになった陸戦部隊は壊滅を避けられたというか…」

 

「私たちはそのAT乗りに助けられました!ありがとうございます、宮藤キリコ博士!」

 

名前言っちゃダメって言われたでしょ、とお礼を言った女の子がほかの子に頬を引っ張られていた。

 

いや待って、お父さんはもしかしてATでネウロイと戦ったの!?

 

「お父さん、何でそんな危険なことしたの!?」

 

「……助けてもらった恩を返しただけだ」

 

「……だからってネウロイに囲まれたAT乗りやウィッチを助けて、仲間が撤退できるようにネウロイの大群に1機で飛び込むか?」

 

マルセイユ大尉が呟くとそうだぜ、と最初に話しかけた男の人たちが声を上げた。あの人たちはAT乗りだったみたいだ。

 

「俺はくそ真面目が取り柄の男だからな」

 

沈黙。しかし何人かが下を向いて、プルプル震えていた。

 

「プ…プフフ…アハハハ!」

 

マルセイユ大尉の笑い声を切っ掛けに、辺りは笑いで包まれた。

 

「くそ真面目なら仕方ないな!アハハハ!!」

 

しばらく笑い声は尽きることはなく、お父さんは男の人たちに背中を叩かれたりしていた。でもお父さんは邪険にせず、成すがままだった。

 

「あー笑った。あなたが博士でなかったら共に戦場で戦い続けたかったがな。それでは博士、お元気で」

 

「……ああ」

 

多くの人がお父さんに別れの言葉をかけていく。お父さんは一度だけ手を挙げて荷物を背負って船に乗った。

 

坂本さんは頭を抱えていたが、周りはそんなことも気にせず、お父さんへの別れの声は長く続いた。

 

お父さんはしばらくアフリカの大地を見ていた。しかしそれは懐かしむような表情ではなかった。アフリカを見ているようで、どこかもっと遠くを見ているような、そんな表情だった。

 

船の中でお父さんは坂本さんと私に今までの経緯を説明すると、坂本さんは益々頭を抱えてしまった。私だっておかしいと思う。

 

船が沈んだけどたまたま船の破片と自分の一部の荷物とともに近くの海岸に打ち上げられていて、自力で近くの町にたどり着く。

 

しかしそこへネウロイの群れががやってきて町が襲撃され、お父さんも防衛に参加しネウロイを撃破したが町は爆破で消滅。

 

その後お父さんはATを運び出し、たった1人で南アフリカからエジプト付近までたどり着いた。

 

しかしそこでもネウロイに襲われ、何とか倒したが怪我をしているところをウィッチに拾われ一命をとりとめる。

 

カイロにあるネウロイの巣の攻略へ行った作戦でピンチに陥ったAT乗りやウィッチたちの救援に行き、巣の撃破の大きな助けになったらしい。

 

というより、超大型の地上型ネウロイを倒したAT乗りはお父さんだったらしい。

 

軍の作戦に勝手に参加し、ネウロイの巣の爆発に巻き込まれてお父さんのATが吹き飛ぶところは多くのウィッチが目撃したことで死んだものと思われたそうだ。

 

それなのに作戦終了後、普通に帰還したお父さんに皆大騒ぎだったらしい。

 

一応事の顛末としては爆発に巻き込まれたAT乗りは死亡し、作戦時『たまたまいなくなっていた』お父さんは重要人物として基地で保護していた、とのことになったそうな。

 

ともあれお父さんが無事に戻ってきたので私としては全然問題なかったが、最後まで聞いた坂本さんがブツブツ言いながらお腹を抑えていた。

 

しかし次の日になると坂本さんはいつもの調子だった。何かごめんなさい……坂本さん。

 

エジプトを解放したことでスエズ運河が通れるようになって、行きよりも帰りは早く着いた。

 

「ガリアを解放した功績もあるから、予備役という形にしてみせるさ」

 

私の軍での扱いを坂本さんは教えてくれた。正直なところ、私としては軍の扱いに興味はなかったので「はぁ…」としか言いようがなかったが。

 

そして港に迎えに来てくれたお母さんに泣かれながら怒られ、抱きしめられた。

 

「本当にごめんなさい、お母さん」

 

許してくれたお母さんはお父さんを私の前で熱く抱きしめ、そのまま3人で家に帰った。

 

家に帰ると何故か力が抜けてしまった。久しぶりの我が家だからだろうか。

 

お母さんに勝手に出て行ったことをもう一度謝り、私は今までのことを話した。お父さんには一度話しているが、やっぱりお父さんは話を聞く度に何か考えているようで、お母さんはどこか顔を青ざめていた。

 

結局2人に聞いても答えてくれず、少しだけもやもやしながら川の字に寝ることを私は希望した。

 

暖かい布団と両親の温もり。ここが私の帰る場所。安息の地なのだと、知ることができた。

 

父の体から、基地で嗅いだことのある匂いを吸い込みながら、眠りについた。

 

 

 

 

 

大いなる偶然が全ての始まり。芽生えた意識は行動を、行動は情熱を生み、情熱は理想を求める。知らぬは己のみ。男の誘惑が、悲壮な決意が、自らを加速させる。謎をこの手に。

次回、『2期』。ヴェネツィアの空が光る。

 

 

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