帝国暦 995年 バレンヌ帝国 帝都アバロン 王宮
私とお嬢様達が王都ソーモンよりバレンヌ帝国の帝都アバロンへ避難して3週間が経過した。
私たちがアバロンに着いたときまだモンスター討伐軍が壊滅した知らせは届いていなかった。私はお嬢様達と共にバレンヌ城を訪れ保護を願い出た時、騎士や文官たちは私の話をほとんど信じてはいなかった。しかし、それからしばらくして奇跡的に生き残った敗走兵がアバロンにたどり着いたことで彼らは初めて今起きていることを理解した。
そこからは大混乱だった。モンスターの侵略に怯え逃げ出そうとする者とそれを引き留めようとする者。現実を受け入れられず何を言っても信じない者と酒に逃げる者。首を吊り自殺する者や逃げようとする者を殺す者まで現れ、そして最終的にほとんどの者たちが逃げ出すか死ぬかしていなくなった。そしてこの事態は帝都の民も知れ渡り、つまり帝都の民全てに『帝国の終わり』を突き付けることにもなった。
必死になって事態を収拾し、ようやく残った者たちで今後を話し合う会議が開句事になった。私は部外者ではあるが皇女の親衛騎士ということで会議に参加した。会議室は重苦しい空気が流れ参加者の顔色も悪い。実際、負傷や精神疲労により体調を崩しながらも何とか参加しているものも何名もいる。それもそうだろう。今のバレンヌを取り巻く状況はあまりに過酷だった。
事態を治めながら情報をかき集めて分かったことは、モンスターの大討伐作戦は完全な失敗に終わりモンスターたちが北方の国をいくつも攻め滅ぼしていること。カイドウ王国がモンスターの侵略でほぼ滅亡したこと。そして・・・
「・・・では、モンスター討伐作戦に向かった帝国軍は壊滅。レオン陛下とヴィクトール皇子は戦死されたと・・・。」
「・・・残念ながらそのとおりです。サクヤ様。貴族や騎士もほぼいません。いま残っているものはわずかばかりの兵と我々文官、そして国民達のみです。」
「・・・そう、ですか。」
モンスター討伐に向かったバレンヌ軍は全滅だった。さらに前線で指揮を執っていたレオン皇帝とヴィクトール皇子も戦死。バレンヌ帝国はかつてない危機に立たされていた。
「サクヤ様・・・ジェラール皇子も戦死されたというのは本当なのですか?」
「・・・絶望的でしょう。あの惨禍の中に取り残され救出に向かった親衛隊も行方知れず・・・。助からなかったと考えるべきです。」
会議室に動揺が広がる。皆の表情は悲壮感から絶望的な表情となり押し込めていた不安が一気にあふれ出す。
「なんということだ・・・では、もうバレンヌ帝国は・・・」
「早計だ!まだ決まったわけではないだろう!」
「しかし・・・」
その時、会議室の扉が乱暴に開き頭から血を流す兵が中に入ってきた。兵は頭を押さえながら大声で報告する。
「敵襲です!ゴブリンどもが城下町へ!このままでは・・・」
そこまで聞いて私は会議室を飛び出し城下町へ向かって駆け出す。今襲撃が来ればもうこの国は持たない。
滅亡の運命はすぐ目前まで迫っていた。