ロマンシングサガ2 東方 ~緋色の運命~   作:四口一人

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第19話

 帝国暦1000年 元カイドウ王国 王都ソーモン跡 港の屋敷

 

 ソーモン。東バレンヌ海に面し、カイドウの王都であり貿易の要となる大規模な港町。その歴史は古くカイドウ王国が建国される前から存在しており交易の主要拠点としていつの時代も栄えていた。

 ・・・そう、栄えていた。歴史ある港町は今やモンスターが跋扈する廃墟となりはてた。町中に燃え尽きるか崩れた建物が並び、大通りは瓦礫が散乱している。港の船はまともな船は一隻もなく、沈みかけた船と海底に沈んだ船はそれぞれモンスターの巣窟に変わっていた。

 そして、その港町の海に面する大通りの屋敷。モンスターの襲撃の際に奇跡的に残った屋敷の書斎で、私はかつての主の血が染み付いた椅子にもたれて昼寝をしていた。

 バレンヌ帝国からの帰り道にいくつかの国で遊んできたが、あのサクヤとかいう騎士ほど手ごたえのある相手はいなかった。屋敷に帰ってからはモンスター共の様子を確認していたがそれも終わりやることが無い。バレンヌ帝国に力を見せ付けてから既に3週間、いまだ帝国からの連絡はなかった。

「全く・・・いつまで待たせる気だ?」

 もう一度力を見せ付ける必要があるか?と考えたときモンスター共から報告が入る。どうやら皇帝がここへ向かっているらしい。

 3週間も待たせたのは納得いかないが、皇帝直々にやってきたことは評価してやろう。そう思いつつ私は皇帝を迎え入れるようにモンスターに命令する。知能の低いモンスターには命令がいまいち伝わっていない気もするがまあいいだろう。もしモンスターに襲われて皇帝が死んでしまったらそのときはそのときだ。

 暫くすると階下が騒がしくなる。聞こえてくる音は剣戟の音だ。どうやら私の命令は伝わらなかったらしい。暫くして騒がしかった階下が静かになった。暫くしてから私がいる書斎の部屋の扉が開かれた時、そこに立っていたのは皇帝とその護衛だった。

「ようやく来たか。待ちくたびれたぞ。で、準備はできたのか?」

 目の前の皇帝に問いかける。その顔は無表情だ。何をかんがえているのやら。もし何らかの話し合いをしたいならば今すぐ土下座してその頭を床に擦り付けるべきだろうに。

「おい。聞いているのか?準備はでき・・・」

「家臣の・・・いいえ・・・。」

「んん?」

「親友の仇だ。覚悟しろ!!」

 皇帝が剣を抜きこちらを睨み付ける。しばし言葉が出なかった。

 まさか、ここまで馬鹿だったとは・・・。

「はあ?あれほど力の差を見せてやったのに・・・。もういい。バレンヌ帝国なぞ滅ぼしてくれる。まずはお前からだ。」

 指を鳴らす。そこらへんの骨に巣食った悪霊が目覚めて飛び出し皇帝と護衛どもを取り囲む。だが正面の一体が一撃で切り捨てられ皇帝が飛び出してくる。どうやら直接殺されることがお望みのようだ。

 悪霊はそのまま護衛を取り囲んでいる。護衛どもの相手は悪霊どもにやらせるとしよう。

 私は椅子から立ち上がり皇帝と対峙した。皇帝の目は怒りに燃え剣はまっすぐこちらに構えている。

 さて・・・どう切り刻むのがおもしろいかな?

 

 

 

 

 

 正邪が椅子から立ち上がる。まとっている禍々しい魔力が大きくなり、端正な顔立ちに浮かぶ不気味な嘲笑と合わさって恐怖を煽る。しかし、怯むわけには行かない。バレンヌ帝国のためにも、サクヤのためにも、こいつは、こいつだけは絶対に倒さねばならない。

「動かないのか?ならこっちから行くぞ。カマイタチ!」

 正邪が剣を横に振ろうとしたとき懐から取り出したナイフを投げつけた。正邪は剣の軌道を変えてナイフを叩き落とす。

「ふん。小賢しいまねを・・・。」

 その隙を突いて懐に飛び込み、正邪を斬り付ける。正邪は飛びのいて避け、そのまま距離をとろうとする。

「ライトボール!」

 光球を正邪に放つ。正邪は光球を全て避けるがそれは予想通り。狭い室内では避けられる位置は限られている。

 正邪の逃げる方向を予想し、そちらへ向かって突進する。

「二段斬り!」

 サクヤから教わった技を正邪に叩き込む。正邪は剣で受け止めるが、突進の勢いが乗った斬撃を完全に受けきることは出来なかった。正邪の肩口を剣が切り裂き、そのまま鍔迫り合いの体制に持っていく。正邪の表情は怒りが浮かんでいた。

「キサマ、よくも私に傷を・・・!」

「黙れ!」

 私は力を込めて正邪を押し込んでいく。正邪はいったん距離を取ろうと無理やり剣を薙ぎ払う。私は薙ぎ払う力で後方に弾き飛ばされた。正邪はこちらに左腕を向けて術を放つ。

「ペイン!」

 だが術を使って来ることは予想済みだ。私は弾き飛ばされながらも再び懐からナイフを取り出し投げつけた。ナイフは正邪の術に当たりそのまま術を相殺する。魔力が強く込められていない術なら相殺は簡単だ。

「何だと!?」

 私は体勢を立て直し正邪の懐に一気に踏み込む。術の相殺に気を取られた正邪は一瞬反応が遅れた。踏み込んだ勢いで正邪が術を放った左腕の二の腕から肘までを深く斬り付ける。

「ぐっ・・・畜生!」

 正邪が飛び退く。が、既に部屋の奥に追い詰めていた。正邪の背中が壁にぶつかる。もう逃げる場所はない。

「正邪!覚悟しろ!」

 私はそのまま一気に距離を詰め、正邪を斬りかかる。

「二段斬り!」

 その瞬間、焦りと怒りが浮かんでいた正邪の顔が、見下した嘲笑に変わった。

「・・・なぁ~んちゃって!」

 突如床が光り、魔方陣が現れる。複雑な紋様が浮かび上がったそれは、私を中心に浮き出ていた。

 魔方陣から放たれる禍々しい光は一気に強くなる。これは・・・!?

「ソウルスティール!」

 次の瞬間、魔方陣が消えた。それと同時に全身の力が抜ける。いや、力だけではない。それ以上の「なにか」が私の体から抜け落ち、私は床へ崩れ落ちた。

 正邪が私の頭を踏みつける。霞む目に写った正邪は私を見下しながら何かを話しているようだったが、その声は私の耳に届かなかった。

 

 

 

 

 

「か・と・う・しゅ・が!七・英・雄・に!私・に・!適う訳ないだろうが!!」

 正邪がお姉様の頭を踏みつけながら嗤う。足元のお姉様は倒れ伏したまま動かなかった。

「さて・・・どうしてやろうか?」

 正邪は見下した目でお姉様を見る。お姉様に斬り付けられた傷も気にかけずに正邪は愉快そうに嗤っていた。

「まずは・・・そうだな。その目をえぐってやろう。次は腕を切り落として、そして・・・」

 そこまで言ったとき正邪の腹に大剣が突き刺さった。

「がっ!?」

 正邪がよろめいた隙に美鈴が盾を構えた体当たりで正邪を突き飛ばした。そのまま美鈴はお姉様に呼びかける。

「陛下、お気を確かに!」

「こちらへ!急いで!」

 こあが出口へ向かい美鈴に呼びかける。美鈴はうなずくとお姉様を背負いこあの方へ走る。だが・・・

「キサマらぁ・・・!下等種が図に乗るな・・・!!」

 正邪が起き上がりこちらを睨み付けた。腹に大剣が突き刺さったままにもかかわらず剣を構え横に振ろうとしている。カマイタチの動きだった。今カマイタチを放たれたら皆がまとめてやられてしまう。

「ファイアーボール!」

 私は咄嗟に術を放った。私の術は正邪に直撃し燃え上がる。しかし燃え上がる炎に包まれながらも正邪は剣を横に振った。

「カマイタチ!」

 私の上を風が駆け抜け後ろの部屋の壁が切り刻まれた。ファイアーボールの炎によって正邪の視界が奪われ狙いが逸れたのだ。

「うっとおしい!次は当てる・・・!?」

 再び正邪が剣を構えようとした時正邪の腕に矢が突き刺さる。こあが放った矢が正邪の腕を射抜いたのだ。矢は腕を貫通し後ろの壁に刺さっていた。腕を壁に縫い付けられた正邪はカマイタチが放てない。

「どけ!邪魔をするな!」

 チルノが美鈴の長剣で部屋の外のモンスター達を追い払い逃げ道を作る。チルノのあとにお姉様を背負った美鈴、私、こあと続き、正邪のいる部屋から飛び出した。

「下等種が舐めやがって!思い知らせてやる・・・絶対に・・・絶対に!!」

 窓を破って脱出する直前、私の後ろでは大剣がへし折られる音と怒りに染まった正邪の叫びが響いていた。

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