ロマンシングサガ2 東方 ~緋色の運命~   作:四口一人

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第20話

 帝国暦1000年 バレンヌ帝国 帝都アバロン 皇帝の寝室

 

 アバロン王宮の皇帝の寝室。そこにはベッドに弱弱しく横たわるお姉様の姿があった。

「フラン・・・フラン、そこにいる・・・?」

「はい。お姉様。ここにいます。」

 お姉様のかすれる声に答え手を握る。その手は死人の手のように冷たい。顔も血の気が無く目の焦点も合っていない。

「ごめんなさい・・・もう、目が見えないの・・・」

 お姉様が私のほうへ顔を向けながら言う。その言葉通り、お姉様の顔は私のほうを見るものの視線はこっちを向いていない。

 お姉様が言葉を続ける。

「フラン・・・聞きなさい。正邪はもうすぐここへ攻め込んでくる・・・。私たちを皆殺しにするために・・・。それに対抗することは・・・きっとできないでしょう。」

「お姉様・・・!そんなことは・・・!」

「最後まで聞きなさい・・・。いい、私は永琳という魔術師に会ったわ。彼女は私に継承法を教えた。私が死ぬとき、私の記憶を新しい皇帝に引き継ぐ秘術を・・・。」

「継承法・・・?」

「・・・正邪の・・・ソウルスティールは見切ったわ。その見切りの記憶と、私の皇帝として生きた記憶全てを・・・フラン。あなたに伝えるわ。」

「見切り・・・!?まさかお姉様はそのために正邪に!?その魔術師がお姉様をそそのかして・・・!」

「フラン!・・・やめなさい。」

 憤る私をお姉様がたしなめる。その声はどんどん弱弱しくなっていく。

「七英雄は世界を守る正義と伝説にはある・・・。でも実際は?あの正邪が正義だと?あの正邪が偽者なのか・・・それとも伝説が伝説に過ぎないのか・・・。

 いずれにしてもあなたは、あの正邪と戦いこの国を守らなければならない・・・。」

「私が・・・。」

「お願い。フラン・・・私の代わりに・・・この国を、皆を守って頂戴・・・。」

 あまりに弱弱しいお姉様の声。あのお姉様の代わりが私に務まるはずがない。しかし、今のお姉様を前にその願いを断ることなどできなかった。

「・・・お姉様・・・分かりました。」

「・・・ありがとう。フラン。・・・愛しているわ。」

 お姉様が目を瞑る。

「・・・さようなら。」

「・・・!?お姉様?お姉様!」

 

 私の呼びかけにお姉様は答えなかった。

 

「・・・お姉・・・様・・・。」

 お姉様が死んだ。その時自分がすべてを失ったことに初めて気付く。かつてお姉様が皇帝になった時もこんな思いを?

 だとすればやはり私に皇帝が務まるとは思えない。国を守るどころか今立ち上がる事さえできなかった。

 その時・・・。

「・・・これは?」

 私に暖かくもはかない一筋の光が降り注ぐ。そして私の頭の中に大量の風景が流れこむ。

 

 全てを失ってなお、民を守るために剣を取ったときのこと

 サクヤとの修練、一切の容赦がない修練の中で必死に皇帝としての力をつけたこと

 モンスターに怯える民の下へ自ら向かい、その脅威を打ち倒したこと

 正邪と戦い、そして、ソウルスティールを受け倒れたこと

 

 さまざまな記憶が私の中へ流れ込んでいく。それらの記憶はまるで自分が経験したことのように思い出せる。

「これが・・・継承法・・・?」

 顔を上げれば眠るように亡くなったお姉様の顔がある。その顔にはうっすらと笑みが浮かんでいるように見えた。

 私は立ち上がる。今にも押しつぶされそうな不安はそのままだ。でも・・・!

「・・・お姉様。この国は・・・皆は私が守ります。

 だからどうか・・・見守っていてください・・・。」

 

 私はそう言い残し、お姉様と約束をして部屋を出た。

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