帝国暦996年 バレンヌ帝国 国境付近の街道
モンスターの大討伐作戦。こいつが大失敗しやがったとき私たちの生活は一変した。
私たちが傭兵として雇われていた国にモンスターが押し寄せた時、国を守るはずの貴族の騎士どもは私たちにモンスターの相手をさせあろうことか自分たちは逃げ出しやがった。私は仲間と命からがら撤退したが多くの仲間が死んでその国も滅びた。
滅びた国から報酬が出るわけもなく、私たちはモンスターから逃げながら生きていくため野盗まがいのことをしていた。落ち延びた傭兵なんぞに金を出す余裕がある国はあれ以来存在しなかったのだ。
だから貴族が乗る立派な馬車が街道を走っているのを見つけたとき私はほくそ笑んだ。私たちを裏切った貴族の騎士への八つ当たりと死んだ仲間の恨みをぶつけてやるつもりだった。
そいつは一言で言えば、化け物だった。
私たちは馬車を襲った。てっきり逃げ出すと思ったが馬車は止まり中から騎士が一人だけ出てきた。そいつは大剣を構え無謀にもたった一人で挑んできた。こちらは10人を超えている。しかもそれなりに鍛えたヤツラだ。突っ込んできたそいつを内心で笑いながら私は部下たちに相手をさせた。
そして最初にそいつに挑んだ部下は・・・一瞬でなぎ倒された。
歴然とした力の差があった。こっちだって場数は踏んでいる。にもかかわらず次々に子供のようにあっさりとあしらわれ叩き伏せられる。敵わない。それを悟り私は叫んだ。
「逃げろ!撤退だ!」
叫んだ後に私は大剣を抜いて構える。頭の私が真っ先に逃げ出すわけには行かない。撤退するなら殿を務めるのが頭の役目だ。
(あいつらが逃げる時間稼ぎぐらいは・・・!)
私の覚悟とは裏腹にそいつは涼しい顔でこちらへ向き直る。周りの部下達が逃げ出すのを見向きもせずにこちらを見据え、そして気が付いた時は一瞬で距離を詰められ地面に叩き伏せられていた。
何をされたのかすら分からなかった。ただ分かったのは私も部下達と同じようにそいつにあっさりと倒されたことだけだった。
「逃げた者たちの居場所を教えなさい。」
そいつは起き上がろうとした私に大剣を突き付けそう言い放つ。有無を言わさない迫力だった。殺気が伝わってくる。答えなければ殺す気だろう。
内心では怯えていた。しかし私は叩き伏せられたまま顔だけでそいつを見据えはっきりと答えていた。
「殺すなら殺せ・・・。私はお前ら騎士とは違う。命ほしさに仲間を裏切りはしない!」
たとえ死んでも・・・私達を裏切って逃げた騎士と同じにはならない。最後の意地が私の心を支えていた。
そいつは表情を変えず私に突きつけた大剣を振り上げる。死を覚悟した。その時・・・
「サクヤ!待ちなさい!」
大剣が私に叩きつけられる直前にその声が響いた。声の主が続ける。
「あなたたち最近この辺りで悪さをしている傭兵崩れの盗賊ね?傭兵なら私のところへ来なさい!人手が全然足りないの!」
顔を向ければ、こちらへ手を差し出す女性と呆れ顔でそれを見ている騎士がいた。
それが・・・レミリア陛下と騎士長サクヤとの出会いだった。