帝国暦1000年 バレンヌ帝国 封印の地の洞窟
作戦はうまくいった。
私を囮に正邪を誘い出し、私はいくつか決めておいた場所のうち一番近い所へ逃走。正邪がこちらに食いついた時点でチルノと美鈴が油をまく。
あとはこあ、ルーミアと連携して正邪をうまく油を撒いたほうへ追い立てて、私の術を合図に全員が洞窟まで全力で逃げる作戦だ。
危ない部分はあったものの結果をみれば理想的な形だ。火をつける直前に正邪の足をこあが射抜いている。あの状態では上手く走れず炎に巻き込まれるだろう。私たちは洞窟奥まで逃走し炎がおさまるのを待っていた。ルーミアが正邪の術による毒を受けていたが、解毒薬を使い今は落ち着いている。他の皆も怪我はしていない。
「皆、炎がおさまったら正邪と決戦になるわ。覚悟を決めなさい。」
皆に向かって話しかける。しかし不思議そうにこあが聞いてきた。
「陛下。正邪は確かに強いですが山火事に巻き込まれれば無事ではないでしょう。なのに決戦になるのですか?」
こあの問いは普通なら間違っていない。私が答えようとしたとき先に答えたのはルーミアだった。
「こあ、おそらく正邪は生きている。多少の火傷はあるだろうが・・・瀕死にはなっていないだろう。いまいましいが。」
「なぜ?あの炎の中で無事では・・・。」
「あいつは人間を見下し油断する。だからこういったことは幾度となくあったはずだ。だがそれでも正邪が生きているのは奴が強いからだ。私たちが必死に戦ってもそれを圧倒的に超える力でねじ伏せる。それができる奴があっさりと死ぬとは思えない。」
ルーミアの意見は私と同じだった。決して無事ではないだろうがこの程度で倒せるとはもとより思っていない。
「ルーミアの言うとおりよ。この程度で死ぬ相手じゃない。むしろこの後が本番よ。・・・美鈴、外の様子は?」
外を見張る美鈴に声をかける。美鈴は外を確認した。
「だいぶ炎が落ち着いてきました。今なら外に出られそうです。」
「よし。いくわよ皆」
私たちは洞窟から外へ出た。辺り一帯は焼け焦げた木々が煙を上げており熱気が強い。その中で、一人こちらに向かって歩いてくる人影がある。
「小娘ぇ!やってくれたな・・・!!」
正邪だった。あちこち焼け焦げた後があるもののこちらを睨む眼光は鋭い。どうあってもこちらを殺すつもりのようだ。
「正邪・・・決着をつけましょう。」
私は剣を抜く。皆も正邪へ武器を構える。正邪はこちらを見据え、そして叫んだ。
「決着だと・・・!?人間風情が対等になったつもりか!身の程を知れ!!」
正邪の叫びと共に周囲の地面が盛り上がり、地中から剣と盾を持った骸骨が次々と出てくる。山を焼いた炎は地中に眠る骸骨までは焼くことができなかったようだ。骸骨がこちらを取り囲む直前、ルーミアが正邪の間に現れた骸骨を大剣で強引に薙ぎ払う。骸骨は吹き飛んだだけで倒すことは出来なかった。だが一瞬だけ正邪への道が開く。
「陛下、決着を!」
ルーミアの声と同時に私は走り出す。起き上がろうとした骸骨を切り倒しそのまま正邪の元へ突っ込む。
私が振り下ろした剣を正邪が剣で受け止めた。最後の戦い。ここで決着をつける!
運命の決まる瞬間は目の前に迫っていた。