ロマンシングサガ2 東方 ~緋色の運命~   作:四口一人

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第5話

 帝国暦 995年 王都ソーモンへ続く街道

 

 モンスターの大討伐作戦は失敗だった。

 

 私はカイドウの軍と共に北上し順調にモンスターを追い込みながら進軍。予定通り包囲殲滅の動きとなっていた。

 伝令によれば父上と兄上が率いるバレンヌ帝国軍も他国の軍と共に包囲殲滅の動きを開始している。このままあと3日もすれば包囲が完了し殲滅も時間の問題だろう。大規模ではあるがやってみれば簡単な作戦だ。・・・そう思っていた。後方に突然モンスターの別働隊が現れるまでは。

 別働隊は前方のモンスターと動きをあわせて一気に挟撃を仕掛けてきた。突然前後を挟み撃ちにされた軍は統率を保てず次々に壊滅していく。モンスター達の挟撃は単純な形ではあったが明らかに統率された動きであった。私は馬を使って護衛と一緒に後方のモンスター達の間を強引にすり抜け、何とか脱出することに成功した。

 ・・・これは明らかに計画されていた動きだ。であれば、おそらく父上や兄上の軍も同じ状態のはず。そうであれば・・・

(北バレンヌの全ての国の主力軍が壊滅している・・・!?)

 一刻も早くカイドウ王国にこのことを伝えなければ!そう思い馬を全速力で走らせながら、私は何かが羽ばたくような音がして振り返った。飛行モンスター達の大群がこちらへ向かって飛んできている。逃げ出した私たちを仕留めるつもり・・・いや違う!奴らの目指す方向は王都ソーモンだ!

「ファイアーボール!」

 馬上から術でモンスターを撃ち落す。術を食らったモンスターは何体かまとめて落ちた。だが数が多すぎる。絶望的な中で私は護衛と共に必死になってカイドウ王国の王都ソーモンを目指していた。

 

 

 

 

 

 

帝国暦 995年 王都ソーモン 西門

 

私は王都の西門の外で遠方用の馬車を乗り換えようとしていた。馬車の行き先はバレンヌ帝国の帝都アバロン。アバロンで行われるモンスターの討伐作戦の成功パレードに参加するためだ。結局屋敷に滞在できたのは1週間だけで再びバレンヌ帝国に戻らなければならない。フランは屋敷の門まで、サクヤはここまで付き添ってくれたがここでお別れだ。次にソーモンに戻ってこられるのはいつになるか分からない。ソーモンの景色を目に焼き付けようと辺りを眺めていたとき、北のほうで何かが光ったような気がした。

北の空は黒く覆われている。雨雲にしては様子がおかしい。目を凝らすと、よく見えないが小さな点がこっちへ向かっている。

(あれは・・・馬?誰かが馬でこっちに向かっている?)

そう思っていると北の空はどんどん黒く染まり馬に乗った誰かもだんだんと近づいてくる。いや、近づいてきているのは誰かだけではない。何かの声が北の空から近づいてきている。

「・・・!?お嬢様!!こちらへ!!早く!!」

声の正体に気づいたのはサクヤだった。私を強引に引き寄せ大剣を抜く。北の空に現れたのは雨雲ではなかった。数千体に及ぶ飛行モンスターの大群。それがこちらに向かって叫び声をあげながら向かってきていたのだ。

サクヤが剣を構える。が、飛行モンスター達は私たちに見向きもせず、城門を飛び越えて王都ソーモンへ入り込んでいく。私が呆然とモンスターの大群を見上げたとき、モンスターの一体と目が合う。そいつは獲物を見つけた獣のように嗤い、私の元へ突っ込んできた。

「巻き打ち!」

サクヤが大剣を一閃する。私へ突っ込んできたモンスターは真っ二つに切り捨てられた。しかし他のモンスターも私達に気づく。複数のモンスターがこちらを向いて止まって嗤う。

「ひっ・・・!」

私の小さな悲鳴と共にモンスターは四方八方から私とサクヤ目掛けて襲い掛かってきた。そのとき、

「二本射ち!」

「ファイアーボール!」

私達を襲おうとしたモンスター達は突如、横から放たれた攻撃によって撃ち落された。そちらを振り向く。そこにいたのは馬に乗ったジェラール様とその護衛たちだった。モンスターと共にソーモンに近づいていたのは彼らだったのだ。

「ジェラール様!?」

「レミリア!?どうしてここに?避難してきたのか!?」

「何があったのですか!?さっきのモンスター達は・・・!?」

ジェラール様に事情を聞こうとしたとき、王都ソーモンから大きな悲鳴と絶叫が上がった。

王都ソーモンのほうを振り返る。燃えていた。あらゆるものが。逃げ惑う人々がそこらじゅうにあふれ、そして、その人々をモンスター達が襲っていた。

「一体何が・・・!何が起こっているのですか!?あのモンスターは・・・!」

私はパニックを起こす。ジェラール様がその私の肩を掴み自分のほうへと向き直らせた。

「レミリア。よく聞け。今すぐ馬車でバレンヌ帝国へ向かうんだ。ここは危険だ。」

「!?待ってください!まだ屋敷にはフランが!お父様とお母様が・・・!」

そう言って私はジェラール様の手を振りほどこうとする。だが私の肩を握った手は離れなかった。

「待つんだ!レミリア。君の家族は私が助けてくる。だから君は先に避難するんだ。」

「出来ません!皆を置いて私だけ逃げるなんて!私も助けに行きます!」

目の前で起きた出来事がいまだに理解できない。しかしそれでも今ここで自分だけ逃げることはしたくなかった。

一瞬の後、ジェラール様は諦めたようにこう言った。

「・・・分かった。ならレミリア。君は馬車に乗ってあそこの森の中で隠れているんだ。私が君の家族を連れ帰ったらそのまま一緒に馬車で逃げる準備をしていてくれ。それならいいか?」

「でも・・・」

「約束する。必ず君の家族を連れて帰る。信じてくれ。」

そう言ってジェラール様は私を見つめる。こういう時のジェラール様はいつも必ず約束を守ってくれていた。

私が頷いたのを確認するとジェラール様は直ぐ振り返り駆け出していく。遅れて護衛の兵も後についていった。

言いようのない不安を胸の中に抱きながら、私はその姿をずっと見つめていた。

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