ロマンシングサガ2 東方 ~緋色の運命~   作:四口一人

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第7話

帝国暦 995年 カイドウ王国 王都ソーモン スカーレット邸 エントランス

 

あと一歩遅ければフランはモンスターに殺されていただろう。そのことにほっと一息をついたとき突然屋敷が大きく揺れた。突然の揺れにフランがその場にうずくまる。その直後、フランの後ろの扉が壁ごと破壊され中からモンスターが飛び出してくる。破壊された壁の穴の向こうは炎が燃え盛っていた。モンスターが火をつけて暴れまわりこちらへ飛び出してきたのだ。

モンスターはこちらへ一直線に突進してきた。私はフランの前に割り込みモンスターの突進を受け止めようと剣を構える。

「影縫い!」

突然、私たちへ突進しようとしたモンスターの動きが止まった。モンスターはまるで体を突然縛り上げられたかのように動きを止めている。「強撃!」

その直後、動きが止まったモンスターの胴体が両断された。飛び上がって振り下ろされた大剣によって真っ二つに斬られたのだ。

「ジェラール様!ご無事ですか!?」

私は後ろから声をかけられた。そこにいたのは全身鎧の騎士。遅れてその後ろに大剣を持った騎士と弓を持った騎士が現れる。私の護衛であり最も信頼のおける部下。ベア、ジェームズ、テレーズの3人だった。

先ほどのモンスターはテレーズの弓矢がモンスターの影を縛って動きを止め、ジェームズの大剣で両断されたのだ。

「大丈夫だ。ジェームズ、テレーズ、よくやってくれた。辺りを警戒してくれ。」

「はっ!」

ベア達はすぐ辺りを警戒し始める。私はフランに向き直り話しかける。

「フラン。怪我はないか?」

「私は大丈夫です・・・。でもお父様とお母さまが・・・!!」

フランは泣き崩れる。くそ・・・間に合わなかったか!

その時何かが崩れる音が上から聞こえた。私が頭上を見上げた時、崩れる天井が降り注ぐのが見えた。咄嗟にフランを突き飛ばす。天井が降り注ぎ轟音と砂埃が舞う。気が付いたとき私は瓦礫に下半身全てが挟まれていた。

「ジェラール様!?」

「ぐっ・・・!くそ、足が折れたか・・・?」

皆が駆け寄ってくる。平気な顔を装うとしたが足の痛みで顔が歪んだ。その時、私たちの周りに何かが落ちてきた。モンスターだ。崩れ落ちた天井の穴からモンスターが飛び降りてきたのだ。モンスターは私目掛けて襲い掛かる。

「二段切り!」

ベアが一瞬でモンスターを切り捨てる。しかし天井を見上げるとモンスターの目が複数光っている。さらに壁の穴の向こうにもこちらの様子をうかがうモンスターの影がある。ベアが状況を一瞬で理解し指示を出す。

「ちぃ・・・。テレーズ!天井の奴を頼む!ジェームズ!壁の穴の奴を警戒しろ!ジェラール様とフラン様にモンスター共を近づけるな!俺は瓦礫をどかす!」

ベアの指示でテレーズは天井のモンスターに矢を射かける。矢は正確にモンスターの顔を打ち抜いていく。壁の穴のモンスターはこちらをうかがっているが、大剣を構えたジェームズの間合いには入ってこようとしなかった。

「うおぉぉぉ・・・!!」

ベアが全力で瓦礫をどかそうと力を込める。だが瓦礫はびくともしない。そのうち辺りに煙が充満し始めた。モンスター達があちこちでまき散らした火が屋敷中に回っていたのだ。壁の穴の向こうにもモンスターの影に並んで炎が揺れている。ここまで火が回るのも時間の問題だった。

・・・覚悟を決める時だ。

「・・・ベア。」

「ジェラール様・・・もうしばらくのご辛抱です。どうかお待ちを」

「これを受け取れ。」

私は瓦礫の隙間から自分の剣を取り出しベアに向かって差し出した。バレンヌ帝国の皇族のみが持つことを許される剣だ。

「ジェラール様・・・?」

「フランを連れて屋敷を脱出しろ。」

瓦礫をどかそうと尽力していたベアは驚いて私を見つめる。周りの騎士も同じだ。ベアが口を開く。

「何を!?ジェラール様を見捨てろとおっしゃるのですか!?」

「そうだ。」

「諦めるには早すぎます!この瓦礫さえどかせれば・・・!!」

「駄目だ。もう煙が充満し始めている。これ以上時間をかければ全員死んでしまう。・・・足だけだったら切り落とせば何とかなったが下半身全てではどうにもならん・・・。私を捨てていけ。」

私はベアを諭す。だがベアも引かなかった。

「だったら此処で死んだほうがましです!平民出身の兵士の我らに騎士の称号を下さり、さらには親衛隊の栄誉まで授けてくださったのはジェラール様だけです。ジェラール様をお守りする為ならばたとえ死んでもかまいません!」

「私はレミリアと約束してここへ来た!必ず家族を助けてくると。もうレミリアの家族はフランしかいない・・・。私は約束を守らなければならない・・・!ベア。フランをレミリアのもとへ連れて行ってくれ。頼む・・・。」

私の言葉に皆が押し黙った。ベアが瓦礫を見つめて苦慮の表情を浮かべている。僅かな間。そして顔をあげて皆に向かって指示を出す。

「脱出する!ジェームズ!先頭に立ってモンスターを追い払ってくれ!テレーズはフラン様の傍を離れるな!殿は俺がやる!目的地はレミリア様がいる西門だ!行動開始!」

ベアの指示にジェームズとテレーズは一瞬迷う。が、すぐさま指示通りに動いた。ベアは自分の剣を私の前へ置き私の剣を受け取る。そしてそのまま剣を抜き殿となって脱出を始めた。

皆の姿が見えなくなった時、屋敷全体が大きく揺れ始める。煙も濃くなってきた。いよいよ最後の時だ。

(最後の時か・・・。)

私の頭の中を様々な思い出が駆け巡る。最後に思い出しだのは・・・。

(レミリア・・・済まない。約束は守れそうに・・・。)

私の謝罪はモンスターたちと一緒に崩れ落ちる屋敷に埋もれていった。

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