ロマンシングサガ2 東方 ~緋色の運命~   作:四口一人

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第9話

 帝国暦 995年 カイドウ王国 王都ソーモン 西門前

 

 もうどのくらい戦い続けているのだろうか?辺りには死体の山がいくつも積み上げられている。にもかかわらず未だに化け物どもの数は減るそぶりも見せない。

「ジェームズ・・・これが最後の傷薬だ。」

 俺はそう言ってジェームズに傷薬を渡す。軽装のジェームズは既に満身創痍に近かった。最も自分も人のことは言えない。鎧の下はすでに血まみれだった。後どのくらい戦えるか・・・?そう考えた時あたりの気配が変わった。重苦しい気配。モンスターの気配を数十倍に濃くしたような気配が辺りを覆っている。その気配に思わずたじろぐ。いったい何が起きている?

「ほう・・・?ちょっとは骨があるやつがいるじゃないか。」

 そう言って俺の前に現れたのは一人の少女だった。しかし少女が放つ気配は明らかに人ではなかった。今まで切り捨てたどのモンスターよりも遥かに強く禍々しい気配を放っている。

 ジェームズとテレーズもそのことを理解したようだ。怪我と疲労で既に限界にもかかわらず今まで以上に集中して少女を警戒している。俺も少女へ向き直り剣を構える。一瞬でも油断したらそのままあの世へ行ってしまうだろう。

「おやおや、ずいぶんつれない態度だな。退屈していたんだ。ちょっとくらい遊んでくれよ!」

 そう言って少女が腕を前に出す。直後、俺とジェームズは少女に向かって突っ込んだ。しかしそれよりも早く少女が術を放つ。

「イルストーム!」

 次の瞬間、辺り一帯に紫色の霧が立ち込めた。息を吸った瞬間にむせ込む。毒の霧だ。突然のことに一瞬動きを止めてしまった。次の瞬間、目の前に少女が現れる。

「食らえ。二段切り!」

「っ!パリイ!」

 少女はいつの間にか持っていた剣で剣技を繰り出す。とても少女とは思えない熟練の剣技だ。何とか受け流したが体勢が崩れてしまう。

「強撃!」

 その時霧の中からジェームズが飛び出し少女に大剣の一撃を振り下ろした。しかし少女は嗤いながら一歩後ろへ下がる。大剣はそのまま振り下ろされ地面を抉った。

「そんな大振りが当たるものか。剣はこうやって使うんだ!」

 少女が振り上げた剣がジェームズを捉える。大剣を振り下ろしたジェームズは身動きが取れない。

「イド・ブレイク!」

「ぐっ!?」

 その時矢が霧を切り裂いて少女の脇腹に直撃した。矢に込められた力が放たれ少女の魔力を奪い去り、辺りに立ち込めた霧が薄くなり消えていく。テレーズの弓技だ。振り返ればテレーズが膝をついている。毒の霧で限界の中で最後の力を全て矢に込めて放ったのだ。

「ごめんなさい・・・後は・・・」

 そう言ってテレーズは崩れ落ちる。一方で少女は先ほどの余裕とは打って変わって激高していた。矢を引き抜いて地面に叩きつけてへし折っている。その傷口からは血が出ていなかった。

「くそっ・・・術封じか!舐めた真似を・・・!」

 テレーズの矢は少女の魔力を奪い取り一時的に術を封じた。少女を倒すなら今しかない。倒れたテレーズを助けるためにも一気に決めなければ!

「行くぞ!」

 俺達はいつもの連携で少女に切りかかった。2対1ならこちらに分がある。俺達の連携は徐々に少女を押し込めていく。

「ぐっ・・・このっ・・・術さえ使えれば・・・!」

「俺達を舐めすぎたな・・・。だが心配するな。一緒にあの世に行ってやる。」

 体はもう限界だった。だがこの少女は仕留められる。・・・それが油断だった。

「・・・それはどうかな。サクション!」

 とどめとばかりにジェームズが大剣を振り上げた時、突然ジェームズが崩れ落ちる。少女の剣がジェームズへ向けられていた。

「っ!ジェームズ!」

「ざーんねん。剣の力はまだ使えるんだよ。」

 崩れ落ちたジェームズに駆け寄ろうとした俺の前に少女が立ちふさがる。先ほどとは打って変わり一気に押し込まれていく。壁際まで押し込まれた時、少女が俺に向かって言い放った。

「さて、一緒にあの世に行きたいんだったな。悪いがお前は好みじゃないんだ。一人で行ってきな!」

 少女が一瞬で後ろに飛び下がる。押し込められていた俺は少女がなぜ下がったのか分からなかった。しかし直後に体でその意味を理解させられた。

「カマイタチ!」

 少女が横に振った剣から真空の刃が放たれ俺を切り刻んだ。俺は辺り一帯に血をまき散らした後、そのままその場に倒れ伏した。

 

 

 

 

 

 呆気ない幕切れだ。もう少し骨があるかと思っていたが・・・。

 私はカマイタチで切り刻んだ兵士の傍へ向かう。どうやらまだ息があるらしい。

「お?まだ生きてるか。命拾いしたな。そのままくたばるまでゆっくりするといい。」

 私は男を蹴飛ばして踵を返す。市街地の下等種は大方狩りつくした。後は金目の物を略奪したら次の進軍だ。北バレンヌの全ての国を滅ぼし下等種を狩りつくす日も遠くはないだろう。

 私はそう考えながら市街地へ向かって歩き出そうした。しかし体が動かない。よく見ればうっすらと体が光っている。これは・・・?

 振り返って気が付いた。さっき蹴飛ばした男の剣がうっすらと光っている。そこまで見て思い出す。使用者の命を使い武器の力を開放する技。選ばれた武器でしか使えないが・・・並みのモンスターなら死体すら残さず消し飛ばす一撃。

「しまった・・・!?ファイナルストライク・・・!」

 気が付いたときには遅かった。体の光は収束し私を押しつぶしていく。そして男の剣が独りでにへし折れた時、収束していた力が一気に解放された。

「ぎぃあああぁぁぁあああぁ!!」

 解放された力は私の体の半分近くを消し飛ばした。魔力で傷を再生させようとするがさっき封じ込められたせいで上手く再生が出来ない。

「ぐ、が・・・!畜生・・・!下等種が・・・よりによって・・・!」

 辛うじて死ぬことはなかったがどこかで回復を待たねばならない。すぐ回復できなかった上にここまで体を消し飛ばされたなら再生には時間がかかるだろう。3年・・・いや5年か。それまでは進軍はお預けだ。モンスターの一体を呼び寄せる。まずは落ち着いて回復ができる場所を探さなければ・・・。

「待ってろよ・・・!必ず下等種を根絶やしにしてやる・・・!」

 私は血を吐きながら、復讐への思いを募らせていた。

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