宿毛泊地提督の航海日誌 2ndらいと!   作:謎のks

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 はい、皆さん…イベント終了から大分経ちましたが、お待たせしてすみません。

 今回のお話は、個人的に半端な仕上がりにしたくなく…現在エピローグまで描ききって、チェックが終わり次第順次投稿している状況です。

 …そのせいで表題の「らいと」に反した超ボリュームに…エピローグ含めた全「3編」となってしまいました。
 長すぎて文章稚拙になってたり展開が変になってないか心配…でもこれ以上長引かせてもいけないし、すみませんがこれでお願いします。

 先ずは前編を公開し、明日辺りに何事も無ければ「中編」を公開致します。

 もうしばらくお付き合い下さい…それでは本編を、どうぞ。


2019年秋イベント編 e-6前編

○「激闘!第三次ソロモン海戦」

 

・ステージ「ソロモン諸島沖」

・難易度「丁」

・基地航空隊×3

・ギミックあり

 

 敵南方反攻作戦を迎撃する!

 ソロモン海鉄底海峡方面の前線部隊に戦力補充!さらに敵主力を艦隊決戦で撃滅せよ!

 

 

 

○強行輸送部隊

 

第一艦隊

・比叡

・霧島

・文月

・初春

・熊野

・瑞穂

(皐月)

(利根)

 

第二艦隊

・夕立

・筑摩

・ポーラ

・阿武隈

・ジャーヴィス

・綾波

 

 

 

 ※ソロモン諸島の戦いとは、"あの戦い"において日本軍と連合軍の間で、南太平洋ソロモン諸島の争奪をめぐり行われた戦闘である。

 一連の戦闘の中で大きなものはガダルカナル島の戦いとブーゲンビル島の戦いであるが、このほかにも多くの陸海空の戦闘が行われた。(以上wiki一部抜粋)

 

 第一次ソロモン海戦に該当するのが2013年秋イベント、第二次が2019年冬イベントだと仮定すれば…今作戦こそが「第三次ソロモン海戦」である。

 非常に噛み砕いた概要になるが、この第三次ソロモン海戦は、ガダルカナル防衛のため迫りくる連合軍の猛攻に、戦力を削がれながらも何とか対応する日本軍の構図となる。

 結果としては多大な犠牲を出したにも関わらず、最前線の増援と補給を諦める格好となる。…今作戦は、果たしてその雪辱を晴らせるかどうかが焦点となる。

 

 先ずは前線への物資補給の輸送、出立した輸送部隊であったが…。

 

「うぅ…ごめんよ皆…」

「吾輩としたことが…面目ない…っ」

 

 対潜、夜戦、空襲戦、更にボス手前の戦艦タ級群…など、度重なる激戦により傷つき倒れた皐月と利根。流石に地獄と評されるだけあり、正に一筋縄ではいかない。

 高速修復剤も底をつき始めているので、数打てば当たるとはいかない。

 そこで提督たちは、輸送を程々に(最低限送り終えて)して切り上げ、今度は戦艦二隻を主力に据えた「水上打撃強行輸送艦隊」を編成。前線への障害を力ずくで突破する手段を取る。

 その戦艦とは、この海域に因縁浅からぬ比叡と霧島、金剛型四姉妹の中でも武闘派の二人だが…?

 

「……」

 

 霧島は何処か殺気立った様子で前方を向いていた。時々チラチラと目を忙しなく動かして周りを見回している。

 

「…霧島」

「敵影はなし、空襲もない、夜戦はさっき第二の皆が頑張ってくれた。…大丈夫、大丈夫…」

 

 比叡は霧島に対して呼びかけるも、ぶつぶつと小言を呟くばかりでまるで上の空の彼女の耳には、最早何も聞こえていないだろう。

 歴戦の猛者である霧島でさえ、この海域に来る度怯えた調子になる。そもそも彼女の武闘派のイメージは、前世のこの海域で敵戦艦を"完膚無きまでに叩きのめした"ことに起因する。

 その死闘も姉妹艦である比叡が「轟沈」した後の出来事、彼女が怒りと恐怖で体が震える思いで戦っていたのは、容易に想像出来る。

 

「霧島っ!」

「…っ!?」

 

 目を見開き後方を見やる霧島、そこにはいつものように朗らかな笑顔を浮かべる比叡の姿が。

 

「…比叡お姉様」

「大丈夫? すごい顔になってる」

「…問題、ありません」

「そう? ならいいけど。…ねぇ霧島」

 

 比叡は会話に一区切りさせると、強張った顔の霧島に対し優しく呼びかける。

 

「怖いよねここ。今は夜じゃないけど…瞼の裏に「あの夜の戦い」が蘇ってくるよ」

「っ、お姉様…」

「でも、周りを見てみなよ。…私たちだけじゃない、あの時の恐怖は皆で乗り越えて初めて意味があると思う。だから…一緒だから、貴女が怖がる必要はないの」

「…理解しています、頭では…でも……私は…姉様を置いて…っ」

 

 泣き崩れそうになる霧島、そんな彼女の後悔を気にも留めない様子の比叡。

 

「そんなの昔のことじゃん。今は…一緒にいてくれてるでしょ、貴女は…私を見捨ててないよ、霧島?」

「っ、姉様…今度こそ私は…私たちは、あの夜を越えて行きましょう…!」

「うん、その意気だよ! …ほら、物資補給地点が見えてきたよ」

「はい…!」

 

 比叡の説得により、少しだけ前を向くことが出来た霧島。

 輸送物資を前線部隊に補給したのち、比叡と霧島…かつての挺身艦隊の二人は、待ち受ける敵の下へと進んでいった…。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──ボスマス到達…敵深海群、発見。

 

 

   戦艦

 

 戦 艦 水 鬼

 

 

『…待ッテイタゾ…貴様ラヲ…ッ!』

 

 

 

 立ち塞がる壁、強大な障害は「戦艦水鬼」誰よりも平和を蔑み、ダレよりも殺戮を愛するモノである。

 

『ククク…ァア愉快ダ。慣レナイコトヲシタ甲斐ハアッタ、ソノ顔ツキ…覚悟ヲ持ッタモノホド強ク、荒ク、激シクナル。私ハ…コレヲ待チ侘ビタ…!』

「戦艦水鬼…」

 

 比叡は何処か哀れな気持ちが湧いていた。彼女も、勿論自分たちも戦うために造られ実際そう扱われた。

 だが、ココロが無いわけではない。自分たちもヒトと同じ形になったのだ、ヒトと同様に感じれば良いと思う。怒りであれ憎しみであれ深海群もそういった激情はあるはずだ。

 それが…ただ闘いを求める姿は、まるで自分を否定しているように見える。思いも何もなくただ蹂躙を繰り返すのは「ただの兵器」だと…。

 だが比叡はそれを真っ向から否定はしない。人間はどんなに似ていても価値観の相違はままある、艦娘も深海群もまた然り。彼女がそれを楽しいと思うのも考え方の違いなら仕方ない…だからこそ哀れだ、と思うのも事実だが?

 

「貴女は…私たちをこの場に連れて来るために、あんな勿体ぶった言い方を…?」

『ソウダ。コノアイアンボトムサウンドニ因縁ノアル戦艦ハオ前タチシカ居マイ? アノ時代…"アノ戦イ"デ数多ノ戦場(いくさば)ヲ渡リ歩イタ…金剛型四姉妹ト戦エルトハ、コレ以上ナイ喜悦ダ…!』

 

 恍惚とした表情で比叡たちを見据える戦艦水鬼。

 "あの戦い"でも、秘匿の大和型と動くに動けない長門型に代わり、旧式ながら様々な任務に当たった歴戦の猛者…それが金剛型四姉妹だった。

 かつての敵国も彼女たちの行動を注視していたという。

 

『確カニ性能デ云エバ貴様ラハ旧式デアッタダロウ。ダガ…百戦錬磨ノ兵(つわもの)ハ、如何ナル「逆境」モ乗リ越エルモノ。私ハソレガ良イ、ソレデコソ血湧キ肉躍ルトイウモノ…!』

「…そう、じゃあ貴女とは相容れないみたいだね。私たちは…守るために戦っているから」

『ソレガ貴様ラノ全力ヲ引キ出スノナラ、私ニハドウデモイイコトダ。…ソウダロウ、"霧島"?』

「…っ!」

 

 戦艦水鬼に名指しで呼ばれる霧島、一瞬瞠目すると敵意を剥き出し相手を睨みつける。

 

『フフフ…矢張リ良イ。アノ戦艦ヲ捻リ潰シタダケハアル、ソノ殺気…敵ヲ射殺サントスル眼光…貴様コソ私ノ相手ニ相応シイ…!』

「…何ですかその口説き文句、誘いのつもりですか? 悪いんですけど…今の私はそういう気分にはなれないんです。ただの喧嘩なら他所でやって下さい」

 

 戦艦水鬼のアプローチを一蹴する霧島、口では否定しているもののその顔に余裕はなく、今にも闘いに身を投げる一触即発の空気があった。

 そんな彼女を見抜いてか、悪戯に嗤う戦艦水鬼。

 

『ツレナイナァ、ッフフ。マァイイ…デハコウシヨウ。貴様ト私「一対一」デ闘エバ、残リノモノニハ一切手ヲ出サナイ。…ドウダ?』

「…っ! 仲間たちに…?」

『約束シヨウ、貴様ガ応ジレバノ話ダガ? …仲間ヲ守リタイ、デハナイノカ?』

 

 まるで囁くように唆す戦艦水鬼、霧島は視線を伏せしばらく沈黙すると、徐に前に出た。

 

「霧島っ!」

「お姉様は、艦隊の皆と一緒に下がって下さい。私だけ戦って…何もかも丸く収まるなら…これ以上のことはありません」

 

 確かに戦艦水鬼の求めるものは「闘争」だろう、強者との戦いこそが彼女を満たすもの、それ以外は重要ではない。彼女が口約束でも取引を契るというなら、そこに嘘はないだろう。

 比叡が気がかりなのは霧島の方だ、先ほどから焦りが見える彼女を敵との一騎打ちなど…それこそ何が起こるか分からなかった。

 

「ダメだよ霧島、今の貴女は正気じゃない。徳田さんたちが言っていたことを思い出して!」

「この感情の昂ぶりがこの海域の瘴気のせいだとしてもっ! 私は…お姉様や皆を守れるなら、鬼にでも何でもなります…っ!!」

「霧島…っ」

 

 比叡の方へ振り返りもせず、ただ眼前の敵を直視する霧島。完全に敵のペースになっているが今の彼女に何を言っても始まらないことは明白。

 

「…皆、一旦下がろう」

「そ、そんな…比叡さん!」

「…了解しましたわ。さぁ瑞穂さん、霧島さんと彼女を二人きりにしてあげましょう」

「熊野さん…!」

「少し遠目から様子を窺うだけですわ。偵察機は既に発艦済みですの、何かあれば皆で向かえばよろしいのではなくて?」

「…っ、はい…」

 

 瑞穂を始め艦隊は渋々後方へ下がる。用意周到な熊野に感謝の意を述べる比叡。

 

「ありがとう熊野ちゃん…」

「いいえ。全く、周りの気も知らないで張り切って。どうぞ気の済むまで暴れたらいいですわ」

 

 呆れた口調で熊野も下がるが…少しして心配そうに後方を一瞥したのは、彼女が本心から霧島を心配している証。

 

「……」

『……』

 

 静かな波の音が響く大海原には、気づけば霧島と戦艦水鬼の二人だけとなった。

 

「本当にタイマンをご所望とは…以外に律義なんですね? 別に1対多数でも文句は言いませんよ?」

『ククッ、ソンナ勿体ナイコトハシナイ。貴様ハ私ノ獲物ダ、私ダケノ…他ノ雑魚ニ喰ワレテタマルカ』

 

 ニヤリと嗤い嬉々とした表情を浮かべる戦艦水鬼。それを見た霧島は…。

 

「…馬鹿ですね」

 

 

 ──歪んだ嗤いを浮かべる。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。獲物だと? 笑わせないで、獲物は今…私の目の前に居る」

 

 先ほどとは比べ物にならない圧倒的な威圧感、闘志、そして殺意…凍えるほどの闘気を放つ戦士に、戦艦水鬼は身震いした。

 

『ッ…! ク……ククククク…ッハッハッハッハッハ!!!』

 

 

 ──さぁ、闘い(かり)を始めようか!

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──敵艦発見、攻撃開始!

 

「っぉお!!」

 

 先ずは先手必勝、霧島は自身の艤装に取り付けられた「41cm連装砲」より砲撃を繰り出す。砲弾は「一式徹甲弾四型」。

 だが、戦艦水鬼に着弾直前に彼女の魔獣型深海艤装に阻まれる。着弾による水柱には群青の着色料が見て取れた。

 

『Gyerooooooo!!!』

 

 お次は水鬼の魔獣による砲撃、双頭の獣の双肩に取り付けられた砲塔から射出。前広方に次々と巨大な水柱が乱立する。

 やがて飛沫のヴェールとなり視界が白く染まると…突如それを突き破る高速の人影が。

 

「……っ!!」

 

 霧島だ。腕を交差させながら直進し、文字通り鬼の形相で戦艦水鬼目掛けて特攻を仕掛ける。

 しかし当然防がれる。水鬼の魔獣が大木のような巨腕を霧島に振り翳す、手を大きく広げて握り潰そうとするも霧島も応戦、そのまま腕力比べの押し合いとなる。

 

「ぐっ…!」

『ドウシタ? "サウスダコタ"ヲ叩キノメシタノハ誤報ダッタ、ナドト言ッテクレルナ。ソラ…貴様ノ全力ヲ見セテミロ!!』

「言われなくても…っ!」

 

 無理矢理身体を押し込む霧島、そのままの勢いで魔獣の右頭に「頭突き」をかます。思わずたじろぐ魔獣に今度は正面の左頭に「喧嘩キック」をお見舞いする。

 衝撃に唸り嘔吐く魔獣は、遂に力を緩めて手を離す…距離を取った霧島は、すかさず砲を構えた。

 

「全門…斉射ぁーーーっ!!!」

 

 立て続けに鳴り響く轟音、砲火が燃え盛り爆破の嵐が吹き荒れる。

 

 霧島、怒涛のゼロ距離連続射撃。硝煙が立ち込める中現れたのは…中破した深海魔獣。

 

『Gyerururu…ッ!』

「先ずは一体……っ!?」

 

 魔獣に留めを差そうと砲塔を向けた…その時、向かい側から何モノかが駆けてくる。

 

『ハアアァァーーーッ!!』

「何…っ!?」

 

 何と、戦艦水鬼「本体」が近接攻撃を仕掛けて来た。

 鋭く剣の様な長さになった爪を振り回して霧島を引き裂こうとする。

 一瞬面食らった霧島だが、単調な動きなので躱しながら爪を受け流していく。

 

「貴様…!」

『ハハハ! ドウシタ、束ニナッテモ負ケナイノデハナイノカアァ!!』

「減らず口を…!」

 

 完全に動きを見切り、水鬼の繰り出した腕を掴む霧島。

 

「この…っ!」

 

 しかし霧島が次に見た光景は…水鬼の背後で砲撃の準備をする魔獣の姿。

 

「しまった…!」

 

 油断したな…そう言わんばかりに口角が歪んだ魔獣。

 完全に霧島を捉えた砲塔は、そのまま凶弾を射出した。

 

『…オラッ!』

「っが…!?」

 

 水鬼の足蹴りにより腹部にダメージ、拘束を解いてしまう霧島。

 

『無様ダナァ? …コレデ終ワリダ』

 

 射程外に逃れた水鬼が勝ち誇る、直撃は確実、迫る凶弾から逃れる術はない。

 

「…っ、ぅおおおーーーっ!!」

 

 絶望的状況にあっても、その闘志は消えず。

 霧島はイノチを穿つ凶弾に敢然と立ち向かう。

 

「(こんなの…比叡お姉様の孤独に比べたら…っ!)」

 

 そう…"あの時"も。

 

「(このまま何も出来ず終わったら、姉様に顔向け出来ない…!)おおおぉーーっ!!」

 

 まるで死に急ぐように…先立った姉を追いかけるように…。

 

「お姉様…!」

 

 

 

「──こんの、バカ霧島っ!!」

 

 

 

 自らの「シ」をも覚悟した霧島だったが、寸前で突き飛ばされ射程距離から外れる。

 

「っ、お姉様…!?」

 

 霧島を救ったのは「比叡」。距離をつけてからの両舷全速で全力走行、いつかの時雨と満潮のように、霧島を死の脅威から助けた。

 ある程度戦艦水鬼から距離を取ると、霧島は疑問を隠せない様子で尋ねる。

 

「…っ、ど、どうして此処に…皆と下がったんじゃ?」

「霧島が心配だから引き返して来たんだよ! …あぁもうこんなにボロボロになって、戻って正解だったよ」

 

 比叡から見た霧島は服も艤装もボロボロになっていた──小破──状態だった。

 妹をココロから心配する姉、それに対して霧島は…?

 

「…どうして……どうして戻って来たんですか!!」

「……」

「姉様は解っているんですか? 貴女は…この海域で沈んだんです、無惨にも! もしまたあの惨劇が繰り返されるなら…私はそれを変えたいと思ったから一人で戦った! だのに…何故自分から」

「霧島が"自分を犠牲にしようとしたから"。」

 

 真剣な眼差しで霧島を見つめながらはっきりと言葉にする比叡に、ハッと何かに思い至る霧島。

 それは、自分ではそんなつもりはなかったにも関わらず「自らのイノチを投げ捨てよう」としていた事実であった。…比叡に諭され思わず背筋が凍る霧島。

 

「…そんな……私…そんなつもりじゃ」

「やっぱりおかしくなってるんだよ霧島、貴女にそんなつもりなくても…この海域には、人や艦娘たちをおかしくする何かがあるんだ」

「お姉様…ごめんなさい、私…確かに気が狂っていました……」

「霧島のせいじゃないよ。それに…私を守りたいって気持ちは伝わったから」

 

 ありがとう、貴女のその気持ち素直に嬉しい。…比叡の言葉に目から一 滴(ひとしずく)零れ落ちる。

 

「…っ、私…あの日を後悔しているんです」

 

 自らの罪を懺悔するように…霧島はぽつぽつと己の感情を口にし始める。

 

「あの時お姉様はこの海域で沈んだ…でも、私には理解出来ていました。お姉様が…まだ「戦える」と叫んでいたことを」

「…うん」

「助けられたかもしれない。でも…皆お姉様を見捨てて…私も…っ」

「仕方がないよ、航路を決めるのはニンゲンたちだもの。あの時の私たちには決定権がなかった」

「違うんです! 私は…あの夜が…暗闇が…"怖かった"。闇の奥から…四方八方から聞こえる怨嗟の声が怖かった…っ!」

「霧島…」

 

 悔しさが溢れ出す、涙が洪水のように流れ出る。霧島はあの日…あの場から逃げた己の弱さを吐露した。

 

「だから…これは私の幻聴だって…お姉様は無事だって…勝手に思い込んで…そうしたら…」

「…そっか」

「確かに…あの後お姉様の仇は討てたかもしれない。でも…お姉様がそこに居なければ意味がない、だから…今度こそお姉様を守らないと、って…そう願ったんです」

 

 それこそが霧島の祈り、彼女がこの海域に懸ける想いであった。

 

「霧島…ありがとう。妹にそこまで思ってもらえたなんて、私って幸せだね」

「お姉様…」

「でも…霧島が犠牲になるくらいなら、私はそんな心配必要ないよ。それに…私の弱さが口に出たせいで…見捨てないで欲しいって気持ちが、知らない間に霧島を苦しめちゃってた」

「そんなことありません! 姉様は何も悪くない…悪いのは…」

「"誰も悪くない"。…霧島、私たちは過去を乗り越えなくちゃいけない。皆が笑い合う未来を守って、作っていかなきゃ。金剛お姉様、榛名、司令も…皆それを望んでいるはず」

「っ! 未来を…作る……?」

 

 比叡に言われた霧島は、そのまま目蓋を閉じる。

 彼女が脳裏に浮かべたのは、誰もが笑い合う世界だった。

 ヒトも、艦娘も、深海棲艦も、何の壁もなく心から笑い合う時代、世界。宿毛泊地の延長線上の楽園。

 

 それが夢幻(ゆめまぼろし)の到底成し得ないことだとしても…。

 

「…良い、ですね」

 

 夢を見るから、人は笑い合えるのだろう。

 

 霧島は考えを改めると、この海域に来て初めて「ココロからの笑顔」を見せた。

 

「私も…行きたいです、その先へ。だから…私も生き残らなければ…!」

「その調子だよ! …さぁ、一緒に行くよ!」

「はいっ!」

 

 お互いに表情を確かめ合うと、比叡と霧島は悠然と立ち上がった。

 

『…終ワッタカ?』

 

 またも律儀に事の次第を見守っていた戦艦水鬼。二人の様子を見て不敵な笑みを浮かべた。

 

「いつでも良いよ、ね、霧島!」

「勿論です! さぁ…反撃開始よ…!」

『ックク、良イナ? 先程トハマタ違ウ覚悟ノ顔。…希望トイウヤツカ? ナラバ私ハ…ソレヲ撃チ砕カネバ…!』

 

 互いに闘志が昂る、向かい合う両陣は勝利の栄光を掴まんと燃えていた…。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──我、夜戦ニ突入ス!

 

 辺りは漆黒に染まり、目の前も見えない闇が広がっていく…。

 

 探照灯を点ける霧島、一筋の光が照らし出すのは…戦艦水鬼。

 

「…はあぁ!」

 

 見敵必殺、砲火と弾幕をお見舞いする霧島。しかし…その弾幕も水鬼の魔獣はものともせずに突っ込んで来る。

 魔獣の双肩の砲塔から放たれる爆火は、無情にも霧島を飲み込む。

 

──中破──

 

「…っ!」

『ソノ程度カ…呆気ナイナ?』

「…っふ」

『ム、何ガ可笑シイ。……ッ!?』

 

 戦艦水鬼が目線を外すと…霧島の後ろに潜む影が。

 

「…探照灯、照射!」

 

 その声が響くと、霧島の背後から光が差し込む。直接目で見ていたので思わず目を瞑る戦艦水鬼。

 

『ッグ…!?』

「今です、お姉様!」

「了解! 気合…入れてぇ…撃ちまあぁーーーすっ!!!」

 

 ──ズトォオン!!

 

 比叡の意表を突いた砲撃、戦艦水鬼に直撃するも水鬼は尚耐える。

 

『…ッ、マダダ…マダダァ!!』

『Gyerooooooo!!!』

 

 水鬼の闘志に呼応するように雄叫びを上げる魔獣、砲撃で反撃に転じようとするも…。

 

「私を忘れていませんか? …うおおおぉ!!」

 

 霧島がそれを防ぐ、弾を撃ち尽くさんばかりの連続砲撃に…さしもの魔獣も致命的なダメージを受け、水面に身体を打ち沈黙する。

 

『ックソ!』

「決めて下さい…お姉様!」

「よし! 私と霧島の夜…これで…終わりだああぁっ!!」

 

『…ッ!! ──』

 

 比叡の思いを込めた弾丸は、確かに戦艦水鬼に着弾し…まるで黒いキャンバスが鮮やかな紅に塗り潰されるように、鬼は紅蓮に包まれた…。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──…フッ。愉快ダ…ココロガ満タサレテイク。

 

 アァ…今更卑怯ナドト無粋ナコトハ言ワン。ソレガ…貴様タチノ「強サ」ダトイウナラ…私ハ満足ダ。

 

 …サァ、行ッテ来イ。先ハ…マダマダ長イゾ?

 

 コノ地獄ハ……生半可ナ覚悟デハ通レナイダロウガ…貴様ラナラ…ドウトデモナルダロウ。

 

 …ッフ、マァドウデモイイガ。

 

 アァ…今夜ハ……良ク…眠レソウ……ダ…。

 

 

 

 覚メヌ悪夢ガ、漸ク終ワル…──

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──To be continued…

 




○宿毛泊地ショート劇場

吹雪「…すごく…殺伐です…」

提督「こっからも長いき、作者もひぃこら言って書きよったで」

「(ミウスケ)艦隊戦って…?」

瑞鶴「史実からしてこんな感じだし?」

加賀「そうやね…それだけソロモンが重要拠点やったがよ。」

 さて、ここからどうなるかですね…比叡さんと霧島さんは決着が着いたみたいですが?

提督「それはもう…ね?」

???「次は私の出番っぽい?」

吹雪「まだ早いよ!? じ、次回に続きます!」

 無理やり切りましたねぇ…。
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