これからの深海群侵攻の予測を立てるため、各鎮守府泊地の提督たちが集い話し合う「提督総会議」が始まる。最初こそ緊張感漂う余所余所しい空気が漂うも、大湊提督の態度軟化や舞鶴提督の衝撃的一言により、状況は変わりつつあった。
何はともあれ舞鶴提督の
「(宿毛提督)にゃはは! これからは紳士同士仲良ぉしようにゃあ舞鶴さん!」
「(舞鶴提督)す、宿毛さん・・・貴方は一目見た時から「同士」だと思いましたよっ! 此方こそ仲良く、いやもういっそのこと「紳士(変態)同盟」締結します!?」
「(宿毛提督)・・・いや、仲良くはしたいけんど、そこまでロリコンを極めるつもりないで;」
「(舞鶴提督)ん何故だああぁ〜〜〜っ!?」
「(横須賀提督)っあ、じゃあ私と同盟締結しよ〜ロリにも興味あるからさ、いいでしょ!」
「(舞鶴提督)よ、横須賀さん・・・一生、ついていきやすぜ?」
「(横須賀提督)ふっ。これからは一蓮托生だぜ、同士?」
「(比叡)しまった…止める間もなく爆速で決まってしまった…;」
「(雷)良いじゃない! やっぱりこの人はこのぐらいはっちゃけてないと! 私心配だったんだ!」
雰囲気が緩やかになった途端変態たちが結託しようとする、このままいけば
「(徳田)…っはぁ! 変態でも構わないので皆さん、会議に集中して下さい!」
「(宿毛提督)えいやんか先生、会議は後にしてよぉ、やっぱここは駄弁りの時間にせぇへん? 好きなことばぁ皆ぁも喋りたいやろうし!」
「(横須賀提督)さんせ~い!」
「(舞鶴提督)ぜひ!」
「(徳田)だっからそういうことしている暇は──…~ぁあ…いや、その・・・交流を深めるのは結構ですがね、寧ろ私も…少しだけ興味は・・・」
「(谷部さん)・・・と、く、た、さん?」威圧的微笑み
徳田までもその場の空気に呑まれようとした時、後ろの
「(徳田)っう!? ほ、ほら皆さん集中ですよ。いや本当に谷部さんを怒らせるのはマズイですよ!!」
「(宿毛提督)ぅわ!? 普段大人しいヤツの怒りは恐ろしいで。アンタらぁ後で幾らでも話したら良いき、これ以上はアカンて!」
「(横須賀提督)ヤッバ〜☆」
「(舞鶴提督)ひいぃ、すみませんですよ〜〜!?」
「(大湊提督)バッカじゃないの? フンッ」
「(単冠湾提督)はは、良い感じに緩やかになってるね?」
「(佐世保提督) あぁ、こんぐらい仲良か感じが、オイは好いとーぞ」
和気藹々とした雰囲気が流れる中、その空気を俯瞰していた呉提督は…改めて情報を整理するも、首を傾げて疑問を頭に思い浮かべる。
「(呉提督)(・・・何だこれは。親密を深めた友人同士の飲み席ならまだしも、今日初めて出会った者たちと、短時間でここまで距離を縮めるとは。この中心に居るのは矢張り「宿毛提督」、それは間違いない。だが──彼からは一切の邪気を感じない、まるで緊張感の無い…これが、彼の「力」の正体に繋がるのか?)」
呉提督は宿毛提督には何か大きな力を抱えていると感じ取り、その力で何か良からぬことを企だてているものと測っていた。だが目の前の彼は童心のある普通の若者にしか見えない。
そもそも脅威度の話に戻るが、佐世保という要救助必須の地の近辺であるなら、深海群もそちらを狙って来てもおかしくないのだ。しかし現実宿毛泊地にはその脅威が全くもって存在しない、まるで
──呉提督の中でそんな些細な懐疑心は、目に映る宿毛提督の朗らかな大笑いによって霧散しようとしていた。
軍属として人の間にある、「自分の思惑通りにしようとする」物言いや態度を見極めることに一家言あるつもりの呉提督、だが宿毛提督にはそれが見られないし、寧ろそんな不正を眉を顰めて嫌がりそうな「人柄の良さ」が垣間見えていた。
脅威は感じない、異常な力を持つかはまだ断定出来ないが、宿毛提督が「敵」では無いと信じ始めている呉提督は──内心安堵する自分を抑えられなかった。
「(呉提督)・・・ふぅっ」
肩を下げて息を吐く呉提督を見て、隣に座る秘書艦──駆逐艦「浦風」はクスリと優しく微笑んだ。
「(浦風)──ふふっ、どうじゃった
「(呉提督)…ぁあ、問題ないようだ。ここまで緊張が無いと疑うことが馬鹿馬鹿しくなる、だから…もう止めておくよ、国から何を言われようと私は彼を信じてみようと思う。そういうことなので「心強い味方」と結論づけるよ、今はな?」
「(浦風)そりゃあ良かったねぇ。…うちが再三大丈夫言うても「目で見て判断する」聞かんのじゃものね?」
「(呉提督)君の言葉を疑うわけではないのだが、自分の頭で判断出来なければ軍属失格だからな」
「(浦風)頑固じゃねぇ…でも、それがあんたの長所じゃけぇね、っふふふ」
呉提督と浦風がそう言葉を交わしていると、宿毛提督が席を立ち近づいて来ながら声をかけた。
「(宿毛提督)おぅ! 会議の途中やけんど一番近いのに挨拶せんのも失礼よにゃあ? 宿毛提督ですけんど、宜しくお願いしますよって呉さん!」
「(呉提督)…あぁ、此方こそ宜しく頼むよ。改めて…私が「呉提督」だ、これからも…関西圏防衛の要として、活躍を期待してるよ?」
「(浦風)その秘書艦の浦風じゃ。おとん共々、これからもよろしゅうお願いね!」
「(宿毛提督)…どうでもえいけんど、艦娘から親父呼びされゆうがや?」
「(呉提督)こんな形(なり)だからな、普通に呼んでくれとは言っているのだがね。それに…私もまだ「二十代後半」だというのに、父と呼ばれるようn」
「(宿毛提督)っはぁ!? アンタオレより年下なが?! 人は見かけによらな過ぎやろ!!?」
「(呉提督)・・・え、本当か? 何歳ぐらいだ?」
「(宿毛提督)30前半です。」
「(呉提督)っ!!? …み、見た目が若い。その…見た目を交換出来たりしないか?」
「(吹雪)何か頭がバグられたのか、トンチキなこと言い出しましたよ?!」
「(浦風)分かっとらんねぇ、おとんはこれでええんよ。何じゃったか? 「いけおじ」というもんじゃ、うふふっ♪」
「(徳田)皆さんお願いですから、会議に集中してぇ~~~っ!?」
「(谷部さん)・・・ふ、ふふ・・・♪」
後ろで鬼(谷部さん)が
・・・・・
──こうして、会議は以降滞り無く進んで行く。
「(宿毛提督)アメリカはどんな感じやったっけ?」
「(徳田)今のところは問題ないようですね、しかし近年は自国艦娘を発見し「保有する」スピードが速くなったという話なだけで。実際はあまり楽観視も出来ないかと。ハワイ諸島が一時期占拠された例を考えると、アメリカもいつそうなるか」
「(横須賀提督)いやそれ差し引いてもさ、彼処も10年も耐えてるんだから、対抗手段の学習とか技術とかズバ抜けてるというか、もう反則だよねー?」
「(谷部さん)それでも限界というものもあります、何れ欧州のように制圧される可能性がある以上、いつでも援助出来るよう戦力に余裕を持たせたいですね?」
・・・・・
「(呉提督)イベントモチーフは、あとどのぐらい残っているだろうか?」
「(大湊提督)ネットに太平洋戦争の作戦一覧って見つけたけど、殆ど見たことある名前ばかりね? マリアナをちゃんとやるぐらい?」
「(単冠湾提督)流石現代っ子。あと会議中にスマホはダメだよ、本当はね?」
「(舞鶴提督)架空戦記の展開を入れると、まだまだ続きそうですよ。例えばレイテで勝利した我々ですが、「征途」と呼ばれる作品ではこの後北海道が…」
※wikiでザッと見ただけですので、詳細は分かりません;
「(単冠湾提督)いやぁ、管轄下のぼくとしては勘弁してほしいねぇ?」
「(佐世保提督) 何にしてん油断はせんことじゃ、北と南端はこれから特に気ばつけんばな、なぁヒトカップ?」
「(単冠湾提督)はは、そうだねぇ。目を皿にして周りを見ておかないと」
・・・・・
「(徳田)ついでに言いますと、次のイベントは夏に開催となります」
「(宿毛提督)夏イベかぁ、どんな感じになるん?」
「(大湊提督)どうせ欧州でしょ?」
「(舞鶴提督)んむ〜、私としては前の「アトランタ掘り」で資材が底を着きかけているのですよ;」
「(宿毛提督)オレもや。マッさん掘りよってにゃあ、しかも周年任務で「震電改」を報酬ち、オレらぁを○す気かと」
「(徳田)まぁその辺りは(※多分)把握していますので、それを踏まえた上での難易度設定にしたいですね?」
「(横須賀提督)大規模はイヤーよ!」
「(谷部さん)(無言で目を逸らす)」
・・・・・
「(吹雪)じゃあ私と同じように、初期艦であり秘書艦って感じなんだ?」
「(金髪吹雪)ん。ウチの
「(吹雪)もう、素直に嬉しいって・・・ぇっ、プレハブ? ナゼニプレハブゥ~?」エセ外人ぽく
「(金髪吹雪)シラナァーイ。」エセry
「(単冠湾提督)えぇ~良いじゃないプレハブ。何だか居心地がよくってさ~?」
「(宿毛提督)分かるわぁ。秘密基地みたいなモンやろ?」
「(舞鶴提督)男のロマンですよ、キリッ!」
「(呉提督)うむ、憧れるな」
「(佐世保提督)ナッハハ! 女には分からんかもな?」
「(吹雪)男提督たちからすんごい賛同が・・・;」
「(金髪吹雪)ケッ、良い年こいてガキぶるなっつーの」
・・・・・
最初こそ真面目にしていたものの、結局先ほどと同じような流れで「世間話」を始めてしまう提督と艦娘たち。とはいえ議題も出し尽くしたのでそこまで指摘することもないと流すことにした徳田と谷部。
しかしこの会議の体感時間としては「少し短くなるかな?」ぐらいに捉えていたので、まさかここまで間延びするとは思わなかった。──逆を言えば、この短い期間に互いの信頼を獲得することで、有事の際の対応も「この人のためならば」とスムーズに行く可能性がある。であればこの緩やかなひと時も何れ来る戦いに大いに役立つだろう、徳田と谷部はそう結論付けることにした。
だが締めるところはしめなければいけない、徳田はそう思い立つと席を立って手を叩いて鳴らす。
「(徳田)はい! 皆さん静粛に。これより本会議の総括に入ります、それが終わり次第解散としましょう!」
徳田の言葉にそれぞれ話し合っていた提督と艦娘たちが一斉に徳田に向き直る、全員がこちらに顔を向けているのを確認した徳田は、今回の会議で分かったことを簡潔にまとめる。
「(徳田)先ずは敵のこれまでの動向。九州や北海道周辺を中心に、太平洋側から攻め落とそうとしているイメージですね。
次に各国と各海域について。日本は今のところは現状維持で問題ないでしょう、緊急時に戦力が足りず救援要請が必要ならば、佐世保は九州泊地基地、次いで宿毛、必要なら柱島に。単冠湾はそのまま大湊に、必要なら「幌筵(ぱらむしる)」にご連絡下さい。まぁ…幌筵は国際的な事情はありますが、一言頂ければ我々が何とか救援を承認して見せますので、ご安心を」
※この世界では幌筵泊地は、日本と某北の大国の共同管理で運営しているイメージ(勿論「領土問題」のため)。
「(単冠湾提督)やぁ助かるよ、あちらさんに連絡して良いものか、正直悩んじゃってさ~?」
「(徳田)そういう時の我々ですよ、任せて下さい。…次に欧州並びに北欧、2017年に救援に向かって以降、制圧から解放された模様ですが…年に一回夏から秋にかけて、深海群の襲来が続いています。それでも比較的復興に向かっているとのことですが、油断はなりません。いつになるかは分かりませんが戦力が整い次第、この事態を解決に向かいたいものですね?」
「(呉提督)将来総力を挙げて欧州侵攻部隊に対抗する、ですか。しかし…日本を取り巻く戦況を考えると、国が易々と承諾するとは思えません。もしそうであれば──私が、仲介役を引き受けても宜しいでしょうか?」
「(徳田)っ! …えぇ、ぜひお願いします。ありがとうございます呉提督!」
「(呉提督)いえ。元軍属として──人として当然のことをしているまで」
徳田は呉提督の言葉から、彼が運営鎮守府の味方に成り得る素養を見出した。それを感じ取った徳田はただ深い感謝を述べた。呉提督もまんざらではない様子で、宿毛提督を見つめて微笑んだ。
「(宿毛提督)・・・ん? 何や、惚れたか? にゃははw」
「(吹雪)司令官?!」
「(呉提督)まぁ…そんなところだな?」
宿毛提督の冗談に、苦笑いしながらも一部肯定する呉提督。彼らの間に最早「壁」は存在しなかった。
「(徳田)(有難いことだ)…次に、南方海域について。此方も現状維持…というより「そうせざるを得ない」と言うのが正解でしょう、あの海域の敵は他海域と比べても層の厚さが尋常ではないくらい多く、大きい。何か動きがあればまた作戦を立てたいと思いますので、その時は迅速な対応の程を宜しくお願いします」
「(横須賀提督)あそこはアタシたちにとっても因縁深いからねぇ、いつでも対応出来るようこっちでも伝えておくよ!」
「(比叡)あぁ…時間経過でゲージ回復するなんて、今思い出しても悪夢ですよぉ…うぅっ!」
横須賀提督の横で、横須賀比叡は当時の様子を思い起こしては恐れ戦いていた。凛として威風のある彼女の弱音は、当時が如何に「地獄」であったかを想起させるのを容易にさせた。
「(徳田)心中お察しします、などと言っていい立場かは分かりませんが。…最後は「アメリカ周辺」についてです。此方はさっき少し話したとおり、今は問題ないでしょう。しかし──史実でも「アメリカ本土空襲」か何度か計画されています、それらは数回イベントとして再現されていますが、架空という選択肢がある以上敵はこれからも、今まで以上の攻勢に出ることが予想されます。こちらからも相互連絡は欠かさないようにしますが…もしもの事態になれば、緊急で御用を窺いますので。重ねがさね宜しくお願いします」
「(舞鶴提督)私と雷ちゃん、そして我が麗しの艦隊の力で、有事の友国を救って見せますですよ! アッハッハ!!」
「(大湊提督)調子に乗んな大変態! そういう態度で足元掬われても知らないわよ!!」
「(舞鶴提督)ピッ、すみませんですよ…ぁあでもこれはこれで良いかもですよ~美少女に罵倒される私、フヒヒw」
「(大湊提督)ウッ、マジキモッ!? ・・・うぅ~鳳翔さぁん;;」
「(鳳翔)良しよし、貴女はよくやっていますよ」
注意されても態度が一貫して変わらない舞鶴提督に、大湊提督は思わず秘書艦の鳳翔に泣きつく。鳳翔はそれを快く受け入れては優しく抱擁し頭を撫でた。その様子を見て思わず佐世保提督は苦言を呈す。
「(佐世保提督)…舞鶴、そん変態ぶりは何とかならんのか?」
「(舞鶴提督)フッ、イケメンには解るまい・・・容姿を馬鹿にされ続けた私の気持ちぐぁ・・・」
「(雷)ん~容姿だけじゃなく、性格が変態なせいだとは正直思うけどね?」
「(舞鶴提督)ん~雷ちゃあん、つれない~~」
「(電)やぁん、もうダメだってばここで抱き着いたら~」満更でもない顔で
「(佐世保提督)そがん女に泣きついてばっかりじゃと、男としてまだまだじゃ。男は女ば喜ばせてからが本懐やけんな、なぁ大井?」
「(大井)は、ハイ提督・・・ぅっ」
「(佐世保)どがんした、物足らんくなったか? フッ…これが終わったら…なぁ?」
「(大井)は・・・はいぃ~・・・(キュン♥)」
顔を赤らめて息を荒くし始める大井に、佐世保提督は優しくかつ少し高圧的に接する。更に顔を赤くして悦ぶ大井に、一同「あっ・・・」と何かを察した様子で口を噤んだ。そんな様子を見て吹雪は心の中で叫ぶ──
「(吹雪)(な・・・何をされたぁ~~~っ!?)」
「(徳田)(・・・突っ込まないでおこう)ではこれで「第一回提督総会議」を終わりたいと思います、本日は有意義な情報をありがとうございました。これからはお互い連携を取り合いつつ、更なる防衛力強化に努めてくださいね? ──以上です!」
「(宿毛提督)きりーつ、れーい。ありゃがっしゃーーっ!!」
「(吹雪)司令官!? 恥ずかしいから止め──」
「(全提督)──ありがとうございっしたーーっ!!」
「(吹雪)・・・えぇ~;」
宿毛提督に倣って起立してからの礼、そして感謝の号令。全提督のノリの良い立ち姿に…吹雪は困惑した。
「(大湊提督)・・・っは! しまった・・・起立して立たなくちゃって思って、つい乗ってしまった・・・っ!?」
「(単冠湾提督)まぁまぁ、偶にはこういう終わり方も良いよねぇ?」
「(横須賀提督)そそ、皆仲良くが一番よ! 綺麗ごとがナンボのもんじゃ~い!」
「(佐世保提督)ナッハハ! 宿毛ん、他んヤツらもこれからも仲良うやろうや?」
「(舞鶴提督)はぁ…最初は緊張しちゃったけど、終わってみたら最高の時間だったですよ! またお会いしましょうぞ、提督の同士たちよ~!」
「(呉提督)…最高の時間、か。同意見だな…悪くなかった」
「(宿毛提督)にゃはは! 皆ぁ元気でなぁ、宿毛に寄ることあったらいつでも歓迎するきにゃあ!」
こうして、第一回提督総会議は幕を閉じる。
最初に漂った腹を探り合うような空気は、最終的に緩やかな終わりを告げた。徳田と谷部はその様子を見ては、ホッと胸を撫で下ろすのであった──
・・・・・
──後日、呉鎮守府執務室。
「(徳田)…以上が、宿毛泊地の全容となります」
呉鎮守府執務室の対面ソファ、その間の机に広げられた紙の資料。内一つを手に取る呉提督は先ほど徳田から聞かされた「宿毛泊地の秘密」に、眉間の皺を指で挟んで悩む仕草を見せる。
「(呉提督)…う~む、戦況を覆すほどの「絶対的幸運」を彼が。それは調べが付いていたので何となしに理解出来ます、しかし──深海群の攻撃性を鎮静させる歌、ですか」
「(徳田)はい、この事実が政府に知られると不味いことは貴方ももうご理解頂けると思います。その力の存在性と有用性が証明されれば、彼や彼の妹分が国の管理下に置かれるでしょう。それだけならまだしも」
「(呉提督)最悪それを利用して、各国に宣戦布告する事態になりかねない。それこそ進化した科学で力を再現するための「サンプル」にさせられる可能性も…確かに否定出来ません」
「(徳田)我々は彼らの力が、深海群の戦いを終わらせる鍵になると捉えています。ですがそれは国の道具として利用されるべきではない、彼らはただ──彼らの世界で、自由に生きてほしいと我々は願っているのです」
「(呉提督)…成る程、私に今まで彼らのことを隠した経緯は納得しました。私が彼らのことを国に報告するとなれば、国も何らかの手段で彼らを手中に収めようと動くでしょう」
「(徳田)はい、貴方が我々の行動に…宿毛泊地秘匿のため動いていることに理解を示す確証が無ければ、貴方に全てを話すことは出来なかった。ですが…先日の会議で宿毛さんと貴方との会話を見て、杞憂だということが分かりましたので、こうして謝罪を含めて事情を説明しようと動いた次第です。この度は…貴方に隠し事をするような真似をしたことを、お許しください」
座ったソファから立ち上がると、徳田は頭を下げて誠意を示した。それを見て同じく立ち上がった呉提督は「そこまで悪く思わなくて良い」と徳田を宥める。
「(呉提督)寧ろ私の方も、彼らのことを疑っていました。政府からは彼らの得体の知れない戦績の良さを注視するよう言われており、もし不正的な「悪意」が見受けられれば…そのことを政府に報告しようとしていたのも真実です、貴方がたの立場なら隠したくもなるでしょう」
「(徳田)そう言って頂けてると助かります、それで…図々しいお願いになりますが、このことはご内密に出来ますか?」
「(呉提督)それは勿論。しかし…ふっ、お言葉ですが徳田さん。確かに凄まじい力ではありますが次元の違う話でもあります、こんなこと報告すれば私は先ず「精神病棟」行きでしょう? 元より内容次第では報告するつもりもありませんでしたがね」
ニヤリと皮肉めいた笑いを浮かべる呉提督と対照的に、徳田は柔らかな笑みを見せる。
「(徳田)ふふっ、確かにそうですね。ではこれからも宜しくお願いしますよ、呉提督」
「(呉提督)こちらこそ。しかし…分からないことが一つだけあります、彼らの力の「正体」…その源流が何なのか不明ですね」
確かに呉提督の言うとおり、宿毛提督とミウの力の秘密はこれまで事細かく語られた事はなかった。
ミウの方は強いて言うなら、深海化して「深姫」となりその異常能力──対象の負の感情を増幅、減衰させる──が、紆余曲折を経た現在でも扱えるのはまだ理解出来よう。しかし宿毛提督は…「家系(一族の末裔)」としてその強大な力を発揮出来るらしいが、それ以上は事情を知る人物から多くを語られることは無かった。
徳田は「又聞きになってしまうが」と付け加えた上で、宿毛提督から聞いた情報を語る。すると…何かに気づいた様子の呉提督。
「(呉提督)…まさか?」
「(徳田)何か心当たりが?」
「(呉提督)はい、国に伝わる伝承で「運命を操る一族」が居たらしいのです。かつて徳川将軍臣下であった彼らは、幸運を引き寄せてはそれを将軍の勝利や幕府の存続に費やしたと。一説では数百年以上江戸幕府が続いたのは彼らのおかげだと」
「(徳田)…はぁ、それは……正に「オカルト」のような話ですね?」
「(呉提督)これを話した政府高官も「眉唾物の伝説だがな」と鼻を鳴らしておりました、付け加えると彼らは大政奉還後は新体制の政治に関わることなく、ひっそりと姿を消したと言われています」
「(徳田)宿毛さんが国と何かしらの「
宿毛提督の血筋がかつての徳川幕臣であった、その話が真実であるかは別にして、何れにしろ彼らの力は世に出すべき代物ではないことは確か。それを踏まえて徳田と呉提督は、共に彼らを守るため協力することを誓い合う。
「(呉提督)政府への報告は「脅威性は見当たらない」としておきます、これで暫く動きは無い筈です」
「(徳田)ありがとうございます、またあちらに動きがあればお知らせ頂くようお願いします」
「(呉提督)心得ました。それで…徳田さんはこれからどうなされます?」
「(徳田)どうも何もまた「定期従軍医」として動きますよ。丁度佐世保鎮守府の検診が終わりましたから、明日から暫くはこちらにご厄介になります。その次は柱島と…宿毛さんですかね?」
「(呉提督)ははっ、嬉しそうですね?」
「(徳田)どう言い繕っても、あそこが居心地の良い場所に変わりありませんから。まぁ…それを楽しみにしながら、今はこの場で勤めさせて頂きますよ?」
徳田はそう言い終えてから、呉提督に握手を促すため右手を差し出す。呉提督もそれに応じて右手を出して徳田の手を掴み、握手を交わす。
宿毛泊地を巡る見えない戦いは、まだ暫く続くことだろう。再び動くその時はどんな様相を示すのか…それはまだ、誰も知らない「
──To be continued …!
〇宿毛泊地メモver.EX
※宿毛提督の紹介も、せっかくなので設定掘り下げるためにやってます。
〇横須賀提督
横須賀鎮守府第一艦隊司令長官、横須賀鎮守府の代表を務める女性提督。外ハネの黒髪(比叡イメージでセットしたらしい)で長い髪を後ろで束ねている、総じて快活で幼げな印象だが(ネタ元と違い)ちゃんとした成人女性。
天真爛漫であると同時に優秀な頭脳と戦況を見定める先見の明のある天才…なのだが、美少女の多い艦娘をこよなく愛する「アイドルオタク」を絵に描いたような性格。夢は全ての艦娘と「(そっちの意味で)一緒に気持ちよくなること」であるため、性に対する話題も事欠かない。
秘書艦は「比叡」で、暴走気味の横須賀提督の手綱を握っている。
〇佐世保提督
佐世保鎮守府代表。宿毛提督と同じように地元出身の青年であり、長崎弁訛りがある喋り方をする。一人称は「オイ」、二人称が「ワイ」。
艦娘たちからは勿論、一般女性からも好意を寄せられることが多い美形。それでいて艦娘たちの体調管理、他提督含めた周囲との信頼関係構築に余念のない誠実な好漢。
反面、強気な口調と艦娘を「オイばもん(俺のもの)」と呼ぶ「S気質」であるも、それを嫌がるモノは居ないという(所謂「ただしイケメンに限る」である)。
秘書艦は「大井」、時々佐世保提督を「ご・・・(ご主人さま)」と言い間違えそうになるも、夜の床では「そういう関係」なので全く間違いではない。
〇呉提督
呉鎮守府代表、元海自出身の現特務軍人。各地の提督の中で唯一国から派遣された存在。
筋肉達磨と揶揄できる程の巨漢、顔はまぁまぁ整っている。性格は寡黙でストイックだが艦娘たちを優しく見守る頑固な父親的存在。とはいえ老けているように見えるが年齢は「二十代後半」である。
国から宿毛提督をマークするよう言われているが、提督総会議を通して宿毛提督の人となりを見て以降は、宿毛提督含め他提督たちと友好的な関係を築いている。
趣味は筋トレで、隙さえあれば腕立て伏せをやり始める。
秘書艦は「浦風」、基本的に穏やかな笑顔を浮かべている人付き合いの良い少女。呉提督と共に互いに足りない部分を補い合う。呉提督とは一部から「夫婦みたい」と言われている。
〇舞鶴提督
舞鶴鎮守府代表、スキンヘッドのふくよかな見た目の、少し気弱な隠れオタク。語尾に「~ですよ」と付ける。
架空戦記について詳しく頭も働く智将タイプ、だが時々漏れる「幼女への溢れる愛」のせいで周りからは変態(ロリコン)扱いされがち。横須賀提督は例外でお互いを「同士」と呼び慕いあっている。
秘書艦は「雷(いかずち)」。幼い見た目ながらも愛する我が子(舞鶴提督)を存分に甘やかす「ママ」。
〇大湊提督
大湊警備府代表、全提督の中で最も若い15歳の少女であるが、実質的な指揮権は大湊副司令(彼女の実父)に一任しており、自分は学生を兼業しながら会議出席や艦娘の相談事を聞くなど出来ることをやっている。
髪は赤味のある茶髪、髪留めは「T型」、人前では礼儀正しく振る舞おうと敬語や凛々しい態度を心掛ける。本来の性格は一見「勝気」で口調はやや乱暴だが、心根は寂しがりやな(面倒くさい)ツンデレ少女。だが周りが癖の強い者ばかりなので必然的に常識人枠に回っている。
単冠湾提督とは拠点が近いのもあり交流があり、親交を深めている。
秘書艦は「鳳翔」。激しく感情の動き回る彼女を優しく見守る。
〇単冠湾提督
単冠湾泊地代表、都内出身だが提督としての素質を認められ北の辺境「単冠湾泊地」へ飛ばされる。
長身痩躯のベリーショートが特徴的な、妙にガタイの良い壮年の男性。常に笑顔を絶やさないナイスミドル、人当たりが良く温厚だがその感性は独特で、執務室は何故か「プレハブ小屋」である(落ち着くらしい)。
料理が得意で宿毛提督とはよく料理談議で盛り上がっている。
秘書艦は「吹雪」だが、単冠湾の個体は「黒パーカーに金髪(染めた)」という不真面目な印象で口調もダウナーのもの。更に普通の吹雪の「司令官呼び」と違い、彼女は何故か単冠湾提督を「提督」と呼ぶ。
〇宿毛提督
宿毛湾泊地代表、宿毛泊地在住の、元ニート現提督。
軽い性格だが、その実純粋で、思いやりのある生粋の土佐の男。そのためか艦娘からの人気も高い。遊びに全力を注ぐ享楽者だが、いざという時には頼りになる…かもしれない。
普通の一般人、ではなく世界の運命の「流れを引き寄せる」力の持ち主。力自体は現在も封印を施されているも影響は少なからずあり、能力を(自動)発動することで結果的に宿毛泊地に勝利を齎して来た。その力はかつての徳川幕臣も持ち合わせていたとされているが・・・?
その存在を感知した国から「要注意人物」としてマークされているものの、本人はそんなことは知らず今日も暢気にイベント攻略に勤しむ毎日を送る。
秘書艦は「吹雪」。性格は真面目でしっかり者、マイペースな提督をサポートする苦労人。最近ツッコミが「ぱ〇〇ぁん」みたいにデカ声オーバーリアクションになってるかも・・・?