異生神妖魔学園   作:さすらいのエージェント

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うるさすぎる世界史

???「オラァ!ケガした所を見せろ!早く治療しねぇと治るもんも治せねぇからな!」

 

 

理科の授業が中止になってから30分後、龍哉は保健室で種族は鬼であろう、額に1本角が生えた女性の保健医の治療を受けていた。

彼女の名は『鬼塚真島』。口調は荒いが腕は確かな保健体育の教師でもある。

 

 

龍哉「イダダダダ!!お、お手柔らかにお願いしますよ…!(っていうか司の野郎どんだけ力あるんだよ!顔面砕けるかと思ったわ!)」

 

真島「学生はケガするのも成長する証でもあるが、だからってケガをしたら心配されるからすんじゃねぇぞ」

 

龍哉(いや、司のはヤバかっただろ!ただでさえ人間の姿しててもあんな力なのに!)

 

野人「そんなことより助かりましたよ、真島先生。あなたの治療の腕はいつ見ても素晴らしい」

 

真島「べ、別に俺は当たり前のことをしてるだけだぞ?俺だって昔頼りないトコもあったし…///」

 

龍哉「あれ?先生、もしかして……照れ隠し?」

 

真島「なっ…何言ってんだよ!そんな訳ねーだろ!グズグズ言ってないで早く治療させろ!!//////////」

 

龍哉「だから痛いんですってー!!」

 

野人「我慢しなさい。男だろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方2年教室では紺子が時間割表を見ており、次の授業を確認していた。

 

 

紺子「次は世界史……てことはヴォイエヴォーテ先生か」

 

冷火「そういえばヴォイエヴォーテ先生、吸血鬼ですよね?こんな真っ昼間に世界史教えても大丈夫なんですかね…(てか何でこいつと時間割確認しなきゃなんねぇんだよ…)」

 

???「なるほど…お前たちは今でも『吸血鬼は日光で灰になる』と信じているのだな」

 

紺・冷「「!?」」

 

 

振り向くと、いつの間にか背後にヴォイエヴォーテがいたのだ。

ヴォイエヴォーテは何か言いたそうな目をしている。

 

 

紺・冷「「うわあああああああ!!先生!!」」

 

紺子と冷火以外全員『うわっ!?』

 

 

突如現れたヴォイエヴォーテに驚いたのは紺子と冷火だけではなかった。

この場にいる全員も驚いた。

 

 

紺子「いつからいたの!?心臓止まりかけたよ!!」

 

冷火「れ、冷火もです…!(何この人悪ふざけ!?)」

 

ヴォイエヴォーテ「わりと最初からいただろう」

 

紺子「嘘つけよ!!時間割見ようと思った時からいなかったじゃねーか!!」

 

ヴォイエヴォーテ「コウモリになって来た」

 

冷火「…ていうか私、時間割見てる時からずっと違和感あったんですが、やっぱり先生だったんですね(誘拐犯だったらどうすんだって話だよ!)」

 

紺子「あっ、そういえば先生さっきの話聞いてたんじゃ?冷火が言っていた『吸血鬼は日光で灰になる』っていう…」

 

ヴォイエヴォーテ「ご名答。それは人間が勝手に作り上げた想像。我々が灰になることなぞない」

 

司「何………だと…………?」

 

乱「先生の親族も全員…ですか?」

 

ヴォイエヴォーテ「その通り」

 

乱「だったら安心した!先生、キスしましょう!」

 

ヴォイエヴォーテ「そろそろ授業だからまた今度な」

 

乱「じゃあ、こんこん!チューしよ、チュー!」

 

紺子「勝手に決めんなよ!?おい、やm」

 

 

 

ズキュウウウン!!

 

 

 

紺子の言葉が終わらないままキス魔の乱の問答無用のキスが紺子を襲う!

 

 

獄宴「や、やった!!」

 

炎宴「さすが乱!私たちにできないことをやってのける!」

 

死宴「そこにしびれる!憧れるゥ!!」

 

司「いいゾ~これ!もっとやれもっとやれ!」

 

紺子「……ッ~~~~!/////////」

 

ヴォイエヴォーテ「…時間潰れるからもうそろそろ席に着いてくれないか?キスした瞬間からもうチャイム鳴っているからな」

 

 

 

 

 

ヴォイエヴォーテ「これで授業ができる……よし、教科書を開く前に少し話がある」

 

龍華「何だ何だ?」

 

ヴォイエヴォーテ「先程の理科の件だが、ものすごい騒ぎが起きたそうじゃないか。おかげで赤川と伊佐殿が今保健室で治療を受けている」

 

龍華「…あっ(察し)」

 

ヴォイエヴォーテ「『あっ』だと?さすが雨野、察しがいいな。あの後私は保健室へ行って赤川と伊佐殿から話を聞いたのだが、『司君が暴走した』とのことだ」

 

司「ファッ!?何だよそれ!?知らねぇ知らねぇ知らねぇ…!」

 

ヴォイエヴォーテ「私はディーゴが壁に穴を空けたぐらいだろうと思っていたが、きっかけはお前だったとはな……」

 

司「うるせぇ!!知らねぇっつってんだろ!!」

 

ヴォイエヴォーテ「…まあいい、先ほど学園長と校長に伝えたら校長が激怒していた。放課後校長室に来いと言っていたから来てもらうぞ」

 

司「う、嘘だろ……?唯一怒らせちゃいけない人に話しちゃったのかよ…………」

 

ディーゴ「校長にバラされたのは仕方ないから諦めな」

 

ヴォイエヴォーテ「愚か者!」

 

 

入学式にやったようにコウモリ飛ばしをするヴォイエヴォーテ。数匹のコウモリがディーゴを襲う。

 

 

ディーゴ「ダアッー!!ちょ、先s…アダダダダッパァー!!」

 

 

1匹がディーゴの鼻先に噛みつき、残りは飛びながら蹴ったり体当たりする。

 

 

ヴォイエヴォーテ「理科室の壁に穴を空けたのはどこのどいつだ?反省文10枚分を書くことを忘れたか?」

 

ディーゴ「死纏さんにとっちめられたばっかなのにィギャアアアア!!」

 

紺子「うーわっ…私と一生の時よりえげつなっ…」

 

一生「もうあれでトラウマなのに見る方も鳥肌立つよ…」

 

ヴォイエヴォーテ「あんな奴はほっといて、授業を始める。教科書を開け」

 

 

ディーゴはまだコウモリにたかられている。紺子たちが開いたページは人類の起源だった。

 

 

ヴォイエヴォーテ「世界史は人類の歴史を世界的な規模とするのも歴史のひとつ。文字がなければ歴史は始まらない。今日は人類の誕生から始めよう」

 

紺子(私は妖狐だけどここに集まるのはみんな人間じゃないし、これ学ぶにはちょうどいいや)

 

 

数分後、真島の痛い治療を受けた龍哉が教室に入ってきた。

 

 

龍哉「赤川です!遅れました!」

 

ヴォイエヴォーテ「鬼塚殿の治療は嫌と言うほど痛かっただろう。もう大丈夫なのか?」

 

龍哉「はい。野人先生も無事です」

 

ヴォイエヴォーテ「伊佐殿も無事ならそれでいい。だがディーゴと竜宮寺は災難だがな」

 

龍哉「ディーゴと司は災難?どういうこと…ですか?」

 

ヴォイエヴォーテ「あれを見たまえ」

 

 

見るとディーゴはコウモリにたかられ、司は恐怖のあまり手を膝に置き、青ざめていた。

 

 

龍哉「いやいや、何がどうした!?何でディーゴはコウモリに襲われて司は怖がってんの!?

 

ヴォイエヴォーテ「それは………想像に任せてくれ」

 

龍哉「ちゃんと説明して!?全然わからん!!」

 

ヴォイエヴォーテ「そんなことより早く席に着きなさい!授業が進まん!」

 

龍哉「う……」

 

ディーゴ「俺が悪うございました~~!!もう勘弁してくださ~~~~~~~~い!!

 

龍哉「ほらほらほらほら!!俺が悪かったって言ってますし!俺がここに来るまで何があったか説明してくださいよ!!」

 

ヴォイエヴォーテ「………単刀直入に言おう。ディーゴは人のことを言えない、竜宮寺は口答えした。それだけだ」

 

龍哉「それだけでこんななっちゃうんですか!?キッツ!うわキッツ!!」

 

ヴォイエヴォーテ「授業を続ける。人間は猿から進化したことは皆知っているだろうが、いつ猿に似た何かから進化し始めたのか?霊長類が誕生したのは1億年から7000万年前。霊長類の中では最も原始的なもので、『原猿類』と呼ぶ。いや、むしろヒトよりネズミに近い感じだ」

 

ディーゴ「もうやめてくれ!!俺から離れてくれー!!」

 

司「…………………………終わった」

 

冷火(ホントにうるさくてしょうがねぇ…)

 

高見「集中できないし内容が全然頭に入らないです」

 

ヴォイエヴォーテ「今回だけは我慢してくれ。で、4000万年前になると霊長目の亜目として類人亜目が分かれ…」

 

 

 

 

 

世界史が始まってからしばらくし、昼になった。

ヴォイエヴォーテは黒板に書いた内容を消し、懐中時計を見たあと、プリントを取り出す。

 

 

ヴォイエヴォーテ「そろそろ授業が終わるが、小テストだ。内容は今日やったことだが、ノートや隣の者の解答を見るといった真似はするなよ。時間はチャイムが鳴るまで」

 

 

国語と数学のように紺子たちはプリントを受け取ったが、ディーゴと司は授業が始まってからまだ同じ状態なので集中できず、その上自分のノートには何も書かれていない。

それもそのはず、ヴォイエヴォーテに逆らったり、彼の言っていた校長に呼び出されているのだから。

 

 

ヴォイエヴォーテ「では、始め!」

 

紺子(国語と数学は散々だったけど、ここで一気に取り返す!)

 

 

だが散々コウモリにたかられたディーゴはすでに疲労で倒れ、司はプリントをもらってもずっと手を膝に置いたままだった。何やってんだこいつら。

 

 

 

 

 

しばらくしてチャイムが鳴った。紺子は国語と数学でやらかしたことは一切なく、解答欄も全て埋まっていた。

 

 

ヴォイエヴォーテ「よーし、手を止めろ。もう何も書くなよ。後ろから回収」

 

 

プリントは後ろから次々と回収され、ヴォイエヴォーテはそれらを受け取っていく。

ヴォイエヴォーテが教壇に戻った途端、国語の時のようにまた校内放送が流れてきた。

 

 

???『あー、マイクテスマイクテス』

 

紺子「こ、今度は何だ?」

 

ヴォイエヴォーテ「またふざけた校内放送か………!?」

 

 

実を言うと各クラスで授業を行っていた教師3人も同じ校内放送を聞いていた。その中でトリノと同じくヴォイエヴォーテもいたらしい。

ヴォイエヴォーテはもう何を聞いても驚かんぞというような風貌で身構えた。

 

 

龍華「あんま身構えなくてもいいが、念のため警戒しとくか」

 

 

だがいつまで経ってもなかなか放送が流れてこない。

さっきの『マイクテスマイクテス』からどうした?全員がそう思ったが、いつまで経っても何も起こらない。ということは………。

 

 

一同『終わりかよ!!?』ズコココーッ

 

 

全員がずっこけた瞬間、また放送が流れてきた。

 

 

???『終わりだと思ったか?マヌケがァ~!!』

 

一同『まだ続いてた!!

 

龍華「何だったんだ今の間は!?」

 

???『…おっと失礼。俺は生徒会副会長、草薙遠呂智だ。えー、1時間目の終わりに遊んだ放送担当者。今すぐ体育館に来い。生徒副会長の俺が指導してやる』

 

ヴォイエヴォーテ「…あっ(察し)」

 

龍華「うわー、マスター……まさかあれを食わせる気か………?」

 

遠呂智『そして2年の雨野龍華、2年の雨野龍華。放課後、3年の教室に来い。以上!』

 

 

今度こそ放送が終わり、龍華が遠呂智が言っていたことに何か気づいた。

 

 

龍華「……あ、これ仕事の話だ」

 

冷火(それでわかるのか!?まず『あれ』って何だ!?『あれ』って!)

 

龍華「ちなみにマスターの料理はなぜかダークマター料理になるから、絶対に食うなよ?」

 

紺子「お前のコーヒーもな………メッチャまずかったし」

 

ヴォイエヴォーテ(それで経営成り立っているのか!?)

 

龍華「まあ俺にコーヒー、マスターに料理と紅茶を頼まなければの問題だがな。経営成り立つし」

 

冷火(こいつさりげなく心読んだ!?)

 

紺子「そういや腹減ったな。食堂行こうぜ」

 

龍華「おっ、そうだな。ここの飯スッゲェ美味いしな」

 

 

数人が席から立ち上がり、食堂に向かっていると、体育館から断末魔が校内に響いた。

 

 

許人「ご愁傷様、放送担当者…」




ディーゴは安定の被害者、放課後司に降りかかる悲劇………まあ、ドンマイ。
次回は昼休みですが、紺子たちの食後がてら別の話も書きます。

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