異生神妖魔学園   作:さすらいのエージェント

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みんなの調理

これから行われる家庭科の授業は調理だった。

家庭科室に向かう途中、紺子と盾子が話している。

 

 

紺子「昼休みずっと屋上にいたから昼飯全然食ってねぇよ……最悪だ」

 

盾子「それホント?ていうか紺子がずっと屋上にいるとか珍しいね」

 

紺子「いろいろあったんだよな。龍華と竜奈先輩に打ち明けてやっと落ち着いたけどさ、問題は昼飯だよ」

 

盾子「屋上にいたんだ……全く、私たち心配したんだよ?」

 

 

一方で仁美はまた食事ができることが嬉しいのだろう、にこやかな表情だ。

だが中には不服そうな気分の者も。

 

 

司「料理いつもうちが雇ったシェフが作ってるから自分で作ったこと一度もねぇよ」

 

ディーゴ「マジで!?こんな俺でもいつも料理作ってるのに!」

 

司「ディーゴが作る料理ってなんか想像できん…」

 

ディーゴ「おいちょっと待て。まさかとは思うが、毎日駅弁食ってる俺を想像してたのか?」

 

司「………バレたか」

 

ディーゴ「バカか。いくら俺でもさすがに毎日食ってたら体に悪いわ」

 

 

生徒たちが次々と家庭科室に入っていく中、辰蛇の悲鳴が聞こえたような気がしたが、あまり気にしなかった。

持参してきたエプロンと三角巾を身につけているうちにチャイムが鳴る。

 

 

一生「燐斗先生絶対ろくなことしないんだろうなぁ……」

 

燐斗「あ゛?私がろくなことしないですって?」

 

一生「いや、別に…」

 

許人「変なこと言わない方がいいよ。目の前で冷火にちょっかい出したらもっと大変なことになるし」

 

一生「う………」

 

燐斗「みのり先生みたくちょっかい出してみなさい。ぶっ飛ばしますよ♡」

 

 

笑顔で忠告する燐斗だったが、その笑顔には容赦ない殺意が見えると誰もが知っていた。

冷火を驚かし、犠牲となったみのりにとってはとんだ災難であった。

 

 

 

 

 

準備が整い、早速調理が行われることになった。作るのはハンバーグだ。

それぞれ作り方のプリントを渡され、各班それぞれ取りかかる。

 

 

紺子「ひとつだけ3人って寂しくね?」

 

ディーゴ「気にすんな」

 

紺子「お前は絵の具の液体が混ざりそうで気になるんだけど」

 

ディーゴ「やかましいわ!もう乾いとるがな!」

 

 

理科同様自由席のため、班はこのようになっている。

 

 

1班:紺子、ディーゴ、仁美、辰美

2班:ライエル、司、冷火、乱

3班:獄宴、セー、龍華、一生

4班:許人、高見、盾子

 

 

紺子「うちの班ろくのしかいねぇ!絵の具まみれの車掌と大食いコンビじゃねぇか!」

 

ディーゴ「辰美のせいでこうなったんじゃ!ガタガタ言うな!」

 

 

手袋を脱いだディーゴが玉ねぎを切りながら怒鳴った。

 

 

仁美「作ってる時からもうお腹減ってるんですけど~」

 

紺子「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛よだれが混ざるゥゥゥゥゥ!!」

 

辰美「紺子様、焼き加減はどうしましょう?」

 

紺子「ステーキじゃねーんだよ!腹壊すわ!」

 

ディーゴ「ハンバーグって牛乳も入れるっけ?」

 

 

2班では冷火が真剣に肉をこねているが、司が味見をしてみる。

 

 

ライエル「司!?まだ焼いてないのに何で味見してるの!?」

 

司「別にタルタルステーキでもいいだろって思ってな」

 

冷火(バカだこいつ!龍華よりバカだ!)

 

乱「お腹壊しても知らないよ」

 

 

なお、3班は会話しながら真面目にハンバーグ作りに取り組んでいた。

 

 

龍華「ろくなことしない奴ばっかだな………」

 

セー「龍華、玉ねぎ切るの上手だね」

 

龍華「マスターのカフェで料理してるからな。これぐらい朝飯前さ」

 

一生「ていうか獄宴、そのゴーグルどこから持ってきたの?」

 

獄宴「今日ハンバーグ作るっていうから持ってきたんだけど」

 

炎宴「私たちも目にしみるの嫌だから」

 

死宴「目隠ししてるのよね~♡」

 

 

ぬいぐるみの言う通り、確かに2体は目元を布で覆われていた。獄宴は龍華同様玉ねぎを切っている。

そして4班でも。

 

 

盾子(許人と高見のせいで集中できない…!)

 

許人「手伝えることがあったら手伝ってあげるよ」

 

高見「そっ、そんなことないわよ……」

 

 

恥ずかしがりながらも取り組んでいた。これを見ていた盾子はどうしても許人と高見に目を向けてしまう。

 

 

冷火(嫌な予感しかしないの私だけ?お母さんすごいこっち見てるんだけど………)

 

 

肉をこねながら視線を変えると、燐斗が期待の眼差しで見つめている。

一方で紺子も冷火同様切った玉ねぎ、パン粉、卵、牛乳を入れ、こねている最中だった。

 

 

辰美「紺子様も意外とお上手なんですね」

 

紺子「妖狐だからって甘く見るなよ?私の手先は器用だからこんなの朝飯前さ」

 

ディーゴ「技術の時間すごいの作ってたよな。消しゴムだったっけ」

 

紺子「消しゴムって言うなよ。透明人間製造マシンって言えよ」

 

仁美「あれっていろいろ消せたよね~。ボールペンで書いた字も人も消せたよね~。私も使ってみたいな~」

 

紺子「無理な話だな。あれ私しか使えねぇよ。私以外の奴が触ったら電気走るから」

 

ディーゴ「お前しか使えないの!?いや、問題はそこじゃねぇか。普通の消しゴムは?」

 

紺子「持ってるぜ。私いつも普通の消しゴム使ってるけど、透明人間製造マシンはよっぽどのことがない限り使わないな」

 

ディーゴ「初めて知ったぞ、その話………」

 

仁美「あ~、お腹減った~」

 

 

唖然とした表情で肉をこねる紺子を見つめるディーゴであった。

 

 

 

 

 

焼き加減を見ようとフライパンのふたを開ける冷火。美味しそうに焼き上がり、家庭科室に香ばしい匂いが充満する。

ふたを開けた冷火を見た燐斗は思わず彼女に飛びついた。

 

 

燐斗「はあああああ!!こんなに美味しそうに作れるなんてお母さん嬉しいよぉー!!

 

冷火「ゲバァ!?

 

 

飛びつくように抱きつかれた冷火にとってはたまらなかった。

実は家にいる時を含め、これと同じようなことを何度も経験しているため、冷火にとって燐斗がやることはもはやストレスに過ぎなかった。

 

 

龍華「先生ぇぇぇぇ!?冷火ぁぁぁぁ!!」

 

セー「飛びつかれただけで血吐いた!?」

 

一生「スッゲェ親バカ……!」

 

獄宴「この次はチューマシンガンかな?」

 

燐斗「お母さんあまりにも嬉しいからご褒美にチューマシンガンあげちゃうううう!!ブチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチュ―――――

 

冷火「いぎゃあああああああああ!!人前でそんな恥ずかしいことすんじゃねぇぇぇぇぇええええ!!

 

 

普段丁寧語の冷火の口が突然悪くなった。紺子たちも口が悪くなった冷火にぎょっとする。

 

 

燐斗「…………あら、ごめんなさいね。私、娘のことに触れるとホントに止まらなくなっちゃって」

 

冷火「チューマシンガン何回受けたと思ってんだよ!!」

 

紺子「冷火、とりあえず落ち着け!さっきまでおとなしかったお前どこ行っちまったんだ!?」

 

冷火「…………ごめんなさい。どうやら錯乱してたみたいです」

 

 

 

 

 

冷火を落ち着かせてから数分後、紺子たちはようやくハンバーグにありつけた。

残念ながら用意されていたのはひき肉、玉ねぎ、パン粉、卵、牛乳といった材料のみ。白米とサラダも食べたかったと嘆く者も少々いた。

特に仁美は辰美と同じぐらい大食い。全然足りないとぼやいていたが、辰美は全く気にせず、美味しいと喜んで食べていた。

 

 

紺子(せっかくだからカズミンにも作ってやろうかな?)

 

 

食べているうちにチャイムが鳴り、帰りのHRの時間になった。

洗った皿を拭き、食器棚にしまうと、紺子たちは急いで教室へ戻る。6時間目の家庭科はハンバーグを作る時間はヴォイエヴォーテも知っていたため、HRを行う時間が遅れてもお咎めなし。

だが一番驚いたことがひとつだけあった。宇佐間の股間を蹴って呼び出しを食らっているはずの龍哉が席に着いていたことだ。紺子は嬉しさのあまり、思わず抱きついていた。

 

 

ヴォイエヴォーテ「校長によると、何でも砂道焔という人間の男を追い払ったとか……」

 

龍哉以外全員『人間!?』

 

ヴォイエヴォーテ「本当なら停学処分になっていたが、あの件で厳重注意に留められた。しかし人間禁制の学園に侵入した奴はあの男が初だろう。なかなかいい度胸をしておる」

 

ライエル「ですが先生、その砂道焔っていう人………まさか僕たちの命を狙ってるんじゃ?」

 

ヴォイエヴォーテ「その件についてはまだわからん。もし本当にお前たちの命を狙っているならば、今後同じようなことがあった場合すぐに我々が対策を練らねばならない。お前たちもくれぐれも気をつけることだ。何かあったらすぐ連絡しろ」

 

龍哉以外全員『うへぇ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校長室では、アルケーが微笑みながら呟いていた。

 

 

アルケー「フフフ………龍哉君にはよくやったとしか言えませんが、あの砂道焔という男…再び会ったら私がこの手で始末しなければなりませんね………」

 

 

優しく微笑んでいるアルケーだったが、その微笑みは何か違っていた。

そして()()()()()()()()()()()()を目の当たりにするとは誰も予想していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって砂道焔の家。

 

 

焔「あの赤川龍哉とかいう小僧、なかなかいいパンチしてたな……俺様があんなガキに押されるなんて初めてだったが、人外は不要な俺様にとっては絶好のチャンスかもしれねぇ。手始めにあのガキを海に沈めてやるか。その前に決行日はいつにするか…………」

 

 

焔はそう言い、クククと笑った。




龍哉がヒロインになりそうな予感。

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