異生神妖魔学園   作:さすらいのエージェント

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武道館での模擬戦

紺子がトレーニングジムにいる一方、一海は武道館にいた。師匠と呼ばれるとある男に呼び出されたらしいが、武道館にいるのは一海だけでなく、司と龍華もいた。

 

 

ラインハルト「一海、足技だけでは他の敵には勝てんぞ?腕と手も使え」

 

一海「そう言われても僕は昔から足技一筋でして…」

 

剛力「お前そのうち武道の授業受けるだろ。特に剣道とかあるだろうが。足技だけだったら師匠、アドバイスのしようがないぞ」

 

 

以前新入生の歓迎式でヴォイエヴォーテに話したあの言葉が脳裏をよぎる。

そう、ラインハルトの弟子とは一海のこと。ラインハルトにとって本人の言う『下賎な輩』に一海が襲われているところを生理的に痛めつけて殺したことは今でも昨日のようにはっきりと覚えている。

生徒を傷つけられ、激怒するのはヴォイエヴォーテと同じ。だがそのまま相手を殺す彼とは全く違うのだ。傍観者はこう叫ぶだろう。「悪魔だ!血も涙もない悪魔だ!」と。

その血も涙もない悪魔に呼び出された生徒が一海以外に司と龍華もいるのである。

 

 

龍華「俺たちもラインハルト先生についてきたのはいいけど…」

 

司「なぜ俺様だけ脅迫されたんだ………」

 

ラインハルト「2人でボソボソ話すでない。悪いが卿たちも1日一海の特訓につき合ってもらうぞ」

 

剛力(ラインハルト先生あっちで脅迫してたの!?)

 

 

ここで異議を唱えれば今度は自分がどんな目に遭うかわからない。そんな恐怖に剛力は黙ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

一海「ところで砂道焔のことですけど、師匠も剛力先生もその話聞いてるんですよね?つまり僕たちを呼んだのって………」

 

ラインハルト「我々もその話は聞いた。赤川龍哉が追い払ってくれたらしいが、卿たちはいつ悪質な輩に襲われてもおかしくない。その身を守るためや砂道焔を倒すための対策としてここへ呼んだのだ」

 

龍華「兄貴、宇佐間先生のあそこ蹴って停学処分になりかけてたんだけど」

 

剛力「宇佐間先生何があったの!?

 

司「体操の際またズボン破ろうとしてな…」

 

 

だが司がしゃべっている途中、剛力は司に鋭い視線を浴びせた。

どうやらあのことをまだ恨んでいるようだ。

 

 

司「いや、ちょっと待って!?俺様何か変なこと言った!?」

 

龍華「変なこと言ったも何も、たぶんあのこと根に持ってるんじゃね?ほら、お前覚えてるか?ポケットに剛力先生のハンカチが―――――」

 

司「だあああああああああ!!!!や、やめてくれェェェ!!それ以上言うなァァァァアアァアァアアア!!!!

 

 

一生忘れられないこと………つまり司にとってあの暴力はトラウマとなっていた。

全て思い出してしまった司の悲痛な叫びが武道館に響き渡った。

 

 

剛力「こいつどんだけ俺に恐怖抱いてんだ!?そんなに怖かったんか!?」

 

龍華「たぶんそうかもしれねぇ…」

 

ラインハルト(傍から見た私にとっては問題行動だと思ったがな)

 

 

 

 

 

体育に起きた出来事の一部始終を龍華が話したが、剛力の顔は血の気が引いていた。

 

 

剛力「タバコとか持ってきちゃいけないもの持ってきたとかじゃなかったのか!?あいつが宇佐間先生の股間蹴るとか前代未聞だぞ!」

 

ラインハルト「ですが宇佐間殿にとっては自業自得とも言えるでしょう。剛力殿はそう考えられなかったのですか?」

 

剛力「考えるも何も、開いた口が塞がりませんよ!」

 

ラインハルト「とにかく、無駄話はここまでにして早く模擬戦を始めましょう」

 

剛力「は、はあ……わ、わかりました……」

 

 

不思議とラインハルトから剛力に対しての威圧感が滲み出ていた。

 

 

一海「やっぱりこの人の威圧感すごい…僕でもわかる………」

 

 

 

 

 

それから10分後、ようやく模擬戦が幕を開けていた。一海、司、龍華の3人による対決だ。

ラインハルトの言う通り、一海は足技を得意としており、腕を使うことは全くない。そのため司と龍華に隙を突かれ、つかみ技を受けてしまう。

 

 

司「オラ、だらしねぇぞカズミン!」

 

一海「っ………!」

 

 

司に首をギリギリと絞め上げられ、上手く声を出せない。さらには景色がずれて見える。

ところが龍華が司の隙を突き、背後からの奇襲として司の後頭部に頭突きした。

 

 

司「ぐわぁ!!」

 

 

たまらず一海を離してしまい、後頭部を押さえながらのたうち回る。

それをよそに龍華は首を押さえて咳き込む一海に声をかけたが、もう1分ほど絞められていたら間違いなく死後の世界を見ていたとのことらしい。

 

 

龍華「ラインハルト先生に先に言われたけど、カズミン。足技を多用すんのはいいけど、せめて手も使えよ。司みたいにつかみ技使ってくる奴もいるし、足技のほとんどが大振りになるぞ?攻撃に使わなくてもせめて受け流すか防ぐぐらいしとけ」

 

一海「大会で優勝した君が羨ましいよ。僕だってそうしたいけど、難しくて…………」

 

剛力(そういえば雨野の奴、『昔行われた武闘会で最年少で優勝した』っつってたな……だったら俺必要なかったんじゃないのか?いや、ラインハルト先生が知らないだけか?)

 

司「カズミン、隙ありィ!!」

 

龍・一「「!!」」

 

 

一海が龍華のアドバイスを受けているのをいいことに、司は龍華を体当たりで突き飛ばすと、そのまま一海の腕をつかんだ。

突き飛ばされた龍華はそのまま壁に激突し、埋まってしまった。

 

 

剛力「雨野ォォォォォ!!」

 

司「損して1本取れとはこのことかもしれねぇな。さっきは油断してたが、これで1対1の勝負ができるなぁ………?」

 

 

それを言うなら損して得取れだろう。司の顔はもはや別人のように歪み、同時に狂気的な笑みが表に出ていた。

 

 

ラインハルト(こいつは調子に乗りすぎて後で痛い目に遭うことを知らぬのか?まあいい、もし泣かせた上にさらに追い討ちをかけるような真似をした場合、私が直々に相手をしてやるとするか………)

 

 

司の別人のような顔を見た一海はもはや泣きそうな顔になっていた。

 

 

一海「は、離し…て………」

 

司「あ?」

 

一海「離してよ!!

 

 

 

グワキィィン!!

 

 

 

司「ガアアアアアアアア!!?

 

龍華「カズミン!?」

 

 

恐怖に耐えきれなくなった一海が司の股間を蹴っていた。

同じ頃、壁から抜け出した龍華がその光景を見てしまった。あの時と同じだ。自分の兄貴的な存在の龍哉が宇佐間の股間を蹴る光景が、今自分が見た目の前の光景と完全に一致している。

よほど怖かったのか、飽き足りないのか、一海は司に追い討ちをかけるように股間を何度も蹴っていた。

 

 

一海「これでもか!!これでもか!!」

 

司「ごわっ!!ギャイン!!」

 

剛力「藤井!ストップストップ!竜宮寺の股間蹴りすぎだ!」

 

 

剛力が一海を止めようとする中、真っ先に駆けつけたのは龍華だった。

急に現れた龍華に何が起こったのかわからないような表情をする剛力には気づかず、そのまま一海を羽交い締めにする。

 

 

龍華「よせカズミン!司のライフが0から振り切ってマイナスになっちまう!」

 

一海「だって…だってぇぇぇぇ!!」

 

 

だって怖かったんだもんと言いたいが、途中涙で言葉が詰まってしまい、その上一向に司の股間を蹴るのをやめない。

それを無言で見ていたラインハルト。何も言わぬまま武道の授業が終わった時同様上着のボタンを外し、めくる。下のTシャツに書かれていた言葉は―――――

 

 

 

 

 

【誰か止めてやってくれ】

 

剛力「ラインハルト先生!?藤井はラインハルト先生の弟子でしょ!?」

 

 

ラインハルトは無言で再び上着をめくる。

 

 

【どう止めろと?】

 

 

上着の中のTシャツがいつの間にか別の言葉が書かれたものに変わっていた。

 

 

剛力「いつの間にTシャツ変えたんですか!?」

 

【さっきです】

 

剛力(この人ひょっとして自覚ないのか!?もしそうならさっきみたいなTシャツ着て出かけているのを想像したら…………………ダメだ、考えたくねぇ!!想像しただけで寒気がしてきたァァァァァァァァァ!!

 

司「ぐぎゃああああああ!!」

 

龍華「カズミンンンン!!マジでヤメルルォォォォ!!」

 

 

ようやく止まった頃には一海は龍華に抱きつきながら泣きじゃくり、蹴られ続けていた司は泡を吹きながら気絶していた。


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