異生神妖魔学園   作:さすらいのエージェント

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やっぱり長時間逃走は肉体的にきつい

紺子「絶対見つからないって一生言ってたのにぃぃ!!あのクソ化け狸チクショー!!」

 

 

教室のカーテンの裏に隠れていた紺子だったが、鬼に足をつかまれていた。紺子は引っ張り出され、肥満体の鬼『関取』の餌食になろうとしていた。

関取は紺子の両足をしっかりつかむと、周りに置かれている机など気にせずそのままぶん回す。ジャイアントスイングだ。

 

 

紺子「イギャアアアアアアァァァァアアァアアアァァァァアァアアアアアァァァアアアァ!!!!

 

 

景色が回転しているように見え、机にも何度も頭をぶつけ、スカートも上半身が隠れるほどめくれてパンツが丸出しになる。やめてと必死に叫ぶと、関取はそのまま手を放した。いや、投げ飛ばしたと言った方が正しいだろう。

紺子は教室の外まで投げ飛ばされ、そのまま壁に突き刺さった。隣には屋内消火栓があったが、もし投げられた位置が悪ければ紺子にとっても投げた関取にとっても大惨事となっていたかもしれない。

関取は内心ホッとし、次の獲物を探しに行った。だが問題は壁に突き刺さって身動きがとれなくなった紺子だ。

 

 

紺子「ん~~~~~~!むお~~~~~~!(抜けないよ~!誰か助けて~!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荒狂「人のunhappyを笑うなんて、いけない子ねぇ♡」

 

一生「そ、そんな!何で荒狂先生まで!?」

 

 

別の場所では一生が荒狂に詰め寄られていた。

ことのきっかけは少し遡ると、隠れ場所を探していたライバルの紺子と偶然合流した。

 

 

一生『あっ、紺子!』

 

紺子『一生!ライバルのお前が何の用だ!?まさかこんな時に勝負しろとでも言うのか!?』

 

一生『待て待て待て待て!お前が何回捕まったのかはわかんないけど、俺とお前の仲は悪いけど一旦休戦ってことでどこに逃げるか話し合おうよ!』

 

紺子『………そんならしょうがねぇや』

 

 

一生は紺子に教室のカーテンの裏に隠れた方が見つからないと伝え、言われるがままにそこへ隠れた。ところが鬼に見つかってしまい、紺子の悲鳴が教室の外まで聞こえてきた。

そして今に至る。紺子の悲鳴を聞いた一生は自分のライバルが鬼に捕まったことに笑っていたが、そこへ荒狂が近づき、彼の肩を優しく叩いたのである。

 

 

一生「あ…あ…荒狂先生も鬼なんですか………!?」

 

荒狂「That's right.いくらライバルでも人のunhappyを笑うのはどうかと思うの。鬼役として教師として、一生ちゃんにはpunishmentを与えます♡」

 

一生「ちょ―――――」

 

 

 

ズキュウウウン!!

 

 

 

しゃべる間もなく優しい笑みを浮かべた鬼役の荒狂による気持ち悪い接吻を受けた一生であった。

接吻が終わった頃には一生はすでに気絶していたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって、食堂。ここに運悪く鬼に遭遇してしまった生徒がいる。

ここでも4人の鬼たちが厨房から出現していた。彼らの胴体にはそれぞれ『からみ(長男)』、『さんみ(次男)』、『にがみ(三男)』、『あまみ(四男)』と書かれていた。味覚に関する四兄弟だろう。

 

 

ワコ「嘘嘘嘘嘘!ワコを捕まえても楽しくないよ!ほら、ワコ背低いじゃん!身長90センチの低学年だよ!この学園の生徒じゃ―――――」

 

 

バレバレの嘘をつくなと言わんばかりに味覚四兄弟はワコを捕まえ、椅子に座らせると、両手足を縛って拘束した。

それからからみ(長男)がここに残り、弟たちは食堂を走り去った。からみ(長男)がテーブルに用意したのは激辛料理のフルコースである。

まさかこれを食べなきゃならないの!?ワコが悟ると同時に青ざめた。そう、食堂に現れた味覚四兄弟はターゲットに辛いもの、すっぱいもの、苦いもの、そして甘いものを食べさせる鬼の四兄弟。特に長男であるからみは辛すぎるあまり暴れないように弟たちと協力して拘束した後、辛いものを食べさせるのである。

 

 

ワコ「ホガァァァァァ!ハワァァァァァ!!」

 

 

開口器で口を強制的に開けさせられたワコはからみ(長男)によって嫌というほど無理矢理激辛料理を口に運ばれた。

 

 

ワコ「ボハァァァァアアアアアアアアアア!!!!

 

 

あまりの辛さに涙目になり、口に入れたものが吹き出される。

口からは唾液が垂れ、それを見たからみ(長男)はますます興奮。どんどん激辛料理をワコの口へ運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方でからみ(長男)の弟たちは手分けして獲物を待ち伏せして捕らえる作戦に出た。さんみ(次男)は職員室、にがみ(三男)は音楽室、あまみ(四男)は秘術室へ向かう。

しかし、生徒たちの中で唯一捕まっていないのが1人だけいた。2年の運動神経抜群の蒸気機関車の付喪神、ディーゴだ。

 

 

ディーゴ「でもなぁ………いくら運動神経抜群の俺でも……長時間走りっぱなしはきついわい…………」

 

 

息を荒らげながら呟いたが、下を向いて走っていたため目の前の誰かに気づくことはなかった。

頭突きするようにぶつかってしまい、その相手に謝ろうとした矢先、全身から血の気が引いた。それもそのはず、立っていたのは先輩でも後輩でもなく………。

 

 

ディーゴ「はっ……はあぁっ………ああ…っ……」

 

 

胴体にローラースケートと書かれた()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディーゴが鬼に捕まったその頃、アルケーによる悪臭の犠牲者が再び現れた。

 

 

司「校長も学園長も鬼になってるだと!?」

 

 

あの後意識を取り戻し、トイレから出て水飲み場でクリームまみれになった顔を洗っているところを校長のおへそに羽交い締めにされたのである。

恐怖に震える司にアルケーは優しく微笑みながらスカートをめくり、腹とパンツを見せつけた。

 

 

司「ダメだこの校長…完全に女を捨ててやがる…!」

 

アルケー「別に殴ったりしませんよ?司君には私のおへその匂いを嗅いでもらうだけです…♡」

 

司「いつも笑ってるけど何考えてるかわかんねぇことあるからもはやその笑顔も恐怖にしか見えねぇ!?」

 

 

アルケーは何のためらいもなく自分のへそに指を突っ込んでグリグリ動かした後、竜奈同様臭くなった指を司の鼻へ近づける。

 

 

司「グッゼェェェエエエェェエエエエエェェエェエエエエェェェェェェエェェェ!!!

 

稚童「だ、誰の声!?」

 

 

別人のように顔を歪めながら悶絶する司。その悲鳴を聞いて駆けつけてきたのか、アルケーと校長のおへその足元で倒れている司に稚童が絶句する。

校長のおへそは素早く稚童の気配を察し、素早く羽交い締め。アルケーはスカートをめくったままの状態で稚童に近づき、へそに指を突っ込んだ。

 

 

稚童「まさか……さっきの悲鳴って……」

 

アルケー「嗅・ぎ・な・さ・い♡

 

稚童「これのことかァァァァァァァァァァァ!!!

 

 

想像を絶するほどの匂いを嗅がされ、司同様悲鳴をあげながら悶絶したのであった。

2人が倒れてしばらく時間が経ち、再び鬼の追加を知らせる校内放送が流れた。

 

 

校内放送『デンジャラス・逃走中、開始45分経過。鬼、増量します』

 

 

普段ならその5分後には授業終了のチャイムが鳴っている。しかし、その日は違った。

次に現れたのは『犠牲と献身』、『笑』、『一本釣り』。3人は校舎へ入ったが、一本釣りはフックつきの釣竿を持っているので、強いて言えば鼻フック。他の鬼が捕まえた獲物の鼻を2階から引っ張り上げるつもりでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紺子「~~~~~~~~~!」

 

 

同じ頃、紺子はまだ壁に突き刺さったままだった。そこへ何度も鬼に捕まって満身創痍となった辰美が通りかかった。

 

 

辰美「紺子様、今助けますわ!」

 

 

満身創痍で校舎をフラフラと力なくさまよっていたが、壁に突き刺さった紺子を見るなり急に元気になり、ものすごい力を発揮。すぐに紺子を壁から抜いてしまった。

はずみで背後にある別の壁にぶつかったが、気にしない方へ。紺子の安否を確認するため声をかける。

 

 

辰美「しっかりしてください紺子様!大丈夫ですか!?何があったんですか!?」

 

紺子「一生に騙された………カーテンの裏に隠れてたら黒いデブに捕まってぶん回されて…………」

 

牙狼「あっ、紺子!それに辰美まで!やっと見つけた!

 

 

すぐ近くでノイズのような声が聞こえる。振り向くと、そこに立っていたのは銀の体毛が生えた狼男。だがその目は紺子にとって見覚えがある。

狼男を見た辰美は腰を抜かし、紺子は狼男の正体がわかった。これは牙狼だ、と。

 

 

紺子「牙狼……!」

 

辰美「へ!?この人牙狼さんだったんですか!?てっきり別の鬼かと……!」

 

 

信じられないというような目をする辰美だったが、狼男の正体が牙狼だと知った時には心底ホッとしていた。

 

 

牙狼「2人共こんなにボロボロになっちゃって……実は僕もそうなんだ。僕も何回も捕まっているうちに『鬼は倒せる』ってアナウンスを聞いて、僕も負けてられないと思って狼男になって身を守ってたんだ。周りから怖がられるのを覚悟してね……それでも僕を捕まえようとする奴はいたね

 

辰美(これ………私必要なさそうですね。紺子様と牙狼さんだけにしておいた方がよさそうですね………)

 

 

複雑そうな表情をしながら辰美は紺子と牙狼から離れた。

 

 

牙狼「僕はこれ以上紺子たちがボロボロになるのを見たくない。君だって思ってるよね?こんなレクリエーション廃れちまえって。全員は守れないけど、紺子。君だけはこれ以上こんな目に遭ってほしくない。幼馴染みの君を守れるのは僕しかいないんだ

 

紺子「……………///////」

 

 

話している途中ディーゴの悲鳴が聞こえたような気がしたが、全く気にも留めていなかった。

紺子は顔を赤らめながらそっぽを向きながらこう言った。

 

 

紺子「べ、別に私は誰にも助けなんか求めてねぇよ……辰美は私が埋まってたところをたまたま助けてくれただけで、鬼は倒しても倒しても復活するし、逃げ道もほとんどないし…………///////」

 

牙狼「ダメだよ、そんなネガティブになっちゃ。僕がいるじゃないか。僕という強い味方が。いつまでも恥ずかしがってちゃ何にもならないでしょ?足止めできるだけでも十分だし、一緒に逃げようよ

 

紺子「………牙狼………私……私…………」

 

 

言葉を続けようとしたその時、辰蛇の声が聞こえてきた。

声がした方向に顔を向けると、後に続いて辰蛇から逃げる半べその冷火が。

 

 

辰蛇「ああ~~~~、かわいいかわいい冷火ちゃ~~~~ん!!!お願いだからパイタッチさせてちょうだいよ~~!!!超一瞬だから!!!超一瞬で終わるから~~~~~!!!!

 

冷火「もう勘弁してくれー!!!いつまで私を追いかけやがるんだァァァァァァ!!!諦めて違う奴探そうって思わねぇのかよォォォォォォォォ!!!

 

辰蛇「だって一度触るって決めたら絶対触れって私の本能がそう言ってるんだもおおおおおおおおおん!!!!!お願い冷火ちゃん、触らせてちょうだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!

 

 

辰蛇に追いかけられている冷火に紺子と牙狼は唖然。明らかに予想はついているが、共にこう口に出す。

 

 

紺・牙「「学園長、絶対終わったな」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校舎から出てグラウンドに出た冷火だったが、辰蛇はまだ追いかけてくる。だが辰蛇は紺子と牙狼が予測していた天罰が下るとは全く考えてもいなかった。

 

 

冷火「あっ!」

 

 

グラウンドの真ん中に差し掛かった瞬間つまずいてしまった冷火。もう逃がさないといういやらしい目つきで冷火の胸を触ろうと構え、ジリジリ近づく辰蛇。

 

 

辰蛇「もう逃がさないわよ~ん♡でも大丈夫、一瞬触るだけですぐ終わるからね~♡

 

 

ところが、これから自分に天罰が下ることに辰蛇は気づいていなかった。

背後から家庭科の教師にして冷火の母親、燐斗がものすごい形相で迫ってきていたことを。

 

 

燐斗「キイイイイイイサマアアアアアアアア!!!!

 

辰蛇「ヒデブッ!!?

 

冷火「!?」

 

 

娘思いの燐斗による怒りの飛び膝蹴りが辰蛇の顔に直撃!

 

 

燐斗「執拗にうちの娘追いかけて挙げ句には胸触ろうとか何考えdjdjmjapaegdrg3rjpagdi4mg3mg6mkjvdg12!!!!

 

 

怒りのあまり呂律が回らない燐斗。何しろ辰蛇があの親バカの娘に手を出そうとしていたのだ。

それもそのはず、誰であろうと禁じられていることをするなど燐斗にとって言語道断。ここまで怒り狂ってもおかしくないだろう。

 

 

冷火「お、お母さ―――――」

 

燐斗「あらあら冷火、怖かったでしょ?こんなにかわいいあなたを傷つけるわけにはいかないからね♡ここはお母さんに任せて♡」

 

 

怯える冷火に燐斗は娘をなでながら笑顔で言い、再び辰蛇の方を向くと鬼のような形相になる。

 

 

燐斗「ド変態野郎、娘に手ェ出したらどうなるかァ、体で教えたるわァ!!!!覚悟決めろやゴルァァァァァァァァァァァァ!!!!

 

 

何と説明すればいいのだろうか、言葉では表せないほどの暴力が辰蛇を襲う。

背後から冷火が見ているが、辰蛇から血が飛び散っているのがよくわかる。いつも過度な愛情を注がれているのはまだいいが、私を助けたいがためにそこまでするか?今日の母親は本当に別人にしか見えない。その別人のような母親を冷火は見ながらよけい青ざめ、そして怯えていた。

 

 

燐斗「ぐだばべぇええぇぇぇええええぇえぇぇえええええぇぇぇぇえええ!!!!!!

 

辰蛇「ビョアァァァァァアァアアァアアァアアアアアァァァアアァ!!!!

 

 

地面には血が広がっていき、返り血を浴びる燐斗の着物は真っ赤に染まっていく。

 

 

燐斗「この変態クソゲス最低エロスケベババア野郎がァァァアアァアアァァァアァァアアアアァアアァァァァ!!!!!!

 

辰蛇「■※☆×Ω∞♂ω*℃♯◯〆@¢∃∝∠⊥¥◇±Å√△÷∬≦∂$%♀∥∴〒§;£仝∀⊆々ゞ∇□∧∽◎≡〃⇔‡!!!!!

 

 

 

 

 

辰蛇の声にならない悲鳴が止んだと思うと、グラウンドの真ん中には『喰輪辰蛇』と彫られた墓石が建てられていた。

墓石の周りに辰蛇の血が広がっているが、無論燐斗は気にしない方向へ。それから怯えている冷火へ駆け寄り、怯えている彼女をなで、微笑みながら優しい声をかける。

 

 

燐斗「あ~、私のかわいい冷火…♡あの変態学園長にいつ待ても追いかけられて怖かったね…♡」

 

冷火(学園長より私を思いすぎてこんなに返り血浴びるほど【自主規制】したお母さんが一番怖ぇよ!)

 

 

しばらく優しい声をかけながら冷火をなでていた燐斗だったが、突然不気味にニヤリと口元を歪めると同時に目が怪しく光った。

 

 

燐斗「………かかったわねぇ♪

 

冷火「え?」

 

 

腰周りになぜか燐斗の腕が絡みついており、気づいた時にはもう遅かった。

 

 

燐斗「ざーんねーんぴょーん!!実は私も鬼でしたー!!必殺ブレーンバスターーーーー!!!

 

冷火「■■■■■■■■■■■■■■■!!?

 

 

ブレーンバスターで地面に叩きつけられた。そう、燐斗が鬼役だったのには当然理由があった。

春休み、レクリエーションについての会議中、現在行われているデンジャラス・逃走中に決まったのはいいものの、もし辰蛇が鬼役になれば女子生徒の中でそのうち娘も被害に遭うだろうと推測。娘や他の教師たち及び、アルケーと辰蛇に内緒で自ら鬼役になることを決意。

そして今に至り、予想通り辰蛇が冷火を執拗に追いかけた。本能が働いたのだろう、『娘に手を出すなんて許せない』と全身の血が煮えたぎるほどの怒りがほとばしった。

助かったと泣きつくまでには至らなかったが、油断したところをブレーンバスターにかけようという悪巧みも頭に入れていた。結果、この様だ。

 

 

燐斗「…………黙っててごめんなさい。痛かったでしょ?ただあなたがかわいいだけで………逃げてる時の半べそが見たくって………それで鬼になろうと思ったの。でも学園長相手によく頑張ったね。お母さん嬉しいな」

 

 

燐斗の顔は笑ってはいるものの、目には涙がうっすらと浮かんでいた。

娘にブレーンバスターをかけたせいで嫌われることは間違いないとも少々不安を抱えているが、それでも気絶した冷火を表情を変えずになでながら褒めると、すぐにその場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来転「お……俺はなんてものを見てしまったんだ………くっ、殺せ………!」

 

 

運悪く近くに居合わせ、この惨劇を目の当たりにした来転が背後の壁に張りつき、恐怖で震えていた。

グラウンドの真ん中に建てられた墓石とその周りに広がる血、ブレーンバスターを決められて気絶した冷火。もし自分があんな目に遭っていたらどうなっていたか想像するだけで鳥肌が立つと共に、冷や汗が地面に滴り落ちた。

だがこの後一本釣りによる鼻フックを受けるとは1秒たりとも予想していなかった。上から釣り糸に結ばれたフックがゆっくり、またゆっくりと来転の鼻の下まで垂れていく。この時来転は周りの警戒はしていたが、上方までの確認はしていなかったのだ。

 

 

来転「…!?」

 

 

ようやく垂れ下がるフックに気づいたが、時すでに遅し。フックが鼻の穴に入り、そのまま一気に上へと引っ張られた。

 

来転「ホガァァァァァァァァァァァァァ!!!ヒィデデデデデデデデデデデデデェェェェェェェェェェェェェェェ!!!

 

 

2階の一本釣りは来転の鼻がちぎれそうなほど引っ張り、来転は豚鼻になると同時に爪先立ち。悲鳴をあげながらフックを外そうとしたが、瞬間的に現れた他の鬼に羽交い締めにされたため不可能だった。

 

 

来転「くっ!!ホオ()()ェェエェエエエエエェェェェエエェェエエエエェ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

職員室、音楽室、秘術室でも同じ頃、男女それぞれの生徒たちがからみ(長男)の弟たちによる被害を受けていた。許人と高見はさんみ(次男)に梅干し、藤一はにがみ(三男)にゴーヤ、そして美弥妃はあまみ(四男)によってお菓子を大量に食べさせられていた。

さらに気絶していた司も起き上がった瞬間、おはようと言わんばかりに目の前に『犠牲と献身』と書かれた鬼がおり、絶句。必死に抵抗するも、むなしく紐で結ばれた大量の風船と空き缶を腰に巻かれたのであった。犠牲と献身が去った後、ローラースケートを履かされたディーゴ、盾子、ハイカラ風の制服を着た3年の先輩と合流する。

 

 

ディーゴ「司…ってどうしたんだその風船と空き缶!?」

 

司「ディーゴ、盾子、清花先輩……人のこと言えねぇが散々な目に遭ったみてぇだな…俺様なんかもっとひでぇぞ?トイレの個室にパイ持った鬼がいたんだよ!」

 

清花「トイレにも鬼!?嘘でしょ!?」

 

盾子「あ、それ私も見かけましたよ。遠くで鬼が3人トイレに…」

 

 

清花という少女が驚き、盾子が目撃情報を口に出す。

 

 

司「しかもそれだけじゃねぇ。顔洗ってたらまた違う奴に捕まっちまって、なぜか校長がいたんだよ。そしたらパンツ見せつけてきたと思ったらへその穴に指突っ込んで、その指の匂いを嗅がせてきやがった!何日風呂に入ってないんだって言いたくなるほど臭かったぜ…………」

 

ディーゴ「鬼の中に校長と学園長も混じってるってのは聞いてるが、そこまでやるか?廊下がすっぱ臭かったのはあれ何なんじゃろ……」

 

清花「ていうか司、そんなのつけられて目立たないの?ずっとここにいたら僕たちまで巻き添えに…」

 

司「あーーーっ!そうだった!さっき起きたらまた近くにいてな、これつけられたんだよ!頼む、俺様と一緒に逃げてくれないか!?」

 

 

風船と空き缶を振りながら頼むが、3人は一斉にこう言い放った。

 

 

ディ・盾・清「「「絶対に嫌です」」」

 

司「おい、何でだよ!?俺様と逃げると問題があるってか!?」

 

ディーゴ「ありまくりじゃボケ!そんなのつけたお前と一緒に逃げたら必ず俺たちまで巻き添えになるだろうが!」

 

清花「司君、ホントは君のこと助けたいけどあの鬼だし、手の施しようがないから逃げさせてもらうからね」

 

盾子「絶対私たちに近寄らないでよ?」

 

司「近寄んなだぁ!?おいコラふざけんな!別に助けてくれてもいいだろうが!こんなに土下座してんだぞ!」

 

清花「してないじゃん!てか、それが人にものを頼む態度!?よけい助けたくなくなるよ!」

 

 

3人は被害に遭わないようにすぐに階段を降りるが、司はすかさず3人を追いかける。

 

 

 

ガランガランガラガラガラガラ

 

 

 

空き缶を引きずる音が響き、司は全く気にせずディーゴたちを追う。その音を聞いたディーゴたちはますます逃げ足を速めた。

 

 

ディーゴ「ちょ、おま、うるせぇな!」

 

盾子「走ったら音で見つかっちゃうよ!お願いだから来ないで!」

 

司「うるせぇぇぇぇぇ!!黙って俺様を助けろォォォォォォォォ!!

 

清花「ディーゴ君、足速すぎて僕たちついていけないよ!」

 

ディーゴ「だってあんなのと一緒に餌食になりたくないですもん!ローラースケート履かされてからいろんな鬼に捕まりましたもん!」

 

盾子「で、それ脱げたの!?」

 

清花「僕に任せたら脱げたよ!」

 

 

逃げているうちに司が鬼役の教師に捕まるとは3人は思ってもいない。

それもそのはず、荒狂が笑顔で猛スピードで追いかけてきているの様子が風船で遮られて見えないのだから。

 

 

司「助けねぇんならお前らも巻き添えにしてやルルァァァァァァァァァァァァ!!!

 

荒狂「ダ~メよ司ちゃ~ん♡」

 

 

 

ガシッ

 

 

 

司「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!この俺様がオカマに捕まるだとォォォォォォ!!!

 

ディーゴ「天罰だよバーカ!」

 

 

荒狂に捕まった司は絶叫し、ディーゴが振り向いて彼をバカにすると、盾子と清花と共に校舎から出ていった。

 

 

荒狂「人を巻き込もうと追いかけて、態度がなってなかったあなたにはpunishment……私のキスを受けてもらうわ♡」

 

司「や、やめてくれ…!ファーストキスの相手がオカマとか…俺様そんなの絶対―――――」

 

 

 

ズキュウウウン!!

 

 

 

問答無用で一生同様気持ち悪い接吻を受けた。気絶までとは行かず、トイレに入ればまたパイをぶつけられると思ったのか、その場で吐いた。

しかし吐き終わるなり荒狂は顔をグッと寄せると………。

 

 

荒狂「ゲロするならtoiletでしょ♡」

 

 

 

ズキュウウウン!!

 

 

 

司「■■■■■■■■■■■■■■■!!

 

 

2度目の接吻を与えた。同時に再び鬼が追加される校内放送が流れた。

 

 

校内放送『デンジャラス・逃走中、開始1時間経過。鬼、増量します』

 

 

プールの近くではちょうど綾野が鬼を数人撃退したところだった。

 

 

綾野「はぁ……いくら足止めしてもキリがありませんね。マスターが無事ならいいのですが……」


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