side春樹
エーちゃんの初めてのテニスの試合は俺のサーブから始まる。
と言うよりまだエーちゃんはサーブが打てないらしい。
エーちゃんはセンターにワイドとどちらにも対応出来る場所に意図してかしていないかはわからないが立っている。
「エーちゃん。」
「どうしたの春樹君?」
「この試合。俺はエーちゃんの経験になる為に全力でやるから少しでも多くの経験をつめよ。」
「うん!頑張るよ!」
とエーちゃんと話していると審判をしているなっちゃんが
「ハルちゃん!エーちゃん!話してないで早く始めて!」
と言われてしまった。
エーちゃんが始めて受ける試合のサーブは今後のどの試合よりもリターンが難しいサーブに、したい。
選択肢は3つ。
ワイドを大きく使う
アンダーのカットサーブ
センターに1番速くリターンが追いつかない
フラットサーブ
スライスにのみ力を入れてバウンドした途端にほぼ真横に跳ねる
スライスサーブ改
俺が試合中の流れをサーブから変えたい時に使おうと思っているとサーブだ。
「行くぞーエーちゃん!」
俺はそう言ってセンターに全力のフラットサーブを打つ。
そのサーブはセンターに決まりエーちゃんも反応してリターンをしようと走り出すが追い付かず金網に当たっていた。
「ハルちゃん!ナイスサーブ
・・・・・・15-0」
位置に戻って今度はどうするか考える。
エーちゃんにとっての2本目。
あえてリターンをさせて軽いストローク戦にする。
そこから大きく流れを変えよう。
威力を落としてエーちゃんの打ち返せる所にサーブを打ち込む。
そこからはしばらくストローク戦が始まる。
10回目が帰ってきた所でドロップショットを打つ。
エーちゃんは反応して打ち返してくる。
「チッ!」
しかも俺のいる所と対角線の所に
たまたまか!
いや。
アイツは俺のいる場所をしっかりと見ていた。
上手く打ち返せたのはまぐれだろうがまぐれだろうが入っている。
俺は全力で走りワンバウンドしたエーちゃんのリターンをロブで打ち返す。
エーちゃんがジャンプしても届かないギリギリの高さで。
エーちゃんはジャンプして
・・・いない!俺のロブの落下地点目掛けて一直線で走って行く。
その時、俺の勘警報を鳴らした。
これで点を取られてはいけないと。
そして俺に向かって強烈なストロークが帰ってくると。
ここからはエーちゃんの為に直感に任せるのもありだな。
ここからのエーちゃんとの試合は圧倒。
試合を終えてスコアを見ると1度もポイントを許していない事がわかる。
この感覚。
そうちゃんとの試合以来だ。
楽しかった。
初心者のエーちゃんがもしかしたら前になっちゃんの言っていた。
「俺とそうちゃんに勝てる相手」
になるのかもしれないな。
俺はそう思うと同時にこれからは1度も負けられないと思った。
なっちゃんとの帰り道。
「ハルちゃん、エーちゃんとの試合、楽しそうだったね。」
と俺に笑顔を向けて言ってきた。
「ああ。楽しかった。まさか初心者相手に本気になるとは思わなかった。けどアイツはいつか俺とそうちゃんのいいライバルになるな。」
俺はそう確信してなっちゃんに
「俺は日本でやっていてよかった。あの時そうちゃんとアメリカに行かなくてな。ここでもプロの試合には出られる。」
と俺が言うと
「ハルちゃん!」
と俺に言ってくる。そして笑顔で
「ハルちゃんも頑張ろうね!エーちゃんに負けないくらい!」
「これ以上やれって事だよな。」
「ハルちゃんにはハルちゃんのやり方があるでしょ?」
「そうだな。そうちゃんにもエーちゃんにも負けないさ。これからもな。」
そう言って俺はなっちゃんの手を掴み帰ろうとする。
が
「ハルちゃん。少し寄って行きたい所があるんだ。」
と言っていたので着いて行くことにした。
着いたのは
服屋。
「ハルちゃん。今度の大会が終わったら久しぶりにデートで1日使おうよ!」
と言ってきた。
「いいな。行こうか。一緒に優勝したらな!」
デートの約束とその時になっちゃんが着る服と俺の服を2人で選んで帰ったのだった。