はいすくーるDxD 平穏(笑)な日常   作:鶏唐

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虎徹→ボケ
半蔵→ボケ
琢磨→悪乗り
明日菜→天然

誰か突っ込みを、突っ込みのリアス早く来てー


第49話 紅き魔の館 探索

「ちっ、何処に行きやがった」

 

「殿。こういった場合、一度落ち着いて考えるのでござる」

 

 

半蔵の言葉に足を止める。

途中で十字路に差し掛かり他の連中とは別れた。

さすがに一人だと危険なので半蔵の分身を連れて行かせた。

なので今は俺と半蔵(本体)、結城と半蔵(分身)、琢磨と半蔵(分身)で別れている。

 

 

「吸血鬼ってこんなに足が早いのか?」

 

「拙者も出会ったことが無い故に分からぬでござるよ」

 

「うーん、そのまま歩くのも芸が無い、困った時はコレだな」

 

 

ポンッと自身の能力である未だによく分からない本の群れを出す。

バアルのおっさんが何か言ってたような気がするがあの時は子供に構っていて聞いてなかった。

ともあれ、これで派手な爆発が起きれば吸血鬼も姿を現すだろう。

 

 

「さてっと・・・あれ?」

 

 

適当な本を手に取ってパラパラと捲り勘に任せて止める。

開いたページに描かれている絵を床に持ってきていたチョークで描こうとしたところで気づく。

床は赤いカーペットが敷かれておりチョークでは描きづらい。

 

 

「しっかしこの館、外からも中からも赤いって悪趣味だな」

 

「うむ。あの娘っ子の趣味でござろうか」

 

 

やけに高級っぽい床のカーペットと言い、俺が描いている壁や天井に至るまで見事に赤一色だ。

あのちびっ子、よほど変な趣味をしているに違いない。

まぁ年の割に大人ぶった感じだったしな。相当捻くれているんだろう。

 

 

「描かないのでござるか?」

 

「いや、これ描きにくいんだよ・・・」

 

「ならば壁に描けばよいのでは?」

 

「おぉ、それもそうだな」

 

 

改めて壁に描こうとした時だった。

 

 

ドッゴーーーンッ

 

 

騒音と共に天井を壊して何かが俺達の目の前に落ちて来た。

衝突により舞い上がる煙で正体が分からない。もしかして吸血鬼?

やがてその煙が晴れた場所には・・・

 

 

「問おう、お主があちしのミスターか?我がグレートキャッツビレッジは永遠に不滅にゃ!」

 

「「・・・・・・・・」」

 

 

猫耳の生えた・・・何だコレ?

ぬいぐるみ?あ、いや妖怪か?

出てくるなりテンションの高い奴に俺達は思わず沈黙してしまった。

 

 

「にゃにゃ?ちょっと少年たち。アタシのような真のヒロインが遠路遥々来たのに何、この仕打ち。高級ネコ缶を所望する!」

 

 

俺達は無言で互いを見て頷くと目の前の奴を抱える。

すげー、なんだこの・・・何か!

見れば見るほど珍妙な姿だ。

 

 

「おっと少年、レディへのお触りは高くぜー。にゃにゃ!?」

 

「うはー、何だこれ何だれ!なぁなぁ耳取れんの?本物か?いや、妖怪かも、って事は搭城と同じって事か!」

 

 

ガクンガクンッ

 

 

「うおぉぉっ!?シェイク、圧倒的シェイク!セクシーキャットに劣情を催すのは仕方にゃいが落ち着き給え少年!」

 

「ずるいですぞ殿!拙者も触らせてくだされ!」

 

「少年二人を狂わせる自分の美貌が憎いにゃ!はっ!もしかしてここが理想郷(アヴァロン)!?」

 

「おぉ、見れば見るほど面妖な!オスでござるか?メスでござるか?」

 

 

変な動物、ぬいぐるみ、いやナマモノ。うん、ナマモノがしっくり来るな!

半蔵と二人でナマモノを弄り倒す。

 

 

「シャーっ!だがそこで甘えてはネコが廃る!」

 

「どわっ!」

 

「なんと!?」

 

 

突然、大人しくしていたナマモノが暴れ出し離れてしまう。

 

 

「やれやれ少年。見知らぬ人を弄ってはいけにゃいと習わなかったのかにゃ」

 

「人じゃないから問題ないよな」

 

「シャラップ!あちしはいいのだよ。きっと」

 

「納得いかない・・・まぁいいや、なぁナマモノ」

 

「こんな麗しいネコを見てナマモノとは。目が腐ってるんじゃないかにゃ」

 

「ナマモノ殿、いやナマモノ嬢・・・ナマモノはどうしてここに来たでござるか?」

 

「性別すら否定!?にゃんと失礼にゃニンジャ。どこぞの割烹着も真っ青」

 

 

つい興奮してしまったが半蔵の言ったように、このナマモノは何で天井から降って来たんだろうか?

 

 

「いやアレよ?英霊が嫌う魔力を感じたから我先にとキャットの導きによって来たとか来ないとか、そんな感じにゃ」

 

 

言ってる事が意味不明だった。

えーれーってなんだよ。

俺達が首を傾げているとナマモノは俺の足元に散乱している本を見た。

 

 

「にゃるほどにゃー、これが魔術王の魔力の正体かにゃ。アタシとしたことが勘違い、許せ!」

 

「よく分からんが許さん。ナマモノ()遊ばせてくれたら許してやる」

 

「ネコ権侵害!?高級ネコ缶を奢ってくれたら、その案乗ってあげにゃくもにゃい」

 

「マジで!?半蔵、ちょっとネコ缶買ってきてくれ」

 

「うむ、その際には拙者もお供させてくだされ!」

 

「あっれ意外に好意的?いつのまに好感度稼いだのかコレガワカラニャイ」

 

「・・・貴方達、これは一体どういう事?」

 

 

と、半蔵が買い出しに行こうとした時に俺たちに声をかけてくる奴がいた。

そこには腕を組んで笑顔ながらも頬が引きつっている十六茶の姿があった。

 

 

「にゃんとメイドまで完備とは今までの善行が報われたんじゃね?」

 

「そこのナマモノは置いて、誰がこんな事をしでかしたのかしら」

 

 

ナマモノを無視して俺達に問いかけてくる十六茶。

いつの間にやら手にはナイフを持っていた。

言われて周囲を見渡す。

天井が壊れ、瓦礫があたりに散乱している。

そして無視されたナマモノが壁で爪とぎをして赤い壁紙が剥がれていく。

 

 

「「そこのナマモノです」」

 

「そう。ナマモノは生ゴミで捨てないとダメね」

 

「まさかの裏切り!?あちし達の愛はその程度だったのいうのかねチミ達!」

 

 

俺は半蔵と一緒にそう返しながら本を回収した。

ナマモノは不満なようでこちらへと訴えてきた。

 

 

「大丈夫。ちょっとナイフが額にオプションとして付いてくるくらいだろ」

 

「うむ。その程度でナマモノの面白さは損なわれるどころか強化されるでござるよ」

 

「この今が面白ければ明日の事は考えない。ハッ!アタシと同タイプのスタンド!?」

 

「どうでもいいけど客人なら大人しくして頂戴。それ以上騒ぐなら侵入者として対処させてもらうわ」

 

 

何て心の狭いメイドだろうか。

琢磨のところのティセを見習えよ。

 

 

「ハッ!SOS信号キャーーット!しーきゅーしーきゅー、待ってろにゃ幸薄そうな知らないけど知ってる人、今助けに猫が行くー!」

 

 

妙な叫び声の後、足からジェット噴射を飛ばしながら上へと昇っていく。

そのまま天井をぶち抜いてキラリと輝きを残して消えてしまった。

 

 

「あっ!ちくしょう、逃げられちまった!追いかけるぞ半蔵!」

 

「さすがに無理でござるよ。殿、諦めるでござる」

 

「くぅっ!千載一遇のチャンスを逃してしまった。また何処かで会えねーかなぁ」

 

「結局何だったのよ。ともかく貴方達が原因っぽいから片付け手伝いなさい」

 

「うーん、吸血鬼も出てこなかったし仕方ないか。いいぜ手伝ってやるよ十六茶」

 

「十六夜よ」

 

 

吸血鬼誘き出し作戦は失敗してしまったため、十六茶指示の元で瓦礫の撤去を始めた。

こうなれば琢磨と結城が捕まえてくれることを祈るだけだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ・・・・・・」

 

「・・・貴方は館の中を駆けまわったりはしないのね」

 

 

皆と別れ幾つか曲がり角を曲がったそこは来たことのある図書館だった。

僕は体力方面よりも頭脳方面が性に合っているので吸血鬼に関する本を読んでいた。

ノーレッジさんは読むのを止めたのか手にしていた本を閉じてこちらに話しかけてきた。

 

 

「僕が走ってもすぐに体力が尽きてしまうからな。こうして虎徹達のサポートに回らせてもらう」

 

「そう。騒がしくしなければ別にいいわ」

 

「護衛も問題が起きなければ騒がしくしないと約束しよう」

 

 

一応彼女も吸血鬼の疑いがあるのだが司書の子亜隈さんとココにいたとのアリバイがある。

二人とも吸血鬼であるという可能性もあるが今回は事前にナインボール=セラフを護衛につかせてあるので読書と会話に専念する。

ついでに半蔵の分身には別の場所を探索させている。

 

 

「機械ねぇ。やっぱり世の中は進んでるわね、驚きだわ」

 

「僕としては魔法という不可解な過去の技術を研究するノーレッジさんの方に驚くがな」

 

「あら、技術である以上研鑽を重ねていく事は驚く事でもないでしょう」

 

「そうだが・・・先天的技能が必要な技術というのが気に入らないだけだ」

 

 

そう、何と彼女は魔女と呼ばれる魔法使いだったようだ。

彼女は魔法ではなく魔術と、よく分からない拘りを見せているが。

魔法とは現代で実現不可能な事象を起こす技術を魔法と呼ぶらしい。

今では1つ、又は2つしか存在しないとのこと。

まぁ、死者蘇生など嘗ては到底出来ないことが普通にあり得る今では実現不可能な事を探す方が難しいだろう。

 

 

「主観が大いに混じっているけどまぁ、いいわ。私も科学を多少齧ってみたのだけど意見を聞いてみたいわね」

 

「ほぅ。それは面白い」

 

 

魔女と呼ばれる科学と対極の立場にいるだろう彼女の言葉に興味を持ち、本から顔を上げる。

 

 

「小悪魔。相手をしてあげなさい」

 

「はい、パチュリー様」

 

 

そう言って姿を現したのは司書の子亜隈さん。

ノーレッジさんが何かを呟くと彼女の印象が変わる。

馬鹿な、この僕が今まで気づかなかっただと?

子亜隈さん、彼女は・・・サイボーグか!?

 

 

「ターゲット確認、排除・・・開始」

 

「戦闘モード起動します」

 

 

子亜隈さんの髪がふわりと押し上げられブースターが出現する。

手にはマシンガンにブレードが現れる。恐らくは魔術による転送技術だろう。

ナインボールも敵と認めたのか排除を始めようとするが、あちらの技術を見るためにも止める必要が無い。

そして僕は大会でも使用した周囲に被害を及ぼさないフィールドを張る。

ノーレッジさんも何かの魔術だろう。二人、いや二体を覆うような膜を張った。

 

 

「魔力を駆動エネルギーに変換した技術を転用したアーマードこあ、あなたの機体で何処まで闘えるか楽しみね」

 

「なるほど、大した技術だ」

 

 

魔力の存在は今でも僕にはどういったものか分からない。

しかし体内を巡るエネルギーを別のエネルギーに変換する技術を編み出した事は素直に称賛する。

科学を齧ったどころではない、恐らく彼女は魔術と科学の融合、言わば魔科学とでも言おうか。

その第一人者とも言えるだろう。

これは負けていられないな。最近、小島博士が新たな粒子を発見したと学会で報告していたな。

コジマ粒子と呼ばれるそれを特定の物質に供給することで安定した電気エネルギーへと変換される素晴らしい内容だ。

ただ生体活動に影響を及ぼす環境汚染源でもあるからまずはそこから解消していくか。

 

 

「そうは言うけど貴方の方も凄いじゃない。何よアレ、グレネードを空中で撃つなんて非常識にも程があるわよ」

 

「そのためのナインボールであり、AIでありハスラーワンだ」

 

 

AIハスラーワン。まっさらな人口知能を買い取り、1から育てた自慢のAIだ。

人の脳では成しえない速度で動態制御、相手の動向から瞬時に判断を行う事ができる。

そして機械と直接リンクしているからこそ可能な機動を成し遂げている。

図書館のような閉鎖的な空間で銃が飛び交いエネルギー刃が交差する姿を見て思いのほか興奮しているようだ。

ハスラーワンについては虎徹達にすら話したこと無かったと言うのに。

 

 

「さぁ、そろそろこちらも始めましょうか」

 

「・・・何?」

 

 

ナインボール達の闘いから視線を移す。

そこには立ち上がったノーレッジさんの姿があった。

彼女の言葉に僕はもしや、と言う思いと聞き間違いであるという思いから問いかける。

 

 

「まさか、闘うというのか?僕は戦闘などできないぞ」

 

「あら、私も喘息持ちよ。それに一般人に魔術をお披露目するわけないじゃない」

 

「それなら安心だ、とでもいうと思ったか。だとすれば闘う必要性は無いじゃないか」

 

 

日の光を浴びていない為か肌白く弱弱しくも見える彼女と相対するも僕は闘う気はこれっぽっちも無い。

僕の身体能力の低さは何よりも僕が一番自覚している。

その僕が断言しよう、僕は例え彼女であろうとも負けるだろうと。

 

 

「軽い遊戯だと思えばいいの。それだけ私も小悪魔の闘いに中てられたかしらね」

 

 

そう言って分厚い本を左手に、空いた右腕をぐるぐると回し始めるノーレッジさん。

そこで僕は違和感を持った。

何気なく身体を解すために腕を回しているのだろう。

しかし、どこか年季の入った腕の回し方だ。

 

 

「さぁ、行くわよ」

 

「は?」

 

 

彼女が声をかけた瞬間、気づけば僕は襟首を掴まれていた。

速いとかそういう問題ではない。

まるで彼女に吸い込まれるように僕は捕まっていたのだ。

そのまま非力な姿からは想像できない怪力で飛び上がりながら腕をぐるぐると回す。

当然襟首を掴まれている僕も無理やり周回運動をさせられる。

 

 

「ちょ、ちょっと待て!」

 

 

ドゴォンッ!

 

 

地面にたたきつけられ、僕はあっさりと意識を手放した。

 

 

「『投げは弾幕より強し』ンッン~名言よねこれは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、やっぱり広いなぁ」

 

「吸血鬼はどこに逃げたのでござろうか」

 

 

ひょいっと大きな壺の中を覗いたりして探しているけど見つからない。

私と服部君の分身で皆と別れた後2階に来ていた。

大体、姿が見えない相手を追いかけるのってどうなんだろう。

 

 

「そもそも何で私たち追いかけているんだったけ?」

 

「それは吸血鬼が逃げたからではござらんか」

 

「うん、確かに停電が復旧する直前に扉が開いた音を聞いたんだけど・・・」

 

 

どうもそこが引っかかる。

暗闇の中でスレイヤーさんとディオさんに挟まれていたシャロンさんをピンポイントで狙うなんて出来るのかな。

扉の手前にいた人を狙うのが普通なんじゃ・・・

 

 

「あれ?そういえば扉の音が聞こえたんだよね」

 

「うむ。それで誰かが出ていくのが分かり殿が追いかけようと」

 

「じゃあ入ってくる時は?」

 

「む?」

 

「入ってくる時の扉の音は聞こえなかったよ?」

 

「むぅ、言われてみれば確かに」

 

 

という事は吸血鬼は突然現れて停電の際にシャロンさんの血を吸ってそのまま部屋を出た事になる。

もしかして吸血鬼ってあの部屋にいた誰かなのかも。

 

 

ガチャッ

 

 

実は吸血鬼は近くにいたのかと推察していたところで近くの部屋の扉が開く。

思わず身構えて服部君の分身が私を庇うためか前に一歩出て手裏剣を構える。

そしてそこから出てきたのは・・・

 

 

「あなたたち、だぁれ?」

 

「わ、可愛い」

 

 

寝ていたのか目元を擦りながら金髪の小さな女の子がいた。

背丈はレミリアちゃんくらいで背中には宝石みたいな羽が生えている。

この子も妖怪の子かな?

 

 

「もしかして侵入者?」

 

「違うでござるよ。拙者達は怪しいものではござらん」

 

「うん、お姉ちゃん達ね。ちょっと人を探しているの」

 

 

女の子の前でしゃがんで視線を合わせて会話する。

目の前の女の子はきょとん、として首を傾げる。

吸血鬼が人でない事は分かってるけど目の前の女の子を不安にさせないように嘘をつく。

 

 

「んっと・・・あ、それシュリケン!という事はニンジャね!」

 

 

女の子の視線が服部君の分身が持っているものに注目して声をあげる。

眠そうな目が大きく見開き喜色満面な笑みで服部君の分身を見上げた。

 

 

「そうでござるが・・・娘っ子、お主もこの館の住人でござるか?」

 

「ワタシ、フラン。フランドール・スカーレットよ。ニンジャとお姉さんは?」

 

「拙者、服部半蔵でござる」

 

「私は結城明日菜っていうの。よろしくねフランちゃん」

 

「ワタシ、咲夜と魔理沙以外で動いているニンゲンを見るのって初めて!」

 

 

嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねるフランちゃん。

ニンゲンって言い方をするって事はやっぱり妖怪みたいだ。

でもそれって初めてじゃなくて3人目、4人目って言うんだと思うよ。

 

 

「ねぇねぇ、弾幕ごっこして遊びましょ!」

 

「え!?」

 

「なんと!?」

 

 

フランちゃんの提案してきた遊びに思わず私と服部君の分身は驚きの声を上げる。

弾幕ごっこ、ってあの弾幕ごっこだよね?

こんな小さな子が提案するには危なすぎる遊びに私はフランちゃんの肩に手を置いて説得する。

 

 

「ほ、他のじゃダメかな?ほらフランちゃんもまだ小さいから危ないよ?」

 

「むー!バカにして!ワタシだって強いんだから!」

 

「結城嬢、ここは娘っ子の言う通りにしてみてはどうでござろうか?もしや弾幕ごっこの英才教育を受けているかもしれぬ」

 

 

弾幕ごっこの英才教育って何だろう。

とは言えフランちゃんも考え直す気はないみたい。

丁度、高藤君からもらった高性能通信機もあるし・・・

これは普段高藤君が身に着けている転送装置の腕輪と同じ機能が付いている。

つまりは私達でも高藤君の倉庫にあるものを転送できるって言う事。

 

 

「分かった。けどルールは一発でも当たったら負けだよ?」

 

「うん、分かった。でもお姉ちゃんがコンテニューできないのさ!」

 

「大丈夫。遊びとなれば私だって手加減はしないから!」

 

 

バッと背にしている不思議な羽を広げて私達から距離を取るフランちゃん。

私は通信機から、高藤君の倉庫から弾幕ごっこに必要なモノを転送した。

 

 

「・・・え?」

 

 

現れたのは紫と青をベースとした機体、センチネルって名前だっけ?

そして核弾頭に顔が描かれたA-Bombって呼ばれてる・・・何だろ爆弾?

・・・が、全部で10体づつ。あれ、1体づつにしたつもりだけど桁を間違えちゃったかな。

まぁいいか。私や八代君でも全部で20体なら避けられるし何とかなるよね。

 

 

「え、あ、あの・・・お、お姉さん?」

 

「行くよフランちゃん!」

 

弾幕ごっこ、それは中学時代に八代君が考えた遊びであらゆるものを飛ばして避ける遊びだ。

いかに緻密に避けて進み、相手の目の前まで辿り着けるか。

目の前はもちろん、後ろや横、上空や地面から様々なものが飛び掛かってくる一歩間違えれば危険な遊び。

学校の先生公認で見事乗り切った生徒は1日授業が放免、宿題も無しというため挑戦する生徒は後を絶たなかった。

まぁ挑戦者以外の全員が弾幕を飛ばしてくるので達成者はほとんどいなかったけど。

 

 

「ちょ、ちょっと待って!これはさすがに・・・」

 

「総員、撃っちゃってーーっ!」

 

「にゃーーーーっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、ちびっ子と最初に出会った広間に集まった俺達。

が、集合してみれば何やら他の奴らの様子がおかしい。

 

 

「ぐふっ、あばらがイッたか・・・」

 

「やっぱり貴方達、侵入者じゃないかしら」

 

「あ、あはは・・・ごめんね咲夜。つい」

 

「つい、で館を壊されてたまりますか」

 

「東洋に来てニンジャに会えなくて落胆していたのに、まさか本物に出会えるなんて!これはもう運命だわ!」

 

「大げさでござるよ」

 

 

琢磨は何故か瀕死の重体だし、結城は十六茶に説教されている。

そして見知らぬボロボロな姿のちびっ子が俺の後ろに隠れて震えながら結城達を覗いていた。

更にはキラキラと目を輝かせて半蔵の周りをぐるぐると回っているこの館の、ちびっ子当主。

 

 

「なんだこれ。お前たち、人様に迷惑かけるなよ」

 

「虎徹に、言われたくは、無い」

 

「八代君に言われたくないよ!」

 

「貴方も館を壊した一人だという事忘れてないでしょうね」

 

 

俺が呆れて言えば非難が一斉にかかってきた。

琢磨や結城はともかく十六茶に言われるのは心外だ。

あれは俺じゃなくてナマモノのせいだってーの。

 

 

「で、お前は何時までひっついてるんだ」

 

 

グイッと俺の背後に隠れているちびっ子の襟首を捕まえ俺の視線まで持ち上げる。

大人しくされるがままに何故か怯えた目で俺を見ていた。

 

 

「ニンゲンって怖いのね。貴方も怖いニンゲン?」

 

「・・・はぁ?」

 

 

ちびっ子の言っている意味が分からない。

コイツも変な羽?が生えてるし妖怪らしいことは分かる。

が、何故俺達、というより結城に怯えているのか分かんねー。

また変な天然でもやらかしたか?

 

 

「何のことか知らねーけど、妖怪なんだろ?もっと太々しく構えていろよ」

 

「はっ、そうよフラン。スカーレット家の娘たるもの堂々と・・・あ、ニンジャ分身して分身!」

 

「そうせがまれるとむず痒いでござるな」

 

 

ちびっ子当主は良い事を言おうとして忍者の魅力に勝てなかったようだ。

俺は目の前のちびっ子を降ろして帽子の上から頭を強めに撫でてやる。

 

 

「わぷっ」

 

「おら、笑え。ガキなんて後先考えずに目の前の面白い事に首を突っ込んでいればいいんだよ!」

 

「う、うん。ありがと・・・でも!レディに対する扱いがなってないよ!」

 

 

そりゃそうだ、レディじゃねーし。

いや、レディだとしても扱い方なんて知らないが。

ともあれ、頬を膨らませているが元気になったようなんで手を離して全員を呼ぶ。

 

 

「結局、吸血鬼は見当たらなかったけど何処に行ったんだ?」

 

「あ、その事なんだけどね八代君」

 

 

結城の推察ではあの部屋にいた誰かが吸血鬼なんじゃないかと言う話だった。

うーん、確かに結城の言うように扉が開いたのは聞こえたが停電直後は聞こえなかったな。

 

 

「ここは名探偵虎徹の出番だな」

 

「迷う方、だよね」

 

「迷う方、だな」

 

 

余計な事を言う二人は放って俺は通信機の転送機能を使って琢磨の倉庫からあるものを転送する。

鹿撃ち帽にインパネスコート、後はくわえパイプと。

これぞシャーロック・ホームズなりきリセットだ。

 

 

「貸しなさい」

 

「あ、こら!返せ!」

 

 

早速身に着けようとしたところで、ちびっ子当主に奪われてしまった。

やけにウキウキとしながら、なりきりセットに身を包み、くわえパイプを口にくわえて俺達を見回す。

 

 

「よろしい。ならば私が見事事件を解決してみせましょう!」

 

「おい、コラ。あの場にいなかったくせに出来るわけないだろ」

 

「ふふ、今の私は安楽椅子探偵(アームチェア・ディテクティブ)、レミリア・スカーレットよ」

 

 

あ、あーむちぇあ?意味が分からないが凄い自信だ。

小さいナリで当主をしているだけあって実は凄く頭がいいのかもしれない。

 

 

「助手の貴方達から集めた情報を元に私が吸血鬼を見つけて上げるわ」

 

「お嬢様、またそんな思いつきで・・・」

 

「さぁ!この館に来て疑問に思った事は無いかしら?」

 

「図書館にいる肉体派魔女について」

 

「魔女ってパチェの事?彼女は動かない図書館とも呼ばれる引きこもりよ。肉体派だなんて言葉は対極に当たるわよ」

 

「・・・解せぬ」

 

 

魔女ってあの図書館にいたもやしっ子か?

琢磨、あいつにも負けたのかよ。どんだけ貧弱なんだ。

 

 

「あ、シャロンさんは大丈夫だったの?」

 

「シャロン様なら貧血程度で済んで今は別室でお休みになられておりますわ」

 

「そうね、咲夜と貴女は被害者から話を聞くといいわ。残った貴方達は容疑者から話を聞いてきなさい」

 

 

てっきり干からびるまで血を吸うのかと思ったけど手加減でもしたのかもな。

結城も思ったより大丈夫だと判断したのか胸を撫でおろしていた。

しかしこの館での質問ねぇ。

俺としてはあのナマモノについて聞きたいがたぶん知らないだろうしなぁ。

 

 

「・・・では拙者からも良いでござろうか」

 

「えぇいいわよニンジャ」

 

「事件が起こる前に、とある部屋に入った時に気になった事があったのでござる」

 

 

事件が起こる前に入ったと言えば図書館か?

だとすればその場で聞くだろうし・・・

分身でもして一足先に探索でもしていたんだろうか。

これは重要な情報かもしれない。俺達は真剣な表情で半蔵の話を聞く。

 

 

「それで何が気になったの?」

 

「うむ・・・ぴーえーでぃー、とは何でござろうか」

 

 


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