記憶をそのままに   作:雪楓❄️

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だいぶ、間が開いてしまい申し訳ないです。

先日の台風、皆さんは大丈夫だったでしょうか?


SAOのアニメが再開したこともあってやる気が出ているのでこれから少し更新頻度が上がるかと思います。


それではどうぞ!



第一層ボス攻略会議

「…………なんで逃げちゃったんだろ」

 

この世界を生き抜く上で、パートナーやパーティーメンバーがいるのとソロでは大きな差がある。そのうえ、キリトさんのような腕のあるプレイヤーならば尚更に。

とは言え、この容姿。簡単に受け入れられるとは思ってはいない。

かつてのあの世界ならば、何も思うことはなかったかもしれないが今は環境も世界も違う。

 

(…………それに、こんなもの持っているの当分知られる訳にはいかないもんね)

 

いつからあったのかわからないが、確実に私のストレージの中にその装備とスキルはある。かの世界で、私たちに剣術を教えてくれたあの人が持っていた唯一無二の装備。

勿論、今のステータスでその装備を使用することはできない。だが、それでもこの装備やスキルを持っているというだけでもこの世界では妬みの対象になるかもしれない。他にも持っている人がいるという可能性はないに等しく、当分は様子を見る必要がある。

 

「…よしっ、進もう」

 

立ち止まって居たところで何も進まない。そのうえ、現状私がトップランナーなのだからいつまでも立ち止まっているわけにもいかない。アルゴさんからの依頼の件もある、

私は大きく息を吸い大きく足を踏み出し前へと歩を進め始めた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

2ヶ月後

 

 

このゲームが始まってから二ヶ月。外部からの助けというものはなく、このゲームをクリアする以外に生き残る術はないことは明らかだった。

だが、私はもちろんのこと誰一人としてこの第一層から進むことは出来ていなかった。そして、今日漸く第1層ボス攻略会議が開かれる。

会議が開かれる広場には既に40名近いプレイヤーが集まっていた。その中にはキリトさんの姿もあった。

 

(たった、これだけ…………)

 

会議までの時間を考えてもこれ以上人が集まることはないだろう。

私は最上段の腰を下ろし会議が始まるのを待つことにした。

 

 

 

 

(…………漸くか)

 

迷宮区の攻略自体には、アルゴさんからの依頼もあり私自身あまり関われていないため文句は言えないのだが、第1層に二ヶ月と考えると100層攻略にどれだけの月日が掛かるのか考えたくもない。

 

「はーい!それじゃあ、そろそろ始めさせてもらいまーす」

 

青髪の如何にも好青年といったそのプレイヤーは、広場の中心に立つとそう宣言した。

 

「まずは、今日は俺の呼びかけに集まってくれてありがとう!」

 

「俺の名前はディアベル。職業は…………、気持ち的にナイトやってます」

 

その言葉に広場は笑いに包まれる。

ディアベルと名乗ったそのプレイヤーはたった二言三言でこの広場に集まったプレイヤーたちの心を掴んでいた。それは誰にでも出来るようなことではない。

リーダーとしての気質ともいえるそれはだれもが持っているものではないが、このゲームを攻略するためには必要不可欠なものでもある。

それはきっと私やキリトさんにはないものでもある。

 

「…俺たちのパーティーが今日、ボスの部屋を発見した」

 

その一言に笑いに包まれていた広場はどよめき、緊張感が戻った。当のディアベルも先ほどまでとは違い真剣な表情となっており、なおのこと彼のリーダーとしての気質が伺える。

 

「…………ここまで、二ヶ月も掛かった。それでも、俺たちの手でこのボスを倒して、このゲームはクリア出来るんだってことを”始まりの街”で待っている人たちに証明しなきゃいけないんだ!

それがここにいる俺たちトッププレイヤーの義務なんだ!

そうだろ?みんな!」

 

完璧ともいえる彼の演説に広場に集まっていたプレイヤーたちは奮い立たされている。ここまで完璧だと少しばかり恐怖すら覚えてしまう。タイプこそ違うが、そのカリスマ性は騎士長であったベルクーリ様に近しい物すら感じる。

 

「よし!それじゃあ、近くにいる人や仲間とパーティーを組んでくれ!フロアボスはソロや単なるパーティーじゃ攻略できない。だから、パーティーを集めたレイドを組むんだ!」

 

「えっ…」

 

その一言に私は絶句し、同時に焦った。

失念していたとは言え、突然パーティーを組めと言われたところでこれまでキリトさんとアルゴさん以外に関わりすら持っていない私にとってとってこれ以上ない問題なのだから。

そんな私を、置いて周りにいるプレイヤーたちはパーティーを組んでいく。

 

(…どうしたら…………)

 

「あの、お一人ですか?」

 

私が周りを見て焦っていると、一人のプレイヤーが声をかけてきてくれた。青いフードを被っているため顔は見えないが体つきや装備、声音から女性プレイヤーであることは判断出来た。

 

「あ、はい」

 

突然声をかけられたとはいえ、それしか返事が出来なかった自分が情けない。

 

「それじゃあ、パーティーを組んでくれませんか?私もソロなんです」

 

「あ、こちらこそよろしくお願いします」

 

女性プレイヤーで尚且つ、同じ境遇である彼女の提案を断る理由もなく私は快くその提案を受け入れた。

 

「あ、あそこも二人みたいだしちょっと行ってくるね?」

 

青いフードのプレイヤーは自己紹介をする前に、私たちと同じようにあぶれている二人組のもとへと行ってしまった。

 

それから、数分もしないうちに彼女は私の元へと二人を連れて来た。そのうちの一人がキリトさんなのがなんとも数奇的といえる。

 

「これで四人だね!」

 

私含め連れてこられたキリトさんともう一人のプレイヤーも、彼女のコミュニケーション能力の高さにただただ圧倒されるばかりで、みなポカンとしている。

 

「あ、そう言えば自己紹介がまだだったよね。私はフィリア!それでこっちの子が…………」

 

「私はロニエって言います。よろしくお願いします」

 

フィリアと名乗ったプレイヤーは私を紹介しようとするが、もちろん自己紹介すらしていない私のことを知っているわけもないので、自己紹介をした。

 

「俺は……」

 

キリトさんが自己紹介は、ディアベルさんの声によってとまってしまった。

 

「そろそろ組み終わったかな?それじゃ…」

 

「ちょお待ってんかぁー!!」

 

ディアベルさんの言葉を遮るようにして広場に降りてきたのは、イガグリ頭の男性プレイヤーだった。

そしてその男性プレイヤーの言葉は私やキリトさんにとって最も聞きたくない言葉だった。

 

「わいはキバオウっちゅうもんや。ボス攻略の前に言わせてもらいたいことがある!…こん中に、今まで死んでいった二千人に詫びいれなアカンやつがおるはずやで!」

 

「キバオウさん、君が言うやつとは…………元βテスターたちの事かな?」

 

怒鳴り上げているキバオウさんとは対照的に落ち着いた声音でディアベルさんは尋ねた。

 

「せや!β上がり共は、今クソゲーが始まったその日に”始まりの街”から消えよった。右も左もわからん九千人のビギナーを見捨ててな!奴らはウマい狩場やらボロイクエストやらを独占して、ジブンらだけポンポン強うなって、その後は知らん振りや!こん中にもおる筈やで!β上がりっちゅうのを隠してボス戦に参加しようとしてる小ズルいやっちゃがな!」

 

威圧するように大声で怒鳴り散らすキバオウさんに、広場に集まっている面々にも動揺が走る。

そして、キバオウさんは更に追い打ちをかける。

 

「そいつらに土下座さして、溜め込んだ金やらアイテムやらを全部吐き出してもらわな、パーティーメンバーとして命を預けられんし、預かれん!」

 

その言葉で広場の中ではお互いがお互いを疑うような言葉が飛び交い始め、目の前に座るキリトさんの背中は少しばかり震えていた。

 

(…………ビギナーとβテスターの穴を埋めるために、アルゴさんはフィールド中を駆け回ってあんな攻略本を作ったのに…これじゃあ…)

 

無償提供されているらしい攻略本はアルゴさんがβテスターたちから情報をかき集めて作っているもの。少なくともここに居るプレイヤーたちはその恩恵を受けているはずなのだ。それにもかかわらず、ここにいるプレイヤーにとってはβテスターは妬みの対象となってしまっている。

 

「少し発言いいか?」

 

そう言って立ち上がったのは、大きな男性プレイヤーだった。その背中に担いでいる斧が彼以上に似合うプレイヤーは中々いないと思えるほど大きな背中にキバオウさんも圧倒されてしまっているようだった。

 

「俺の名はエギル。キバオウさん、あんたの言いたい事はつまり、元ベータテスターが面倒を見なかったせいで多くのビギナーが死んだ。その責任を取って謝罪、賠償しろという事だな?」

 

キバオウさんはエギルと名乗ったそのプレイヤーに気圧されているが、それでもまだエギルさんを睨みながら反発するように言い返す。

 

「せや!あいつらが面倒見れば死ななかった二千人や!それもただの二千人ちゃうで!ほとんどが他のMMOじゃトップ張ってたベテランやったんやぞ!そいつらに金やらアイテムやら情報やら分け合っとったら今頃ここには十倍の人数が…ちゃう、二層や三層まで突破できたんに違いないんや!」

 

彼の言っていることも一概に否定できるものではなかった。二ヶ月間で第一層も踏破できていないできていない現状。それ以上に、この期間に失われた二千という命は重い。だが、それはβテスターのせいではない。なぜなら…

 

「だがな、キバオウさん。金やアイテムはともかく少なくとも、情報はあったぞ」

 

そう言ってエギルと名乗ったプレイヤーが取り出したのは、アルゴさんが作っている攻略本だった。

 

「このガイドブック、あんたも貰っただろ?道具屋で無料配布されていたからな」

 

あの本は彼の言う通り道具屋に行けば、誰でも貰うことが出来る。つまり、情報は誰でも手に入れることが出来たのだ。

 

「…………無償だと…………?ロニエ、知ってたか!?」

 

キリトさんは急にこちらを振り返ったと思ったら、驚いた様子でこちらを見上げていた。

 

「え、あはい。手伝った貰ったお詫びにと…」

 

私が言ったことでさらにキリトさんは項垂れてしまった。

私とキリトさんが話している間に彼らの方も落ち着いたようで、エギルさんもキバオウさんもそれぞれ座席へとついている。

 

「さて、エギルさんが言っていたガイドブックだが先ほど、最新版が発行されていた」

 

ディアベルさんのその発言に、広場に集まっていたプレイヤーたちにざわめきが起こる。

 

「ボスの名前は【イルファング・ザ・コボルトロード】で、【ルイン・コボルトセンチネル】という取り巻きが、最初とボスのHPが一段減るごとに三体ずつポップする。ボスの武器は片手斧とバックラーだが、四段あるHPバーの最後の段がレッドゾーンに入ると、曲刀カテゴリのタルワールに持ち替える。取り巻きの方はポールアックスを使用する……とのことだ」

 

この情報は私が手伝ったものではない。つまり、ほかのβテスターもしくはアルゴさん自身が自ら確認しにいったということになる。ボスの情報の確認はほかの情報に作業に比べてかかる危険性が高い。そこまでしてくれたプレイヤーのためにも、このボス攻略は必ず成功させなければいけない。

 

ディアベルさんはガイドブックに載っている情報をもとにパーティーの編成を決めていった。その結果、私たちのパーティーはサポート役。周りの取り巻きの処理を任されることとなった。

 

「最後に、金はシステムによる自動均等割り、経験値は敵を倒したパーティーのもの、アイテムはゲットした人のものとする!異存は無いな!」

 

ディアベルさんの提案に反論する人はおらず、攻略会議はその場でお開きとなった。

 

 

 

 

 

 




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