本小説はニコニコ動画のMADのノベライズ化です。
動画を見ていること前提で話が進むので、先に動画を見ることをオススメします。
http://sp.nicovideo.jp/watch/sm33529313
ここは、鉄華団団長、オルガ・イツカの体の中。
人間の体の中には、約37兆2千億個もの細胞たちが毎日毎日、24時間365日元気に働いている。
タカキ・ウノに負けないくらい休まず働いている細胞たちの内、もっとも数が多いのは赤い帽子を被り、赤いジャケットを着て、荷物の箱を運んでいる者たちだ。
その赤い細胞たちの中の一人。赤いショートカットの髪で、元気そうなバラ色の頬と唇、ショートパンツ。帽子には『AE3803』と書かれた帽子を被る少女が「酸素」と書かれた白い箱を白いTシャツの一般細胞に渡していた。
「お待たせしました!本日分の酸素になります!」
彼女たちは『赤血球』。ヘモグロビンを多く含むため赤い。血液循環によって酸素と二酸化炭素、栄養分などを運搬している。
「ここに判子お願いしますね」
「どうも。ご苦労様、いつもすまないね」
「いえいえ、仕事ですから!」
「ああ、そうだ。俺たちが今まで積み上げてきたもんは全部無駄じゃなかった。これからも俺たちが立ち止まらねぇかぎり、道は続くっ!」
彼女の後ろで、Oasisが聞こえてくるような台詞を言っている大きな一房の前髪を携えた銀髪の青年は『鉄血球』。阿頼耶識システムによって
人間がモビルスーツに搭乗しない時は、主に他の細胞の仕事を手伝っている。
この『鉄血球
ひとまず仕事を終え、次の仕事へと移ろうとしたその時、どんっ、という激しい揺れが二人を襲った。
「うわあっ!」
その後、ばきばきばきばき、と音を立てて
「「なんだこりゃ」」
二人の声が重なったその瞬間、ヒビの入った
「何っ!?」
「なんだ!?」
そして、どおおんっ、という爆発とともに光が広がった。
「待ってくれ!」
ヴァアアアアアア!!ヴァアアアアアア!!ヴァアアアアアア!!
「うわぁぁぁぁ!血管内皮細胞がぁぁぁぁ!!」
二人や近くにいた細胞たちはその衝撃で大きく弾き飛ばされ、辺りに叩きつけられた。
「う"う"っ!」
その時、鉄血球が
「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」
鉄血球の溶血。鉄血球は赤血球とは違い、溶血しても細胞が破壊される事はない。しかし、些細な事でもすぐに溶血してしまうという特質を持つ。この溶血の際、曲が流れ、鉄血球は「止まるんじゃねぇぞ……」と呟く。
爆発とともに血管内皮細胞を突き破って出てきたのはモンスター──細菌たちだった。
「ほう、中々居心地の良さそうな所じゃねぇか!暑すぎず、寒すぎず、食い物も腐るほどあるな、こりゃ。……決めたぜ!今日からここは、俺たちの国だ!!」
そう言い放つ細菌は『肺炎球菌』。肺炎レンサ球菌とも呼ばれる肺炎などの呼吸器の感染症や全身性感染症を引き起こす病原細菌である。
「まずは、邪魔な住民どもを排除するとしよう!」
「きゃーーっ!!」
肺炎球菌が赤血球AE3803番へと襲いかかる。
「この雑菌野郎!死ね!」
それを助けたのは、白い戦闘服を着て白い帽子に白い髪、肌の色も真っ白な青年だった。
彼はナイフで肺炎球菌の喉元を切り裂く。
他にも白い戦闘服の男たちが現れ、穴の中から這い出てきた肺炎球菌を殺していく。
肺炎球菌を殺した彼は右の太腿にくくりつけていたホルダーへナイフをしまおうとしたのだが、同じタイミングで彼の足元に倒れていた鉄血球も立ち上がってしまった為、鉄血球T0319番の頭にナイフが刺さる。
再び、鉄血球が
「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」
「鉄血球、いたのか。すまん」
それはそれとして
「こちら、白血球好中球課U1146番。侵入した細菌の駆除を完了」
彼らは『白血球(好中球)』。外部から体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物の排除が主な仕事。好中球は血液中の白血球の半数以上を占める。
「いいかー。細菌は一匹も逃がすな!一匹でも逃げたら大変な事になるからな」
その白血球の台詞が、後のフラグとなる事を細胞たちは知る
「白血球め、このままで終わると思うなよ……」
「ああ、怖かった。もう早くこれ肺まで届けちゃおう」
赤血球の仕事。体中を駆けめぐり、酸素を体の隅々の細胞まで運び届けること、肺へ二酸化炭素を運ぶこと。
「ああ、分かったよ!連れてってやるよ!」
「ありがとうございます。鉄血球さん」
「ああ、いや。どういたしまして」
(何でだろうな。こいつの声を聞くと護ってやらなくちゃならねぇって気持ちになってくる。……ああ、分かったよ!護ってやるよ!途中にどんな地獄が待っていようと、お前を俺が護ってやるよ!!)
「えっと、肺はここを右に曲がって……」
赤血球AE3803番が道を右に曲がると、そこは静脈弁だった。
ピピー!
「うおっ!」
「あんた、そこは一方通行だよ」
静脈弁。血液の逆流を防いで、静脈を流れる血液を心臓行きの一方通行にする。
「あんた、正気か?」
「す、すいません!新人なもので!間違えました!」
「ここが俺らの正念場って訳だ!」
「肺はあっち」
「ああ、分かったよ!」
しかし……。
ピピー!
「うわっ!」
ピピー!
「また……」
ピピピー!
「…………」
「あんたは何がしたいんだ?」
赤血球AE3803番は────方向音痴であった……。
「鉄血球さん!肺ってどこですか?」
「正直、ピンと来ませんね……」
「鉄血球さんも分かんないじゃないですか!」
「すまねぇ」
鉄血球T0319番は────頭が鉄華団だった……。
「辿り着ける気がしない……」
「ああ、けどな。俺たちは辿り着かなくちゃいけねぇ!進み続けなきゃいけねぇ!止まんねぇかぎり、道は開ける!!だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」
その鉄血球T0319番の言葉を聞き、赤血球AE3803番も元気を取り戻す。
「そうですよね!よーし!!」
地図と実際の道を何度も見比べて、赤血球AE3803番は決断する。
「ここだ!」
そう言って扉を開けた場所では、T0319番とは別の鉄血球が自慰をしていた。
「…………」
「は?」
「待ってくれ!待てって言ってるだr……」
赤血球AE3803番はそっ、と扉を閉じる……。
(見なかったことにしよう)
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再び、肺を探して体中を歩き回る二人。
「えっと、肺……肺。……っていうか、誰もいませんね?」
「俺はいるぞ!」
「それは分かってますけど、なんか静かですよね。一般細胞もいないし、動脈とはすごい違いです」
「ああ、免疫細胞も軒並み向こうに回してんのかもな」
「まぁ、私たちには関係ないですけどね!」
「上機嫌だな?」
「上機嫌って訳じゃないですけど、二酸化炭素を肺まで届けなきゃいけないし、白血球さんも頑張ってたし、私も頑張らないと!」
「ああ、そうだ。俺たちが今まで積み上げてきたもんは全部無駄じゃなかった。これからも俺たちが立ち止まらねぇかぎり、道は続くっ!」
──その時だった。
「見つけたぜぇ、赤血球!栄養分、寄越しやがれぇ!!」
「ギャァァァァァ!!」
先ほど、逃げ出した肺炎球菌が栄養分を狙って襲い掛かってきた。
肺炎球菌は栄養要求性が高いα溶血性の細菌の為、栄養分を運ぶ赤血球を狙うのだ。
「シャァッ!」
「う"う"っ!」
溶血しそうになった赤血球AE3803番を鉄血球T0319番が身を呈して守る。
「団員を守んのは、俺の仕事だ」
その時、鉄血球が
「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」
「ってか、この赤血球。栄養分持ってねぇじゃねぇか……。まぁいいか、毒液で溶かして、腹ごしらえに喰ってやるよ!」
「鉄血球さん!鉄血球さん!!早く起きて下さいよ!こんなとこで寝たら風邪引きますよ!鉄血球さんってばぁ!!」
鉄血球は溶血後、復活までに0.1ナノ秒のタイムラグを有する。
「シャァッ!」
(もうダメだ!
赤血球AE3803番が溶血を覚悟したその瞬間、彼が再び駆けつけた。
「抗原発見!見つけたぞこの野郎!死ねぇ!雑菌が!!」
「白血球さん!」
「もう嗅ぎ付けたか白血球め!捕まってたまるかぁ!!」
肺炎球菌はものすごい速さでこちらへ向かってくる白血球U1146番へ
「し、しまった!
その
「くっ……逃げられたか」
「何やってんだぁぁっ!!」
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肺炎球菌は肺を目指しているはず、そう判断した白血球U1146番は二人に肺までの道案内をする事にした。
「急ぐぞ、道覚えてけよ」
「ありがとうございます!」
「すまねぇ、恩に着る!」
肺へ向かう途中にあった巨大スクリーンには、ヘルパーT指令からの緊急速報が流れていた。
《ええ、こちらヘルパーT細胞。肺炎球菌が血管内を逃走中との連絡が入りました》
ヘルパーT細胞。外敵侵入の知らせを受け、敵の情報をもとに、的確に攻撃出来るように戦略を決める指令官。
そのヘルパーT指令を見た鉄血球T0319番はこう呟く。
「あんた……」
《ギャラルホルンを名乗る身ならば、このモビルスーツがどのような意味をもたらすかは理解出来るだろう》
「マクギリスじゃねぇか……」
《ギャラルホルンにおいてバエルを操る者こそが、唯一絶対の力を持ち、その頂点に立つ!》
ヘルパーT細胞はこの体内世界では火星の特殊な環境状態により、『マクギリスT細胞』に細胞分化していた。(バエル馬鹿なだけで役割自体はヘルパーT細胞となんら変わりはない)
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彼らはやっとの思いで、肺へと辿り着いた。
肺。空気中から得た酸素を体内に取り込んだり、二酸化炭素を空気中に排出する役割を持つ器官。呼吸するところ。
「この先の毛細血管は狭ぇから、俺たちはついていけねぇ!気ぃ引き締めて行けよ、赤血球!」
「はい、鉄血球さん!」
毛細血管。動脈と静脈を繋ぐ細い血管。
「俺と鉄血球はここで肺炎球菌を探す。お前とはお別れだな。お疲れさん」
「あっ、はい!白血球さんも案内してくれてありがとうございました!」
「あぁ、気を付けてな」
赤血球AE3803番は「お疲れさまでーす」と彼らに手を振りながら、二酸化炭素の箱をのせた台車を押して、毛細血管の中へと進んでいった。
そして、毛細血管の行き止まりにある部屋の扉を開ける。
「お?ここが肺胞かな?」
肺胞。空気と毛細血管の間でガス交換を行う場所。両肺合わせて約3億個ある。
(肺炎球菌さん、どこに行ったんだろ?出くわさなければいいけど)
そんな事を考えながら、赤血球AE3803番が部屋の中に二酸化炭素の箱を下ろそうとした時、ざくっ、ざくざくっ、ざざざざざっ、という音とともに鋭い鉤爪が箱の内側から突き出され、箱を蓋していた粘着テープが切り裂かれる。
「……え……っ!?」
青みがかった上半身を箱から乗り出しながら肺炎球菌が低い声でこう呟いた。
「よう、ありがとよ。ここまで運んでくれて」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
箱から出てきた肺炎球菌を見た赤血球AE3803番は悲鳴を上げ、逃げようとした。
しかし、閉めた扉のドアノブに手を伸ばそうとした瞬間、どすっ、と鉤爪が手元に打ち込まれる。
続けて、どす、どす、どす、と鉤爪が肩や腕を掠め、赤血球AE3803番は身動きが取れなくなってしまった。
「くっくっくっ。まったく、とんだ間抜けがいたもんたぜ!自分が何を運んでるか気付かないなんてなぁ!」
(
「助けを呼んだっていいんだぜ、別に!そうやって扉の前で血管を塞いじゃあ、助けも来れねーだろうがな!」
赤血球AE3803番がぎゅっと目を瞑り、体を硬くしたその時、がこっ、と天井板が外れて落ち、開いた穴から飛び出した白いブーツのつま先が肺炎球菌の頭を蹴り飛ばす。
「ぐわっ!」
「勉強不足だな」
不意に蹴られた衝撃で肺炎球菌が後退り、扉に刺さっていた鉤爪が外れる。天井からやって来たのは────白血球U1146番だった。
「俺たち白血球は『遊走』といって、血管の壁をすり抜けて、敵のところへ行く事が出来るんだ!」
遊走。組織内を自由に移動すること。
「白血球さん!」
「俺もいるぞ!」
「鉄血球さんも!」
鉤爪の外れた扉が開き、鉄血球T0319番も現れる。
「逃げるぞ!
「正直ピンと来ませんね……けどよ!連れてってやるよ!連れてきゃいいんだろ!!お前を、お前らを俺が連れてってやるよ!!」
鉄血球T0319番は赤血球AE3803番の手を引いて逃げ、白血球も背後を守りながら後に退く。
壁や曲がり角を盾にしながら逃げ回り、三人は毛細血管とは違う広くて明るい通路へと辿り着いた。
その通路の真ん中で白血球U1146番が赤血球AE3803番を庇いながら、足を止めて肺炎球菌に向き直った。
「足を止めるなぁ!こんなところじゃ終われねぇ!」
鉄血球T0319番は止まらない。
「どうしたぁ、白血球さんよぉ?」
ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!
鉄血球T0319番は『発砲作用』で応戦する。
発砲作用。鉄血球のみが使用出来る特殊な攻撃手段。「ジュウダン」と呼ばれる物質を射出し、細菌やウイルスを攻撃する。
「鉄血球は……もういいか。赤血球、もう少し下がれ」
「えっ?は、はい」
赤血球AE3803番は白血球U1146番の言う通り、じりじりと数歩下がる。
「そんな攻撃なんかで
必死の抵抗を続ける鉄血球T0319番を蹴り飛ばし、肺炎球菌が通路のラインを踏んだ時──。
ピィィィィィィ!!
という鋭い警告音が通路に鳴り響いた。
ラインの両脇の壁から、弾を撃ち出すような太い筒の装置が一瞬で飛び出し、そこから透明な半球のカプセルがそれぞれ膨らむ。
撃ち出された半球のカプセルは肺炎球菌と鉄血球T0319番の全身を挟んで、ぴたりとくっつき、継ぎ目が消えて球体カプセルへと変化した。そして、人工音声が一本調子にこう告げる。
《細菌の捕獲に成功しました》
「「は?」」
肺炎球菌と鉄血球T0319番の疑問の声が重なる。
《これより、細菌を排除します》
「ま、待ってくれ……」
「おい、待て!なんだこのカプセルは!?わ、割れない!溶けない!」
肺炎球菌が必死にカプセルを内側から壊そうとするが、その行為に対し、白血球U1146番がクールにこう告げる。
「無駄だ。そのカプセルは内側からは絶対に壊せん。そして、ここは気管支だ。その意味が分かるな?」
気管支。空気を取り入れる気管から左右に別れ、両肺に通じる細い管。気管支内面の粘膜は線毛上皮で覆われており、線毛運動によって鼻から吸い込んだ空気中の異物を排除する。
「何やってんだぁぁっ!」
「すまない、鉄血球。肺炎球菌と運命をともにしてくれ。細菌には譲歩しない。これは体内常識だ」
「勘弁してくれよ……」
鉄血球T0319番と肺炎球菌を閉じ込めたカプセルは天井から出て来たアームに捕まれ、ベルトコンベアのラインへと乗せられ、コロコロと転がされながら、ロケットの中へと放り込まれた。
そのロケットを見た赤血球AE3803番は白血球U1146番にこう質問する。
「うわっ!何ですか、これ!?」
「くしゃみ一号。どてっ腹に、そう書いてあるだろ?」
「確かに……」
くしゃみ。鼻の奥に付着した埃やウイルスなどの異物を体外に排出しようとして起こる反応。その他にもアレルギー反応や、こよりで鼻腔をくすぐったり、コショウを吸い込んだり、太陽を見たりといった刺激を受けると発生する。
巨大ロケットミサイル『くしゃみ一号』のエンジンが点火され、人工音声が無機質な声でカウントダウンをする。
《3……2……1……、発射》
「やめろぉぉぉぉ!」
肺炎球菌の声とともに、煙を上げて発射されたロケットミサイルは勢いよく打ち上がり、先端が開いて、無数の小型ミサイルに分裂した。
白血球U1146番が、すっ、と右手を上げて敬礼する。
「ばいばい菌だ」
ヴァアアアアアア!!
その時、鉄血球が
「俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」
読んで頂いてありがとうございます!
だんごさんに許可を頂きましたので、オルガ細胞もノベライズする事にしました!
読んで頂いた通り、元動画の本編に補完&オリジナル展開を交えた感じで進めていきます。実際の細胞の働き等の説明もして、多少勉強にもなるようなノベライズに出来たらと思います。EDのノベライズはしません……。期待していた方はごめんなさい。
『異世界オルガ』のノベライズが優先になりますので、こちらは毎月4日の17時から定期更新で進めて行こうと思います。
感想等も募集しています!来月もお楽しみに!