オルガ細胞   作:T oga

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※本小説はニコニコ動画のMADのノベライズ化です。
動画を見ていること前提で話が進むので、先に動画を見ることをオススメします。

http://sp.nicovideo.jp/watch/sm33640477



第4話 落とし前

ここは、鉄華団団長、オルガ・イツカの体の中。

 

人間の体の中には、約37兆2千億個もの細胞たちが毎日毎日、24時間365日元気に働いている。

 

……というのは若干誇張気味で、

 

タカキ以外の細胞たちは24時間365日休まず働いている訳ではなく、適度なタイミングで休憩しても良い権利を持っているのだ。

 

 

赤血球AE3803番と鉄血球T0319番はその休憩時間を使って、白血球U1146番から体の中の仕組みについて教えてもらっていた。

 

胃の見学コーナーからガラスの向こうに広がるマグマの海を見て、赤血球AE3803番が白血球U1146番にこう尋ねる。

 

「これ、なんですか?」

「胃液だな。栄養分の塊を溶かしているんだ」

 

胃。飲み込んだ食物を貯蓄し、胃壁から分泌される胃酸によって食物を殺菌する。また消化酸素のペプシンにより、食物はどろどろの状態にされ、消化の第一段階が行われる。

 

「すごいですね。でも熱そうです。どれくらい熱いんですか?」

「正確な温度は知らないな……。そうだ、鉄血球。どれくらい熱いか実際に確かめてきてくれよw」

「ま、待ってくれ。勘弁してくれよ……」

「お願いします!鉄血球さん!!」

 

無邪気な笑顔で懇願する赤血球AE3803番の目を見た鉄血球はこう思った。

 

(……あの目は裏切れねぇ)

 

「ああ、分かったよ!行ってやるよ!行きゃいいんだろ!!」

 

ヴァアアアアアア!!

 

鉄血球T0319番は遊走でガラスをすり抜け、叫びながら胃液の中へと飛び込んでいく。

 

「う"う"っ!」

 

その時、鉄血球が溶血した(希望の花を咲かせた)

 

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

 

「うわぁ~。食べ物ってこんな風に消化されるんですね~」

「俺は食べ物じゃねぇぞ……」

 

胃酸に溶かされ、溶血した(希望の花を咲かせた)鉄血球T0319番がガラスの向こうから戻ってくるのを見た赤血球AE3803番は笑顔で彼を迎える。

 

「鉄血球さんありがとうございました!!」

「あ、あぁ。こっちこそサンキューな?」

 

何故か鉄血球T0319番も頭にハテナマークを浮かべながら感謝を述べた。

 

「私、今まで道を覚えるのに必死で組織の仕組みとかちゃんと見た事なくて」

「うん」

「あぁ」

「こうやって溶かされるのを見るの、今日が初めてで……」

 

ピコン!

 

赤血球AE3803番が胃を見た感想を語っている途中、白血球U1146番のレセプターが反応した。

 

レセプター。細菌などを察知するレーダー的なもの。

 

「悪い、赤血球!続きは後ほど聞かせてくれ!」

「頼む!」

「あ、いえ、そんな大層な話じゃないので……」

「行くぞ!鉄血球」

「あぁ!」

 

赤血球の言葉を最後まで聞く事なく、白血球U1146番と鉄血球T0319番はレセプターの反応がした方向へと走り出す。

 

 

白血球U1146番と鉄血球T0319番が細菌の出現した場所に辿り着いた時には、すでに細菌と免疫細胞が戦闘を繰り広げていた。

 

細菌と戦っている免疫細胞はピンク色の戦闘服を着て、刺叉(さすまた)を武器にしている金髪ツインテールの少女だった。

 

栄養分を運ぶ赤血球たちを守りながら戦うピンク色の少女であったが、細菌の触手攻撃の猛攻により彼女は片膝をつく。

 

「随分弱っちい奴だな。どうした?それで終わりか?」

「くっ……ラスタル様のためここで負ける訳には……」

「死ねぇぇぇ!」

 

細菌がピンク色の少女に止めを刺そうとしたその時、白血球U1146番と鉄血球T0319番が駆けつけた。

 

「抗原発見!」

「待たせたな!団員(この体の細胞)を守るのは俺の仕事だ!」

 

細菌の攻撃を鉄血球T0319番が肩代わりし、その隙に白血球U1146番は右太ももに取り付けたホルダーから戦闘用の大型ナイフを抜き、細菌に切りかかる。

 

「う"う"っ!」

「死ねぇ!細菌がぁぁ!!」

「ぎゃああぁぁぁぁ!!」

 

細菌が白血球U1146番に倒されたのと同時に、鉄血球が溶血した(希望の花を咲かせた)

 

「駆除完了」

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

「助かった。……悪いな、好中球。それと鉄華団」

「よう、好酸球。久しぶりだな」

「誰なんだよ、こいつは?」

 

彼女は好酸球。白血球の一種。全白血球の数%程度といわれている。アレルギーや寄生虫感染があるとき増殖する。弱いながらも他の白血球のように貪食能力がある。何故か鉄血球のことを「鉄華団」と呼ぶ。

 

「俺と同じ骨髄で育った仲間の好酸球だ」

「そうか。よろしくな」

 

白血球が好酸球の説明をしていたのを聞いていた周りの一般細胞たちはこう呟きを漏らす。

 

「ツインテのあいつ、マジで白血球なの?」

「弱っ!」

「菌に負けてたじゃん……」

「あんなデカイ武器持ってんのにさ」

 

そう呟く一般細胞たちの中に以前のすり傷の際に見かけた一般細胞の男を見つけた鉄血球は怒りを覚え、こう言った。

 

「あ?お前状況わかってんのか?その台詞を言えるのはお前か、俺か、どっちだ?」

 

戦える鉄血球や好中球が好酸球の弱さを指摘するならまだしも、戦えない一般細胞がそれを言うのは間違っている。そう思考しての言葉であった。

 

「言っておくが、細菌の駆除だけが白血球の仕事じゃないからな。こいつの仕事は他にも色々あって……」

 

鉄血球T0319番に続き、白血球U1146番も好酸球をフォローするが、その言葉の途中、大きな揺れが彼らを襲った。

 

「なんだ!?」

 

 

 

その揺れにすぐに反応したのはT細胞の司令室だ。

 

「何が起きている?」

 

マクギリスT細胞の問いに制御性T細胞がこう答える。

 

「胃壁付近で強い揺れが確認されました。胃酸で殺しきれなかった細菌が体内に侵入したようです」

「細菌め……バエルを持つ私に逆らうか」

 

そう呟いたマクギリスT細菌は()()()()体内放送を流す。

 

《聴け!ギャラルホルンの諸君!今、三百年の眠りから、マクギリス・ファリドの下にバエルは甦った!》

 

「マクギリスじゃねぇか……。バエルんじゃねぇぞ……」

 

制御性T細胞の役割はT細胞の暴走を抑え、免疫異常を起こさないように調整する事だ。

 

制御性T細胞はマクギリスT細胞のバエル放送を中断し、すぐに真面目な体内放送を流す。

 

《緊急事態発生!緊急事態発生!皆さん、細菌の侵入が確認された模様です。一般細胞や赤血球は速やかに退避して下さい。白血球は細菌の駆除をお願いします》

 

「行くぞ!」

「ああ!」

「ここが俺らの正念場って訳だ」

 

制御性T細胞の放送を聞いた白血球U1146番と好酸球、鉄血球T0319番は放送を頼りに細菌の元へと向かった。

 

 

現場の胃壁付近に到着すると、そこには白いもじゃもじゃした毛を持つ細菌が一般細胞たちを襲っていた。

 

この白いもじゃもじゃ細菌は腸炎ビブリオ。主に海水中に生息する細菌であり、この菌に汚染された魚介類を食べることにより、激しい腹痛などを伴う感染型の腸炎ビブリオ食中毒を発症させることがある。

 

「スゥ~~モォ~~!!」

「ほら!こっちだマヌケ!!」

 

白血球U1146番と鉄血球T0319番は腸炎ビブリオを煽り(鉄血球T0319番はヘッドスピンをして煽っている)腸炎ビブリオの注意を一般細胞からこちらへと向けさせる。

 

「生意気なぁ~!まずはお前たちから食ってやるぅ~!!」

 

蜂の巣のような黄色い目で白血球U1146番と鉄血球T0319番、そして好酸球を捉えた腸炎ビブリオはその緑色の大きな口を開け、まず鉄血球T0319を食べようとする。

 

ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!

 

鉄血球T0319は『発砲作用』で「ジュウダン」を射出し応戦するが、その応戦も虚しく、パクッ、と食べられてしまった。

 

「なっ!?おい、鉄華団!!?」

「いや、あいつなら大丈夫だ」

 

白血球U1146番のその言葉と共に、腸炎ビブリオの様子が変化する。

 

「ス?スゥ~モォ~!?」

 

その時、腸炎ビブリオが内側から爆散した。

 

「ギャアアアア!スゥ~~~~モォ~~~~!!!!」

 

そして、腸炎ビブリオを倒した鉄血球も溶血した(希望の花を咲かせた)

 

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

 

腸炎ビブリオに食べられた鉄血球T0319番は腸炎ビブリオの体内で消化され溶血し(希望の花を咲かせ)ながら何度も復活し、その度に『発砲作用』で腸炎ビブリオを体内から攻撃。ついには爆発四散させたのだった。

 

「なんだよ、結構当たんじゃねぇか……」

 

 

腸炎ビブリオを倒したのも束の間、すぐにまた大地を揺れが襲う。

 

「っ!?なんだ!細菌は倒したぞ!?」

「いや!細菌じゃない!アレは!」

 

次に壊れた胃壁の向こうから飛び出して来たのは()()()()だった。

 

その巨大な魚を見た白血球U1146番はその名を叫ぶ。

アレは──

 

「寄生虫!アニサキスだ!!」

 

アニサキス。海産動物に寄生する寄生生物。アニサキスが寄生した魚介類を人が生で食べると、まれに胃や腸壁に侵入し、激しい腹痛や嘔吐を伴う食中毒(アニサキス症)を発症させる。

 

 

「ギャオオオオーーーーン!!」

 

アニサキスの鳴き声だけで、野次馬で集まっていた赤血球や一般細胞たちが吹き飛ばされてしまう。

 

「なっ!?うわっ!!」

 

アニサキスに(ひる)んだ白血球U1146番と鉄血球T0319番も赤血球や一般細胞たちと同様に吹き飛ばされる。

 

その時、鉄血球が溶血した(希望の花を咲かせた)

 

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

 

アニサキスは「細菌」ではなく「寄生虫」である。

寄生虫を倒す手段を持ち合わせていない白血球U1146番は何もすることが出来ず、ただ鉄血球T0319番に曖昧な指示を送る他なかった。

 

「くそっ!どうすれば……と、とにかく止めろ!!」

「ああ、分かったよ」

 

鉄血球T0319番は自身の姿をダインスレイヴ型に細胞分化させ、アニサキスを攻撃するが、その攻撃はいとも簡単に跳ね返されてしまった。

 

「う"う"っ!」

 

その時、鉄血球が溶血した(希望の花を咲かせた)

 

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

 

溶血した(希望の花を咲かせた)鉄血球T0319番を見た好酸球は彼にこう問いかける。

 

「何故だ!?何故止まらない!?何故まだ抗う!?無駄な足掻きだ。こんな無意味な戦いにどんな大義があるというのだ」

「は?……大義?無意味だ?そんなもん関係ねぇ!俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……。こんくらい、なんてこたぁねぇ!俺たちには辿り着く場所なんていらねぇんだ!ただ進み続けるだけでいい……。止まんねぇかぎり、道は続くッ!」

「なんなのです。あなたは!果たすべき大義もなく……」

 

好酸球の問いに白血球U1146番も答える。

 

「大義ならある。俺たち免疫細胞の仕事はこの体を守ることだ!」

「あぁ、だからよ、止まるんじゃねぇぞ……!」

 

 

その二人の言葉を聞き、好酸球は自分の役割を見出だした。

 

(……免疫細胞の仕事はこの体を守ること……止まるんじゃねぇぞ……。そういうことですか……。えぇ、わかりました!)

 

好酸球は刺叉(さすまた)をしっかりと握り締め、再び立ち上がる。

 

「私が行く。私は……ラスタル様の剣!ラスタル様のため何人にも遅れを取るわけにはいかない!」

「あぁ、そうだ!やっちまえー!好酸球!!」

 

鉄血球T0319番の叫びを背に好酸球は高く飛び上がり、空中で体を捻って、アニサキスへと刺叉(さすまた)の矛先を向けた。

 

「あなたは確かに強い!私はあなたを倒すことは出来ないかも知れない。……だけど!それでも!私は勝ちます!」

 

先ほど好酸球に対して弱いと陰口をした一般細胞や赤血球たちがとても心配そうな眼差しを向ける中、好酸球はアニサキスの後頭部を刺叉(さすまた)で刺し穿つ。

 

──すると、その攻撃にアニサキスは痛み、苦しみだした。

 

好酸球の働き。寄生虫が体内に侵入した際、その殺傷を助けるなど、寄生虫感染に対する防御を行う。

 

好酸球は刺叉(さすまた)を刺したまま、アニサキスを胃壁の向こう側へと押し戻し、胃液の海へと沈没させた。

 

「今ここにアリアンロッド艦隊司令ラスタル・エリオンの威光の元に悪魔は撃ち取られた!!」

 

アニサキスを撃退した好酸球が刺叉(さすまた)の矛を空に掲げ、高らかにそう宣言すると、陰口を叩いていた一般細胞や赤血球たちは手のひらを返して大声をあげた。

 

「「「「うおぉ~~!!」」」」

 

 

そんな一般細胞と赤血球たちの手のひら返しに鉄血球T0319は不愉快になったようで、彼らにこう言う。

 

「この落とし前、あんたらどうつけるつもり……」

 

しかし、その鉄血球T0319番の言葉を聞いていたものはおらず、話の途中で一般細胞と赤血球たちは好酸球の元へ行って盛大な拍手を送った。

 

「すげぇな、お前!」

「ホントかっこよかったよ!」

「バカにしてごめんな」

 

礼を述べる一般細胞の姿を見た鉄血球T0319番はホッと一安心する。

 

「お前ら……サンキューな」

 

鉄血球T0319番と白血球U1146番はその後、一般細胞と赤血球たちに胴上げされる好酸球を暖かい視線で見つめていた。

 

こうして、好酸球の活躍により、アニサキスの脅威からこの世界を守ることが出来たのだった。

 

 

 

 

 

体内でこのような物語が描かれている頃、体外世界(現実世界)ではテイワズへの加入を認められ、タービンズの名瀬・タービンと義兄弟の盃を交わしたオルガ・イツカたち鉄華団が歳星の飲み屋で宴会をしていた。

 

「今日は遠慮しねぇで、パーッと楽しめよ!!今日はとことんまでいくぞーー!!」

 

 

──数時間後──

 

 

「おえぇぇぇ~!!」

 

オルガは飲み過ぎで吐き気を催していた。

 

吐き気・嘔吐。何らかの原因により、延髄にある嘔吐中枢が刺激されて起こる反応。胃の出口が閉ざされて、反対に胃の入口が緩み、胃に逆流運動が起こるとともに横隔膜や腹筋が収縮して胃を圧迫し、胃の内容物が排出される仕組み。

 




活動報告の方でご報告させて頂いた通り、1週間前倒しで今年ラストにオルガ細胞4話を更新しました!!

26日にはたらく細胞特別編「風邪症候群」が放送されましたが、やっぱりはたらく細胞はいいですね!めっちゃ面白かったです!!


年末年始、年越しそばやおせち料理など色々と食べる時期だとは思いますが、暴飲暴食にはどうかお気をつけ下さい!また、風邪等にもお気をつけて!

では読者の皆様、良いお年を!!
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