オルガ細胞   作:T oga

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※本小説はニコニコ動画のMADのノベライズ化です。
動画を見ていること前提で話が進むので、先に動画を見ることをオススメします。

http://sp.nicovideo.jp/watch/sm33731004




第6話 鉄芽球

ここは、鉄華団団長、オルガ・イツカの体の中。

 

人間の体の中には、約37兆2千億個もの細胞たちが毎日毎日、24時間365日元気に働いている。

 

タカキ・ウノに負けないくらい休まず働いている細胞たちが住むこの体内世界でまた赤血球AE3803番と鉄血球T0319番が道に迷っていた。

 

 

「うわぁぁ、また迷っちゃった~」

「何やってんだぁぁっ!」

 

複雑な体内地図を見るが、やはり分からず、迷いながら道を進んでいると、やがて開けた場所へと出た。

 

「あ、あれ!?もしかしてここって!?」

「え"っ!?」

 

そこでは血小板たちよりも幼い子供たちが遊んでた。その後ろには茶色い校舎が建てられている。

 

この場所を赤血球AE3803番は知っていた。

 

「赤色骨髄だ~~!!」

 

赤色骨髄。それは血球たちの故郷。血球の産生・造血を行う骨髄のこと。赤色髄ともいう。

 

そして、この赤色骨髄は鉄血球T0319番の故郷でもあった。

 

「なんだよ……結構、懐かしいじゃねぇか……」

「ですね~」

 

赤血球や白血球はもちろん、阿頼耶識(あらやしき)システムによって脊椎(せきづい)から注入されたナノマシン『鉄血球』もこの赤色骨髄で生まれ、幼少時代から成熟するまでの時を過ごすのである。

 

 

赤血球AE3803番と鉄血球T0319番は仕事の休憩がてら赤色骨髄の見学を始めた。

 

彼らが見学に来たのは造血幹細胞たちが働く産婦人科。

 

造血幹細胞。血液中の赤血球、白血球、血小板などの血液細胞を産生する細胞。

 

看護服を着た造血幹細胞が試験管から幼子を取り出し、赤血球や白血球、血小板などに振り分けていく。

 

その試験管の中には、阿頼耶識(あらやしき)と書かれた他とは違う試験管もあり、その中にいる幼子が後に鉄血球へと成長する鉄芽球である。

 

鉄芽球。鉄血球になる前の分化途中段階の細胞。骨髄中に存在する。

 

 

 

試験管の中から幼子を取り出した造血幹細胞がこう報告する。

 

「前駆細胞の誕生、確認しました」

 

前駆細胞。幹細胞から特定の細胞に分化する前の細胞。

 

「好酸球の頭数揃った?」

「あと二人よ。いいの居たらちょうだい」

 

血球たちはここで造血幹細胞に生成され、種類毎に選別されていく。

 

赤血球は前駆細胞として生を受け、赤芽球と呼ばれる細胞に成長し、鉄芽球とともに、この赤色骨髄内でマクロファージに育てられるのだ。

 

赤芽球。赤血球になる前の分化途中段階の細胞。骨髄中に存在する。

 

 

「私たち、こんな風に生まれてきたんですね~」

「そうだな……」

 

そんな感想を抱きながら、元の場所へと戻ってくると……

 

「……あれ?なんか静かですねぇ」

「え"っ!?」

 

先ほどまで遊んでいた赤芽球や鉄芽球たちはいなくなっていた。

 

 

辺りを探してみると、講堂で卒業式が行われているようだった。

 

「卒業生代表、前へ」

「はい」

 

マクロファージに呼ばれ、卒業生代表の鉄芽球が壇上へと上がる。

 

 

卒業生代表の鉄芽球は自らの頭の角を握ると、それを一気に引き抜いた。

 

「う"う"っ!」

 

その時、鉄芽球が溶血した(希望の花を咲かせた)

 

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

脱角。鉄芽球が、角を取り外し可能にして鉄血球になること。

 

鉄血球となって初めて溶血した(希望の花を咲かせた)元鉄芽球にマクロファージはこう祝福の言葉を送る。

 

「卒業おめでとう」

 

 

そんな卒業式の様子を見た赤血球AE3803番は過去の出来事を思い出す。

 

「私も昔……ここで……」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

造血幹細胞に生成・選別された赤芽球と鉄芽球は一つの教室へと集められた。

 

その教室の教壇に担任のマクロファージが立つ。

 

「皆さ~ん、揃ってますか~」

「「「「はーい!」」」」

「俺もいるぞ!」

「私がクラス担任のマクロファージです。皆さんが一人前の赤血球、鉄血球になるまでお世話しますからね~」

「「「「はーい!」」」」

「よろしく頼んます!」

 

 

そして、日々、授業は進んで行き──

 

「血管はいつも平和なわけじゃないんです。こわ~い細菌が来ることもあるんですよ~」

 

その日の授業は細菌から逃げるための避難訓練だった。

マクロファージの隣には白血球先生も立っている。

 

細菌役として骨髄にやってきた白血球先生の右腕には緑膿菌のぬいぐるみが取り付けられている。

 

緑膿菌。自然環境中に存在する代表的な常在菌の一種。緑膿菌感染の原因にもなる。

 

 

「大丈夫かな?迷子にならないかな?怖いなぁ~」

 

そう怯える赤芽球AE3803番の手を鉄芽球T0319番が握る。

 

「ああ、分かったよ!護ってやるよ!お前を俺が護ってやるよ!!」

「あっ、うん!ありがとう!」

 

そんな彼女らの様子を笑顔で眺めながら、マクロファージは手を叩いてこう言った。

 

「では、行きますよ~。はい!スタート~!」

「あ、もうやっちゃっていい感じっスか?」

「ど~ぞ~」

 

マクロファージから確認を取れた白血球先生はこう吼えた。

 

「オラァ!細菌のお出ましじゃあぁぁぁぁ!!」

 

「「「「うわぁぁぁぁ!!」」」」

 

白血球先生の迫真の演技に恐怖した赤芽球たちは慌てて逃げ出す。

 

 

「足を止めるなぁ!」

「助けてぇぇぇぇ!!」

「あと少し……あと少しで!!」

 

もちろん赤芽球AE3803番は誰よりも大きな声を上げて一目散に逃げ出すが、鉄芽球T0319番はその手を決して離さない。

 

彼女らは逃げた先の廊下にあった段ボールの影へと身を隠した。

 

 

その廊下からふと、外の様子を見ると、赤血球や鉄血球がテキパキと仕事をしているのが確認出来た。

 

 

「いつもどうも」

「いえ、では失礼します」

 

 

キィィィィィ ガチャン ズドドドドドド

 

「う"う"っ!」

 

ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!

 

その時、鉄血球が溶血した(希望の花を咲かせた)

 

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

 

「こっちに一つお願い」

「了解です」

「私の方にも一つ」

 

 

そんな赤血球、鉄血球の仕事の様子を見た赤芽球AE3803番はこう感想を抱く。

 

(テキパキはたらいてる……。かっこいい……。もしかして、この人たちが赤血球と鉄血球なのかな。いつか私もあんな風になれるのかな?)

 

「ん?どうした?」

「ううん。何も」

「そうか」

「おやぁ?」

 

そんな赤芽球と鉄芽球の会話に何者かが乱入してきた。

 

「先生…?」

「いや、違ぇぞ!赤芽球!!」

「鉄芽球の言うとおり……」

 

「俺は本物の緑膿菌様だぁぁ!!」

 

緑膿菌のぬいぐるみを持つ白血球先生ではなく、本物の緑膿菌と鉢合わせた赤芽球AE3803番と鉄芽球T0319番は再び慌てて逃げ出す。

 

「うわぁぁぁぁ!!」

「ヴァアアアアアア!!」

 

そして、彼女らは(血管)へと出るドアの前までやって来た。

 

彼女らはドアを、ドンドン、と叩くが、ドアは開かない。

 

「ふぇぇん!ドアが開かない!なんで!?」

「どういうことだ!?」

 

その質問に答えるかのように赤芽球の頭の帽子のボンボンと鉄芽球の角が光り出し、そこから電子音声が流れる。

 

《赤芽球と鉄芽球は骨髄の外に出ることは出来ません》

 

赤芽球と鉄芽球は成熟して脱核・脱角するまで骨髄中で過ごす。

 

「勘弁してくれよ……」

 

 

そこに緑膿菌が追い付いてきた。

 

「俺のように栄養分も酸素も奪わなくたって生きられる細菌が、何故体内に来たと思う?……それはなぁ」

 

そう言いながら、緑膿菌が触手を伸ばして鉄芽球を攻撃する。

 

「無力な血球をイジメるのが大好きだからなのさ……!」

 

その時、鉄芽球が溶血した(希望の花を咲かせた)

 

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

溶血した(希望の花を咲かせた)鉄芽球T0319番を見た赤芽球AE3803番が怯えて体を丸める。

 

緑膿菌はそんな赤芽球AE3803番を次の標的に定めた。

 

「さて、次は赤芽球といくか~!!気の毒になぁ、君はまだこんな小さいのに。大人になれずに死んじゃうんだ。まぁ、これが運命ってやつさ~。諦めな~!」

 

赤芽球AE3803番はいつもすぐに溶血する(希望の花を咲かせる)鉄血球(鉄芽球)を頭の片隅に思い浮かべる。

 

(私は鉄血球や鉄芽球じゃない……。溶血したら死んじゃうんだ……。いやだ!死にたくない!!)

 

 

その時、復活した鉄芽球T0319番がこう叫んだ。

 

「死なねぇ!死なせてたまるか!!」

 

ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!

 

鉄芽球T0319番は発砲作用で緑膿菌を攻撃する。

 

その発砲でダメージを受けた緑膿菌は声を荒げてこう言った。

 

「ぐわぁっ!……ちっ!お遊びは終わりだっ!死ねぇぇ!!」

 

 

緑膿菌が触手を振り上げたその時──

 

「待てっ!!」

 

 

制止を促す大きな声。

 

その声の主は小さなナイフを持った真っ白な少年だった。

 

「抗原発見だ!」

「何者だ!?」

「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……」

「お前じゃない!そこの真っ白なガキだ!」

「細菌に名乗る名などないっ!!」

 

そう断言する真っ白な少年は骨髄球。白血球(好中球、好酸球、好塩基球)になる前の分化途中段階の細胞。骨髄中に存在する。

 

 

「おやぁ……?もしかして君は骨髄球かな?白血球の卵の。俺を殺そうってのかい?」

「そうだ!やっつけてやる!」

 

その少年が白血球になる前の骨髄球だと分かった緑膿菌は再び余裕を見せる。

そして、緑膿菌は骨髄球にこう話しを持ち掛けた。

 

「ふへへへへっ!まぁ、俺は勇気のある子は嫌いじゃない……。その赤芽球を差し出せば……君の命だけは助けてあげるよぉ?」

「頼む!こいつならどうにでも殺してくれ!何度でも殺してくれ!首をはねてそこらに晒してくれてもいい!鉄華団の団長である俺の命だけは!!」

 

鉄芽球T0319番は他の二人を犠牲にしてでも自分を護ろうとするが、骨髄球の少年はそうではなかった。

 

 

「そんな話にのるかっ!食らえっ!雑菌め!」

 

骨髄球の少年は手に持つナイフで緑膿菌に飛びかかるが……。

 

「ほいっ」

 

軽く手を払われ、ナイフを奪われてしまった。

そのナイフはゴム製のラバーナイフ。これでは細菌を倒すことも出来ないはずなのだが……

 

「う"う"っ!」

 

緑膿菌が払ったゴム製のラバーナイフが鉄芽球に刺さったその時、鉄芽球が溶血する(希望の花を咲かせる)

 

ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!

 

その反動で先程以上のダメージを与えられる強力な発砲作用が発動した。

 

「な、嘘だっ……!ぐ、ぐわぁぁぁぁ!!」

 

緑膿菌は死んだ。そして、鉄芽球も溶血した(希望の花を咲かせた)

 

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「仕事始めてから、色々あって忘れてたけど……あんなこともあったなぁ~」

「そうだ。俺たちが今まで積み上げてきたもんは全部無駄じゃなかった。これk……」

「よーし、早くこの酸素届けよう!」

 

そう言って赤血球AE3803番が台車を押したその時──

 

「う"う"っ!」

 

鉄血球が溶血した(希望の花を咲かせた)

 

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

「うわぁぁぁぁ!す、す、す、すいません!!」

 

今日も体内世界は平和です。

 

 




読んでいただいてありがとうございます!

今回はただの思い出話なので微妙だったと思います。

次回のがん細胞をお楽しみに!



あと、この場をお借りして、ご報告を三点ほど……


まずは、一つ目。先週ニコニコ動画の方に異世界オルガMADを投稿したので、見て頂けるととても嬉しいです。

http://sp.nicovideo.jp/watch/sm34684338


二つ目。活動報告(https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=207738&uid=134450)にも書きましたが、私もインフィニットオルフェンズ2のノベライズに協力することになりました!

投稿はまだ先になりますが、読んで頂けると幸いです。


最後に三つ目。活動報告の最後に書いてあります

「インフィニットオルフェンズ2の執筆練習で書いている完全オリジナル回」

こちらの投稿日がオルガの命日 3/19 に決まりました!!
投稿されたら活動報告で宣伝しますので、こちらもよろしくお願いします!!

だからよ、止まるんじゃねぇぞ……
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