オルガ細胞   作:T oga

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※本小説はニコニコ動画のMADのノベライズ化です。
動画を見ていること前提で話が進むので、先に動画を見ることをオススメします。

http://sp.nicovideo.jp/watch/sm33781264



第7話 約束

ここは、鉄華団団長、オルガ・イツカの体の中。

 

 

人間の体の中には、約37兆2千億個もの細胞たちが毎日毎日、24時間365日元気に働いている。

 

 

タカキ・ウノに負けないくらい休まず働いている細胞たちが暮らすこの体内世界に再び危機が訪れようとしていた……。

 

 

「うわぁ~、だ、誰か~助けてぇぇ~!!」

 

白血球U1146番と鉄血球T0319番がいつものように赤血球AE3803番の仕事を手伝いつつ、街のパトロールをしていた時、どこからか助けを求める声が聞こえた。

 

「……っ!白血球!」

「分かってる。……すまないな、赤血球」

「私は大丈夫です!お仕事頑張ってきて下さい!」

「サンキューな、赤血球。……いいから、行くぞぉ!!」

「あぁ!」

 

白血球U1146番と鉄血球T0319番が悲鳴の聞こえた場所まで駆けつけると、そこには一般細胞を襲っているウイルス感染細胞がいた。

 

そのウイルス感染細胞は、肌が変色していて、肩から赤い触手のようなものを生やしている。

 

「なんなんだよ、ありゃ……?」

「わからん!とりあえず……」

 

そう言って、白血球U1146番は懐からナイフを抜き、ウイルス感染細胞を斬り殺す。

 

「こいつは一体……」

「俺もわかんねぇ……」

 

倒れたウイルス感染細胞を見て、白血球U1146番と鉄血球T0319番が首を捻っていると、声が聞こえた。

 

「珍しい獲物だな。好中球が細胞の駆除してるとこ見んのは久しぶりだぜ」

 

その声の主は、黒い戦闘服を着ていて『KILL』と書かれた帽子を被っている男性……キラーT細胞であった。

 

キラーT細胞(細胞傷害性T細胞)。ヘルパーT細胞の命令によって出動し、ウイルスに感染した細胞やがん細胞などを殺す。

 

「キラーTか!」

「よぉ、好中球に鉄血球!こないだは、ナイーブが世話になったな」

「いや……こちらこそ、サンキューな」

 

白血球U1146番と鉄血球T0319番、そしてキラーT細胞はそんな会話をしながら、倒したウイルス感染細胞を確認する。

 

「気の毒なこった……。ウイルスに感染しちまうとは……」

「嫌なもんだな……。仲間が犠牲になる事件ってのは……」

「同感だ」

「あのぉ…」

「細胞のトラブル処置は俺たちT細胞の仕事だ。こいつは任せてくれ」

「細胞を守んのは、俺の仕事だ……」

「お前ら白血球は細菌を殺すのがメインだもんな」

「俺たちだって細胞のトラブル処置をしない訳じゃないぞ」

「あのぉ~」

 

 

そんな会話をしていた時、電柱から何者かが飛び降りてきた。

 

「う"う"っ!」

 

その時、鉄血球が溶血した(希望の花を咲かせた)

 

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

 

電柱から飛び降りてきて、鉄血球T0319番を溶血させた(の希望の花を咲かせた)のは筋肉質な黒いタンクトップの女性だった。

 

「なんなんだよ、お前は?」

 

彼女はNK(ナチュラルキラー)細胞。全身をパトロールし、がん細胞や、ウイルス感染細胞などを見つけ次第攻撃する。

 

「悪いわね。いいクッションがなかったもんで」

「勘弁してくれよ……」

 

そのNK細胞は倒れたウイルス感染細胞を乱暴につかみ、凝視する。

 

「やっぱりね。こいつ、ただのウイルスじゃないわよ」

「何っ!?」

「それも猛スピードで増殖してくタイプの奴。まだ仲間がいると思うから……そこの細胞くんに案内してもらおうかしら」

 

そう言って、NK細胞は先ほどから白血球U1146番や鉄血球T0319番、キラーT細胞に話しかけようとしていた一般細胞に声を掛ける。

 

「ねぇ、あんた。こいつ一体だけじゃないんでしょ?」

「あ、そうなんです……。僕ん家の周りにもまだ……」

 

一般細胞の言葉に鉄血球T0319番と白血球U1146番、キラーT細胞が驚嘆する。

 

「何っ!?」

「細胞組織に!?」

「それを早く言え!!」

「だからさっきからそれを言いたくて……」

 

「馬鹿野郎!すぐ案内しろ!!」

 

 

その一般細胞の案内で、白血球U1146番と鉄血球T0319番、キラーT細胞とNK細胞はウイルス感染細胞の増殖したという細胞組織へと向かった。

 

 

──その道の途中、白血球U1146番と鉄血球T0319番が一般細胞にこう話し掛ける。

 

「ところで細胞くん。道案内だが……途中まででも構わんからな」

「え?」

「戦えないあんたを無理に危険に晒す訳にはいかねぇ」

「あぁ、それにこれから殺しに行くのは、お前の友達やお隣さんだったかもしれない細胞たちだ」

「見たくねぇだろ。んなもん」

「…………いや……そんな大丈夫だよ。ちゃんと最後まで案内するよ……。この世界の為だからさ。それに、ほら……さっき君には助けてもらったし……」

「そうか……」

「どうもありがとう……助けてもらったのなんて、初めてだったよ」

「あぁ、分かったよ。次も助けてやるよ!俺が、お前を助けてやるよ!」

「君もありがとう。でも大丈夫。ちゃんとわかってるから……。仕方ないことなんだって……。世界の平和の為には仲間が殺されることもある、って……それが君たちの仕事なんだってこともね」

「あぁ、そうだ。細胞を守んのが、俺の仕事だ……」

「そうか……有難い」

 

 

そして、彼らは細胞組織へとやって来た。

 

いつもは平和に細胞たちが暮らしているはずの細胞組織は薄暗く、何者の気配もしなかった。

 

「なんか静かだな……」

「え"え"っ!?」

「誰もいない」

「ただ事じゃねぇな……」

 

異様な空気を感じ取った白血球U1146番とキラーT細胞、NK細胞は警戒しながら道を進む。

 

すると、分かれ道にたどり着き、彼らは二手に別れることに決めた。

 

右の道へは白血球U1146番とキラーT細胞、左の道へは鉄血球T0319番とNK細胞、そして案内役の一般細胞がそれぞれ向かった。

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

左の道へと進んだ鉄血球T0319番が後ろからNK細胞に足蹴りされる。

 

「なにしやが……う"う"っ!」

 

その時、鉄血球が溶血した(希望の花を咲かせた)

 

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

 

溶血した(希望の花を咲かせた)鉄血球T0319番の背中を足で踏みつけ意味もなく、追撃しながらNK細胞はこう告げる。

 

「正体を現しな」

「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……」

「お前じゃない」

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

NK細胞に再び足蹴りされ、溶血した(希望の花を咲かせた)鉄血球T0319番を傍目に見ながら、一般細胞は静かに口を開いた。

 

「……バレてたのか」

 

その一般細胞の声と共に、黒かった髪は白く染まり、背中からは赤や青の触手が生えてきた。

頬の血管は太く浮き出てきて、肌も赤白く変色する。

 

ただのウイルス感染細胞のそれではない。その姿は──

 

 

がん細胞。細胞の遺伝子に異常がおきて、無軌道に増殖するようになった細胞。周囲の正常な細胞との境界を侵し、どんどん増殖していく。

 

 

その頃、右の道へと進んだ白血球U1146番とキラーT細胞は細胞組織の部屋の一つに進入し、部屋の中を視認する。

 

「何だよ……これ」

 

薄暗い部屋にあるのは『外出禁止』『増やせ仲間』などと書かれた壁一面の貼り紙、鉄血球について調べられたデータ、そして緑色の培養カプセル……。

 

その部屋をじっくり捜索する暇もなく、隣の部屋から突如として、ウイルス感染細胞たちが彼らを襲撃した。

 

そのウイルス感染細胞たちの姿を見て、白血球U1146番が気付いた。

 

「……っ!こいつら、がん細胞か!」

 

部屋から逃げるように通路に出る白血球U1146番とキラーT細胞だったが、通路にはすでにがん細胞がうじゃうじゃと湧き出ていた。

 

もはや人の姿ではないがん細胞も見受けられる。

 

「数が多い!」

「クソッ!こいつら、どっから出てきやがった!」

「とりあえず倒すぞ!」

「ああ!」

 

 

白血球U1146番とキラーT細胞が、がん細胞と戦っている時、鉄血球の悲鳴と共に、鉄血球T0319番とNK細胞が吹き飛ばされてきた。

 

ヴァアアアアアア!!

 

「う"う"っ!」

 

その時、鉄血球が溶血した(希望の花を咲かせた)

 

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

 

白血球U1146番は飛ばされてきた鉄血球T0319番とNK細胞を見て、心配すると同時に一緒に左の道へ進んだはずの一般細胞がいないことに気付く。

 

「大丈夫か、鉄血球、NK!?……それに、あの細胞は?……細胞くんはどうした!?」

「俺か?俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……」

「お前じゃない」

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

またまたNK細胞に足蹴りされ、溶血した(希望の花を咲かせた)鉄血球T0319番。

その様子を見ながら、NK細胞は戦闘態勢を取りつつ、こう言った。

 

「鈍いやつね……あいつなら、あそこよ!」

 

そう言ってNK細胞が指差した先から、がん細胞が突撃してくる。

 

「ハハハハハハッ!!」

 

笑いながら突撃してきたがん細胞の攻撃で細胞組織が木っ端微塵に爆発。

 

白血球U1146番やキラーT細胞、NK細胞はその爆発に巻き込まれて吹き飛ばされ、鉄血球は溶血した(希望の花を咲かせた)

 

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

「くっ……あれが……細胞くん…なのか……」

「ちっくしょう……」

「ざまぁないね……」

 

爆発に巻き込まれて吹き飛ばされた衝撃で焼けた地面に叩きつけられ、動けなくなってしまった白血球たちを見て、がん細胞が雄叫びをあげる。

 

「うおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

「クソッ……このまま野放しにしとけるかってんだっ!この……バグり野郎が……っ!」

 

バグり野郎……そのキラーT細胞の言葉にがん細胞は過去の出来事を思い出す。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「がん細胞が二人逃げたぞ!」

「勘弁してくれよ……」

「クッソ!あのバグり野郎共!」

「探し出して処分しろ!」

「逃がすんじゃねぇぞ……」

 

二人の幼いがん細胞が細胞組織を走り続ける。

 

「ここまでこれば……」

 

隠れられる場所を見つけ、そこに身を隠す二人の幼いがん細胞。

 

その近くから一般細胞と鉄血球、キラーT細胞の話し声が聞こえてきた。

 

「このアホ細胞が!とんでもねぇコピーミスしやがって!」

「この落とし前……あんた、どうつけるつもりだ?」

「すんません……疲れてたもんで……」

「は?俺たちは落とし前をつけにきた。最初にそう言ったよな?」

 

その話し声を聞いた幼いがん細胞の一人がもう一人の幼いがん細胞にこう問いかける。

 

「ねぇ、僕たち……生まれてきたばっかりなのに、殺されるのかな……?コピーミスって、どういうことなんだろう?」

 

 

がん細胞は正常な細胞が細胞分裂する際のコピーミスによって、健康な人でも一日に数千個作られると言われている。

 

 

「わ、わかんないよ……。でも…とにかく一緒に逃げよう!」

 

そう言って、幼いがん細胞の一人がもう一人の手を引いて立ち上がる。

 

しかし、もう一人の幼いがん細胞は躓いて転んでしまい、そこに光が当てられる。

 

「一人居たぞ!捕まえろ」

「やっちまえ!!」

「あと一人だ!そいつも必ず見つけてぶっ殺せ!!」

 

その声と幼いがん細胞の悲鳴を後ろ耳に聞きながら、もう一人の幼いがん細胞は逃げ出したのだった……

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「バグり野郎だと……?殺すだと……?僕らを不良品扱いしやがって……。何様のつもりだ、お前らは!……お前らの方こそ…………ぶっ殺してやる!!

 

「まっ、待て……」

 

白血球U1146番がそう呟くが、がん細胞は止まらない。

がん細胞の背中からは羽のような形の触手が生えてくる。

 

「これから僕たちは血管とリンパ管を介して身体中に散る。そこで増殖して、お前たちの仲間を残らず殺す」

「アンタ、正気か?」

「正気だったら、こんなことにはなってない」

「そりゃそうか」

「……とにかく、僕らは正常な細胞共を殺す側から殺される側のどん底に叩き落とす」

「バカなことを!狂った細胞の力では、この世界を維持できるわけがない。そんなことをしても……その先にあるのは地獄だぞ!」

「……いいんだよ、そんなの。どーせ僕は死ぬ運命なんだから……じゃあな

 

がん細胞が背中に生えた羽のような形をした触手で空へと飛び上がろうとしたその時、鉄血球T0319番がこう言った。

 

「は?お前状況分かってんのか?それを決めるのは、お前らバグり野郎か、俺たち細胞か、どっちだ?」

「…………」

 

がん細胞が少し動きを止めた一瞬の隙をついて、鉄血球T0319番がこう叫ぶ。

 

「やっちまえ!」

 

その時、どこからか(なた)が飛んできて、鉄血球が溶血する(希望の花を咲かせる)

 

「う"う"っ!」

 

ヴァアアアアアア!!

 

鉄血球T0319番は溶血する(希望の花を咲かせる)直前に『発砲作用』の応用で、前髪のナイフを投げ、がん細胞の羽のような形の触手を攻撃。がん細胞の動きを止めた。

 

「なっ!?」

 

そして、鉄血球が溶血した(希望の花を咲かせた)

 

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

 

がん細胞と戦う戦場に現れたのは──

 

「みなさーん!大丈夫ですかー!!」

 

赤血球AE3803番やマクギリスT細胞、マクロファージ、B細胞、好酸球などの細胞たちだった。

 

 

「あらあら~。頭狙ったのに、外しちゃったわね~」

「何やってんだぁぁっ!……おばさん

 

その鉄血球T0319番の呟きはマクロファージに聞こえていたようで、マクロファージは再び鉈を鉄血球T0319番へ向けて投げる。

 

「う"う"っ!」

 

その時、鉄血球が溶血した(希望の花を咲かせた)

 

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

 

「がん細胞!お前たちは我々ギャラルホルンに完全に包囲されている!大人しくバエルの元に集え!!」

 

そのマクギリスT細胞の声と共に、白血球やキラーT細胞たちが突撃する。

 

「うおぉぉぉぉ!!」

「殺せ殺せぇー!!」

「悪魔は討ち取られた!!」

「うふふふふっ!うふふふふっ!」

「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

白血球、キラーT細胞、好酸球、マクロファージらの猛攻によって、がん細胞は次々と倒れていく。

そして、鉄血球も溶血する(希望の花を咲かせる)

 

そんな中、体力がある程度回復した白血球U1146番とキラーT細胞、NK細胞も戦線に復帰した。

 

「鉄血球、右に避けて!」

「あぁ、分かったよ!」

 

NK細胞の指示で鉄血球T0319番が右に避けると、そこはB細胞の抗体武器の射程圏内だった。

 

「ま、待ってくれ」

「フルチャージした抗体を……俺は止めれない。止まらない」

「勘弁してくれよ……」

 

B細胞の抗体武器から止まらず放たれた薬液の放水を受け、鉄血球T0319番は回り回る。そして、未来は重なり合う。我らは最後のサバイバーだった。

 

 

がんサバイバー。がんを経験したすべての人を指す呼称。キャンサーサバイバーともいう。がんと診断された直後からその人が生涯を全うするまでを包括した概念の事を指しており、がんが治癒し、長期生存した人だけを意味するものではない。

 

 

その様子を見たNK細胞は大きな笑い声を上げる。

 

「だっはっはっはっ!!おっかしwwwホントwww単純wwwくるしっwwwハハハハハハッ!!」

 

NK細胞が涙目になるまで笑うと……

 

「……悪いわね、鉄血球。あー面白かったぁ」

 

NK細胞の身体に()()が付着し、光り出す。

 

「たっぷり笑ったら元気出たわ!!」

 

神々しい光を浴びたNK細胞はその手に持つ剣で増殖したがん細胞たちをバッサバッサと斬っていく。

 

それを見て、羽のような形の触手を生やしたがん細胞はこう叫んだ。

 

「なんで殺されなきゃならないんだ!!何も悪いことなんかしてないのに!!ただ生まれてきただけなのに!!」

「待ってくれ!」

 

そのがん細胞の悲痛の叫びを聞いた鉄血球T0319番は自身も何一つ悪行をしていないにも関わらず、溶血し(希望の花を咲かせ)続けている事に気付く。

 

「俺もじゃねぇか……」

 

今回だけでも鉄血球は十回ほど溶血し(希望の花を咲かせ)ている。

 

「あぁ、分かったよ!」

 

自覚したその刹那、鉄血球T0319番の背中からも羽のような形の触手が生えてくる。

 

ヴァアアアアアア!!

 

 

鉄血球のがん細胞化。鉄血球は自身の溶血性の理不尽さに耐えきれなくなると、がん細胞に細胞分化する。しかし、HPは1のままである。

 

 

「う"う"っ!」

 

その時、がん細胞化した鉄血球が溶血した(希望の花を咲かせた)

 

鉄血球を溶血させる(の希望の花を咲かせる)のと同時にNK細胞はがん細胞も一刀両断。

 

「残念だったわね。いくらあんたらが強かろうと、鉄血球ががん細胞化しようと、私は負けない!NK細胞は笑うと活性化するのよ!!

 

 

NK細胞の活性化。「笑い」による刺激が間脳(かんのう)に伝わることで、神経ペプチドという情報伝達物質が活発に生産される。これがNK細胞の表面に付着して、NK細胞を活性化させる。

 

 

NK細胞の斬撃に倒れたがん細胞に白血球U1146番がトドメを刺そうとする。

 

「死ね!がん細胞!!」

 

白血球U1146番はナイフをがん細胞の首元に突きつけるが……

 

「がーん…(つд;*)」

 

白血球U1146番はただ呆然と倒れるだけのがん細胞にトドメを刺さずにいた。

 

「動く力は残ってないようだが、話すことは出来るようだな。トドメを刺す前に何か言いたいことがあれば聞いてやる」

「へっ……そうやってお前は……」

 

白血球U1146番のお人好しさにがん細胞の隣で倒れていた鉄血球T0319番が起き上がりながら呆れつつも微笑む。

 

「……いい人ぶりやがって、ムカつく奴だな。……でも、フツーの細胞に化けて、お前に助けて貰った時、僕は……僕はフツーに嬉しかったんだ。誰かに助けて貰うなんてこと……生まれて初めてだったからな。こんな僕のことを助けようとしてくれる細胞なんてこの世界には一人たりとも存在しない……当然だよな」

 

白血球U1146番と鉄血球T0319番はがん細胞の言葉を黙って聞いている。がん細胞はこう続けた。

 

「ホントは僕もただの細胞なんだ……この世界の一員として、みんなと!ただ毎日平和に生きていたはずだった……なのに!」

「確かにお前はただ生まれてきただけなのかもしれねぇ。けどここでお前を見逃すわけにもいかねぇ。俺たちの仕事はまだ終わってねぇからな。この体内世界(からだ)を守るまで、最後まで戦い続ける。この体内世界(からだ)を潰したがってる奴らがいる。そんな奴らは誰であろうとぶっ潰す。それが俺たち免疫細胞の仕事だ」

「鉄血球の言うとおりだ。俺たち免疫細胞はお前を救えない。身体の決まりに逆らって増殖し、栄養分を奪って正常な組織を破壊するお前を生かしておくことも……治してやることも出来ない」

 

その二人の言葉にがん細胞は泣きそうな、悔しそうな震えた声でこう言った。

 

「分かってるよそんなこと!でも……」

「なんて声、出してやがる……」

「今日が終わったら……どうせみんなすぐ忘れてしまう」

「ああ……」

「僕の恨みも、怒りも、悲しみも……誰にも聞いて貰えないまま風化して……無かったことになってしまう。何も残らない……。細胞分裂の手違いで味方になるはずだった免疫細胞に命を狙われて……戦って負けて……この世界に何も残せずに死ぬなんて……何の為に生まれて来たんだ……!」

 

それを聞いた鉄血球はこう静かに誓う。

 

「俺は忘れねぇからよ……」

 

「……ふっ、どうだか。明日、明後日は覚えていても、時が経てばいずれ忘れる」

 

「それでも、止まらねぇかぎり、道は続くっ!」

 

「……いいよ。負けといてやる……今回はな」

 

「そうか。んじゃ、しばしのわかれってやつだな」

 

 

 

そして、鉄血球T0319番との握手を最期にがん細胞は…………死んだ。

 

 




お待たせしました。少しスランプ気味だったんですが、何とか帰ってきました。

今回の話は平成最後の力作になったと思います。
笑いあり涙ありのノベライズ版オルガ細胞第7話は如何だったでしょうか?

読者様方の体内のNK細胞は活性化しましたか?


今後の私の活動予定ですが、明後日4月30日(平成最後の日)の夜にニコニコ動画の方に『異世界オルガシリーズ完結作品OPED集』を投稿します。

また、明々後日の5月1日(令和最初の日)の17時には『異世界オルガシリーズ厳選OP集』を投稿予定です。

そして、5月中にナイツ&オルガの最新話を、6月4日にオルガ細胞の8話を投稿する流れで行きたいと思っております。


俺は止まらねぇからよ、お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!

……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……

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